- いきなり結論。音質・通信品質ともに相性最強はONKYO GRANBEAT。
- 手持ちじゃないDAPも比較しました。SONY NW-S313
- 実際に試して比較するE8 2.0向きのDAPランキング
- 【総評】E8 2.0の澄んだ音はDAPの個性を引き出すところがある
- 【関連記事】
この記事では、Bang & Olufsen E8 2.0を手持ちのDAPで聞き比べて、音質と通信品質の相性を比較する記事です。というのも、E8 2.0は専用アプリを使用しない場合、通信品質にかなりムラがあるようで、androidを搭載しないDAPの場合、機種によって通信の相性が大きく出ます。
そこで皆さんの参考になるよう、あくまで手持ちの範囲で、しかも個体差があるかもしれませんので確実とはいえないのですが、DAPの音質面と、とくに通信品質面での相性をまとめてみたいと思います。
いきなり結論。音質・通信品質ともに相性最強はONKYO GRANBEAT。
とはいえ、Bang & olufsen E8 2.0を手に入れ、音質と通信面での挙動をだいたい理解したときから、「こいつと相性抜群なのはあいつしかいない!」と私が目星を付けていたDAPがあります。いや、正確にはDAPじゃないかもしれませんけど。
それが「ONKYO GRANBEAT DP-CMX1」!デデデデーン!
ONKYO DP-CMX1 デジタルオーディオプレイヤー GRANBEAT/ハイレゾ対応 ブラック DP-CMX1(B) 【国内正規品】
この機種についてはずっと興味津々だったので、レビューを読み尽くし、店頭試聴を何度もして、その音像を強く押し出すカリカリクールで、低域にもはっきりとした味の出やすい、しかも音場の広さも優秀という音質に一定程度の魅力を感じていたのですが、実は純DAPではなくスマホということもあって、余計なものが付きすぎている気がしていたので、手を出しかねていました。
しかし、androidアプリなしでは心許ないBang & Olufsen E8 2.0の通信品質を根本的に改善するには、アプリを入れるしかありません。Android OS搭載のFiiO M9も候補に挙がりましたが、M9は使用できるアプリを制限しており、調べたところ「Bang & Olufsen」のアプリはホワイトリストに入っていないようで、たぶん使えません(あいまい)。それと個人的にFiioのDAPではX3 MarkIIIを動作が不安定すぎて手放したという事情があって、そのトラウマがあり、店頭でよく試していない状態で買うには抵抗があります。私の個人的な感想だと、FiioのDAPは急速に改善されてはいますが、リリース時の製品完成度は十分でないことも多く、まだまだ動作が不安定でファームウェア更新で使い勝手自体が変わるなどといったピーキーなところがあり、気軽に買える安心感には欠けます。聞いたことがないんで確実ではないんですが、音質的にも批評家レビューを中心に読み込むと、どうもM9はa&norma SR15と同じような優美な系統の音らしいんで、E8 2.0との組み合わせるには少し音質的に柔らかすぎる印象もあります。
そういうわけでいろいろ事情を考慮すれば、スマホアプリを完璧に使えるGRANBEATに軍配が上がります。何より発売から時間が経ってるから、アップデートで使い勝手は成熟してますし、値段も落ち着いてますからね。
音質も相性が良いです。前述したように、はっきりとした性格の音質を持ち、低域にも存在感が感じられる味付けになっているGRANBEATの音質表現は、E8のやや重みの足りない低域を改善してくれるのではないかという期待がありました。というわけで、一も二も無く、GRANBEATをポチりました。
結果はやはり見込み通りで、アプリを通して安定した通信品質を得られるだけでなく、音質的にもE8 2.0の澄み渡るような清潔感を生かしつつ、輪郭をより強調して個々の音の性格をはっきりさせるのでコントラスト感が増し、低域も色味が増して聞こえてきます。現状E8 2.0との相性面でいえば、これ以上のDAPは同じ価格帯では見当たらない気がします。全部試してないので本当かはわかりませんけど。
E8 2.0がなければGRANBEATを手に入れていたかはわかりませんから、ある意味E8 2.0が背中を後押ししてくれました。こういうオーディオの買い方がいいことなのかどうかはわかりません。
手持ちじゃないDAPも比較しました。SONY NW-S313
