Westone ウェストン B50 ユニバーサルイヤホン 低音重視モデル 5バランスドアーマチュアドライバ IEM WST-B50
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感と遮音性の高さはいつものWestone」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「mmcxリケーブル可能。ワイヤレスケーブルが付属します」
- 【3】音質「分離重視でありながら、暖かく聴き心地の良いWestoneサウンドの王道を行く」
- 【4】官能性「艶やかで温かみのある濃厚サウンドが魅力」
- 【5】総評「かなり輪郭をしっかり出してモニター的な分離感を出してくれますが、ノスタルジックな温度感も出してくれるので、情感豊かに楽しめます」
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【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感と遮音性の高さはいつものWestone」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
スペック・評価 | |
再生周波数帯域 | 10~20000Hz |
インピーダンス | 25Ω |
感度 | 118db |
ドライバー |
バランスドアーマチュア型(BA×5 3Way) |
音質傾向 |
弱ドンシャリ、分離が良い、輪郭が丁寧、パスパス、カスカス、ドスドス、ベースラインが明瞭、温和、ウォーム、甘味がある、聞き疲れしにくい、見通しが良い、ドライ |
Westoneのハウジングは欧米人の間ではかなり評価が高く、コンパクトで目立たないのに装着感と機密性が高いことで知られています。遮音性は高めです。
テスト環境
今回のテストはAstell&Kern KANN CUBE、a&norma SR15、Hiby R6 Pro、Cayin N6II/T01、ONKYO GRANBEATで行っています。ゲイン設定は低設定です。
【2】外観・インターフェース・付属品「mmcxリケーブル可能。ワイヤレスケーブルが付属します」
付属品はイヤーピースの替え、aptX対応Bluetoothケーブル、キャリイングケース。リケーブル時のコネクタはmmcxになります。
純正Bluetoothケーブルについては今回のレビューに含めるか迷ったんですが、いろいろ考えた結果ややこしくなりそうな気がしたので、このレビューではあくまで有線に的を絞り、レビューします。純正Bluetoothケーブルについては比較用に注文したJVC SU-ARX01BTが届いたら、それと比較したレビューを行う予定です。
【3】音質「分離重視でありながら、暖かく聴き心地の良いWestoneサウンドの王道を行く」
さて、音質のレビューに入る前に、Westoneの最近の商品展開について少しだけお話ししておくことは有益であると思われます。Westoneはプロユースを想定したモニターイヤホンのUMシリーズと、コンシューマーユースを想定したリスニングに寄せたモデルのWシリーズの二本立てで従来商品展開してきました。
このうちUMシリーズについては2017年に大幅な調整が行われており、今年2019年になってからはWシリーズもラインナップの見直しと調整が行われました。このあたりの事情については当ブログでも簡単に紹介したことがありますが、下の記事が参考になると思います。
で、このWシリーズの再編に伴い、従来W30/W50として展開されていた2機種が、新たに低域強化モデルのBシリーズとして差別化され、B30/B50として展開されることになりました。前掲のインタビュー記事によれば、これら2モデルはとくにベース表現をより強調したモデルとして設計されたことがわかります。
以前私がW40の新旧モデルについての簡単な聞き比べをおこなった際も感じたことで、上の記事でも触れられているのですが、新Wシリーズは旧シリーズより高域方向で少し明るくなっており、新しいW40は確かに以前のW30に近づいた印象を受けました。以前の高域がそれほど明るくないW40が好きだった私にはその点、新W40には少し物足りないところがあったわけです。
そういうわけで前置きが長くなりましたが、このB50はむしろ2019年リファイン前のW40に近いと海外のレビューで言われており、旧W40好きの私にはなかなかそそる機種だったというわけです。では早速音質を紹介したいと思います。
さて、ずばりど真ん中のところから言ってしまうと、旧W40の懐の深い、ゆったりした感じが好きなら、まさにB50は好ましいと感じられるでしょう。実際、手持ちの旧W40と聞き比べていましたが、第一印象ではほとんど違いが分からないくらいです。W40は甘味の強い官能的な女声ボーカル表現も大きな魅力でしたが、あの感じもほとんどそのままです。W40に比べると低域がもう少し主張するので、ほっこり感が強くなっているというとわかりやすいでしょうか?
