今回取り上げる機種は最新の完全ワイヤレスイヤホン、SoundPEATS TrueFree 2です。
SoundPEATSはまだまだ日本で知名度が高いとは言えないかも知れませんが、ワイヤレスイヤホン市場では中華ブランドの中で最も成功したブランドの一つと言え、その高品質製品で多くのファンを獲得しています。低価格で変な中華ブランドを買うよりはSoundPEATS製品を買った方がサポートも品質も満足できるはずです。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 連続/最大再生時間:4h/20h
- 防水性能:IPX7
- 対応コーデック:AAC/SBC
- 技適番号: 211-181022
SoundPEATS TrueFree2の特徴
日本のオーディオ最高権威、VGPアワードを受賞
家電量販店から専門店まで、日本全国の有力販売店と、オーディオ機器のトレンドと魅力を熟知、オーディオビジュアル専門誌で健筆を振るう評論家が選ぶ、日本におけるオーディオ品評の最高権威がVGPアワードです。SOUNDPEATS TrueFree2は、全3回にわたる厳しい審査会審査を勝ち抜き、見事VGPアワードを受賞しています。
ロープライスでハイクオリティオーディオ体験
安定動作と高速転送が特徴的なプロ仕様の「Realtek」チップセットを使用し、繁華街のど真ん中など過酷な環境においても安定した動作を行え、低遅延で途切れせずに再生可能できる一方、電力消費効率も通信安定性も向上しました。両耳で再生する通常モードに加え、左右それぞれで再生可能な片耳モードが搭載され、ご利用シーンに応じて便利に使えます。
ドライバーは6mm口径の複合振動板を使用しており、クリアなオーディオ体験を実現しています。
高い防水性能IPX7
SoundPEATS TrueFree2は防水性能IPX7を実現しています。IPX等級において、IPX7は事実上の最高等級であり、短時間での水没に耐えられる品質です。水たまりに落としてしまっても影響はないので、強い雨の中で使用しても問題ありません。もちろん汗には十分な耐性を持っており、スポーツのお供としても十分に活躍してくれます。
パッケージ
パッケージは価格帯では少し豪華です。パッケージデザインはSoundPEATS共通デザインで、シンプルですが安物感はありません。環境に配慮された紙を中心素材としたエコパッケージだという点は個人的に好感が持てます。
付属品にはイヤーピースの替え、イヤーウィングの替え、充電用USBケーブル(Type-C)、説明書などが含まれます。
ビルドクオリティは価格を考えると比較的上質です。前世代機種より全体的なクオリティは向上しているようです。
装着サンプル
イヤーウィングを使うと耳へはかなりしっかり装着されます。耳から出る部分は比較的少ないようです。
音楽再生中にLEDが光ることはありません。
接続品質
AACでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯では優秀な接続品質です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では安定しています。距離耐性は優秀で、5mくらい離れてもシームレスでそのままつながっています。遮蔽物があっても接続は維持されますが、遮蔽した直後に大きく乱れ、その後も音楽は楽しめますが、ところどころプチプチします。
ホワイトノイズはわずかにあるかもしれませんが、おそらくほとんどの人が気になりません。
インターフェース/操作方法
操作インターフェースはフェースプレート部分にあり、物理式です。
電源ON
ケースからイヤホンを取り出すと、自動で電源ONになります。
またマルチファンクションボタンを1.5秒長押しすることで手動で電源ONにできます。
電源OFF
イヤホンをケースに収納すると、自動で電源OFFになります。
またマルチファンクションボタンを8秒長押しすることで手動で電源OFFにできます。
ペアリング
イヤホンは接続先がないと自動でペアリングモードになります。
また電源OFF状態のときに左右どちらかのマルチファンクションボタンを5秒長押しすることで手動でペアリングモードにすることができます。
リセット方法
イヤホンをケースに収納して、左右のマルチファンクションボタンを同時に10秒間長押しします。LEDインジケーターが白色で2回点滅したらリセット成功です。
曲再生/停止
左右どちらかのマルチファンクションボタンを1回タップします。
曲送り
右耳側のマルチファンクションボタンを1.5秒長押しします。
曲戻し
左耳側のマルチファンクションボタンを1.5秒長押しします。
音量を上げる
右耳側のマルチファンクションボタンを2回タップします。
音量を下げる
左耳側のマルチファンクションボタンを2回タップします。
通話応答
着信時に左右どちらかのマルチファンクションボタンを1回タップします。
通話終了
通話中に左右どちらかのマルチファンクションボタンを1回タップします。
着信拒否
着信時に左右どちらかのマルチファンクションボタンを1.5秒長押しします。
音声アシスタントの起動
右耳側のマルチファンクションボタンを3回タップします。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L/RightMark Audio Analyzer