ソニー SONY ウォークマン Sシリーズ 4GB NW-S313 : Bluetooth対応 最大52時間連続再生 イヤホン付属 2017年モデル ライトピンク NW-S313 PI
ソニーストアで継続的にスヌーピーとのコラボモデルを売っている機種です。スヌーピー好きの家族のためにプレゼント用として購入しました。私の手持ちではないのですが、今回だけお願いして拝借しました。この機種はレビューしていませんが、ハイレゾファイルが再生できないなど欠点が多く、個人的にはこれに手を出すよりは奮発してNW-A55を買った方が価格差以上のパフォーマンスを得られる気がします。とはいえ、せっかく近くにあるのを使わない手はないので、これも比較対象に含めます。
そして、NW-A55と比べるとダメダメみたいなこと言ってますけど、試してみると意外とコイツ、すごいやつでした。
実際に試して比較するE8 2.0向きのDAPランキング
課題曲について
別記事で紹介する予定ですが、このイヤホンの音質で聴くとかなり楽しめると私が個人的に考える曲の中から3曲選びました。
- 勇者パーティー「えんどろ~る!」
- 佐々木恵利「ふゆびより」
- 水瀬いのり&久保ユリカ「More One Night」
それぞれ選曲理由を説明しますと、1.はオーケストラレーションの強い曲でオーケストラとキラキラ甘い声優ボーカルの共存した曲なので、クラシック音楽系の音の鳴り方とカルテットボーカルの重なり具合などがわかります。
TVアニメ「 えんどろ~! 」オープニングテーマ「 えんどろ~る! 」
2.は清潔感の強い曲でとくにボーカルに透けるような感じが出やすく、曲の演出も清潔感が強いので、透明感がわかりやすいです。さらにアコースティックギターの色彩感の色味がしっかりわかるほか、パーカッション周りが意外と多彩なのでとくにシンバルの粒感と光沢感を見ることができます。
3.はエレクトロダンスミュージック系の曲で、音の緻密感とデジタルな音の音味を比較するために選びました。
TVアニメ「 少女終末旅行 」エンディングテーマ「 More One Night 」
以下にテスト結果をレビューしていきますが、通信品質は使用環境や個体差に、音質は最終的に個人の好みに左右されますので、あくまで私がテストした印象ということはご了承ください。
実際試してみると、予想の斜め上を行く結果で驚きました。
【1位】ONKYO GRANBEAT DP-CMX1(通信10 音質10 総合20)
最初に解説しましたが、個人的にGRANBEATはE8 2.0の相方として最高レベルの相性を持っています。
[通信]:Androidアプリを使えるので通信品質面での安定性では申し分なく、自宅なら、10m距離でもかなり頑張って繋いでくれます。同じく自宅環境で5m程度なら問題なし。ついでに言えば、アプリのおかげで基本的にイヤホンの電源を入れれば自動接続します。他のDAPはいちいち接続画面で選択しなければいけませんが、GRANBEATはそこらへんも一枚上手。
[音質]:音質も相性良く思えます。
まず1.の曲ですが、全体的に発色が良いです。基本的に透ける感じのあるE8 2.0の音は淡泊な傾向に聞こえやすいですが、GRANBEATなら輪郭感が強調されて、発色も若干濃くなっているので、コントラストが増しており、明瞭感は高いです。その一方で、E8 2.0の特徴である音場の広さ、圧迫感の無さ、音のすっと抜ける後味、ボーカルの分離感の良さが生かされて、キラキラしながらもしつこさを感じない清涼感のある仕上がりになっています。シンバルがサラサラ、ドラムがやや硬めのポワポワ、ボーカルは澄み渡ります。低域は輪郭感が強くなるのでメリハリが出ますが、やはり重厚感だけは出にくい感じです。
2.ギターに穏やかな厚みが出ます。煌めき感も少し尖りが出て、ギラつく感じが出て、ただ単に穏やか一辺倒というわけではなく、表情があります。ボーカルの分離感は良く、ややウォームで最初は暗い印象も受けますが、サビに向かうほどに透明感を増していき、どんどん明るく澄み渡っていきます。明るすぎない感じでさわやかです。
3.デジタル音は輪郭感がしっかりしてパリパリと刻みが良いですが、尖りは強くなく、なめらかに抜けます。音場も広めで個々の音が充分に踊れる空間があるので、音同士が混じり合って混雑する感じはありません。ボーカルの分離感も良いです。欠点としてはシャープ感は少し足りない印象で、キレには今ひとつ感があります。
