- 基本スペック
- パッケージ
- 装着サンプル
- 接続品質
- ケースのイヤホン収納部の問題
- ヒアスルー性能&ANC
- Qi規格のワイヤレス充電に対応
- 専用アプリ「Headphones Controller」
- 音質
- レコーディングシグネチャー
- 録音機材
- GENS D'ARMES(ロック系)
- Sophisticated Fight(ロック系)
- TO MAKE THE END OF BATTLE(ロック系)
- 白き魔女(クラシック系)
- 小さな英雄(クラシック系)
- 淡い恋 ~Too full with love~(クラシック系)
- FEENA(EDM系)
- The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
- Sophisticated Fight(JAZZ系)
- ケノーピ火山(JAZZ系)
- 浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- QUATERA WOODS(OST系)
- 幻の大地 セルペンティナ(OST系)
- 愛を感じていたい「終焉」(ポップス系)
- 魔王ヴェスパー(OST系)
- 花と風のうた(JAZZ系)
- 総評
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「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回取り上げる機種はYAMAHA TW-E7Aです。
YAMAHAは言わずと知れた日本を代表する世界最大の楽器メーカーであり、オーディオメーカーとしても超名門企業です。一度はポータブルオーディオ事業から遠ざかっていましたが、イヤホン事業にチャンスありと見て再参入しました。この機種にかけた意気込みについては以下の記事を参照して下さい。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Recommended」として、比較的多数の人にとって買って損がないオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 連続再生時間(ANC ON):5h
- 連続再生時間(ANC OFF):7h
- 最大再生時間:28h
- 防水性能:IPX5
- 対応コーデック:aptX/AAC/SBC
- 技適番号:202-SMH076
パッケージ
パッケージは価格帯では標準か少し豪華な感じです。高級感は少し意識されてますが、イヤホンや重電ケースが収まっている収納部はプラスチック製で安っぽい感じがします。付属品に不足は感じません。
本体のデザインはもうちょっと工夫が欲しい気もしますが、エレガントにまとまっていて、充分に高級感があります。ビルドクオリティに不満はありません。
装着サンプル
装着感はわりと良好です。本体は軽量で重心も安定しているように思います。
接続品質
通信チップはQCC5124を搭載しています。
aptXでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯では普通の通信品質です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内ではわりと安定しています。距離耐性は問題なく、5m離れてもシームレスです。ただし、遮蔽物があると音がすぐ途切れがちになり、接続が切れることはないようですが、音が出なくなります。
なおこのイヤホンについて私は人混みに行ってないので、駅などでテストしてませんが、どうも混雑した場所ではかなり接続品質は悪いようです。
「TW-E7A」は、接続がかなり不安定でした。地下鉄や渋谷駅のようなハードな通信環境では1分の間で何度も途切れ、そこまで通信環境が厳しくない喫茶店などでもたまに途切れます。何度か連続で途切れた後は、片方のイヤホンからしか音が出なくなることも。もちろん、途切れないこともあるのですが。
ホワイトノイズは少しあるかもしれませんが、おそらくほとんどの人が気になりません。
ケースのイヤホン収納部の問題
このイヤホンの充電ケースのイヤホン収納部の設計はあまり良好とは言えません。充電の接点プラグ部分にうまくはまりづらいことがあり、ケースに収めたと思っても実際には接点に接触しておらず充電状態にならないことがあり、ケースに収めるのに少し工夫する必要があります。
ところが、「TW-E7A」はイヤホンの収納感がイマイチなのです。イヤホンを耳からはずしてケースに収納すると、ケースのフタが締まりきらないことが頻繁に起こります。
ヒアスルー性能&ANC
ヒアスルー性能
ヒアスルーはかなり自然です。自分の声の再現度も高く、ほとんど違和感がありません。
ANC性能
ANCの効果は価格帯では平凡です。ANCをONにするとわずかにホワイトノイズを感じ、少しツンとくる感じがあり、若干静寂感が増します。
ANC傾向としては高域でノイズカット効果が高いようです。アクティブノイズキャンセリングの効果自体は感じられます。空調の音はほとんど聞こえなくなりますが、サーキュレーターの音は低周波が減って少しおとなしく聞こえるようになる程度です。
ANCについての追加情報はマガジン専用コンテンツになります。
Qi規格のワイヤレス充電に対応
ワイヤレス充電に対応しています。Qi規格に対応したワイヤレス充電器があれば、置くだけで充電が可能です。
専用アプリ「Headphones Controller」
専用アプリとしてHeadphones Controllerが用意されています。設定項目は多くありません。
画面
LISTENING CARE
リスニングケア機能のON/OFFを制御します。リスニングケアは音量を上下させても聴覚に合わせてバランスを維持し最適化する音響補正機能です。
NOISE CANCELLING
アクティブノイズキャンセリングのON/OFF、アンビエントサウンドモードの切り替えを行えます。
オートパワーオフ時間
無使用状態の時に自動で電源OFFする時間です。デフォルトは5分に設定されています。5分/30分/1時間/3時間/OFF(ずっと電源ON状態)から選べます。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
マガジン専用コンテンツになります。
音質解説
