QOA PINK LADY 2BA+1DD Hybrid 3 Driver In Ear Monitor HIFI Earphone
「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回取り上げる中華イヤホンはQoA Pink Ladyです。
QoA(Queen of Audio)はKineraの姉妹ブランドで2019年に設立されたかなり若いブランドです。創業者はKinera CEOの妹です。QoAの特徴は独自の生産設備を持ちつつ、界隈で高い評価を持つKineraの音響開発技術を有効活用し、そこに女性ならではの感性が落とし込まれた製品づくりをしている点にあります。これまで発表された製品はすべてカクテルの名前をモチーフにしており、最近北欧神話の神々にあやかって製品を展開しているKineraと同様に、既存の文化からインスピレーションを得ています。
QoA Pink LadyはQoAブランド初の製品で、バランスの良いサウンドとKinera譲りの高いビルドクオリティで話題になった機種です。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 周波数特性:20Hz~20000Hz
- インピーダンス:16Ω
- 感度:112dB
- ケーブルコネクタ:0.78mm 2pin
パッケージ
パッケージは1万円台としては標準以上です。開梱体験は決して豪華というわけではありませんが、製品の特徴を記したおしゃれなカードボードなどが入っており、ラグジュアリー感があります。付属品も大きめのキャリイングケースを含め、一通りそろっており、不足はありません。
ビルドクオリティも1万円台としてはしっかりした作りで不満はありません。フェイスプレートもおしゃれで安っぽさは全くありません。
装着サンプル
耳への収まりは良く、遮音性も良好です。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [標準イヤーピース(黒) S装着時]左右別
- [標準イヤーピース(黒) S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース(黒) S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース (黒)S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
※当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
全体を見るとほとんどフラットで、中高域が落ち込んだU字型と言えるサウンドシグネチャーをしています。高域は分離感があり、少しはっきりするので大抵の人は、弱ドンシャリ傾向のサウンドに聞こえると思います。バランス感覚のよいイヤホンです。
低域は中域とのバランスがとれており、見通し感があります。地熱が少しあり、やや底で熱気を感じ、エレキベースも少し黒みが強い引き締まったサウンドになっており、キックもドシッとした重量感がありますが、厚みは抑えめでタイトに聞こえます。低域弦楽は重み重視で深く沈むサウンドになっており、重厚感があります。やや下に重いので、躍動感の点ではわずかに鈍重に思えるかもしれません。
低域と中域はわずかに分離的にされており、それにより低域の熱気による濁りが抑えられています。音のつながりには一体感があり、自然につながっているために有機的で、楽器音やボーカルのボディが自然に感じられ、スカスカする感じはありません。ボーカルは息の伸びがよく、ニュアンスも良くて、サ行は少し目立つかなと思いますが、かなり自然でボーカルホンとしても優秀です。
高域では中高域はおとなしめで静寂感があり、このおかげで中域が生き生きしていて、クラシック音楽では、奥行きのあるホールのような背景空間が感じられます。高域は少し高く、風通しはそれなりに感じられ、ハイハットはシルキー傾向ですがギラつきも適度に感じられ、粒立ちは細かく繊細です。超高域はロールオフが早いので余韻は自然に消えていくので空間は高いところで閉じています。
全体としてみると、小ホールで聞くようなナチュラルで自然な音場感を持ち、全音域のバランスがよく、中域の甘味にもしっかりフォーカスされる、なかなか良質なサウンドになっており、個人的にはかなりセンスを感じます。派手さを抑えつつ、清潔で繊細な粒立ちのある高域を持っており、マイクロディテール感でもかなり満足できます。ボーカル曲も優秀ですが、これで聞くクラシック音楽やクラシック系サントラは個人的にかなりおすすめです。
たとえばオペラみたいなボーカル曲を聴くなら別ですが、似ている周波数特性のKinera Freyaよりは一般的によりナチュラルでバランスもよく、万能性が高いサウンドです。
Kinera Idunとの比較
QoAの姉妹ブランドであるKineraのIdunは価格的にもサウンド的にもビルドクオリティ的にもPink Ladyと拮抗する機種です。以下のグラフはKinera IdunとQoA Pink Ladyの自由音場補正済み周波数特性の比較になります。
両者のサウンドシグネチャーはまるで一卵性双生児のように出自の共通性を感じさせます。しかし、低域のチューニングに少し差があるために、中域のディテールでPink Ladyがわずかに繊細に感じられます。個人的にはQoA Pink Ladyのサウンドの方がより端正に音が聞こえるのでより好みですが、人によってはIdunのサウンドの方がナチュラルで好ましく思えるかもしれません。
率直に言って両者は価格の点でもビルドクオリティ/パッケージングの点でも拮抗しており、どちらを選んでもほとんど差がありません。しかし、外観は個人的な好みからいうと、Pink Ladyのパープルの透明感のあるイヤーシェルと黒いケーブルの引き締まった色合いにより高品質なエレガントさを感じます。とはいえ、最終的には好みで選んでよいでしょう。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。自由音場補正済みです。ソースはFiiO M15を用いています。イヤーピースは標準イヤーピース(黒)のSサイズ、ゲインは高設定です。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
JAZZ
-
Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
町「ペンタウァ」 / ファルコムベストサウンドコレクション -All in All- / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
Desire / The Songs of Zemeth ~Ys VI Vocal Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
OST
-
Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC Evolution オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
永劫の夢、大空の記憶 -Online Version- (Bonus Track) / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
ユルギナイツヨサ / 日本ファルコム 英雄伝説 零の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
アプリエス神殿 / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
クラシック
- Sophisticated Fight / We Love 空の軌跡 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- FEENA / イース ピアノコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
-
組曲 LILIA (ファルコム ネオクラシック フロム スタディオズ イン ロンドンシティ) / ベリー・ベスト・オブ・イース / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ロック
- Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- The Decisive Collision / 英雄伝説 閃の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- Mighty Obstacle (2003) / Music From The History Of Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
QoA Pink Ladyはブランドの最初のイヤホンとしては十分すぎるほどのインパクトを持ったイヤホンです。ナチュラルでバランスの良いサウンドをもたらしている絶妙のチューニングによって、ほとんどの音楽で窮屈さがなく、かつ充実した安定感のある自然なサウンドを実現しています。確かな静寂感と分離感がありながらも、マイクロディテールで繊細さも感じられるサウンドはレベルが高く、さらに、ビルドクオリティも十分で、全く不足がありません。
QOA PINK LADY 2BA+1DD Hybrid 3 Driver In Ear Monitor HIFI Earphone
【関連記事】