[評価]:通信品質に関しては文句なし。アプリのイコライザーも楽しめるので最もE8 2.0の機能性を引き出せる機種であることは間違いありません。音質的にはE8 2.0の最大の弱点とも言える低域の存在感がかなり改善され、全体的なメリハリ感が増すので、いわゆるリスニング向きな派手さが出る点が大きいです。
【2位】SONY NW-A55(通信8 音質9 総合17)
DAP界最高のコスパ、国民的大ヒットDAPで、まさにウォークマン不敗神話を体現しているかのような機種です。徹底的に必要な機能を絞り込み、不要なプレミアム機能は削ぎ落とし、選択と集中でコスパを追求しています。実売2万円を切る価格でDAP史上最高クラスの使い勝手が手に入ります。音質も上位機種にない見通しの良さがあって、実は単純にNW-ZX300のほうが良いとも言い切れないところも。
[通信]:自宅環境では近距離では途切れにくく、5m程度でも比較的安定しています。時々プチプチしますが、平均以上の安定感があります。少なくともE8 2.0との相性に関する限り、上位機種のNW-ZX300よりは断然優秀です。
[音質]:1.の曲は全体的にGRANBEATと同じく輪郭感を強調し、とくに中低域付近が少し存在感が増して、曲全体に躍動感が増している印象を受けます。音場はGRANBEATに比べると少し狭い気がしますが、逆に密度感が出やすくなっているので、少しボリューミーな印象を受けます。コントラストの面でも中高域ではGRANBEATに遜色ないか、場合によって若干勝る印象を受ける気がします。その反面、ボーカルの透明感はGRANBEATのほうが透けた感じがあり、艶やかさで勝る印象を受けます。
2.最初からボーカルが明るめの印象があり、明暗の差がより強い感じを受けるGRANBEATに比べると一貫性があります。悪く言えば、一本調子な感じではあります。ギターもキラ味があり、ギラつきがほどよく出る傾向はGRANBEATと同様です。ドラムはサラサラした感じで、存在感が少し薄いです。
3.の曲については同じように輪郭感を強調するGRANBEATに比べると低域はやや薄味に思いますが、音場がやや狭い感じで左右が近く、中域付近にボリューム感があります。高域も少し発色が良い感じがあって、ドンシャリ感はむしろGRANBEATより強い感じで、楽しいです。一般的に高級オーディオ好きほど音場を気にする傾向がある気がするので、音場感の差でGRANBEATのほうがE8 2.0を買うような購買層には好まれると思いますが、はっきり言って価格差を考えると、NW-A55の優秀さが光ります。
[評価]:DAPに関してはSONYすげぇの一言です。コスパ良すぎ、コスパ良すぎとしか言えないです。もしこのランキングにコスパという項目があったら、GRANBEATをたぶん逆転できます。
【2位】SONY NW-S313(通信10 音質7 総合17)
今回のダークホース。正直ついでにレビューしてやるかくらいの気持ちで今回使ってみていて、「あーやっぱり天下のNW-A55様に比べると、いろいろ不満なところがあるよねープププッ」って感じでお茶を濁して、レビューのボリュームを増すことを目的にしてテストした観があるんですが、結果は驚くべき大健闘でした。通信品質が良い意味でやばいです。アプリなしでド安定。びっくりです。むしろNW-ZX300とは何なのかと言いたいくらいSONYの低価格機種の実力恐るべし。
[通信]:自宅環境なら10m範囲を動き回っても結構途切れません。自分の部屋にこの機種を置き、E8 2.0をつけたまま階段を降りてトイレに入っても切れません。トイレのドアを閉めたら途切れました。アプリなしでこのレベルは他にありません。アプリありの格安スマホ、Fujhitsu arrows M03よりむしろ途切れません。それくらい優秀。
[音質]:音質に関しては解像度感は率直に言って悪く、個々の音を聴くとモサモサしてるんですけど、全体の雰囲気はかなりいいです。あとおそらく音場が狭いせいだと思うのですが、中低域にボリューム感があって、かなりE8 2.0の弱点を補ってくれます。E8 2.0の音はすっきりしすぎてR&Bの空気感とかいまいち感じられないところがあったんですが、私の印象ではNW-313と組めばかなり音に厚みが出るので、むしろ解像度高すぎない感じが空気感に感じられてムードが出ます。ただしE8 2.0の本来の魅力を出しているというよりはむしろ出しぎないから万能に近い音に感じるという、ある意味矛盾した表現ではあり、素直に喜べない感じもします。
