《在庫あり》Audiosense Audiosense Earphone AQ3 [AQ3]【楽天】
- AUDIOSENSEのことなら秋葉館
- 基本スペック
- パッケージ
- 装着サンプル
- 音質
- レコーディングシグネチャー
- 録音機材
- GENS D'ARMES(ロック系)
- Sophisticated Fight(ロック系)
- TO MAKE THE END OF BATTLE(ロック系)
- 白き魔女(クラシック系)
- 小さな英雄(クラシック系)
- 淡い恋 ~Too full with love~(クラシック系)
- FEENA(EDM系)
- The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
- Sophisticated Fight(JAZZ系)
- ケノーピ火山(JAZZ系)
- 浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- QUATERA WOODS(OST系)
- 幻の大地 セルペンティナ(OST系)
- 愛を感じていたい「終焉」(ポップス系)
- 魔王ヴェスパー(OST系)
- 花と風のうた(JAZZ系)
- 総評
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「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回取り上げる中華イヤホン製品はAUDIOSENSE AQ3です。
AUDIOSENSEについては日本ではあまり知られていませんが、コスパの良いマルチドライバーIEMを作っていることで一部のオーディオファンに人気が高いブランドです。とくにこのブランドを一躍有名にしたのがAUDIOSENSE T800で、バランスドアーマチュアドライバー採用機らしからぬ深い低域と独特の歯切れの良いクリスピーなサウンドが好評を博し、オーディオコミュニティで好評をもって迎えられました。
最近ではフラッグシップモデルであるAQ7をリリースしています。一般的にはT800で知られているメーカーですが、低価格機からミドルレンジまでカヴァーしており、ラインナップは豊富です。
AUDIOSENSEのことなら秋葉館
なおこのレビューは秋葉館さんからレビュー用レンタルサンプルを提供していただいています。秋葉館さんはAUDIOSENSE製品を実店舗、通販で取り扱っており、そのパッケージはすべて国内正規品になります。店頭にも試聴機が置かれているので、AUDIOSENSE製品に興味がある方は秋葉原に行くことがあったら是非寄ってみて下さい。アクセスはこちらのリンクでご確認頂ければと思います。
また、AUDIOSENSE製品の通販リンクはこちらになります。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- ドライバー構成:1DD+2BA
- 周波数特性:20hz-22khz
- インピーダンス:18Ω
- 感度:102dB
- ケーブルコネクタ:mmcx
パッケージ
今回は見本サンプルなので、製品版のパッケージとは内容が一部異なる可能性があります。
イヤホンのパッケージ全体はこの価格帯では標準的か少し豪華なレベルだと思われます。大きめのペリカンケースが入っており、それが若干プレミアムに感じさせる可能性があります。付属イヤーピースやケーブルの品質、本体のビルドクオリティでおそらく不満を感じることはなく、ケーブルアップデートも必要ないと思いますが、最近のこの価格帯の中華イヤホンの進歩は著しく、2020年の水準ではパッケージ、ビルドともに価格に比べて特別優れているというほどではありません。
装着サンプル
ハウジングは厚みがそれなりにありますが、装着感は良好で、遮音性も悪くないでしょう。上位機種のT800に比べると、内側の造形がシンプルになっています。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [標準シリコンS装着時]左右別
- [標準シリコンS装着時]左右平均
- [標準シリコンS装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準シリコンS装着時]左右平均(自由音場補正済み)
※また当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
サウンドシグネチャー解説
全体として見れば、ほとんどニュートラルでバランスが良いサウンドですが、わずかにU字型です。しかし中域はとくにフラットに近い感じになっています。
THD+N特性
上は周波数帯域ベースのTHD+N特性、下は1khzでの音量レベルTHD+N特性です。THD+N特性はおおむね1%以下で、満足できる品質です。
音質解説
AQ3は全体のバランスが良く、フラットに近い快適なリスニング環境を提供します。スマホでも鳴らせる低インピーダンスモデルなので、再生環境を選びません。
AUDIOSENSEイヤホンの最大の特徴は深いところまで聞こえるレンジの良い低域です。基本的にモニター的で癖がなく、レイヤリングは良好です。輪郭は比較的タイトで音のまとまりは良く、ドラムキックとベースはとくに描き分けを強調されているわけではありませんが、明瞭に聞き分けることが出来ます。重みや厚みがやや少なく、パワフルさに少し欠ける印象があるのは事実なので、ベースヘッドを満足させるほどの量感があるかは難しいところですが、深さのあるレンジは非常に魅力的です。
