「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
XROUNDは台湾のオーディオメーカーでサラウンド技術を利用したオーディオデバイスを開発しています。XROUND VERSAはこのブランドから初めて出る完全ワイヤレスイヤホンで、現在絶賛クラウドファンディング中です。
特徴としては4大最新サウンド技術が盛り込まれていることが謳われていますが、個人的にチタン製振動板が一番効果が大きい気がします。これがこの機種の繊細なサウンド表現に貢献しているんだろうと、あくまで自分勝手に予想しています。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Recommended」として、比較的多数の人にとって買って損がないオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 連続/最大再生時間:8h/32h
- 防水性能:IP67
- 対応コーデック:aptX/AAC/SBC
パッケージ
イヤホンのパッケージ全体のデザインはこの価格帯では結構しっかりしたパッケージで、わりと豪華かも知れません。パッケージの表面にはオクターブバンドのようなデザインがあしらわれていますが、これは内箱をスライドすると色と高さが変化するようになっています。
付属品はイヤーピース(2種類)とイヤーフックの予備、充電用ケース、充電用ケーブル(Type-C)です。
装着サンプル
小型ハウジングで軽量です。イヤーフックが付いており、耳への収まりは良好です。この機種はいわゆるKISS系と思われる機種で、デザインの基幹部分はNUARLやAVIOTの製品と類似性があります。
接続品質
価格帯ではかなり優秀な方です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内では良好です。距離耐性も優秀らしく、5m離れてもシームレスで乱れはありません。遮蔽物があっても大丈夫なようです。ただしQCC3020機種に時々あるのですが、接続当初にわずかに通信が荒れやすいです。またときどきごくわずかにプチッとします。
ホワイトノイズはほんのわずかにありますが、かなり敏感な人でないと気にならないのではないかと思います。
ワイヤレス充電に対応
Qi規格のワイヤレス充電に対応しています。地味な機能ですが、なかなか便利です。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [AET07 M装着時]左右別
- [AET07 M装着時]左右平均
- [AET07 M装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [AET07 M装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- [noise isolating M装着時]左右別
- [noise isolating M装着時]左右平均
- [noise isolating M装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [noise isolating M装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- [CP360 M装着時]左右別
- [CP360 M装着時]左右平均
- [CP360 M装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [CP360 M装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み/2khz-24khz拡大)
※「AET07 Mサイズ」は当ブログの測定用レファレンスイヤーピースです。それ以外のイヤーピースは特記がない限り、このイヤホンパッケージの標準添付のものです。
※また当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
周波数特性を見るとご覧の通り、比較的フラットです。サウンドシグネチャー的には高域が重み付けされているので、U字あるいはブライト系サウンドと言えるかも知れません。低域から中域はほとんど平坦で、重心は全体的に軽っぽいサウンドになります。
サウンド出力は全体的に明るく、繊細ですが、若干軽いバランスになっています。中域以下ではボーカルが一番前に出てくるようなバランスになっており、ボーカルの下は基本的に清潔で、存在感があまり感じられないようになっています。そのボーカルは女声ボーカル向きと言える、少し上向きな調整になっており、ボディよりはニュアンスに重点に置かれています。子音は少し尖りますが、一般的にきつく感じることはないはずです。
中高域以上でやや手がかりが多く、エッジも相対的にシャープに描き出されるので、緻密で繊細な音になります。どちらかというとクール傾向かも知れませんが、酷薄で聴きづらい感じにはなっておりませんし、音数の割にガチャガチャしません。少し頭でっかちに聞こえやすいところはあります。
以下で、おそらく価格的にも機能的にも競合する機種と比較しますが、それによりこの機種の特徴はさらにはっきりするでしょう。
NUARL N6 Pro/Lypertek TEVIとの比較
下のグラフはおそらく価格的にも音質的にも競合するだろう、NUARL N6 Pro/Lypertek TEVIとの自由音場補正済み周波数特性の比較です。使用イヤーピースはN6 ProははCP360 S、XROUND VERSAはCP360 M、LyperTek TEVIは標準イヤーピースのSサイズです。
わかりやすいように1khzで交差するようにグラフを調整しています。1khz以上の中域上部以上を拡大したものも掲載します。
あくまで周波数特性に表れる音域バランス上ではよりドンシャリ傾向のあるNUARL N6 Proとよりフラットに近いXROUND VERSAの中庸の選択肢がLypertek TEVIであるという理解で概ね間違いありません。ただし音域の高低バランスの上ではTEVIが3機種のうちでは最も低域寄りでウォームサウンドです。
TEVIはVERSAよりも暖かく実体感がある音を奏で、音楽的で、N6 ProはVERSAよりもさらに高域で繊細で低域も存在感があり、全体的に音が派手です。おそらくドライバーの差によって、TEVIは音の鮮明感では一段劣りますが、N6 ProとVERSAの音をどちらが鮮明で繊細と感じるかは個人差がありそうです。それでも一般的にはN6 Proのほうが一段上と判断されるでしょう。少なくとも私の聴感上はN6 Proに軍配を上げます。
音場に関して言えば、少なくとも奥行きや立体感の面でVERSAよりN6 Proのほうが優秀だと判断されることが多いだろうということは言えます。硬い音が好きな人には、一般にこの中では最も硬い音がすると思われるので、VERSAがおすすめできます。
そういうわけでVERSAの立ち位置はちょうどTEVIとN6 Proの間を埋める価格設定で、TEVIよりはクールサウンドで鮮明感も高いが、音質的にはもうちょっと手を伸ばせば届くNUARL N6 Proと比べると、総合的にはやや劣るかもしれないというのが私の評価です。
とはいえ、それは一般的なまとめ方で、明るい女声ボーカル好きなら、VERSAがこの中では一番魅力的に感じられるかもしれませんし、低域を嫌う人には最も好まれる可能性のある「モニターライク」なイヤホンでしょう。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。自由音場補正済みです。ソースはFiiO M15を用いています。イヤーピースはCP360 Mサイズを用い、aptXで接続しています。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
JAZZ
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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町「ペンタウァ」 / ファルコムベストサウンドコレクション -All in All- / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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Desire / The Songs of Zemeth ~Ys VI Vocal Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
OST
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC Evolution オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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永劫の夢、大空の記憶 -Online Version- (Bonus Track) / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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ユルギナイツヨサ / 日本ファルコム 英雄伝説 零の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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アプリエス神殿 / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
クラシック
- Sophisticated Fight / We Love 空の軌跡 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- FEENA / イース ピアノコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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組曲 LILIA (ファルコム ネオクラシック フロム スタディオズ イン ロンドンシティ) / ベリー・ベスト・オブ・イース / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ロック
- Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- The Decisive Collision / 英雄伝説 閃の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- Mighty Obstacle (2003) / Music From The History Of Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
音質は価格を考えるとかなり良好で標準以上と思われますが、しかし価格的には、同じような音質でより自然なサウンドで機能性に優れたTEVIと、より高解像度のサウンドで音場に優れるN6 Proの中間点に位置し、しかも実質的に両者と変わらない購買圏にあって大した価格差がなく、音質的にも使い勝手の上でも競合しやすいというのが非常に悩ましいポイントです。
使い勝手なども総合的に判断すれば、「Highly Recomennded」にふさわしい品質である気もするのですが、両者との比較の結果やクラウドファンディング製品(2製品ほどのサポートが一般的に期待しづらい)であることも考えて、「Recommended」に留めました。
eイヤホンPayPayモール店
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