1.の曲では輪郭感が抑えめになるので、音に膨張感を感じます。E8 2.0のすっきりした音の鳴らし方、ボーカルの分離感のよさは維持されているので、むしろ解像度感が維持されたままウォーム方向に振られた音質で、お互いの個性がうまく混じり合っている感じがします。ボーカルの透明感はかなり失われる印象ですが、かわりにミルクのような甘味が出てきてほっこりしており、弦楽や木管にも全体的にまろみが出て、充実感が出ています。音場は狭い印象です。音のパリパリ感が抜けていて、むしろイコライザーの「WARM」よりしっかりしたウォーム感があります。こんなの「E8 2.0の音じゃない!」って言われれば、半分は音味の印象が変わっているので、その通りですけど。
2.については、用意した音源がハイレゾ音源だったんで、ハイレゾ曲を再生出来ないこの機種では再生不可でした。なのでこの曲についてはレビューをスルーします。自分のDAPじゃないうえに、この機種はおまけ扱いで完全に伏兵だったんで、ここらへんのファイル対応状況についてすっかりド忘れしてました。mp3に音質を落としたファイルを別に用意して聞き比べることも考えたんですけど、公平性を考えたのと、何より時間がなかったので。ごめんなさい。
3.の曲でも音場はやや狭い感じがあるのですが、それがよい方向に作用しているのか音が近めに感じるのでボリューム感があるのと、包まれている感覚が出ています。それでいて、E8 2.0の輪郭感のよいところはデジタル音にはしっかり出ており、とっかかりがかなり感じられるのに、音が柔らかくなめらかですっと抜けるという、なかなか絶妙のバランスになっています。解像度感はイマイチなところがあって、すこしぼやーっとした感じではありますが、もともとのさわやかな聴き心地にウォームさが加わって、ますます耳当たり良く感じます。
[評価]:私の感覚では、NW-A55より下位の機種は「アウトオブ眼中」って感じだったんですけど、見直しました。今回テストしてみて、上位機種とは異なる、以前のNW-A27に近い、わかりやすいインターフェース、きびきびした軽い動作、軽量で持ちやすいコンパクトボディなどを体感しました。低価格機種と多少侮っていた自分が恥ずかしく、SONYやべぇなって恐怖感すら感じました。ウォークマン不敗神話のもう一人の立役者を見つけた気持ちです。……とはいえ、ハイレゾ再生出来ないんで、結局アウトオブ眼中なんですけど。この機種がもしハイレゾ再生対応したら、場合によってNW-A55食いに行けますね。
【4位】Activio CT10(通信8 音質8 総合16)
不満はいろいろあったりするんですけど、なんだかんだいって触り心地が良くて手に馴染むデザインと優美で華やかな音質が好きで、ずーっと愛用している機種です。
[通信]:自宅環境だと2m以内くらいの近距離ではかなり安定度が高いです。2m越えて距離を取ったくらいで途端に、逆鱗に触れたかのようにブチブチブチって切れてくるんですけど、近距離ならかなり快適に使えるので通信評価は高めにしました。
[音質]:中高域で光沢感を増した感じで聞かせてくれます。ある意味、素直にE8 2.0の味わいを出す感じで、艶やか方向に振れるだけ音の発色がよくなり、音場の広さもかなり維持されていてスッキリ感が維持されています。
1.ではツヤが出たおかげでハープサウンドや弦楽がかなりキラキラ目立ってきて、華やかさが出て楽しいです。ボーカルもちょっとキラキラしてアイドルっぽい雰囲気が増します。
2.やや艶っぽい感じが出るせいか、ボーカルの色味は少し濃く感じ、弦楽もまろやかな光沢で聞こえてきます。全体的にまろみが増していて、とろみが出た感じで聴けます。ややぼやっとした感じはあり、E8 2.0の特徴である澄み切った感じが減った気がするのは事実ですが、ぶっちゃけ私好みの表現です。
3.電子音もかなりまろやかな感じで、とろとろとろっとした出だしに、後味はすーっと抜けるバランスで聴けます。衝撃音などはエッジが丸く、全体的にウォーム方向に寄せた印象を受けます。同じような印象を受けるNW-S313とは解像度と音場に差があり、より空間に清潔な感じがあって音像もしっかりしています。
[評価]:やや丸くとろかした感じの耳当たり良さをどう評価するかで意見は分かれそうですが、総じてE8 2.0らしさを出しつつ、より満腹感をえられやすい方向に味付けされる印象で、私はかなり高評価です。近距離に限れば通信品質もかなり安定するので、使い方によっては相性はかなり良いです。
