TANCHJIM HANA In-Ear Earphone IEMs
「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回は中華イヤホンのTANCHJIM HANAを取り上げます。
TANCHJIMは2015年に設立されたばかりの比較的新しい中国のIEMメーカーです。しかし、そのビルドクオリティの高さとクリーンさを重視したチューニングが話題となり、オーディオファンの間で人気を得ました。このブランドの代表作と見なされているTANCHJIM Oxygenは特に人気が高い製品です。
このブランドの新作イヤホンTANCHJIM HANAはTANCJIM Oxygenの精神を確かに受け継いでいます。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 周波数特性:5hz-50kHz
- インピーダンス:32Ω
- 感度:110dB
- ケーブルコネクタ:0.78mm 2pin
パッケージ
この価格帯ではわりと豪華と言えるパッケージです。付属品も多く、おしゃれなレザーキャリイングケースも付いています。パッケージ全体に統一感があり、贈答品やお土産としても喜ばれそうな製品です。
本体のビルドクオリティも高く、超高温で白色にカラーリングされたステンレスシェルの本体は頑丈かつ滑らかです。
装着サンプル
わりと小型な本体で耳への収まりは良好です。材質がステンレスなため、若干重量感があるかもしれません。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [AET07 S装着時]左右別
- [AET07 S装着時]左右平均
- [AET07 S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [AET07 S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(Treble) S装着時]左右別
- [標準イヤーピース(Treble) S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース(Treble) S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(Treble) S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(BASS) S装着時]左右別
- [標準イヤーピース(BASS) S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース(BASS) S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(BASS) S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み/2khz-24khz拡大)
※「AET07 Sサイズ」は当ブログの測定用レファレンスイヤーピースです。それ以外のイヤーピースは特記がない限り、このイヤホンパッケージの標準添付のものです。
※また当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
TANCHJIMはMoondropとともにハーマンターゲットカーブを参照していることで有名なメーカーです。TANCHJIM HANAもブランドの伝統に則り、かなり忠実にハーマンターゲットカーブに沿っており、拡散音場でのフラットバランスに近づけられたチューニングがされているようです。自由音場補正時もフラットに近く、わずかにU字型と言えるサウンドをしています。
低域は少し深いところに強調があり、重みを感じますが、基本的に見通しが良く、レイヤリングはクリアです。比較的透明度が高く、タイトな低域で、少し温かみがあります。中域の清潔感に配慮が見られるため、音の厚みはわずかに足りなく思う可能性がありますが、スムーズなレスポンスを持っています。
中域は引き締まっており、少しドライで清潔感があります。ボーカルや楽器音は少しシャープで、ボーカルには少しニュアンスの強調とスリムな伸びやかさが、楽器音にもやや上下に引き延ばされる感覚とディテール感があります。音場には適度な奥行き感と幅があり、見通し感は良好です。ボーカルにはそこそこ安定感がありますが、ボディには少し不足を感じるかも知れず、曲によっては若干シャウティに聞こえるかも知れません。
高域はのびやかで適度に開放的です。ギラつき感に強調があり、シンバルやアコースティックギターにメタリック感があり、少しザラザラした音に聞こえるかも知れません。光沢感のある音で粒立ちも繊細傾向で、やや派手に感じますが、風通しのよい雰囲気で清潔感があります。
全体として清潔感のある空間が実現されており、すっきりと見通しが良いサウンドを持っています。空間が晴れやかに澄んだ空気の中で聞こえるような雰囲気が好きなら、かなりおすすめできます。
Moondrop Starfieldとの比較
価格が近く、同じくハーマンターゲットカーブを参照しているMoondrop Starfieldと比較します。
上のグラフはどちらもAET07をイヤーピースとして使用し、自由音場補正済み測定グラフが1khzで交差するように調整したものです。
さて、音質的には両者は似通っているのでほとんど代替可能です。私の聴感上、より派手で色づきよく、楽しく聞こえるのはTANCHJIM HANAで、解像感の上でも優れて聞こえますが、率直に言ってそれほど大きな差はないと思えます。
しかし、パッケージ内容とビルドクオリティの上では明らかにHANAが格上で、価格以上の差を感じます。ラーメンみたいで絡まりやすいStarfieldのケーブルと異なり、HANAのケーブルはスリムでスムーズな取り回しを実現していますし、キャリイングケースもサイズ的に余裕があり、品質的にも上等です。音質だけで考えればStarfieldのほうがだいぶ安い分お得かも知れませんが、使い勝手まで考慮に入れれば、取り回しの良いケーブルにアップグレードする費用などが必要ない分、HANAのほうが総合的には価格差以上に優れている気がします。
音源比較
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。自由音場補正済みです。ソースはFiiO M15を用いています。イヤーピースは標準イヤーピースのBASS Sサイズ、ゲインは高設定です。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
JAZZ
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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町「ペンタウァ」 / ファルコムベストサウンドコレクション -All in All- / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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Desire / The Songs of Zemeth ~Ys VI Vocal Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
OST
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC Evolution オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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永劫の夢、大空の記憶 -Online Version- (Bonus Track) / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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ユルギナイツヨサ / 日本ファルコム 英雄伝説 零の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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アプリエス神殿 / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
クラシック
- Sophisticated Fight / We Love 空の軌跡 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- FEENA / イース ピアノコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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組曲 LILIA (ファルコム ネオクラシック フロム スタディオズ イン ロンドンシティ) / ベリー・ベスト・オブ・イース / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ロック
- Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- The Decisive Collision / 英雄伝説 閃の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- Mighty Obstacle (2003) / Music From The History Of Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
TANCHJIM HANAは全体的に非常に魅力的な製品に思えます。パッケージは良好で、ビルドクオリティも良く、所有欲を満たしてくれます。音質はハーマンターゲットカーブをレファレンスとしており、すっきりとしてカラッとした風通しの良い秋空のような空間で音楽を聴かせてくれます。総合的に見て、個人的には同じような音質のライバルであるStarfieldと比べて、価格差以上に満足を感じます。ただし、音質だけを重視するなら、Starfieldを買った方が安上がりに済む分お得に思えるかも知れません。
TANCHJIM HANA In-Ear Earphone IEMs
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