オーディオテクニカ audio-technica ウッドハウジング オーバーイヤーヘッドホン ATH-WP900 ハイレゾ バランス接続対応 密閉型
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は良好」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「割愛」
- 【3】音質「低域は深掘りされるが、重みは抑えめで量感も強くなく、音が中域以上に浮き上がっていくような浮揚感のあるサウンド表現を実現しているバランスの良いモニター」
- 【4】官能性「明るく爽やかすっきりと聴かせる」
- 【5】総評「明るく楽しめるブライトな音が好きなら有力候補」
- 【関連記事】
【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は良好」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
スペック・評価 | |
再生周波数帯域 | 5hz~50000hz |
インピーダンス | 38Ω |
感度 | 100dB |
ドライバー |
ダイナミック型 |
音質傾向 |
明るい、つややか、さわやか、爽快、音場が広い、開放的、低域が明るい、軽快、透明感がある、清潔感がある、クリア、ボーカルが薄味気味、シンバルがきれい |
軽量で装着感は非常に良いです。充分な密着性を感じますが、側圧はほぼほぼ感じないほどです。遮音性はそこそこです。
テスト環境
今回のテストはCayin N6II/A01とAstell&Kern KANN CUBE、ONKYO GRANBEATで行っています。またゲイン設定は高設定です。
【2】外観・インターフェース・付属品「割愛」
ONZOのサブスク版なので付属品は割愛します。ONZOのサービスについて興味がある方は以下を確認下さい。
【3】音質「低域は深掘りされるが、重みは抑えめで量感も強くなく、音が中域以上に浮き上がっていくような浮揚感のあるサウンド表現を実現しているバランスの良いモニター」
音質的にはやや上向きに音が出るような、アッパーバランスの浮揚感のあるサウンド表現が特徴的です。低域は深さを感じますが、明るめで音圧的には優しく、重みを強く主張する重量感はセーブされています。そのため、中域のボーカル付近はやや低域からレンジを取って浮き上がるように聞こえてきます。中域以上の楽器音は明確に上向きのエネルギーを持っており、高い方向に向かって伸びていくような開放的な音場を感じます。
高域はとくに中高域に向かってディテールの集中が見られ、音楽の最も緻密な構成部分を聴かせようという意図が見られます。胴鳴りなどは適度に感じさせて音に実体感を持たせつつも、基本的には明るく音を聴かせるバランスになっており、分析的な雰囲気を持っています。高域は輝きや光沢は少し強く派手な印象を受け、とくにシンバルはスプラッシュ感が多めに湧き上がる勢いがあり、ギターは上向きにディストーションし、ピアノはやや上辺がキラキラして、弦楽も明るく伸び上がるような高域方向で立体感を強調する感じがあります。
中域はやや後退し清潔にされており、中高域のディテール感を損なわない配慮がされています。そのため一般的には中高域に向かって音が伸びてくる前傾の音響空間が実現されており、基本的に多くの楽曲でサビに向かうほど音楽が盛り上がって、音が立ち上がってくる印象を受けるでしょう。音の実体感の面では高域と低域の分離を強調して、音のつながりよりは空間性を強調するワイドレンジなモニター的な音作りになっています。そのため、低域の量感はそれほどでもありませんが、清潔な中域の空間の下にしっかり浮き上がって聞こえます。中域はやや音の広がりや沈み込みが甘い感じがあり、また男声ボーカルはサビで伸びてくる女声ボーカルに比べて後退しやすく、色味もやや薄い感じがあります。ボーカルにコクや深みを求める人にはやや物足りなく思われる可能性はあります。
低域は中低域で少し膨らむ感じがあり、重低音も見通しが良いので深さも感じられますが、やや明るめで軽い出音であり、音楽全体の重心は上の方にある印象を受けます。そのため一般的には、リスナーは低域を下に見下ろしながら聴く感覚を受けると思われます。ベース音はやや印象が明るく、ドラムサウンドも浅いあたりで少し鼓面を強調して音の浮き上がりを重視して聞こえてきます。厚みはそれほどなく、比較的反発力のある感じになるので、スピードコントロールは良好ですが、火力はやや物足りなく思えるかも知れません。しかし、マスキングで邪魔することのない、清潔感のある感じになので、中域以上に集中したいリスナーには魅力的でしょう。一方で、より浅いところの低域弦楽はかなり重みと膨らみが出ますが透明度は高めの出音でややデジタルです。しかし詳細なディテール感があるので人によって好ましいと思うかも知れません。
総合すると、全体的に音の浮き上がりが良い印象の、モニター的なサウンドになっており、オーテクらしいデジタルな雰囲気がある明るいサウンドです。音場は明るく見通しが良いですが、低域は力不足を感じやすいところがあります。また透明度の高い空間なので、濃厚感のある音を求める人にもやや不向きなところがあるでしょう。一方で、たとえばJAZZをピアノにフォーカスして透明感のある軽やかな感じで聴きたい人や、音場の見通し感を重視してすっきりめに音を楽しみたい人には、かなりおすすめできます。音の印象が全体的に軽妙に聞こえてくるので、圧迫感がなく、聞き疲れする感じがありません。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
