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【完全ワイヤレスイヤホン Bang & Olufsen E8 2.0 レビュー】そのさわやかで見通しの良い音場は健在。高級感と機能性を増し、最大再生時間も向上。安定動作にはアプリ必須。おすすめ

 

Bang & olufsen E8 2.0

Bang & olufsen E8 2.0

Bang & Olufsen 完全ワイヤレスイヤホン Beoplay E8 2.0 NFMI/AAC/Qi充電対応 防塵防滴仕様 リモコン・マイク付き 通話可能 インディゴブルー(Indigo Blue) 高級オーディオブランド 【国内正規品/保証期間2年】

 

 

 今回Bang & olufsen E8 2.0を手に入れることができましたので、レビューをお届けいたします。なるべく中立的に書いたつもりですが、商品提供を受けて執筆した記事なので、本当に中立的かは自信がありません。PRレビューなんだということをあらかじめ了承して読んで頂けると助かります。これからこの機種について特集シリーズで聞き比べなどをする予定です。より詳しい特徴がわかったら、このレビューに適宜情報を追加・修正いたします。

 普段のレビューはダイジェストって感じで書いてますけど、今回は商品提供を受けていることもあり、なるべく広汎に、深掘りした記事を目指しています。理想としてはBang & Olufsen E8 2.0の完全攻略本ってくらいのレビューができれば御の字です。……まあ機材とか限られているので、完全攻略本ってレベルまでは不可能ですけど……。

 

B&O E8 2.0を4行で紹介すると

  1. 2019年2月現在、外観デザインの高級感・造形は完全ワイヤレスモデルで最も優れる
  2. アプリやバッテリー関連は現状屈指の高機能で、音場の広い音質も高評価
  3. 通信性能・最大再生時間などのスペックは1世代古い
  4. 安定して使用するためにはアプリ必須

 

【1】はじめに

完実電気とは?

 このレビューは完実電気株式会社さんから製品を提供して頂いて執筆しております。

 完実電気という会社はよほどオーディオ好きでないとご存知ないかも知れませんが、多くの海外有名ブランドのオーディオの日本正規代理店をしている老舗商社さんです。取り扱っているブランドで一番有名なのはSHUREだと思いますが、他にもbeats by Dr. Dre、Master & Dynamicなどを扱っています。

 現状で私が寝ホンの定番として使っているSMILE JAMAICA WIRELESSのThe House of Marleyや、愛用しているER3XRのEtymotic Research、最近手に入れたZik3のParrotも完実電気さんが正規代理店をしています。

 そして今回レビューいたしますE8 2.0を作ったデンマークの高級オーディオメーカー、Bang & Olfusen も完実電気さんが取り扱っております。

kanjitsu.com

 

Bang & Olufsen という企業について

 Bang & Olufsen(B&O)とは、デンマークのラグジュアリー(高級品)オーディオ企業で、いわゆる北欧デザインといわれる機能美溢れる製品を世に送り出してきた、ヨーロッパを代表するオーディオブランドです。日本で製品が一般に売られるようになったのは比較的最近のことで、2000年代になってからです。

www.bang-olufsen.com

 

Bang & Olufsen E8、なんだかんだいって広く支持されている機種

  今回紹介する完全ワイヤレスイヤホン Bang & Olufsen E8 2.0はBang & Olufsen E8のメジャーアップデートバージョンとなります。E8は日本ではそれほど人気が高いというわけではない機種ですが、欧米では人気が高い機種です。

 Bang & Olufsenらしい品格のあるゆったりとした豊かな音場感のあるサウンドを完全ワイヤレスで実現し、しかもガジェットのレベルを越えた高級感溢れる洗練されたデザインに多くの評論家が惹きつけられました。

 それ以上に評価されているのは、本体のみならずアプリまでユーサビリティが考慮された機能美を備えているところと、細かなバグや音質の改善を丁寧に行う頻繁なファームウェアアップデートを続ける実直なクラフツマン精神、きめ細やかなユーザーサポート体制です。

 日本でかなり高い人気を誇る’(しかも私が大好きな)メーカーにドイツのSENNHEISERというオーディオブランドがありますが、そのブランドが初めて出し、評論家が大絶賛した完全ワイヤレスイヤホン MOMENTUM True Wireless(MTW)という機種は、このBang & olfusen E8を最も意識していたということがまことしやかに言われているくらいです。