【5位】SONY NW-A27(通信9 音質5 総合14)
なんだかんだいっていろいろ便利なので手放せない旧機種です。音質的には最新のNW-A55と比べるといろいろつらいところを感じます。ただし妙に金物のシャープネスを強調するところがあって、シャリ味がはっきりわかりやすく、E8 2.0と組み合わせると若干発色が悪いRHA TrueConecctくらいのソリッド感は出ます。←わかりづらい
[通信]:アプリなしにも拘わらず、かなりド安定です。NW-S313が現れるまではアプリなし最強の通信安定性を持っていて、自宅環境では5m程度でもかなり安定、10mでも少し途切れやすいくらいの優秀さ。そもそもBluetoothのバージョンは3.0でここに掲載されている他機種に大きく劣るはずですが、安定感のある理由は謎です。現状の私では、とにかく相性がいいとしか言いようがないです。
[音質]:発色はちょっと悪いところがあり、低音量では特に若干曇った印象を受けますが、金物のソリッド感が良く、なかなか塩味が効いて聞こえてきます。一方で高域ののびやかさはあまり出ない感じで、E8 2.0と組み合わせるとなんとなく中域充実のバランスで聞こえます。
1.金管の渋みと金物の砂粒感が強いので、雰囲気的にどちらかといえばJAZZ味が強いです。曲調自体は華やかなキラキラポップス系アニソンなんですけど、ところどころシンバルがむちゃくちゃ自己主張してくるところがあって、しかも全体的に音が若干発色を抑えている印象があるので、シンバルだけ余計に目立ちます。全曲通してスチャスチャスチャした音を出すシンバルが「俺が主役だ」ってくらい目立っていて、ある意味これはこれで楽しいです。音場は狭いほうなので相対的に音が近い感じもありますが、華やかな系統のCT10の音とかと比べると、暗い印象を受けます。
2.に関しては色味を抑えた感じがなかなかよく、ボーカルはかなり下の方の息感を強調した感じでハスキー感が出ます。反対にアコースティックギターの色味が若干明るく浮かび上がるバランスになっており、コントラスト感はいいです。全体的に輪郭感や解像度感を出しすぎない感じも良く、ウォームな印象はあまりないですが、クールな傾向も抑えられてニュートラルな音の雰囲気を感じます。弦楽はやや奥まって、のびる感じはあまり強くなく、存在感がなかなか出てこないので、どちらかといえばフレーバーに徹している、おとなしめのバランスに感じるので、奥行き感はあまり感じず、手前のアコースティックギターとボーカル中心で聞こえます。全体的に大人びた印象を受けます。
3.ボサボサした感じはありますが、ある意味黒みを感じるので、意外とコントラストは締まった印象を受けます。音の輪郭感は少しボケっとしていますが、電子ドラムの音が奏でる細かい疾走感を出す音がソリッド感良く出るので、リズム感は明瞭です。ていうか発色抑えめな感じが意外と大人びて、しかもE8 2.0のスラッとした音の傾向が生きているので、妙にスタイリッシュです。都会的な雰囲気になっていてちょっと好きかも知れません。
[評価]:古い機種にも拘わらず、通信品質が高く、音質的には色味を抑えて灰色な感じがあるのですが、それが逆に締まった雰囲気を感じさせるところがあります。シンバルやデジタルドラムの粒感が強調された感じは結構楽しく、RHA系の音に聞こえます。いや、もしかすると長年使っているDAPなので、私のRHA観を作っているのがむしろこのDAPじゃないかという見方も成り立つわけで、どっちがどっちだか。ほかのDAPと違って小音量では音像がうまく出なくて篭もる感じがあり、大音量にすると圧迫感が出るのでややピーキーなところはあります。発色が悪すぎると思う場合は音量を上げれば改善される傾向にありますが、音量を出しすぎるとうるさくなるので、結局毎回発色は微妙なラインで楽しむことになると思います。
【5位】Pioneer XDP-20(通信7 音質7 総合14)
あんまりネット上の評判を聞かない機種ですよね。評論家は案外褒めたレビューを書いている人が多いんですけど、いかんせんNW-A55がガチライバルになる価格帯。現状コスパ最強DAPの名をほしいままにし、ミドルエントリー史上最強との呼び声も高い完成度のDAPが相手だとだいぶ分が悪いところがあって、音質が似た傾向というのもあって完全に勢いを削がれている印象があります。「こ、こっちは、ば、バランス接続できますよぅ……」という、か細い声しか聞こえてこないイメージ。しかし私にはNW-A55より低域の存在感がある印象で音にそれなりの厚みもあって、価格帯では充実感の高い音質です。デザイン、連続再生時間、ブランドとしての安定感ほか、いろいろ考えると、NW-A55を結局選んじゃいますけどね!ていうかONKYOって今じゃいまいちな印象ありますけど、少し前のCDとかMDコンポの時代は圧倒的存在感があった気がするのですが。SOTECを買収した時には、ああ、それ拾っちゃうんだ……って思いました。私の親友がSOTECのPC買ってさんざんな思いしてたのを知っていたので……。ていうかONKYOのPC部門は結局どうなったんだ?……話がそれました。