やや色味が薄い。中高域は充分に鮮やかなものの、すっきりめに音が抜けていく感じがあり、音場は風通しが良いので、やや薄味気味に聞こえやすい。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
普通。音は少し細いが、エッジもシルキーに滑らかに抜けていくので、細い割に鋭い感じは薄い。 |
明るさ (明るい/暗い) |
明るい。音場はかなり清潔で中高域の明るさが中域や低域まで明るく見せているような感じがある。 |
派手さ (派手/地味) |
やや派手。中高域は結構派手な感じがあるが、さっぱりして抜ける感じなのでくどさはない。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
やや柔らかい。中高域でやや硬さを感じるが、低域は膨らみはよいし、高域もマイルドでソフトタッチである。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
やや丸みがある。ディテールは細かいが、音の聞こえ方は結構丸く、耳当たりが良く、むしろ尖りを良く抑えている。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
やや穏やか。すっきりめで聴きやすい。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
やや嫋やか。音にキレはそれなりにあるが、基本的にソフトタッチで押し出しの強い印象は受けない。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
普通。情報量は多いが、音の実体感に欠ける。 |
太さ (太い/細い) |
普通。低域はやや膨らみ、中高域以上はやや細くディテールを強調する。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
やや滑らか。全体的に音が尖ってくる感じがなく、さらっとしている。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
細かい。中高域での音の粒立ち感は明瞭。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
澄んでいる。中域はとくに清潔。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
やや乾いている。潤い感はやや薄く、ややカサカサしている。 |
重さ (重い/軽い) |
やや軽い。基本的に低域は支配力少なめ。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
澄んでいる | 澄んでいる |
明るいか (明るい/暗い) |
明るい | 明るい |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
伸びやか |
伸びやか |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
やや乾いている | やや乾いている |
太いか (太い/細い) |
普通 | 普通 |
濃いか (濃い/薄い) |
薄い | やや薄い |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
やや目立つ | やや目立つ |
空間因子評価
空間因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
ややスカスカ |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
抜けが良い |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
やや浮き上がりが良い |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
広い |
主に中域の奥行き感 (奥まる/前屈み) |
やや奥まる |
美点
- 明るく見通しの良い音場
- モニター的で丁寧に聴かせる分析的なサウンド
- 中高域のディテールが良い
- 重みは抑えめだが、見通しは良く、膨らみもある躍動的な低域
- すっきりした圧迫感のない、聞き疲れしないサウンド
- 抜けが良く開放的な高域
- シンバルが活き活きしている
欠点
- 低域が基本的に薄味
- 音場が軽く、重厚感に欠ける
- ボーカルが清潔系で薄味
[高音]:高域は充分な高さがあり、風通しも良く、中高域の煌めき感もやや強めにしっかりディテールを出す。そのためたとえばシンバルのクラッシュ音には詳細なディテール感が感じられ、シンセの音はキラキラとした光沢を持ちつつも輪郭も良く透明感のある形に聞こえてくる。弦楽も上の方でやや伸びを強くする感じがあり、金管も明るいプ音に向かって突き抜けていく粒立ち感がある。やや高域方向で立体感を強調するような、星空に似た吸い込まれる広い高域を感じる(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域は後退的でバランス的には清潔感が重視されている。そのため、中域で楽器音が広がりを出したり、滞留する感じはなく、むしろまっすぐ上に伸びていく空間になっている。中高域に向かって前傾しているように聞こえ、音が高くなるにつれ、どんどん発色が良くなってくる立体感がある。
