「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回取り上げる機種はTribit Flybuds NCです。
Tribitはワイヤレススピーカーやワイヤレスイヤホン製品を製造している中国のブランドです。低価格帯の中国製メーカーの中では品質面でかなりまともなほうです。そのTribitブランドからANC搭載完全ワイヤレスイヤホンが登場しました。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 連続/最大再生時間:8h/24h
- 防水性能:IPX4
- 対応コーデック:AAC/SBC
- 技適番号:210-141968
パッケージ
パッケージは価格帯では標準的か少し豪華です。付属品はイヤーピースの替え、充電用ケース、充電用ケーブル(Type-C)、説明書です。
本体のビルドクオリティは良好で、非常にコンパクトな充電ケースに収まっています。注意点としてはケース内のイヤホン収納部のマチがぎりぎりなので、標準の薄型イヤーピース以外はほとんど使用できません。イヤーピースの交換は基本的にあきらめた方がよいです。
交換用イヤーピースはSpinfit CP1025がおすすめ
このイヤホン用に使えるイヤピがないか、いろいろ手持ちで試していたんですが、Airpods Pro用の高純度シリコンイヤーピースSpinfit CP1025が使えました。遮音性や装着感が向上します。
Spinfit CP1025とかいうイヤピ、神すぎw
— audio-sound @ hatena (@audio_sound_Twr) August 20, 2020
CP360でも無理だったTribit Flibuds NCで普通に使えるとかhttps://t.co/spjXzrPwa0 pic.twitter.com/s340jZq8TH
装着サンプル
装着感は悪くはないですが、形状が少し特殊です。耳によってはうまくはまらない人がいるかもしれません。イヤピも薄型で装着感が少し特殊です。
接続品質
通信チップはBES2300を搭載しています。
AACでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯では標準以上の接続品質です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では安定しています。距離耐性は優秀で、5m離れてもシームレスにつながっています。ただし、遮蔽物があると通信はかなり不安定になり、音楽はほとんど聞こえなくなりますが、接続は維持されるようです。
ホワイトノイズはわずかにあるかもしれませんが、おそらくほとんどの人が気になりません。
ヒアスルー&ANC性能
ヒアスルーはかなり自然で精度もそれなりに良いです。ホワイトノイズのような背景の雑味もなく、癖が少ないヒアスルーで個人的には好印象です。自分の声もかなり自然に入り込みます。
ANCの効果は価格帯では良好なレベルですが、優れているわけではありません。下はヘッドホン(beyerdynamic DT990 Edition 2005 600Ω)から基準ノイズを流して測定し、その後標準イヤーピース Sサイズをつけ、ANCをONにして、もう一度ヘッドホンから基準ノイズを流し、このイヤホンの遮音性能を1/6オクターブごとに測定したものです。今回の測定では、基準ノイズに対し、20hz~20khzの可聴域での平均遮音性能は15.22dBくらいありました。
中域と高域でノイズカットの性能は良いようです。アクティブノイズキャンセリングの効果自体は感じられ、ONにすると空調の音はたぶんほとんど聞こえなくなると思いますが、サーキュレーターの動作音が消えるほどではなく、総合すると価格なりです。とはいえ、装着感にもよると思いますが、低価格モデルとしては効果が高めです。
少なくとも測定された数値と私の聴感上、はるかに値段が高いLibratone Track Air+より自然で効果も高いアクティブノイズキャンセリングのように思われるので、低価格でANC対応完全ワイヤレスイヤホンを探しているなら有力候補かもしれません。同じ価格くらいのAipower KSOUND EP-K06NCよりもANC性能はおそらく高く感じられると思われます。
左耳のマイク不具合?
私の個体のみかもしれませんが、ヒアスルー ON時に左耳側のハウジング上側にあるマイク部分を指で押さえると、プーッというかなり大きいハウリング音がします。ANC ON時やANC OFF時はとくに音が出ません。タッチ操作をする場所とも離れているので、ほぼ実用的な問題はありませんが、イヤホンのつけ外し時などにときどき触れてしまうと音がするので気になります。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [標準イヤーピース S装着時]左右別
- [標準イヤーピース S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
※当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
若干低域が隆起していますが、ほとんどフラットでやや中域充実系のサウンドシグネチャーを持っています。中域と中高域の間に凹みがあり、音場に適度な奥行きと分離感を感じさせます。
低域は深みと重みがあり、厚みもある重厚なサウンドを実現しています。ベース音は黒みがありエッジも生き生きしていて、キックも重く、またそれぞれがほどよく分離されて聞こえます。低域弦楽はボディがしっかりしており、充実感があります。中域と低域のつながりはよく、有機的なサウンドを実現しています。重低音のノイズ感は適度に抑えられているので、比較的モニター的に見通しもよい低域です。
低域と中域の力関係はわずかに低域が強いように思えますが、ほぼ50:50です。中域は中低域の支えを受けて安定感があり、ボーカルもかなりナチュラルです。甘やかなボーカルが前に出てきます。高域は中域に対して後退的で、中域には適度な静寂感があり、ボーカルフォーカスも良好です。風通しは強くありませんがナチュラルな空気感があります。
高域はピークも少なく、マイルドです。適度に開放感があり、余韻も感じられますが、どちらかというと静かで、中域のナチュラルな質感を重視しているようです。分析的な高域ではないのでディテールを繊細に強調する感じはありませんが、決してディテールに劣るわけではなく、自然です。
全体を見ると、つながりのよい低域と中域が高域に対して優位でかまぼこ的なサウンドに聞こえますが、ほとんどフラットです。ダイナミズムには若干欠けますが、安定感があり、甘みのある中域に丁寧にフォーカスされ、超高域のピークによって余韻も感じられるのでかなり万能系のサウンドです。どんな曲を聴いても中域中心に適度な広さの音場でしっかり組み立ててくれます。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。自由音場補正済みです。ソースはFiiO M15を用いています。イヤーピースは標準イヤーピース Sサイズを使い、コーデックはSBCです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
JAZZ
-
Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
町「ペンタウァ」 / ファルコムベストサウンドコレクション -All in All- / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
Desire / The Songs of Zemeth ~Ys VI Vocal Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
OST
-
Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC Evolution オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
永劫の夢、大空の記憶 -Online Version- (Bonus Track) / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
ユルギナイツヨサ / 日本ファルコム 英雄伝説 零の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
アプリエス神殿 / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
クラシック
- Sophisticated Fight / We Love 空の軌跡 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- FEENA / イース ピアノコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
組曲 LILIA (ファルコム ネオクラシック フロム スタディオズ イン ロンドンシティ) / ベリー・ベスト・オブ・イース / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ロック
- Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- The Decisive Collision / 英雄伝説 閃の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- Mighty Obstacle (2003) / Music From The History Of Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
ノイズキャンセリング性能、スペック、通信品質それぞれにおいて価格の標準以上で、低価格ANC搭載完全ワイヤレスイヤホンでは定番機種としておすすめできそうな機種です。音質はかなりフラットで、やや中域に音が集まる傾向がありますが、かなりナチュラルな音質で聞き心地が安定しており、わりと万能系です。分析的なサウンドではなく、かまぼこ気味のサウンドで派手さに欠けるところもあり、リスニングライクですが、バランスの良い音質はどんな音楽でも破綻がありません。
欠点は標準イヤーピース以外に交換するのが困難だというところくらいです。
【関連記事】