実際、このDAPは捨てたもんじゃなくて、インターフェースやアクセサリーとしてのデザインがいまいち練られていないところと、連続再生時間などのバッテリー関連にもっと手を入れて洗練させれば、見違えたように好評で迎えられそうなポテンシャルを秘めています。実際音はNW-A55に対して中低域の方にはボリューム感があり、コントラストの関係で高域の光沢感も出やすいところがあって良い印象です。この機種に意外と愛着を感じてきた今日この頃。ただ、動作のもたつきだけはなんとかせい!……思えばGRANBEAT買ってもいいかなって思ったのも、この機種が案外悪くなかったところにあるのかも。
[通信]:通信品質は意外と安定しています。じつは距離による途切れはあまりなくて、5m程度もそれなりに安定しています。むしろ普段からときどき結構派手にプチプチ切れるのが気になります。距離を問わず時々派手にプチプチ切れるこの機種と、一定距離内はド安定傾向で、距離をとると派手にブチブチするCT10とどちらがよいかは難しいところですが、一般的な使用状況を考えると近距離でより安定した使い勝手があるCT10のほうがよいんじゃないかと思って差を付けました。あとこれはXDP-20のほうが悪いのかはわかりませんが、時々再生中の曲を別の曲に変更すると、接続は維持されているのに突然音が出なくなります。こうなるとたぶん、復旧方法は接続し直すしかないと思います。
[音質]:あくまでE8 2.0の清涼感を生かしているかってあたりを重視しちゃったんで、こっちは少し下が重たい気がしたので、同じ系統のNW-A55と少し差を付けちゃった感じですけど、むしろコントラスト感はNW-A55より優秀な印象もあり、上ではCT10ばりの華やかな雰囲気を出す感じもあります。
たとえば1.の曲ですが、音味は同じONKYO系のGRANBEATのほうが音場が広く、すっきりした清潔感が活きていて、低域も深さを感じやすいという利点がありますが、XDP-20は音場はやや狭いかわりに全体の音がボリューミーかつ発色が少し華やかになっていて、シンバルの八色が少し増して粒感がかなり目立ちます。また中低域が少し太いので温かみが感じられるようになっており、その分さわやかさは劣りますが、充実感があります。
2.の曲については率直に言って、好みの問題とは思いつつ、XDP-20をNW-A55より低くしたのはこの曲での清潔感の差です。この曲に関してはむしろ低域のボリューム感を抑えめなNW-A55のほうが高域の輪郭感と静謐な透明感の印象が良く、よりクールで冷えた、張り詰める空気感を感じます。XDP-20のほうがウォーム傾向です。ぶっちゃけこれくらいの差だと気分によっても「やっぱこっちがいいかな」って揺れ戻しはあったりするんで、最終的には今日の私の気分がNW-A55の少し張り詰めた緊張感のある音により妙味を感じたといったくらいなんですけどね。そうすると、じゃあNW-A55が音質9なんだから音質8でいいじゃないって話も当然出てきて良いはずなんですが、CT10の音がまた良い感じで華やかで優美なので、それに比べるとXDP-20を上には考えられないところもあって、結局もろもろの事情でこんな感じの評価になっていますが、もしかすると順位はもう少し上でもいいかもしれないという感じです。
3.ライバルのNW-A55よりは低域に膨張感が感じられるところがあり、ボリューム感では勝るかも知れませんが、その分輪郭感は少しやわらかく聞こえる印象がありますから、高域の発色と緻密感で劣る印象を受けるかも知れないです。全体的な印象自体は結構似ている気がします。
[評価]:なにかとNW-A55に一歩及ばない感じがあります。仮に音質は好みの差として互角と評するにしても、通信品質と動作の軽快さなんかではかなり後れを取ります。そこらへんを含めますと、むしろここでの評価以上に使い勝手の差は広がってしまうかも知れません。