単純に深さを重視したサウンドが重みを出し過ぎず、中域に向かって丁寧に調整されているため、リスニングライクを好む一般的なユーザーはもちろん、批評的なオーディオファンをも満足させる水準を実現しています。実際のところ、こうしたハイアマチュアクラスのオーディオファンほど、深い低域に魅力を感じます。
さて、中域に目を移すと、低域からフラットに自然に移行していく丁寧なチューニングが感じられます。深いところから引き出されたローエンドの地熱は、この中域ではもう完全に濁りが消えて、風通しの良い空間が広がっています。ボーカル帯域やリズム打楽器の打ち込み音が響くあたりはちょっと強調され、響きが自然に広がる奥行きを持たせられていますが、基本的にはフラットでそのままなだらかに高域が上昇して抜けを作っていく感じになっています。
高域はこちらもAUDIOSENSE T800と似ている、細かな手がかりを出すピークが、しかしギザギザしすぎないバランスで形成されており、ディテール感を演出します。このエッジ感は音の穂先を毛羽立たせる感じがあり、少しガサガサするというか乾いた感じに聞こえるのですが、ギラつき感などは強調されつつも出過ぎてうるさくならない水準に留められており、がさつな印象は受けません。それでもクラシックを聴くと、少し弦楽音や金管、シンバルの粒立ちなどが演出過剰に聞こえますが、全体としてはホールに響くような自然な空間性を保っています。シンバルやハイハットが少し派手めに、しかしシルキーな質感で透明感のある雰囲気でシャーンと響くのは気持ち良く、T800でも感じられる、AUDIOSENSEが作り出す、こうしたクリスプな清潔感が個人的には好きです。
AQ3は率直に言って、チューニングはかなり上質で、面白いです。しかし、そうなると気になってくるのはT800と比べてどうかという点で、次はその点にフォーカスしてみましょう。 それによってAQ3のブランドでの立ち位置はきっと、よりはっきりしてくるはずです。
AUDIOSENSE T800との比較
AUDIOSENSE AQ3はよくAUDIOSENSE T800と比べられる機種です。一部のレビュアーによる評価はT800とAQ3が典型的なAUDIOSENSEサウンドで、T800が高いと思う場合、AQ3が代替候補になり得るというものです。私もAQ3についてのこの評判を知っていたので、「T800を買えばAQ3は買わなくて良いだろう」と思って買いませんでしたが、実際のところどうなのかは気になっていました。
以下はAUDIOSENSE T800とAUDIOSENSE AQ3の周波数測定値比較グラフ(自由音場補正済み)とTHD+N特性の比較グラフになります。
グラフを見てみると、わりと面白いことがわかります。AQ3とT800はたしかにAUDIOSENSEサウンドの魅力として語られる要素をどちらも満たしています。この価格帯のイヤホンとは思えない深みのある低域、フラットに近いバランスの良いサウンド、高域の手がかりの多さからくるクリスプなディテール感。こういったAUDIOSENSEサウンドの特徴とされる雰囲気はどちらの周波数特性からも窺えます。
しかし、T800とAQ3では音場観が異なっており、低域から中域までの雰囲気は似ていると思われますが、T800のほうがよりモニター的で平面的なサウンドになっており、どちらかというとAQ3はT800をリスニングライクに寄せたような音響設計になっていると言えます。
実際のところ、AQ3はより中域の響きが丁寧で、空間に奥行きが感じられ、少しのびやかになっており、T800はもうちょっとディテールを重視して高域の粒立ちと抜けの高い余韻を聴かせる、シャキシャキサクサクした音を強調します。全体的な見通し感や音の艶と色づきはT800のほうが優れていますが、普通に音場が広く、より適切な静寂感と自然な空間性があり、ダイナミズムの感じられる豊かな響きを持ち、音楽的に聞こえるのはAQ3のほうで、一般ウケするのはAQ3のほうではなかろうかと思います。個人的にはT800のほうがほかにない、少し癖があって面白い独特のサウンドなのでオーディオマニア的な観点からすると、T800を買って正解だったと思いますが、オーディオレビュアー的観点からすると、AQ3のほうがレンジ感や音楽的な響きの成分が良く、価格が安いことも考えると、より高く評価できます。
あくまでAUDIOSENSEでどれか1本イヤホンを選ぶとすれば、個人的には音が独特なT800をおすすめしたいですが、AUDIOSENSEっぽい音作りを感じさせつつ、より万能性が高そうな音に仕上がっているAQ3のほうがわりと名機と呼ばれるにふさわしい気がします。実際ボーカルを聴くならシャウティな感じが少し出やすいT800よりAQ3を推します。
そういうわけで、T800とAQ3が似ているというレビュアーの評価は間違っていませんが、それはT800がAQ3の上位互換というわけではありません。むしろ両者は音質的にほとんど似通っているのにも関わらず、T800ははっきりとモニター志向を向いており、AQ3は音楽的な方向を向いているという性格分けがされています。そして、おそらく日常的なリスニングではAQ3のほうがより快適に使えるだろうということは言えそうです。とくに音場を重視している場合は、AQ3の価格を超えたレンジの良い広大なサウンドステージに驚くでしょう。
録音比較
TO MAKE THE END OF BATTLE(ロック系)
TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
AUDIOSENSE DT200との比較
ここではAUDIOSENSE AQ3と価格帯と音質で似ており、同じく人気機種であるAUDIOSENSE DT200と比較します。一見してわかるように両者は非常に似たサウンドシグネチャーを持っています。厳密にはAQ3のほうがよりレンジで優っているので音場が広く、ディテールも強調され、よりモニター的に聞こえ、DT200はより中域へのフォーカスが良く、質感を重視した音楽的なサウンドに聞こえるという人が大半でしょう。しかし雰囲気はほとんど共通です。下の録音音源で聴き比べていただければ、それはすぐに納得していただけるでしょう。
録音比較
幻の大地 セルペンティナ(OST系)
幻の大地 セルペンティナ / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。ソースはFiiO M15を用いています。イヤーピースは標準イヤーピース Sサイズを使い、ゲインは高設定です。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
録音機材
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- レコーディングソフト:Audacity
GENS D'ARMES(ロック系)
GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
Sophisticated Fight(ロック系)
Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
TO MAKE THE END OF BATTLE(ロック系)
TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
白き魔女(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
小さな英雄(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 小さな英雄 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
淡い恋 ~Too full with love~(クラシック系)
淡い恋 ~Too full with love~ / イース・ヒーリング / Copyright © Nihon Falcom Corporation
FEENA(EDM系)
FEENA / PROVINCIALISM Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
The Silver Will -ギンノイシ- / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
Sophisticated Fight(JAZZ系)
Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ケノーピ火山(JAZZ系)
ケノーピ火山 / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
QUATERA WOODS(OST系)
QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
幻の大地 セルペンティナ(OST系)
幻の大地 セルペンティナ / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
愛を感じていたい「終焉」(ポップス系)
愛を感じていたい「終焉」 / オリジナル・サウンドトラック 「海の檻歌」~後編~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
魔王ヴェスパー(OST系)
魔王ヴェスパー / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
花と風のうた(JAZZ系)
花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
AUDIOSENSE AQ3は率直に言って、とても面白く、そしてよくできたイヤホンで、そのサウンドは実に興味深い立ち位置にいます。そのサウンドはAUDIOSENSE T800で確立されたAUDIOSENSEのハウスサウンドの正統派モデルであり、しかし、T800からある意味洗練されている部分もあります。またイヤホン全体を見ても、KZのような少し不自然なほどのディテールサウンド系や、FiiOなどの正統派モニターサウンド系、KineraやQOAなどの音楽性に寄せたIEMサウンド系が、ちょうど交錯するようなあたりのフラットサウンドになっていて、様々なオーディオ体験をしてきた人がここで一致した通過点を通れるような、そんなバランスサウンドができあがっています。そう考えると、T800よりもむしろ多くの人がAQ3のサウンドを楽しく思う気がします。
個人的にはT800がAUDIOSENSEではいまだに最も面白く、おすすめの機種なのですが、AQ3のほうがより高く評価されるべきところは多いかも知れない、そんな気がします。
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