また高域方向はW40に比べると、少し光沢感の強調が強くなっており、粒立ちとアタック感を強調しやすくなっています。総合的に考えると、フラット傾向のW40に対してよりはドンシャリっぽい音響になっているようです。そのため、W40よりはメリハリが利いてディテール感は若干高まっている印象を受けることが多いと思われますが、魅惑的な女性ボーカルへのフォーカス感はわずかに弱くなりました。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
やや鮮やか。ウォームでややほっこりして温和な音出しなので、派手さは強く感じないが、中高域では充分色が鮮やか。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
普通。ギターエッジがのびやかで、シンバルや高域シンセ音にもカリッパリッとした感触はあるが、低域まで含めた全体的な印象は温和である。 |
明るさ (明るい/暗い) |
普通。やや低域が重いバランスになっているので、高域の明るさはそれほど強調されない。 |
派手さ (派手/地味) |
やや派手。中高域のディテールはやや細かめに強調され、緻密傾向ではあり、出音も少しアタックが強く、やや派手め。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
やや柔らかい。温かみのある低域や中域の膨らむ感じが中高域の派手な感じを全体的な丸みの中に包み込んでいる印象はあり、全体の印象は柔らかい。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
やや丸みがある。シャープネスはあまり強調されず、全体的には丸みのある音響。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
やや騒々しい。輪郭を強調するところはあり、人によっては音は少しガチャガチャ気味に聞こえるかも知れない。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
やや力強い。ドラムやギターに結構強いアタック感があるが、音のはじのほうは柔らかく丸められる感じがあり、音圧はきつくない。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
やや豊か。低域に厚みがあり、中域でも豊かなボディが感じられるので音響に安定感がある。 |
太さ (太い/細い) |
普通。高域の方で少し細くなるが、中域でやや豊満で低域は少し締まってくるが、細い感じではない。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
やや滑らか。輪郭を強調するので、中高域で少しカクカクする感じはあるが、質感は全体的に滑らかである。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
やや細かい。中域で少し暖かくぼんやり膨らむが、中高域の艶やかさは明確に出て、輪郭感も強めなので粒立ちは緻密に聞こえる。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
やや濁っている。清潔感よりは温もり感重視の音である。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
やや乾いている。潤い感は抑えめ。 |
重さ (重い/軽い) |
やや重い。重心は少し下がって聞こえやすい。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
やや濁っている | 濁っている |
明るいか (明るい/暗い) |
普通 | やや暗い |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
普通 | やや天井感がある |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
やや乾いている | やや乾いている |
太いか (太い/細い) |
普通 | 普通 |
濃いか (濃い/薄い) |
やや濃い | やや濃い |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
普通 | 普通 |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
ややぎっしり |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
天井感がある |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
やや深掘り感がある |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
やや広い |
主に中域の奥行き感 (奥まる/前屈み) |
普通 |
美点
- 暖かみに満ちたマイルドな聴き心地
- 中高域でディテールを丁寧に出す
- 甘味のあるボーカル表現
- アタック感はあるが、優しく穏やかに抜ける出音
- 濃厚感がある
欠点
- Wシリーズの平均から考えると、ボーカルが若干後退している
- 場合によってもっさりしやすい
- 清潔感に欠ける
[高音]:中高域にはWシリーズらしい艶やかな色づきがあるので、ギターやシンバル、ピアノのアタック感もノリが良く聞こえる。しかし高いところのディテールは比較的抑制されており、全体の傾向としては旧W40に近いマイルド路線の出音。そのため、たとえばハイハットは高さを強調せず、温もり感のあるチリチリしたあたりが浮き上がって聞こえる感じになる。ピアノもキンキン感は抑えて、ポロポロとした温もり感重視。弦楽はかなり華やかになる反面、上に向かってきつく高さを強調して伸びるようなヒステリックな感じにはならない(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域はたっぷりめのボディを強調して聴かせる感じがあり、やや派手に傾いた中高域で疲れた耳を落ち着かせる腰掛けみたいなクッション性を持っている。W40に比べるとややボーカルが後退しているが、それでも充分にふっくらした甘味を強調し、とくに女声ボーカルは安心感のあるほわっとした吐息で楽しませてくれる。ピアノやギターサウンドは豊かに広がる。