 実際、アプリのイコライザーデザインやイヤホンのデザイン、ヒアスルーなどの機能面でE8とMTWはよく似ています。同じデンマークのブランドJabraの65tシリーズとともに完全ワイヤレスイヤホンでは機能性の高い製品として著名ですが、Jabraがスポーツやビジネス向けのモデルとして人気があるのに対し、B&Oは美学的水準まで洗練されたデザインや音質の良さがオーディオファンに評価されています。

 日本でもユーザーレビューや口コミに比較的忠実な傾向で評価される「価格.comプロダクトアワード」でオーディオ部門大賞を受賞しており、使用者の満足度は高いということがわかります。

corporate.kakaku.com

www.ear-phone-review.com

 

E8 2.0はここが変わった!ワイヤレス充電に対応し、外観の高級感もアップ!

 そのE8のメジャーアップデートとして2/28に日本で販売解禁されるのが、このE8 2.0です。基本的に機能強化に重点が置かれており、イヤホン部分の音質には手を入れていないとされています。

 すでに高級感満点だった牛革ケースは、以前のプラスチック部分が新たにヘアライン仕上げのアルミに替えられており、高級感はさらにパワーアップしていますが、機能的にも強化されており、Qi規格のワイヤレス充電と急速充電に対応しただけでなく、バッテリー容量も増して約1.5倍になりました。そのため、最大再生時間が12時間から16時間に伸びています。

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問題なくQi規格でワイヤレス充電されます

 

 

【2】装着感/遮音性/通信品質「アプリを使わないと通信品質はかなり厳しい」

おすすめ度*1

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ASIN

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  イヤホンの装着感はSENNHEISER MOMENTUM True Wireless(MTW)より若干優しく、Jabra Elite Active 65t(EA65t)よりは少し硬いといった印象を受けます。MTWやEA65tは装着感について好意的な評価のレビューが多いと思いますが、私が店員に聞き取りしたり、穿ってレビューを読んだ感じでは、装着感が合わないという人も一定数いるようで、そうすると同じ系統の装着感であるこの機種も、うまく装着できないという人はそれなりにいるかもしれません。遮音性は比較的高めです。完全に密閉される感じではなく、無音状態では人の声を中心にそれなりに聞こえます。音漏れも少なめ。

 

快適な通信のためにはアプリ必須!アプリなしの「素」の通信品質は安定しない

 aptXには対応せず、SBC/AACだけ対応します。Bluetoothの世代が最新じゃない4.2。

 この機種をアプリが入れられない普通のデジタルオーディオプレーヤー(DAP)とつないで試してみると、通信品質は率直に言ってかなり厳しいです。それなりの頻度で途絶や遅延があり、たまたまだったのかもしれませんが、極端なケースでは、あくびをしただけで片耳がブチブチ途切れました。Jabra Elite Active 65tやSENNHEISER MOMENTUM True Wirelessと比べるとかなり不安定な印象です。

 また距離による遅延・途絶も発生しやすく、音源から2m程度離れてもプチプチ切れることが多いです。Bluetooth 4.2の機種って自宅くらいの通信が混雑しないところなら、5mくらい離れても安定して使える機種が多かったっていうか、そういう機種ばかり使ってたんですけど、珍しい例外として、このE8シリーズは通信品質はかなり弱いと感じます。

 

手持ちのDAPの中では例外的にSONY NW-A27とだけは通信相性が良い

 なお実は私は以前持っていたE8のほうがE8 2.0より通信安定性が高かった印象がありました。よくその原因を探った結果、どうしてそう感じたのか理由がわかりました。

 この機種と手持ちの各DAPの相性比較テストに入って、あれこれ比較していて気づいたんですけど、私の手持ちのDAPの中で長年使っているSONY NW-A27とだけはE8 2.0は相性が良く、ほぼ途切れません。5m程度距離を取るとさすがにプチプチし出すんですけど、2mくらいはかなり安定しています。実はE8を買い、レビューを書いたときはほぼSONY NW-A27しか使ってなかったんです。たぶんActivio CT10とFiiO X3 Mark3は持ってた時期ですけど、今と違って、ほとんどNW-A27だけを使っていた時期でした。