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
マガジン専用コンテンツになります。
サウンドシグネチャー解説
マガジン専用コンテンツになります。
THD+N特性
マガジン専用コンテンツになります。
音質解説
SoundPEATSは深い低域にこだわりのあるチューニングを行いますが、TrueFree2も例外ではありません。高域も低域と釣り合いが取れるほど強調される構造になっています。中域は後退的で少し暗いでしょう。
※各評価項目はあくまでリファレンスサウンド(当サイトの機器測定における自由音場フラット)から見ての周波数特性データと私の聴感に基づく評価です。たとえば迫力のある低域を重視する人は「存在感」「太さ」「重み」「臨場感」が高い低域を好むと思いますが、このような音は本来最も重視されるべき「原音忠実度」はおそらくあまり高くありません。
再生機器にとって「原音忠実性」こそが最も重視されるべきというのはオーディオ界隈の共通認識であると思われますので、本ブログの音響機器の評価も「原音忠実性」を最も重視しています。
「原音忠実度」は基本的に高ければ高い方が多くの人にとって良いと思われますが、ほかの評価値は中間値である「B」を離れるほど原音忠実性が薄れます。そのため「S」や「A」はその音要素を好む人には最も心地よい音かも知れませんが、他の人には不快かも知れません。そして不快な音要素が決まっている人は、むしろその音要素が低い評価のものを選ぶとより心地よく音楽を楽しめると思います。
このように、当ブログでは原音忠実(リファレンスサウンド)からの距離を提示することで効率的にあなたの好みに合ったオーディオ機器を発見できるように工夫しています。
評価が高ければ高いだけ良い評価値というのは「原音忠実度」「クリア感」「おすすめ度」で、とくに「原音忠実度」+「クリア感」がオーディオ製品としての単純な優秀性を表します。
「原音忠実再生」についての参考動画:創造の館「いい音とは何か」
※以下のリンク先はpdfです。
低域(原音忠実度:B-/臨場感:B/深さ:B+/重み:B+/太さ:B+/存在感:B+)
低域は深さや重みが強調されるサウンドになっています。
SoundPEATSらしい深みのある低域ですが、傾斜は比較的緩やかなのでノイズが強調されすぎる感じはありません。階層性もよく、やや輪郭が強調されてタイトさがありますが、重厚感のあるサウンドです。バスドラムキックはかなり重量感のあるキックをかましてくれ、低域のリズムは生き生きと聞こえるでしょう。エレキベースのほうはキックに比べると相対的におとなしい感じに聞こえます。低域弦楽も重厚感があります。
中域(原音忠実度:B-/厚み:B+/明るさ:C+/硬さ:B-/存在感:C+)
中域は全体の中では凹んでいます。低域とのつながりは良く、安定感がありますが、質感的にはドライです。
中域は奥行き感が強調されており、少し暗い位置に聞こえやすいです。暗さと一定の静寂感のおかげで中域音はわりと落ち着いて聞こえますが、中高域から高域はかなりシャープな感じがあるので、上方向に少しひきつって聞こえます。ボーカルは媚びた感じは強くありませんが、ツ音が尖りやすく、サ行も少し強調されるので、少しアグレッシブに聞こえます。質感も少しカサカサした感じになります。引き締まりは良いので、人によってはすっきりと聞きやすいと思うかもしれませんが、若干低域に埋没しやすいです。
高域(原音忠実度:C+/艶やかさ:B/鋭さ:B+/脆さ:A-/荒さ:B+/繊細さ:A/存在感:B+)
高域は前傾的です。ツヤや輝度は強調されています。音の印象は少し派手でシャープに聞こえ、マイクロディテールもかなり強調されています。ギラつきや粒立ちは強めですが、超高域の抜けも良いので、印象的なしつこさはそれほど多くないかもしれません。それでも音楽の全体の中で高域は目立ちやすく、落ち着いた静かな音楽を好む人にはうるさく思える可能性が高く、また高域に敏感な人には少し耳にきつい印象を受けるでしょう。
グルーヴ/音場/クリア感(グルーヴの中心:中域上部/音場:B+/クリア感:C+)
※一般にグルーヴの最も大きいところが最も活き活きと聞こえるので、音楽の中心になります。グルーヴの中心範囲の大きさは変動的です。グルーヴの中心は個人の音楽の好みを決定し、音響機器選択のヒントになります。音響機器のグルーヴの中心が個人の好みと離れている場合、むしろその不自然さが強調され、その音響機器を楽しくないと感じる可能性が高いです。音場の評価はBが自然な広さです。クリア感の評価は全高調波歪の測定値を参照して決めています。
このイヤホンのグルーヴの中心は一般に中域上部に存在すると思われます。
音場は奥行きが少し広く、深さと高さもやや広く、幅は概ねナチュラルでしょう。
音質総評(原音忠実度:C+/おすすめ度:B/個人的な好み:B+)
SoundPEATSのエントリークラスにふさわしい楽しいドンシャリサウンドです。ディテール感を強調し、派手で、重厚感もあって低域も存在感がある、面白みがわかりやすいサウンドで、とくにロックやEDMといった音楽の味わいどころを楽しく情熱的に聞かせてくれます。
SoundPEATS Sonicとの比較
さて、同じSoundPEATSのエントリーモデルであるSonicとどっちを買おうか迷うという人はいるでしょう。両者の違いをまとめてみます。