[低音]:100hz~40hzまでやや輪郭のはっきりしたブーとボーの間くらいの音の振動。最初はブーに近く、徐々にボーに近づいていく。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。中低域で少し膨らみ、暖かみを出す傾向がある。曲にもよるが、ベース音はかなり広くわかりやすく深みを出しやすい。一見穏やかな印象を与えつつ、実際には輪郭は明瞭でディテールがしっかりしているので、アタックは強く出て、スピードコントロールも印象以上に制動が利いている(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:中域に結構な充実感があり、人によっては第一印象はもっさりしているように感じるかも知れない。しかし、はっきりと主張しないながらも実はディテールラインの出し方は丁寧で、基本的に聴き心地優先の穏やかな空間の中で、個々の楽器の輪郭が結構しっかりわかるようになっている。高低バランス的にはWestone的フラットモデルだというW40を基準に考えると、少しドンシャリになる(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムスは全体的に輪郭をしっかり出して粘りや弾けを感じさせながらも、音圧はほどよくセーブされて聞こえる。全体は下に重く感じるが、上辺でも柔らかめながらバシバシ張りを出してアタックを充分に感じさせてくれる。バッツンバッツン。ハイハットはややチンチンしたじんわり系の音に聞こえやすく、リズムは全体的に温かみがある(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男声ボーカルは少し温かめに充分に濃く聞こえる。コクもある。女声ボーカルはやや甘味強めで高域では少し暗く、突き抜け感はややセーブされている。濃厚系のボイスに聞こえやすく、甘ったるく媚びる感じが強めに聞こえる。子音は明確に聞こえてボケる感じはないが、強調される感じもあまりない。男女問わず、甘い吐息が好きな人におすすめ。
【4】官能性「艶やかで温かみのある濃厚サウンドが魅力」
松下萌子 「雨あがり」
【Cayin N6II/T01で鑑賞】この曲だと、ドラムやベースが少し暖かみを強調しつつ、ギターやピアノもじんわり気味に、しかしはっきり鮮やかに浮き上がります。ボーカルは上に伸びるよりは、中域で甘い吐息を吐くのが目立つ、若干アンニュイかもしれないくらいの声色に聞こえるでしょう。サビで突き抜ける感じは弱くなるので、若干落ち着いた大人びた感じになりますが、充実感は高いと感じられます。
ずっと真夜中でいいのに。「蹴っ飛ばした毛布」
【KANN CUBEで鑑賞】空間に濃厚感があって、静寂というよりは少し空気感を感じます。圧迫感を強調したり、張り詰めた感じはあまりないにも関わらず、ピアノやギターはかなり輪郭良くツヤも強めにはっきり浮かび上がります。そのため全体像は穏やかな印象を受けるにも関わらず、出音はむしろ派手です。ピアノやドラムに比べるとボーカルはやや埋没するバランスになりますが、それがまた若干切羽詰まった感じを出していて、意外と味わい深いです。そのボーカルは中域の吐息を中心に聴かせるバランスになっているので、高域で抜けて開放される感じが薄く、むしろ切迫して聞こえます。それがたたみかけるピアノと一緒になってまっすぐ届いてくる印象があるので、鬼気迫る雰囲気がよく出て息を呑んでしまうところがあります。
Galileo Galilei「青い栞」
【Hiby R6 Proで鑑賞】この曲のちょっとノスタルジックな温度感を味わうにはちょうどいい濃厚感です。シンバルやギターは温もりを出しつつ、かなりしっかりアタックも良く浮き上がるうえ、ベースのディテールもよく、じんわり感も丁寧に出ます。何よりちょっと吐息感の強い温かみのあるボーカル表現がこの曲の雰囲気と良くマッチしています。B50は曲によっては、ややもっさりしやすいところがありますが、この曲は元々透明感が強い感じでもあるので、B50の温度感の味付けはむしろ薫るようなセピアの色の色づきに感じられてプラスのフレーバーに感じられるくらいの、ほどよいバランスで聞こえます。
Gypsy Kings「Inspiration」
【SR15で鑑賞】中域で音を均してはっきり風味を強調する感じのあるSR15と組み合わせてみると、たとえばこの曲なんか非常にギターを鮮やかに、弦のしなりの震える感じの空気感まできれいに聴かせてくれます。かなりガリッとした感触で強めに弦の輪郭を強調しつつ、しかし全体の雰囲気は故郷を思わせる独特の懐かしい温もり感があって、かなりディテールを強調して聴かせているにも関わらず、聞き疲れる感じはなく、むしろ心が馴染んでいくような親しみが湧きます。
【5】総評「かなり輪郭をしっかり出してモニター的な分離感を出してくれますが、ノスタルジックな温度感も出してくれるので、情感豊かに楽しめます」
旧W40好きな私にはたまらないイヤホン。W40に比べるともう少し全体の暖かみ重視になっていますが、情感を豊かに感じさせてくれる感じはよく似ていて、とても好ましい雰囲気です。W40の系統の音が好きだったけれども、わずかに物足りなさを感じてた人には、B50のほうがもう少し目鼻立ちがくっきりしたところがある点は魅力的に思われるかも知れません。また低域ベースの存在感をしっかり味わいたい人には有力な選択肢になるでしょう。
- 低域ベースが良く聞こえ、温かみがあり、情感にも優れる
- 甘味のある官能的なボーカルとギター表現
- 曲によってもっさりして感じられやすいところがある
Westone ウェストン B50 ユニバーサルイヤホン 低音重視モデル 5バランスドアーマチュアドライバ IEM WST-B50
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。