名門オーディオメーカーのYAMAHAの最上位機種らしい、バランスの取れたフラットに近いサウンドを持っています。見通しの良い正統派モニターサウンドといった感じです。競合するライバルの中ではTechnics EAH-AZ70Wとコンセプトが近い音ですが、よりモニター感の強い音です。中域に適度な響きがあり、奥行きがあって完全に無響な自由音場フラットではありません。音場の広さや低域の重厚感では一般にEAH-AZ70Wのほうが勝ります。TW-E7Aの音は私の好きなNUARL NT01AXの低域を減らしてフラットモニターに近づけたようなサウンドで、個人的には好きですし、音作りが合理的で聴かせどころを押さえており、変な癖がないのに聴かせたい音の方向性が明確で、職人的で熟練したサウンドデザイナーの存在が感じられます。おそらくオーディオ批評的には現状最も優れたサウンドを持つ完全ワイヤレスイヤホンですが、少し音が真面目すぎて保守的な音作りに感じるところはあります。
低域はかなりモニター的で見通しが良いです。深さと重みは少し足りない感じがあり、バスドラムキックは少し軽く、若干リラックスした印象で聞こえますが、厚みは自然に強調され、エレキベースのエッジはきれいに聞こえます。低域弦楽には自然な厚みと透明感があります。
中域はクリアで見通しが良く、少しだけ静寂感があり、響く空間が感じられます。ボーカルフォーカスは良好で、ボーカル表現自体もかなり自然でモニター的です。音場は明るく、見通しが良好ですが、モニターサウンド特有の奥行きに少し欠け、音にやや硬い質感があります。DTM的な雰囲気があるので、打ち込み系のサウンドやサントラはかなり正確できれいな印象で聞こえます。一方でロックは平面的に聞こえやすく、ダイナミズムに欠ける印象を受けるところがあります。
高域もやや分析的なモニターサウンドといった感じで、余韻は適度に抑えられており、音のまとまりがよく聞こえます。
率直に言って、正統派でよく構築されている良質なモニターサウンドで好ましく思える一方で、コンシューマーモデルとしては音作りが真面目すぎる気もします。ただし、レビュアー的観点で言えば、現状の完全ワイヤレスイヤホンの高級モデルでは最も正統派で素晴らしいサウンドだと言えます。面白いかどうかは別にして。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。ソースはFiiO M15を用いています。イヤーピースは標準イヤーピース Sサイズを使い、コーデックはaptXです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
録音機材
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- レコーディングソフト:Audacity
GENS D'ARMES(ロック系)
GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
Sophisticated Fight(ロック系)
Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
TO MAKE THE END OF BATTLE(ロック系)
TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
白き魔女(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
小さな英雄(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 小さな英雄 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
淡い恋 ~Too full with love~(クラシック系)
淡い恋 ~Too full with love~ / イース・ヒーリング / Copyright © Nihon Falcom Corporation
FEENA(EDM系)
FEENA / PROVINCIALISM Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
The Silver Will -ギンノイシ- / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
Sophisticated Fight(JAZZ系)
Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ケノーピ火山(JAZZ系)
ケノーピ火山 / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
QUATERA WOODS(OST系)
QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
幻の大地 セルペンティナ(OST系)
幻の大地 セルペンティナ / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
愛を感じていたい「終焉」(ポップス系)
愛を感じていたい「終焉」 / オリジナル・サウンドトラック 「海の檻歌」~後編~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
魔王ヴェスパー(OST系)
魔王ヴェスパー / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
花と風のうた(JAZZ系)
花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
YAMAHA TW-E7Aは本当にYAMAHAらしいサウンドと言え、ピアノの響きがきれいな正統派のモニターサウンドです。真面目な音作りで手堅い感じがあり、個人的にも好きなサウンド傾向ですが、コンシューマーモデルにしては音作りが少し保守的かなとも思います。ただ、すごく良い音であることは間違いありません。個人的な好みを別にして、レビュアーとして評価する場合、現状の完全ワイヤレスイヤホンで最も優れたサウンドと言えるのはこの機種です。
一方で、使い勝手の点は残念です。音質的な完成度は高いですが、通信品質は悪く、ケースの収納部への収まりが良くないなどいろいろ使い勝手が悪いところがあり、ガジェットとしての完成度は高くありません。
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