「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
Joyhouseはソウシア商事のブランドです。わりと技適やPSEはまじめに取得している会社で、格安中華の完全ワイヤレスイヤホンブランドとしてはサポートも相対的に良好です。今回はその新作完全ワイヤレスイヤホン「Joyhouse T11」を取り上げます。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Recommended」として、比較的多数の人にとって買って損がないオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 連続/最大再生時間:12h/330h
- 防水性能:IPX7
- 対応コーデック:aptX/AAC/SBC
パッケージ
イヤホンのパッケージ全体のデザインはこの価格帯では標準的なパッケージで、内容物は少し豪華かも知れません。
付属品はイヤーピースと充電用ケース、充電用ケーブル(Type-C)、キャリーポーチ、説明書です。
装着サンプル
ハウジングは少し大型です。私には装着感は良好ですが、耳が小さい人には少し嵌まりにくいかも知れません。
接続品質
価格帯ではかなり優秀な方です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では良好です。距離耐性も優秀らしく、5m離れてもシームレスで乱れはありません。遮蔽物があっても大丈夫なようです。
ホワイトノイズはほんのわずかにありますが、かなり敏感な人でないと気にならないのではないかと思います。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [AET07 M装着時]左右別
- [AET07 M装着時]左右平均
- [AET07 M装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [AET07 M装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース M装着時]左右別
- [標準イヤーピース M装着時]左右平均
- [標準イヤーピース M装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース M装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み/2khz-24khz拡大)
※「AET07 Mサイズ」は当ブログの測定用レファレンスイヤーピースです。それ以外のイヤーピースは特記がない限り、このイヤホンパッケージの標準添付のものです。
※また当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
周波数特性を見るとご覧の通り、比較的フラットです。サウンドシグネチャー的には低域が重み付けされているので、ウォームサウンドあるいはダーク系サウンドと言えるかも知れません。高域は派手な凹凸がありません。中域以上は少し低域に影響されやすいので、低域が強めの曲では、ノイジーに感じる人もいるかも知れません。太く力強い床面で音の実体感には優れています。
サウンド出力は全体的にやや暗く、低域の重厚感、重量、暖かみが支配的になります。パワフルでライブ感があり、没入感がありますが、人によっては籠もっていると判断されやすいところがあります。
中域は清潔ではありません。曲によってはドラムの音やベース音によって、少しもやっと色づくので、ボーカル周りでややもっさりしていると感じる人もいるでしょう。一方で楽器音とボーカルはボディがしっかりと存在しており、ウォームで充実した根立ちの良いサウンドで安定感があります。
また中高域から高域の少しの隆起によって、ウォームなサウンドの中でもややソリッドで適度な手がかり感があり、派手さはありませんが構築的なサウンド感覚があります。エッジはそれほど強調されませんが、硬さはしっかりしており、音楽の骨格が曖昧にはなりません。
中域の柱がしっかりしていることもあり、音楽は非常に骨太でコンストラクティブに楽しめます。そのためJAZZやポップスは濃い目にしっかり聞こえます。サントラ曲やクラシックは没入感が高いですし、EDMもややDJ的な床鳴り感が強めですが、構築的で私は好きな雰囲気です。一方でロックや明るいアニソンは少しもっさりしやすいでしょう。
EnacFire F1/Aipower EP-K01との比較
下のグラフはおそらく価格的にも音質的にも競合するだろう、EnacFire F1/Aipower EP-K01との自由音場補正済み周波数特性の比較です。使用イヤーピースはEnacFire F1はは標準イヤーピースのLサイズ、Aipower EP-K01は標準イヤーピースのMサイズ、Joyhouse T11は標準イヤーピースのMサイズです。
わかりやすいように1khzで交差するようにグラフを調整しています。1khz以上の中域上部以上を拡大したものも掲載します。
まあぶっちゃけ低域から中域の真ん中(1khz前後)くらいまでは細かな相違はあれど、よく似ていると言って差し支えないでしょう。どれも低域重視型と言え、しかも重低域が少し強調される、重みと深み重視の低域を持っています。そして、その低域は中域との繋がりが良く、分離されずに中域をしっかり支える厚みを伴っています。
そういうわけで異なるのは中域上部以上の構造になるのですが、この中で最もドンシャリ的で、高域と低域の釣り合いが取れているのはEnacFire F1です。力強い低域に負けない派手な高域音によって、やや暗い中にも楽しいサウンドを持っており、ロックは最も楽しませてくれると思われます。
Aipower EP-K01はより落ち着いた後退的な高域を持っており、ピークこそF1と同じような形をしているので、少し派手になりますが、全体的に重いサウンドで、完全にベースヘッド向きになっています。というか比較的低域ジャンキーの傾向がある私でも「さすがにこれは重すぎないかい?」と思うくらいです。
T11の高域はこれらに比べると、よりリラックスしており、ピーク感があまりなく、音像が少しくっきり描き出されるくらいのフラットサウンドになっています。そのため低域から中域を支配する暖かみがそのまま透明になっていく自然な色味の変化と、歯擦音や刺さりのようなピーキーさが感じられない、フラットに拡張されたモニター的な高域が楽しめます。ロールオフは少し早いので、風通しがよい感じではありませんが、そのかわりに中域に甘味が出ています。これら3機種の中では、最もツヤがあり、濃厚で、甘味があるサウンドになります。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。自由音場補正済みです。ソースはFiiO M15を用いています。イヤーピースは標準イヤーピース Mサイズを用い、aptXで接続しています。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
JAZZ
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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町「ペンタウァ」 / ファルコムベストサウンドコレクション -All in All- / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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Desire / The Songs of Zemeth ~Ys VI Vocal Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
OST
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC Evolution オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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永劫の夢、大空の記憶 -Online Version- (Bonus Track) / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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ユルギナイツヨサ / 日本ファルコム 英雄伝説 零の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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アプリエス神殿 / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
クラシック
- Sophisticated Fight / We Love 空の軌跡 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- FEENA / イース ピアノコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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組曲 LILIA (ファルコム ネオクラシック フロム スタディオズ イン ロンドンシティ) / ベリー・ベスト・オブ・イース / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ロック
- Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- The Decisive Collision / 英雄伝説 閃の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- Mighty Obstacle (2003) / Music From The History Of Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
音質はやや中域に音が寄って聞こえやすいところもあり、籠もりやすい傾向もあるので、篭もりが苦手な人には向きません。一方でピーク感のない荒れない高域を持っているので、刺さりが苦手な人にはかなりおすすめできます。ベースヘッドでも充分に満足できるくらいの低域は出ており、よほど偏った低域ジャンキーでなければ充分に納得できる量感と重みのある音が楽しめます。より重い音が好きならAipower EP-K01を検討しましょう。
使い勝手を総合的に判断すれば、「Highly Recomennded」にふさわしい品質であることは間違いないのですが、音質的にはやや流行から外れている気がするのと籠もりやすいかもしれないことを考慮して、「Recommended」に留めました。
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