 ちなみにほかにはNW-A55も比較的相性が良い感じですけど、NW-A27との通信相性には劣ります。私の知識では、DAPの中でNW-A27とだけ異常に相性がよい理由は不明です。

 

アプリを使った場合の通信品質の向上について

 しかし、アプリを入れたandroidスマホやタブレットとつなぐと、充分な通信品質を得られることがわかりました。詳しくは以下にまとめております。

www.ear-phone-review.com

 

Bang & Olufsen E8 2.0と代表的なDAPを組み合わせた場合の通信品質・音質比較について

 DAPを比較して通信品質と音質の相性について比較しています。以下の記事を参考にしてください。

www.ear-phone-review.com

 

【3】外観・インターフェース・付属品「外観に妥協なし。ヒアスルーはかなり優秀。付属アプリも機能的で使いやすい」

一番の魅力、それは機能美に満ちた品格ある外観

 数ある完全ワイヤレスイヤホンの中でも、その格調高いデザインと、それに見合う目玉が飛び出るくらいのお値段で大人のオーディオとして見られているE8を、2.0ではさらに洗練させており、大人のアイテムとしての風格が増しています。外観がとても機能美に満ちていてかっこよく、一番のアピールポイントとなっていますが、同じようにラグジュアリーデザインを採用しているライバルにMTWがいます。参考になるよう、MTWと比較した写真を載せます。こだわりの面でE8 2.0が一歩先んじている感じがうまく伝わればいいのですが。

 もちろん外観デザインなんて、最後は好みですけど。画質が悪いのだけお許し下さい。

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 「製品の顔」ともいえるバッテリーケースについては、フェルト地とプラスチックのMTWに比べて、牛革とヘアライン仕上げのアルミを組み合わせたE8 2.0のほうがよりラグジュアリー感があります。その美的配慮は徹底していて、各種認可基準マークもMTWは底面に刻印されているのに対し、E8 2.0はE8のときと同じく、蓋の裏側に記載されていて、外からは見えません。高級感のある外観をどこまでも楽しんで欲しいというデザイナーの粋な配慮を感じます。

 贈答品としても、化粧箱を開けたときの配置や余白の取り方が考えられていて、MTWの少し窮屈な収納具合に比べると、いかにも高級オーディオらしい風格があり、見た目の豪華さで勝ります。

 

 付属品はTxタイプ(耳垢ガード付き)のコンプライを含むイヤーピースの替え、充電ケーブル(USB Type-C)、専用充電ケース、日本語含む多言語説明書。

 

 操作インターフェースはタッチパネル式。反応はMTWに近く、ほぼ同等の使い勝手。好みはあるでしょうが、私は操作感がしっかりとわかり、誤操作も少ない物理ボタン式の方が個人的に使いやすくて好きなので、これは少し悲しく思います。

 

自動接続・切断に関しては十分でない

 最近の完全ワイヤレスイヤホンは自動ペアリング・自動接続・自動切断を実現して、「ケースからイヤホンを出したらすぐ使える」というような利便性を実現しています。E8 2.0に関してはペアリングや接続は完全自動ではなく、タッチパネルを長押しクリックする手間があります。これは人によって煩わしいでしょう。私は複数のデジタルオーディオプレーヤー(DAP)を使い分けていたりするので自動接続しないほうが便利だったりすることもあるのですが、おそらく例外的です。

 さらに前述したようにアプリを使えない状況では通信品質はあまりよくないところがあるので、ペアリングや接続がうまくいかないことも多いです。私は聞き比べの時とかに複数機種を何度も接続し直すことがあるのですが、E8 2.0だけはそういうとき手間取りやすいです。ライバルのMTWはこの点スムーズです。

 

 あと接続先のDAPを切り替えながら使っていたら、いつの間にか2台のDAPに同時接続される現象が起きました。一瞬「この機種はマルチポイント対応なのか!」と驚きましたが、どうもバグっただけらしく、同時に接続したDAPをそれぞれ操作しても両方から音が出ませんでした。一度切断して繋ぎ直すと正常になりました。普通は接続先が変わったら前に接続している機種とは自動で切れるのが普通なので、この現象はほかの完全ワイヤレスイヤホンではあまり見たことがありません、というか見たのは初めてです。

 DAPに接続されても音が出ないというパターンもあります。この場合も一度切断して繋ぎ直す必要があります。

 