【7位】SONY NW-ZX300(通信5 音質8 総合13)
SONYが誇る名機です。もはや語ることはあまりありません。
[通信]:こいつがBang & Olufsen E8 2.0は通信が切れやすいという私のイメージを形成した張本人っぽいです。距離による途絶は2m程度は意外と安定していて、5m程度で少しプチプチしますが、すぐ復帰します。かなり安定している印象に思うかも知れませんが、曲によるのか別の要因によるのかわかりませんが、肌身離さずというレベルで近くにあっても、時々かなりひどい感じでブチブチブチって切れます。何が悪いのかよくわからないのですが、とにかく途切れ方が酷いので異様に目立ちます。
[音質]:このDAPはやや重厚よりの大人びた色合いの音を丁寧に出すところが好きです。輪郭感をあまり強調しているようには思えないにも拘わらず、実際にはソリッド感もかなり感じられる音で、輪郭を悪目立ちさせずに、でも実はしっかり聴かせるバランスの良い解像度感を持っているところも品が良いです。ある意味派手さのない音で、アニソンのような煌めき感がほしい曲では少し落ち着きすぎているところもあるのですが、ビターな風味の欲しいJAZZでは鬼神のごとき表現力を感じさせて、さすがのSONYサウンドです。爽快な清涼感より濃厚な空気感に強みのある機種で、そうするとE8 2.0とは得意分野が逆方向を向いていて、あまり被らない感じはあります。
1.の曲については豊穣という表現が合うほどに、今回のDAPの中では一番に近いくらい、中域にまろやかで濃厚な感じが感じられ、シンバルの粒感もかなり上位です。ただしシンバルの色味は比較的淡いので目立ちません。同じSONYのNW-A55よりは高域あたりの輪郭感や発色は少し抑えた感じで大人びて感じられますが、この曲に関しては私はもうちょっと明るくていい気がするので評価は若干低くしました。あとこれも好みでしょうが、GRANBEATに比べると空間がもう少し充満しており、フロアノイズのような空気感が出やすい印象があり、清潔感は若干劣ります。そのため分離感はGRANBEATに劣る印象を受けやすいです。
2.の曲に関しては中域に匂い立つような艶味があり、ボーカルもふっくらした感じがあり、上の方では清潔感を感じさせながら、下の方で温かみのある生気感があります。背景の弦楽は太く、茶色っぽい木材的な材質感のある焦げた風味のある音で、薫るフレーバー感が秀逸で、正直素晴らしいです。この曲に関しては高級コーヒーを味わうような濃厚な味わいに満点をあげたいくらいです。NW-ZX300はアコースティックな曲には本当に素晴らしい表現力を持っているなぁって思います。
3,の曲では全体的に音は太く、かなり重みもあり、とくにピアノの重厚感がこれまでのDAPとは別格で、比較的ドンが出づらいE8 2.0でもたしかな重みを感じさせてくれます。ただある意味、ほぼ完全にすっきり感が減っている印象を受けるので、これはすごくいい表現なんですけど、かなり大味な感じがします。色のコントラスト感も良く、キレのある楽しい音で個人的にはすごく好きですし楽しいんですけど、GRANBEATの見通しの良さがある音の方が、ここは正解としたいです。難しいですが。結構重くべたーっとした油絵の具のような濃い音に聞こえやすいので、若干聞き疲れしやすいバランスになると思います。
[評価]:すごく迷ってGRANBEATやNW-A55と差を付けた感じですけど、この機種の濃厚感のある音が音質No.1という人も多いはずで、差をつけたのはやはり最終的には私の考えるE8 2.0をよりよく表現してるのはどちらかという思想の問題で差を付けました。曲によっても評価は変わるはずで、今回はアニソン中心に選んだので損をしているとも言えます。
【8位】a&norma SR15(通信4 音質5 総合9)
私の手持ちの中で最も品の良い、たおやかな音を奏でてくれてお気に入りのSR15ですが、同じように音場重視でさわやかで風雅な音を持つE8 2.0と組み合わせたら、薄味過ぎる音ができてしまいました。音量をどこまで上げてもスッキリさらさらなサウンドを奏でてくれますが、かなり無色透明な感じがあって逆に捉えどころがなさ過ぎます。いや、こういう音が好きな人はどこかにいるはずなのですが、多くの人が凹凸感が少なすぎておとなしすぎる印象を受ける気がしますので、私にはちょっと万人向きには思えません。
