「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回取り上げる機種はHolyHigh ET1です。HolyHighはShenzhen YUANGU Technology社のオーディオブランドでMuzili、Arbilyなどの姉妹ブランドになります。ここはわりと真面目に技適やPSEを取って日本展開しているメーカーで、サポートも悪くありません。
ちなみにHolyHighの主張によると、このET1のチューニングはHarman/KardonのサウンドデザイナーSean Olive氏が担当したそうです。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 連続/最大再生時間:5h/35h
- 防水性能:IPX7
- 対応コーデック:AAC/SBC
- 技適番号:214-105248
パッケージ
イヤホンのパッケージ全体はこの価格帯では標準クラスです。付属品はイヤーピース、充電用ケーブル(Micro-B)、説明書などです。
今どき充電端子がMicro-Bなのには少し驚きます。
イヤーピース相性
この機種はイヤーフックで固定されるので、耳の形によってイヤーピースの密閉度が不足する場合があります。その場合露骨に低域が抜けますので、音が異様に軽くシャリシャリしていると感じたら、大きめのイヤーピースを試してみましょう。幸いにしてケースのマチは大きめなので、大きなイヤーピースを付けていても問題ありません。
この機種はイヤーピースさえ適切ならば、かなり重みのある力強い低域が出る機種です。
装着サンプル
イヤーフックタイプで装着感は良好です。すでに述べたように、イヤーピースはよく選んだ方が良いです。
接続品質
AACでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯では比較的良好です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では接続は良好です。距離耐性も優秀で、5mくらい離れてもシームレスに繋がります。ただし遮蔽物がある場合は少し乱れ、やや途切れやすくなります。
ホワイトノイズは少しありますが、おそらく多くの人にとって、それほど気にならないと思います。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [AET07 S装着時]左右別
- [AET07 S装着時]左右平均
- [AET07 S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [AET07 S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時]左右別
- [標準イヤーピース S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時 ]左右平均(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み/2khz-24khz拡大)
※「AET07 Sサイズ」は当ブログの測定用レファレンスイヤーピースです。それ以外のイヤーピースは特記がない限り、このイヤホンパッケージの標準添付のものです。
※また当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
すでに説明したように、この機種はハーマンのサウンドデザイナーがチューニングしたとされているのですが、個人的に「4000円くらいの機種をハーマンのエンジニアがチューニング?嘘くせぇ」とわりと疑ってたんですが、音を聴いてみると、たしかにJBL系っぽい重厚感があるサウンドで、周波数特性を確認してみると、明らかにハーマンターゲットカーブを参照してるらしい形跡がちらほら見えます。たぶんハーマンのサウンドデザイナーがチューニングしたというのは嘘じゃない気がします。
サウンドシグネチャーを全体的に確認すると、深みのあるU字型というか、なだらかなV字型という形をしています。低域は重みがあり、深く、中域に向かって丁寧にチューニングされていて、ボーカル帯域は少し強調され、中高域から高域はピーク感をあまり出さないように丁寧になだらかに隆起を描きつつ、超高域に開放感を出すハーマン独特のピークがあります。
低域はとにかく重みと深みがあって、地熱があり、厚みは出過ぎないように調整されているので、深掘り感があります。熱気はありますが、中域にその熱気が到達しないように距離はしっかり取られているために、中域に熱気が滲み出すことはあまりありません。
中域は少し引き締まっていてわりとモニター的に聞こえ、ハーマンターゲットカーブに忠実っぽい雰囲気があります。ボーカル帯域が少し強調されるようになっていますが、空間はドライで清潔系でわりと見通しが良いです。
中高域はギラつきが少し強く、メタリック感もありますが、光沢感もきれいに出てキラキラとしたサウンドになります。クラッシュは派手になりすぎず、透明感がある清潔な音です。超高域にピークがあるので、音抜けも良く、わりと音場がすっきり風通しが良いです。
音は少しドライですが、深いところから高いところまでわりとワイドレンジに音が楽しめるようになっており、価格の割にお得な気がします。個人的には美波「ライラック」でしっかり重みのあるバスドラムが聴けるのがまず大満足で、多田葵「灼け落ちない翼」のような曲で静寂感を丁寧に出しつつ、引き締まった音楽を聴かせてくれるのに感心しました。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。自由音場補正済みです。ソースはFiiO M15を用いています。SBCで接続し、標準イヤーピース Sサイズを使用しています。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
JAZZ
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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町「ペンタウァ」 / ファルコムベストサウンドコレクション -All in All- / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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Desire / The Songs of Zemeth ~Ys VI Vocal Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
OST
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC Evolution オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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永劫の夢、大空の記憶 -Online Version- (Bonus Track) / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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ユルギナイツヨサ / 日本ファルコム 英雄伝説 零の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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アプリエス神殿 / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
クラシック
- Sophisticated Fight / We Love 空の軌跡 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- FEENA / イース ピアノコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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組曲 LILIA (ファルコム ネオクラシック フロム スタディオズ イン ロンドンシティ) / ベリー・ベスト・オブ・イース / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ロック
- Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- The Decisive Collision / 英雄伝説 閃の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- Mighty Obstacle (2003) / Music From The History Of Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
ハーマンのサウンドデザイナーが関わっているというのはおそらく嘘ではありません。かなりパワフルでレンジ感もあって抜けも感じられるセンスのあるサウンドデザインを感じます。重みのあるウーファー感が感じられる、スピーカー的なサウンドが好きなら、5000円以下の価格帯ではこの機種を選択肢に入れておいた方が良いと思われます。手頃なスポーツモデルの完全ワイヤレスイヤホンを探している人にもかなりおすすめできます。
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