 以上の挙動を見て考えると、この機種の特性として、2段階で機器と接続をしている可能性があります。私の想定ではおそらく、まず機器とベーシックな接続をしてから、その後でメディア再生の接続をするという2段階になっていて、そのため、ベーシックな接続でつながってもメディア再生の接続までつながっていない場合に、接続されているのに音が出ない症状になるのかなぁと勝手に推測しています。

 詳しくないんでよくわからないですけど、通信関連の挙動を見る限り、通信チップはあまり頭が良くないものを使っている印象があります。

 

 この機種の通信品質を安定させるにはアプリを通してこの機種と接続するしかないようです。

 

 代表的なDAPと繋いだときの通信品質の比較については以下の記事を参考にしてください。

www.ear-phone-review.com

 

ヒアスルー(外音取り込み)は高レベル

 この機種は外音取り込み機能が付いています。外音取り込みについてはメーカーごとに呼称が違ったり、モードによって用語を使い分けていたりすることがあって、用語に統一感がないところがあるのですが、一般的にはヒアスルーという場合が多いです。E8 2.0の場合はTransparency(トランスペアレンシー、「透明性」という意)と読んでいます。

 このヒアスルー、もといトランスペアレンシーですが、無から最高まで4段階で調整できます。個人的にこのヒアスルーに関しては一番高く評価しているのはJabra Elite Active 65t(EA65t)なのですが、E8 2.0のトランスペアレンシーは聞こえの良さという点ではこのEA65tに敵わないものの、音のナチュラルさでは勝る気がします。

 

 好みや使い方による個人差があると思いますので「気がします」という、やや言葉を濁した言い方になりましたが、これについて詳しく説明いたします。

 私のヒアスルーで最も多い使い方は音楽を聞きながら、同時にテレビやネット動画を見たり、ゲームをするというものです。この使い方ではJabra EA65tが外部音声を最もはっきり聞かせてくれるのですが、明瞭感が強くて少しぎらつた感じで聞こえる印象があります。 E8 2.0のトランスペアレンシーは聞こえは若干Jabra EA65tに劣る気がしますが、声色が自然な印象の太さがある感じで聞こえます。

 同じようにSENNHEISER MOMENTUM True Wireless(MTW)もヒアスルーを搭載しているのですが、私の環境だとMTWは衣擦れの音を露骨に拾うのと、個々の音色が太くて音楽が強めに聞こえるバランスになっているので若干外部音声が聞き取りづらく思います。

 どのイヤホンでも組み合わせる機器の音質にも依存するところはありますが、E8 2.0は基本的にすっきりした分離感の良い音なので、音の間から外音が聞こえやすく、共存性が高い印象があります。Jabra EA65tほど高い共存性ではありませんが、見通しのよい音の間に外音が聞こえてくるバランスでかなり良質に思えます。外音の色味も明るめで明瞭感があります。ただし、テレビのボリュームを調整して試したところ、音量を大きくしたときに出てくるギャンギャンする感じは強く出やすく、「TVタックル」の銀河万丈さんのナレーションは輪郭の良い声質が影響するのか、ちょっときつく聞こえます。

 ここらへんは個人差がありそうな気がするので、全ての人に厳密に当てはまるという序列を示すのは難しい気がするのですが、いまのところ私の評価では、EA65tのヒアスルーが最も使い勝手が良く、次いでE8 2.0、最後にMTWといった感じです。

 

 繰り返しになりますが、ヒアスルーについては使用環境や何を聞き取りたいかによって評価が変わるところがありますので、その点はご理解下さい。また聞き取りやすい音、聞き取りにくい音には個人差があり、心理的状況にも影響を受けます*2

 

アプリは現状の完全ワイヤレスイヤホンでは最も高レベルな部類

 アプリの使い勝手も良いです。機能性でより高い水準を実現しているJabra EA65tや音質調整に関しては最高レベルとの評価が揺るがないであろうNuheara IQbudsなどと比べて、最高の使い勝手とは言いづらいかも知れませんが、遜色はほぼなく、ライバルのMTWよりは現状優れています。調整項目は多めです。

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比較的設定項目が多く、しかもわかりやすいデザインの専用アプリ

 