[通信]:音質は置いておくにしても、通信品質の相性にも問題を抱えています。同じAstell&Kern系のCT10と同じように2mくらい離れると派手にブチブチ途切れるほか、5mくらい離れると場合によって接続自体が切れます。本当に相性良くないかもしれないって思います。
[音質]:一言で言うと、さわやかさ100%過ぎて薄味です。優美で妙に淡く華やかな色合いを感じるんですけど、広い音場の中に少し優しめに聞こえてくる感じがあって、解像度感が異常に良いんですけど、すごく掴みにくいところのある音です。全体的に音に優美で透ける感じが強く、音量を上げないと音の色味をつかみ取りにくく、音量を上げてもうるさい感じがないのは良いんですが、バッテリー消費が激しくなります。うーん。最高に澄み渡った高級シルクのような音ではあるので、心地よいことは確かですが、うーん。たとえばSR15は高域は素晴らしく伸びるんだけど、ちょっと音場の広さや分離感に欠けるかなぁって感じのNUARL NT01AXさんと組み合わせると、「何、このすっきりと天井まで届くのびやかさがありながら、ツヤツヤキラキラっとした艶やかさもある音、神がかってる!しかも膨張感のある柔らかい弾力の中低域がそれを品良く包み込んでいて、優美な中にもたしかな脈動する生命を感じられるんだけど!ちょっとやばいですわー!」くらいの感動があるんですけど、E8 2.0との組み合わせは全体的にさらさらしすぎてもはや「ふわふわとした何かが風に乗ってほのかに聞こえてくる」としか言えないレベルです。いや、これはさすがに言い過ぎかも知れないですが。
というわけで、1.を聴いてもサラッサラ。つやっとした光沢感が淡く感じられるので、どことなく優美なんですけど、どの楽器音にもとっかかりが感じられず、かなりの音量にしないと音の色味や輪郭感が見えてきません。全体的に解像度は素晴らしく、音場も広くて薄味なのに表面的な印象ほどスカスカしてないんですけど、小音量じゃ個々の音の存在感が減るので、スカスカして感じられます。
2.の曲も全体的に淡く、澄んだ透明感を持ったボーカルがむしろ一番聞こえが良く、このボーカルを透明感重視で聴くならおそらく全DAP見渡しても最強クラスなんですけど、全体的に落ち着きすぎで、弦楽とかそれなりの音量にしてもあんまり存在感を出さずに背景に溶け込んでいます。ある意味最高に上品に聞こえる音で沁み込んでくる音なんですけど、いかんせん、薄味で沁み込んでくるので、味がしません。これは薄すぎるという人が大部分だと思います。
3.もさっぱり淡い感じでスムースです。ボーカルもかなり透けた感じで、楽器音も全体的に輪郭以外は透けている感じで、無菌室のような、かなり清潔で透明な空間を感じます。この曲、こんなすっきりしてたっけ?ってくらいさわやか。
[評価]:ある意味清潔感のある音の極北で、これほどの表現は他の組み合わせではちょっと味わえないくらいの音なんですけど、魅力的かというと微妙です。そして通信品質は素直に厳しいので、個人的な意見としては、相性は最も良くない印象です。でも音質的にはすっごく清潔で品が良い表現の組み合わせなので、是非聴いてみてほしい組み合わせでもあります。
【総評】E8 2.0の澄んだ音はDAPの個性を引き出すところがある
今回テストして思ったのは、E8 2.0は自身の音はそれほど自己主張が強くなく、むしろDAPの音の癖が純粋に出やすいところがあるということです。ほかの完全ワイヤレスイヤホンに比べると、DAPごとの色味の変化を味わいやすいところがあって、全体の見通しのよさ、個々の音の分離感の良さ、透けるように色味の少ない音の感じがDAPの音場の広さの違いや、音の傾向、色味をより感じさせてくれるようです。
ていうか、第一印象的にはさわやかさが一番の美点だなぁって感じの完全ワイヤレスイヤホンに思えてたんですけど、かなり表情変化のあるイコライザーを搭載していることなんかを考えると、むしろ音にこだわるオーディオファンほど総合的にかなり楽しめる製品かも知れません。
私の大好きなKOKIAさんの「本当の音」って曲があるんですが、私の中でのE8 2.0のサウンドイメージはいまのところこの曲です。
あとはこの曲かな。たぶん大抵のイヤホンやスピーカーでボーカルが澄んで息感だけシャープに撥ねる感じと清涼な空間表現を感じると思うんですけど、こういう音の方向で聞かせるのがE8 2.0って感じです。このイヤホンの音をイメージするときに、サウンドイメージ的にはこういう方向性でいいと思います。少なくとも私の中ではこういうイヤホンです。人によってサウンドイメージって結構違ったりするので難しいんですけど。
【関連記事】