最高音質への挑戦。イヤホン専門ブランドが贈る旗艦モデルSOUNDPEATS H1
今回取り上げる機種は最新の完全ワイヤレスイヤホン、SoundPEATS H1です。
SoundPEATSはまだまだ日本で知名度が高いとは言えないかも知れませんが、ワイヤレスイヤホン市場では中華ブランドの中で最も成功したブランドの一つと言え、その高品質製品で多くのファンを獲得しています。低価格で変な中華ブランドを買うよりはSoundPEATS製品を買った方がサポートも品質も満足できるはずです。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 連続/最大再生時間:10h/30h
- 防水性能:IPX5
- 対応コーデック:aptX adaptive/(aptX)/AAC/SBC
- 技適番号:018-200329
SoundPEATS H1の特徴
最新チップQCC3040を搭載し、高音質コーデックaptX adaptiveに対応、心を打つド迫力サウンド
SoundPEATS H1はバランスド・アーマチュアレシーバーのトップメーカーKnowles社の高性能バランスド・アーマチュアドライバーと8.6mmのダイナミックドライバーを搭載した、デュアルハイブリッド構成。これに独自のクロスオーバーシステムを採用することで、高・中・低の三音域をバランスよく分離させ、音質を更に向上させました。
さらに、通信SoCとしてQualcomm社の最新完全ワイヤレスイヤホン用オーディオチップであるQCC3040を採用しています。QCC3040は定番の高品質完全ワイヤレスイヤホン用SoCであったQCC3020の後継製品で、最新のコーデックaptX adaptiveに対応しています。
aptXにも対応しています
SoundPEATS H1は最新チップQCC3040により、aptX Adaptiveに対応しています。公式では、aptX対応は言明されていないようですが、テストしたところ、aptXに対応しているようです。具体的にはFiiO M15とCayin N6IIではaptX接続されるのを確認しています。SBCコーデックでもかなりクリアな音質を実現しています。
遅延の少ないゲームモードを搭載
SoundPEATS H1は低遅延環境を実現するゲームモードを搭載しています。これを利用することでゲームプレイ時のサウンドの遅延を最小限に抑えるとされています。
パッケージ
パッケージは価格帯では少し豪華です。パッケージデザインはSoundPEATS共通デザインで、シンプルですが安物感はありません。環境に配慮された紙を中心素材としたエコパッケージだという点は個人的に好感が持てます。
付属品にはイヤーピースの替え、充電用USBケーブル(Type-C)、説明書などが含まれます。
ビルドクオリティは価格を考えると比較的上質です。蓋の色はやや薄いグレーです。デザインはSoundPEATS Truengine 3SEに少し似ています。
装着サンプル
それなりに耳への収まりは良いですが、耳から出る部分は少し多いように思えます。装着感は比較的良好で、耳が小さい人でも収まりは良いと思われます。
LEDは接続直後や音楽停止後しばらくすると点灯しますが、音楽再生中は消灯します。
接続品質
aptXでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯では優秀な接続品質です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では安定しています。距離耐性は優秀で、5mくらい離れてもシームレスでそのままつながっています。遮蔽物があっても接続は維持され、遮蔽した直後の一瞬だけ途切れましたが、切断はありませんでした。
ホワイトノイズは少しあるかもしれませんが、おそらくほとんどの人が気になりません。ただし敏感な人には気になりそうな気がします。
インターフェース/操作方法
操作インターフェースはフェースプレート部分にあり、タッチ式です。
電源ON
ケースからイヤホンを取り出すと、自動で電源ONになります。
またマルチファンクションボタンを1.5秒長押しすることで手動で電源ONにできます。
電源OFF
イヤホンをケースに収納すると、自動で電源OFFになります。
またマルチファンクションボタンを10秒長押しすることで手動で電源OFFにできます。
ペアリング
イヤホンは接続先がないと自動でペアリングモードになります。
リセット方法
イヤホンをケースに収納して、左右のマルチファンクションボタンを同時に10秒間長押しします。LEDインジケーターが白色で2回点滅したらリセット成功です。
曲再生/停止
左右どちらかのマルチファンクションボタンを2回タップします。
曲送り
右耳側のマルチファンクションボタンを1.5秒長押しします。
曲戻し
左耳側のマルチファンクションボタンを1.5秒長押しします。
音量を上げる
右耳側のマルチファンクションボタンを1回タップします。
音量を下げる
左耳側のマルチファンクションボタンを1回タップします。
通話応答
着信時に左右どちらかのマルチファンクションボタンを2回タップします。
通話終了
通話中に左右どちらかのマルチファンクションボタンを2回タップします。
着信拒否
着信時に左右どちらかのマルチファンクションボタンを1.5秒長押しします。
音声アシスタントの起動
右耳側のマルチファンクションボタンを3回タップします。
ゲームモードのON/OFF
