KINERA IDUN In Ear Earphone HIFI Earphone Monitor Headset
- 日本版と中国版はサウンドが異なります
- 基本スペック
- パッケージ
- 装着サンプル
- 音質
- レコーディングシグネチャー
- 録音機材
- GENS D'ARMES(ロック系)
- Sophisticated Fight(ロック系)
- TO MAKE THE END OF BATTLE(ロック系)
- 白き魔女(クラシック系)
- 小さな英雄(クラシック系)
- 淡い恋 ~Too full with love~(クラシック系)
- FEENA(EDM系)
- The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
- Sophisticated Fight(JAZZ系)
- ケノーピ火山(JAZZ系)
- 浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- QUATERA WOODS(OST系)
- 幻の大地 セルペンティナ(OST系)
- 愛を感じていたい「終焉」(ポップス系)
- 魔王ヴェスパー(OST系)
- 花と風のうた(JAZZ系)
- 総評
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「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回取り上げる中華イヤホンはKinera Idunです。
Kineraは日本ではあまり有名ではないかも知れませんが、中華イヤホン界隈では非常に評価が高いブランドで、その製品ラインナップも5000円以下のエントリークラスから15万円相当のハイエンドモデルに至るまで豊富に揃っています。このブランドは単にサウンドチューニングやその関連技術に精通しているだけでなく、ハウジングやケーブルクオリティなどの美観に関わる製造技術とセンスでも優れており、ただ単に音が優れているだけでなく、宝飾品としても魅力的なイヤホンを製造しています。
最近ではKinera Freyaが話題になっていますが、Freyaはただ単に音質のコスパが良いだけでなく、その価格からは信じられないほどの精巧で美しい外観を備えています。
日本版と中国版はサウンドが異なります
さて、Kineraについて簡単に紹介したので今回のレビュー対象である肝心のKinera Idunですが、これについては少し説明が必要です。日本正規代理店のミミソラオーディオによれば、Kinera Idunの日本版は中国版とはドライバー構成とチューニングが異なり、Kinera Idun Deluxe準拠のサウンドになっているようです。
*日本向けIDUNは海外(および中国本土向け)とはドライバーから変更されており、IDUN Deluxeと同等のチューニングとなっております。
そのため、残念ながら私の聞いているこのKinera Idunを楽しみたい場合は、中国や海外のサイトからの購入が必要になります。後述するようにQOA Pink Ladyがほぼ同じチューニングになっているため、そちらが代替候補となりえますが、なんとこちらも日本未発売です。とにかく、これからのレビューはあくまで中国版のKinera Idun準拠であることにはご留意ください。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 周波数特性:10Hz~20000Hz
- インピーダンス:24Ω
- 感度:116dB
- ケーブルコネクタ:0.78mm 2pin
パッケージ
パッケージは1万円台としては標準以上です。開梱体験は決して豪華というわけではありませんが、Kinera独特の六角形のおしゃれなボックスがなかなか素敵です。Kinera Freyaほどの豪華さはありませんが、大きさ的にも保管の邪魔にならないサイズです。製品の特徴を記したきれいなカードボードなどが入っており、ラグジュアリー感があります。付属品もしっかりした作りのキャリイングケースを含め、一通りそろっており、不足はありません。
ビルドクオリティも1万円台としてはしっかりした作りです。フェイスプレートもおしゃれで安っぽさは全くありません。
装着サンプル
耳への収まりは良く、遮音性も良好です。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [標準イヤーピース(青軸)S装着時]左右別
- [標準イヤーピース(青軸)S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース(青軸)S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(青軸)S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
※当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
全体を見るとほとんどフラットで、中高域が落ち込んだU字型と言えるサウンドシグネチャーをしています。高域は分離感があり、少しはっきりするので大抵の人は、弱ドンシャリ傾向のサウンドに聞こえると思います。バランス感覚のよいイヤホンです。
※ネタばらしをすると、ほとんどQOA Pink Ladyレビューのコピペです。
低域は中域とのバランスがとれており、見通し感があります。地熱が少しあり、やや底で熱気を感じ、重みと厚みのバランスが取れています。少しリラックスした雰囲気があり、エレキベースは深いところからブリブリするエッジの表情までバランスよく聞こえます。ドラムキックは適度な重みがありつつ、生き生きとした弾力があります。低域弦楽は重厚感がありながら、浮き上がりもよく透明感のあるサウンドに聞こえます。
低域と中域はかなり一体的ですが、わずかに分離を感じます。中域と低域が自然につながっているために有機的で、楽器音やボーカルのボディが自然に感じられ、スカスカする感じはありません。ボーカルは息の伸びがよく、ニュアンスも良くて、サ行は少し目立つかなと思いますが、かなり自然でボーカルホンとしても優秀です。
高域では中高域はおとなしめで静寂感があり、このおかげで中域が生き生きしていて、クラシック音楽では、奥行きのあるホールのような背景空間が感じられます。高域は少し高く、風通しはそれなりに感じられ、ハイハットはシルキー傾向ですがギラつきも適度に感じられ、粒立ちは細かく繊細です。超高域はロールオフが早いので余韻は自然に消えていくので空間は高いところで閉じています。
全体としてみると、小ホールで聞くようなナチュラルで自然な音場感を持ち、全音域のバランスがよく、中域の甘味にもしっかりフォーカスされる、なかなか良質なサウンドになっており、個人的にはかなりセンスを感じます。派手さを抑えつつ、清潔で繊細な粒立ちのある高域を持っており、マイクロディテール感でもかなり満足できます。ボーカル曲も優秀ですが、これで聞くクラシック音楽やクラシック系サントラは個人的にかなりおすすめです。
QoA Pink Ladyとの比較