まず、スペック面でいえば、再生時間やコーデック対応、ケースのコンパクトさにおいてSonicが優れており、TrueFree2は防水性能で優れています。通信品質はコーデックの違いや相性が影響するので単純比較はしにくいですが、私のテストした感じでは、Sonicのほうが安定性の高い接続を期待できると思われます。装着感の点ではイヤーウィングのあるTrueFree2の方が多くの人にとって優れている可能性が高く、防水性能が高いことを考えても、よりスポーツ向きなのはTrueFree2でしょう。
音質面ではどうでしょうか?Sonicのほうが後発製品であるということもあり、オーディオスペック的に品質が良いという点はまず挙げられます。
さらに、両者は中域の広さに違いがあります。TrueFree2の低域に比べて、Sonicの低域はより深さを重視しており、太さや厚みは抑制的です。結果として、SonicにはTrueFree2のような重厚感はありません。これにより中域はすっきりとよく聞こえるかもしれませんが、ロックなどでパワフルなドラムサウンドが聞きたい場合はTrueFree2のほうがその要望をかなえてくれ、楽しく思うでしょう。また高域もTrueFree2のほうが開放的でより抜けが良く、余韻がきれいだと感じる可能性は高いです。個人的にはクラブミュージックやEDMではSonicが、ロックではTrueFree2がより適していると思われます。
録音比較
GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- 原曲(+5dB@1khz)
- SoundPEATS TrueFree2
- SoundPEATS Sonic
音質的な特徴
美点
- 楽しいドンシャリサウンド
- 重厚感がある
- 繊細で風通しの良い雰囲気
- 深みがある低域
- レンジ感が良い
- さわやかな音
- 音場が広く感じられる
- 派手で楽しい高域
- ほどよい臨場感
- 高域の抜けが良く開放的
- 情熱的でパッションに満ちた低域
欠点
- 高域が少し派手
- 充実感に欠ける
- 音がスースーする
- ボーカルの息感の強調が少し強く、子音も少しうるさく、場合によってシャウティでハスキーに感じる可能性がある
- 場合によってガシャガシャしてうるさい高域
- わずかに聞き疲れしやすい
- 音が乾燥気味
音楽鑑賞
angela×fripSide「僕は僕であって」
重厚感のある低域と、シャープでギラつくメタリックな高域、暗くてダークな中域の雰囲気がこの曲をすごくかっこよく聞かせてくれます。エレキギターのエッジはかなりアグレッシブだし、シンバルもジャキジャキしており、バスドラムのドスンとくる重みも腹に応えます。ボーカルはかなり引き締まっていて、ドライで少し荒んでいる感じがあるのが独特のかっこいい色気を感じさせます。重厚かつメタリックな、黒光りするサウンドでこの曲を楽しみたいならおすすめです。
afterglow「ツナグ、ソラモヨウ」
この曲を重厚でかっこよく聞かせてくれます。パワフルなバスドラムと熱気のあるエレキギターがこの曲のたぎる情熱を引き出してくれます。どこかもやもやした空間は演奏の生々しい体温が聞こえると錯覚するほどで、派手に目立ち、抜けもよいシンバルは汗のしぶきのように聞こえます。こういう情熱的なロック曲との相性はかなり良く、迫真に聞こえる感じがあります。
フランシュシュ「特攻DANCE ~DAWN OF THE BAD~」
パワフルで重厚なドラム表現が、この曲の魅力を引き出します。重みがあり、床の響きもしっかり聞こえるドラムはエンジン音のようですし、ジャキジャキとエッジが立つエレキギターとシンバルがシャープで荒んだ感じを出してくれ、ワイルドな雰囲気を盛り上げます。低価格でこの曲を楽しむなら、かなりおすすめ。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。ソースはFiiO M15を用いています。使用イヤーピースは標準イヤーピースのSサイズで、コーデックはSBCです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
録音機材
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- レコーディングソフト:Audacity
GENS D'ARMES(ロック系)
GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
白き魔女(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
The Silver Will -ギンノイシ- / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
Sophisticated Fight(JAZZ系)
Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
SoundPEATS TrueFree2はSoundPEATSらしいパワフルで情熱的な低域を持つロックファン向きのドンシャリ完全ワイヤレスイヤホンです。順当に進化を遂げてきた人気モデルだけあって、全体的によくまとまっており、完成度が高いという感じでは必ずしもありませんが、使い勝手は上々で、入門機として真っ先にお勧めできます。最新のエントリーモデルであるSonicに比べるとスペック的には見劣りするところが多いですが、ロックが好きなら、音質的にはこちらのほうが満足できると思います。
【関連記事】