左耳側のマルチファンクションボタンを3回タップします。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L/RightMark Audio Analyzer
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
マガジン専用コンテンツになります。
サウンドシグネチャー解説
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THD+N特性
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音質解説
低域・中域・高域にバランスよくフォーカスされ、それぞれが少し分離的に聞こえるチューニングになっています。低域は深く、中域は少し印象的に聞こえ、高域はややモニター的にディテールが細かく聞こえるハイブリッドIEMライクなサウンドになっています。
※各評価項目はあくまでリファレンスサウンド(当サイトの機器測定における自由音場フラット)から見ての周波数特性データと私の聴感に基づく評価です。たとえば迫力のある低域を重視する人は「存在感」「太さ」「重み」「臨場感」が高い低域を好むと思いますが、このような音は本来最も重視されるべき「原音忠実度」はおそらくあまり高くありません。
再生機器にとって「原音忠実性」こそが最も重視されるべきというのはオーディオ界隈の共通認識であると思われますので、本ブログの音響機器の評価も「原音忠実性」を最も重視しています。
「原音忠実度」は基本的に高ければ高い方が多くの人にとって良いと思われますが、ほかの評価値は中間値である「B」を離れるほど原音忠実性が薄れます。そのため「S」や「A」はその音要素を好む人には最も心地よい音かも知れませんが、他の人には不快かも知れません。そして不快な音要素が決まっている人は、むしろその音要素が低い評価のものを選ぶとより心地よく音楽を楽しめると思います。
このように、当ブログでは原音忠実(リファレンスサウンド)からの距離を提示することで効率的にあなたの好みに合ったオーディオ機器を発見できるように工夫しています。
評価が高ければ高いだけ良い評価値というのは「原音忠実度」「クリア感」「おすすめ度」で、とくに「原音忠実度」+「クリア感」がオーディオ製品としての単純な優秀性を表します。
「原音忠実再生」についての参考動画:創造の館「いい音とは何か」
※以下のリンク先はpdfです。
低域(原音忠実度:B+/臨場感:B+/深さ:A-/重み:A-/太さ:B+/存在感:B-)
低域は中域から離れて深さが強調される形になっており、SoundPEATS Truengine 3SEの低域に雰囲気が良く似ています。ただしTruengine 3SEに比べて全体の中での存在感は少し控えめで中域とのバランスが図られています。
低域は深みがわかりやすい階層的なサウンドです。エレキベースの熱気が少し強めに感じられ、ノイズ感が感じられるでしょうが、中域が前進的なので、その熱気がボーカルにかかるような感じはありません。多くの人にとって、とくに小音量で低域はボーカルより引っ込んで聞こえやすいと思うので、低域の存在感自体は強くありません。そのため音楽全体の重厚感は3SEほど強調されません。
中域(原音忠実度:B/厚み:B-/明るさ:B/硬さ:B+/存在感:B+)
中域は前進的に聞こえるようになっており、ボーカルは少し明るく、やや媚びた雰囲気で聞こえます。またスネアなどの打楽器も強調され、音は中域で少し硬く、音楽は構築的に聞こえます。
中域が前進的に聞こえる構造は、最近の中華製IEM、たとえばFiiO FH3に似たような印象を与えるかもしれません。実際のところ全体の雰囲気は少し差異があるものの、FH3的な中華系ニュートラルサウンドを意識しているように聞こえます。ボーカルは音量を上げれば素直に前に出てきて、少し艶やかに歌ってくれますが、人によっては音源により、わずかにシャウティに思うかもしれません。静寂感はあまりないので、ボーカルの周辺で少し音数が多くなる印象を受けますが、ちょうどこのあたりにピークが集中していてディテールも細かく感じられるところがあるので、ボーカルの周辺はとてもエネルギッシュで印象的に聞こえます。FiiO FH3のサウンドが好きな人にはH1も好ましく思える可能性が高いです。
高域(原音忠実度:C+/艶やかさ:B/鋭さ:B/脆さ:B+/荒さ:C+/繊細さ:B+/存在感:B+)
高域はややギラつきがあり、輝度は少し高く、マイクロディテールが少し強調されてシャリ感は少し目立ちます。
中域と釣り合いが取れているので、脆い感じは音量を上げても強くなりませんが、音量次第では少しスースーしたりボーカルのサ行が少し尖って聞こえる可能性はあります。モニター的で分析的な高域構造によって、音は少し繊細に、ボーカルニュアンスを含め楽器のディテールもやや強調されて聞こえます。それが自然な質感を損なう可能性はあり、とくに音量が大きいときには3SEのほうがナチュラルな雰囲気で聞こえると思いますが、3SEの音にいまいち明るさや光沢感が足りず、派手さの不足を感じていた人にとっては、H1こそ自分にふさわしいと思うかもしれません。そしてその高域はSonicほど荒々しくはなりません。
グルーヴ/音場/クリア感(グルーヴの中心:中域上部~中高域/音場:A-/クリア感:A)