[低音]:100hz~40hzまで輪郭の少し明瞭なブーッという振動音。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。低域は下方向に地層を作るような分離感があり、見通しは良く明るい。弦楽音やフロアタムの響きに膨らみはあるが、重みはなく、全体的に軽めの浅い印象を受ける。ベースも明るい(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:基本的に低域方向にあまり重みがなく、全体的に音が浮揚した感じに聞こえる。音の抜けは良く、上に良く伸びる。密度感は全体的に薄めで、すっきりした風通しの良い音場表現を持っている(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラムスは重さはあまりなく、膨らみだけがあり、ポポンとした明るいサウンドに聞こえる。タムやスネアの表面も少しパツッパシッと膨らんで聞こえる。音は膨らむが、厚みはあまりないのでリズムコントロールでもたつく感じのないタイトさはあり、質感は柔らかいが締まりは良い。明るいパッツンパッツンあるいはパチンパチン。ハイハットは穂先のほうはシルキーに高く抜けていくが、低いところのチンチンも薄味気味ながら、刻みがよく感じられる(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男女ともにボディは少し薄味で子音を強調する感じがある。やや伸びの良い、すっきり系の清潔系ボイスに聞こえる。サ行にそれほど強調がないので、息感でスースーを強調する感じはないが、爽やか系で甘味を強調することがほとんどない。人によっては味付けの少ないナチュラル系の声色に思えて好ましいと思えるかも知れないが、コクはない。ツ音はやや目立ちやすい。
【4】官能性「明るく爽やかすっきりと聴かせる」
TVアニメ「やがて君になる」ED主題歌「hectopascal」
【GRANBEATで鑑賞】まずこの曲はかなり爽やかで見通しよく楽しめます。中高域で緻密さをかなり感じさせ、煌めきはわずかに強めなので、ボーカルに少しかかって、ややガチャガチャする感じはありますが、臭みがないので、そのガチャガチャ感もしつこくなく、むしろ味付けとしてアリかな程度です。ボーカルの声質はかなり清潔で、清楚な声色になっており、甘味は少なめですが人によってはナチュラルで好ましいと思えるでしょう。高域では、シンバルのクラッシュ感がかなり露骨に出るのが好みを分けそうです。清潔系の音なので、清涼感があり、曲にメリハリを与えていると肯定的に評価できるとも思いますが、人によっては悪目立ちしているように思えるかも知れません。
低域はほとんど透明で、床面はやや火力が足りませんが、リズムコントロールはよく、要所でしっかり音場を引き締めてくれます。曲の全体像はやや頭でっかちに思えますが、この曲の最も緻密で立体感を感じられるあたりによくフォーカスされていますので、一般に満足度は高いと思われます。そしてかなり派手めの曲にも関わらず、表現がスッキリしているので聞き疲れる感じがあまりありません。
TVアニメ「 やがて君になる 」エンディングテーマ「 hectopascal 」
大原ゆい子「Magic Parade」
【KANN CUBEで鑑賞】濃厚感はほとんどないので、音場は透明というより清潔です。たとえば弦楽音は少し艶やかさを出しつつも、基本的にはボーイングで筋立ちを強調しながら、上に伸びていく、天を目指すような感じで聞こえます。やはりシンバルのクラッシュ感がちょっと強調される感じはありますが、この曲では少し明るめの透明感がある弦楽や、膨らむ軽やかなドラムがメロディーラインとリズム感に一貫性を持たせているために、シンバルクラッシュが過剰に目立つ感じはありません。率直に言ってベースの暖かみには欠けるので、音場に抱擁感がいまいち感じられない、スカスカした感じになるのが人によっては気に入らないでしょうが、全体的に爽やかに臭みなく聴かせてくれます。
『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』主題歌「Magic Parade」
Rasmus Faber「はじめてのチュウ(Jazz Ver.)」
【Cayin N6II/A01で鑑賞】あくまで個人的な好みで言えば、ちょっとクリアすぎて風味に欠ける印象を受けますが、JAZZを明るく聴きたい場合にも悪くない選択しかも知れません。シンバルは充分に立体的ですし、ピアノは少し明るさ強めですが透明感に優れ、金管や弦楽もやや筋立ちを強調する感じがあってのびやかで元気なので、グルーヴ感も悪くありません。低域弦楽も透明感のある音で、少しだけ膨らみを出しつつ、わずかにコクを感じさせてくれます。
ただ、音は全体的にツルツルすぎて、人によってそれが解像度が高く気持ち良く思うかも知れませんが、私には人工的な感じに聞こえます。聞き疲れもしませんし、悪くない感じではありますが、少し見通しが良すぎる感じでデジタル的なサウンドになりやすいのが好みを分けそうです。
【5】総評「明るく楽しめるブライトな音が好きなら有力候補」
とにかく見通しと風通しが良く、音の全てが把握できるような万能感があります。出音は軽やかで爽やかすぎる感じもあり、ツルツルしたデジタル的な印象も受けますが、立体感も良く、透明感もあって輪郭も目立たせすぎずに丁寧に聞こえるので、ハマる人にはこれ以上のヘッドホンはそうそうないくらいの魅力を感じるかも知れません。音場も開放的で広く感じられる上に、聞き疲れる感じもなく装着感もよいのがなおさら魅力的です。
- 清潔感と見通し感に優れたモニターサウンド
- 演出感が少なく、色味的にはナチュラル
- 低域に重厚感がない
オーディオテクニカ audio-technica ウッドハウジング オーバーイヤーヘッドホン ATH-WP900 ハイレゾ バランス接続対応 密閉型
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。