Kineraの姉妹ブランドであるQoAのPink Ladyは単純に言ってしまえば、Kinera Idunのディテールアップ版と言ってもよいモデルです。以下のグラフはKinera IdunとQoA Pink Ladyの自由音場補正済み周波数特性の比較になります。
両者のサウンドシグネチャーはまるで一卵性双生児のように出自の共通性を感じさせます。しかし、低域のチューニングに少し差があるために、中域のディテールでPink Ladyがわずかに繊細に感じられます。個人的にはQoA Pink Ladyのサウンドの方がより端正に音が聞こえるのでより好みですが、人によってはIdunのサウンドの方がナチュラルで好ましく思えるかもしれません。
率直に言って両者は価格の点でもビルドクオリティ/パッケージングの点でも拮抗しており、どちらを選んでもほとんど差がありません。しかし、外観は個人的な好みからいうと、Pink Ladyのパープルの透明感のあるイヤーシェルと黒いケーブルの引き締まった色合いにより高品質なエレガントさを感じます。とはいえ、最終的には好みで選んでよいでしょう。
Kinera Freyaとの比較
Kinera FreyaはKinera Idunで得られた知見を活かして作られたモデルです。しかしそのサウンドはIdunのアップグレードではありません。以下のグラフはKinera IdunとKinera Freyaの自由音場補正済み周波数特性の比較になります。
Kinera FreyaはKinera Idunとはことなり、より豊満で音楽的なサウンドを目指しているようです。それは北欧神話の女神フレイヤの豊饒な神性をイメージしており、女神イドゥンの青空のような晴れやかな神性とは異なるのでしょう。実際Freyaのサウンドはより豊かで印象的な力強いボーカル表現に力点があり、中域はより鮮やかでエネルギッシュです。ふくよかで生命力に満ちたFreyaのサウンドはしかし、ところどころ音楽のディテールを少しにじませるところがありますが、より端正な挙措を持つIdunはおなじように美しい歌声でありながら、より繊細な響きを聴かせようとします。
この違いは結局、迫力とディテール、そしてダイナミズムのどれを重視するかによるでしょう。Freyaのサウンドはパワフルで迫力があり、活力のある歌声を聞かせます。それに対し、Idunはよりディテール感があり、後味の良い澄みやかな歌声を聞かせてくれるでしょう。ダイナミズムの点では、多くの人にとってより安定的なのはおそらくIdunで、Freyaは少し音楽全体が揺らいで聞こえる感覚があるかもしれませんが、どちらも躍動的で楽しい音楽を聞かせます。
Kinera Freyaの値段はKinera Idunより1万円程度高くなりますが、パッケージとビルドのクオリティの差は歴然です。本体のビルドクオリティ、ケーブルクオリティ、付属品の質、パッケージの豪華さ、すべてにおいてFreyaはIdunの品質を価格差以上に凌駕しているように思え、総合的な満足度の点では圧倒的な差を感じるかもしれません。少なくとも私は音質的には少し癖を感じるにもかかわらず、Freyaのほうが総合的にははるかに満足度が高いです。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。ソースはFiiO M15を用いています。イヤーピースはJVCスパイラルドット++ Mサイズを使い、ゲインは高設定です。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
録音機材
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- レコーディングソフト:Audacity
GENS D'ARMES(ロック系)
GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
Sophisticated Fight(ロック系)
Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
TO MAKE THE END OF BATTLE(ロック系)
TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
白き魔女(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
小さな英雄(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 小さな英雄 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
淡い恋 ~Too full with love~(クラシック系)
淡い恋 ~Too full with love~ / イース・ヒーリング / Copyright © Nihon Falcom Corporation
FEENA(EDM系)
FEENA / PROVINCIALISM Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
The Silver Will -ギンノイシ- / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
Sophisticated Fight(JAZZ系)
Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ケノーピ火山(JAZZ系)
ケノーピ火山 / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
QUATERA WOODS(OST系)
QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
幻の大地 セルペンティナ(OST系)
幻の大地 セルペンティナ / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
愛を感じていたい「終焉」(ポップス系)
愛を感じていたい「終焉」 / オリジナル・サウンドトラック 「海の檻歌」~後編~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
魔王ヴェスパー(OST系)
魔王ヴェスパー / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
花と風のうた(JAZZ系)
花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
Kinera IdunはKineraらしいバランス感覚に優れ、その中で中域の音楽性を丁寧に追及したサウンドを味わうことができます。パッケージはおしゃれで、付属品も十分にそろっており、ビルドクオリティは良好で価格以上に十分に満足できる品質を実現しています。1万円台で最も魅力的なIEMの1つであることは間違いありませんが、一卵性の姉妹ともいうべきQoA Pink Ladyというライバルの存在を覚えておく必要はあるでしょう。
KINERA IDUN In Ear Earphone HIFI Earphone Monitor Headset
日本版の購入
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