※一般にグルーヴの最も大きいところが最も活き活きと聞こえるので、音楽の中心になります。グルーヴの中心範囲の大きさは変動的です。グルーヴの中心は個人の音楽の好みを決定し、音響機器選択のヒントになります。音響機器のグルーヴの中心が個人の好みと離れている場合、むしろその不自然さが強調され、その音響機器を楽しくないと感じる可能性が高いです。音場の評価はBが自然な広さです。クリア感の評価は全高調波歪の測定値を参照して決めています。
このイヤホンのグルーヴの中心は一般に中域から中高域に存在すると思われます。
音場は音場は奥行きが少し広く、深さで優れ、高さと幅は概ねナチュラルでしょう。
音質総評(原音忠実度:B+/おすすめ度:A-/個人的な好み:A)
FiiO FH3に代表される最近の中華ハイブリッドIEMの最新サウンドを完全ワイヤレスで実現したようなサウンドになっています。1万円くらいの中華イヤホンを愛用してきた人にとって、オーディオスペック的にも十分に匹敵する音質を完全ワイヤレスで実現してくれるので、こうした中華イヤホンを愛用している人のサブイヤホンとしても優秀ですし、既存の完全ワイヤレスイヤホンのファンからも頭一つ洗練されたサウンドは歓迎されるでしょう。
全体的なバランスもよく、個人的にも悪くありません。少し繊細に聞こえやすいところがありますが、適正音量ではうるさく感じないでしょう。少なくともSonicよりはピーキーではありません。
音質的な特徴
美点
- FiiO FH3のようなバランス感覚の良いハイブリッドIEMサウンド
- 強調されるディテール感
- 中域が明るく前進的
- 構築的で明瞭性の高いサウンド
- 深みのある低域
- 広く聞こえる中域
- ほどよい臨場感
- 歪みが少なくクリア
- 密度感があるが、分離感が強調されているので混雑感を感じづらい中域上部~中高域
欠点
- 高域が少し派手になりやすい
- 自然な感じではない中域上部
- 音がスースーする
- 音量を上げると、ボーカルのサ行が強くなりやすく、シャウティに聞こえやすい
- 静寂感に欠ける
- わずかに聞き疲れしやすい
- 重厚感に少し欠ける
- 濃厚感に欠ける
音楽鑑賞
YUI「again」
こういうロックサウンドをモニター的に少し中域をすっきりして聞きたい場合、H1はわりと魅力的に思えるでしょう。深さがあって、ほどよいライブ感のある低域、前進的で明るく、周囲が清潔でフォーカス感が良いボーカル、繊細なエッジを聴かせるエレキギターと、クラッシュはきれいだけど派手すぎないシンバル。音楽に厚みがあるのを好む人には充実感が足りず、JAZZやクラシック向きではありませんが、こういう現代的なロックポップスを楽しもうと思う場合、見通し感に優れていて気持ちよく聞けるように思えるでしょう。
橘麻美「cÅGE」
個人的に大好きな曲です。このイヤホンで聴くと、低域の深みがある少し広い音場に、全体的に少しスリムなサウンドが、たとえばバイオリンは少しヒステリックに強調されて聞こえるんですが、音楽の全域が見通し感に優れて楽しめる感覚があります。中域の楽器がしっかり硬く明瞭に構築的に聞こえるのも、こういう少し近未来的でデジタルな音楽向きで、ディテール感は少し強めにくっきりかつ繊細に楽しめます。分解能が高いサウンドを聴いている感覚が得られるでしょう。
sweet ARMS「デート・ア・ライブ」
こういう現代的なポップスとは相性が良いです。中高域の情報量が多くて賑やかな雰囲気があり、音数的にも緻密な印象を受け、しかも、そのわりと情報量が多い空間でもボーカルがかなり明瞭に聞こえます。サウンドは少しスリム感が強い感じがありますが、全体的な見通しが良く、この曲の情報量が多い中域付近をうまく処理してくれる感じがあります。艶も十分にあるので艶やかさもしっかり楽しめます。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。ソースはFiiO M15を用いています。使用イヤーピースは標準イヤーピースのSサイズで、コーデックはaptXです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
録音機材
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- レコーディングソフト:Audacity
GENS D'ARMES(ロック系)
GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
白き魔女(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
The Silver Will -ギンノイシ- / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
Sophisticated Fight(JAZZ系)
Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
SoundPEATS H1は間違いなく、SoundPEATS新章のフラッグシップイヤホンです。それはSonicと同じようなデザイン、スペックを持ちながら、より洗練されたFiiO FH3のような1万円台のハイブリッドIEMに近いサウンドを実現します。これは1万円クラスのIEMを愛用しているオーディオファンにとって魅力的なサブイヤホンになる可能性を示唆するだけでなく、これまで低価格完全ワイヤレスイヤホンにいまいちディテール感の不足を感じていたオーディオファンにも歓迎されるはずです。
最高音質への挑戦。イヤホン専門ブランドが贈る旗艦モデルSOUNDPEATS H1
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