  音量とイコライザープリセット、トランスペアレンシーの段階調節ができ、独自な点としてはサポートへの連絡機能が充実している点が挙げられると思います。ToneTouchという専用イコライザーがあり、MTWのイコライザーはこれを参考にしているのではとも言われています。

 

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MTWのイコライザーに似ているが、よりわかりやすい

 

 MTWのイコライザーは丸を動かして音域を変えるシステムになっているのですが、結果がどうなるかイメージしづらく、直感的に使えるようになるまで少し時間がかかるかも知れません。それに比べると、E8 2.0のイコライザーはどこに持ってったらどうなるというのが一目瞭然なので、結果をイメージしやすく、直感的に使えます。

 欠点としては音域を直接上下させる感じの一般的なイコライザーとはデザインが異なるところです。

 イコライザーの詳しい使い勝手については以下を参照して下さい。

www.ear-phone-review.com

 

 私のタブレットには「BOSE CONNECT」「Jabra Sound+」「SENNHEISER Smart Control」など競合する他社製品のアプリが入っていますが、とくに動作でお互いが悪影響を受けるといったところはありません。私はDAPで使うのがメインで、あんまりタブレットでこのイヤホンを頻繁に使ってないので、もしかすると何か見逃しがあるかも知れませんが、いまのところアプリ同士が喧嘩してうまく動かないというようなことはありません。

 

【4】音質「音場は広く、ゆったりとくつろいで聴ける音質。しかもエッジ感がよく解像度感にも優れる」

 このイヤホンの音質の特徴は音場が広いことです。おそらく大抵の人はこのイヤホンを聴くと、音が少し奥まって聞こえる印象を受けると思います。左右もなんだか距離を取って聞こえてくるはず。開放感を感じるので、あれ、これ完全ワイヤレス?って思うかも知れません。少なくとも音に圧迫感がなく聞き疲れしにくいことは確かです。

 同じように音場が広めに聞こえる傾向にあるMOMENTUM True Wireless(MTW)と比べると、コーデックの差もあるかもしれませんが、低域の厚みと高域までの音の滑らかさ、まろやかさではMTWのほうが味わいが良く、厚みを感じ、豊かに感じるはずです。

 E8の音はもう少し音が硬く、薄い感じはあり、どちらかというと細身に聞こえます。イコライザーをいじらない標準の音では、MTWよりシャープでエッジのよい感じでクールに聞こえると思います。MTWに豊かさでは劣りますが、個々の音の音像を捉えやすいところはあり、見通し感で優れているので、人によってはMTWより解像度感があると感じられるかも知れません。ロックやダンス、ポップスではMTWよりエッジを強調して、素直にアタック感や疾走感が感じられやすいです。

 とくに中域から高域にかけてはMTWに比べてクリアに感じるという人は結構いるのではないでしょうか。MTWは個々の音の情報量が多い感じですが、E8 2.0の音質は音同士の分離感を重視しています。

 同じ音場表現に優れたライバル機種同士ですが、以前聞き比べて詳しく話したように、完全に代替可能という感じではありません。おそらくMTWの音を好む人の方が多そうな気がしますが、MTWの音をウォームすぎる、厚ぼったいと感じる人はこちらの機種を試してみることをおすすめします。

www.ear-phone-review.com

 

イコライザーとの相性の良さ

  またその「素直」と形容できる音質は再生機器の音味が乗りやすく、イコライザーを楽しむのにも最適な機種の一つと言えます。

www.ear-phone-review.com

 

AACコーデックでは異なる音質

 AACコーデックで接続すると音質が変わり、低域が出るようになります。残念ながら手持ちにAAC接続のまともなテスト機がないので、簡単に試した記事だけ以下にあります。
www.ear-phone-review.com

 

[高音]:高域はキラキラパリパリしたシャープな感じで、輪郭をはっきりと出すところがある。キンキン刺さる感じではなく、音同士の間に刻みを入れるような、分離感重視の鳴らし方。傾向としてはソリッドな方向だが、たとえば砂粒っぽいドライな粒立ちではなく、瑞々しい光沢のある艶やかさがある。高域で似たような音というと、私にはAVIOT TE-D01bがイメージされる。TE-D01bのほうが発色が良く、若々しい感じだが、しなやかな腱を感じさせる音の出し方はよく似ている(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)

[中音]:中域も分離感があって見通しが良い傾向にあり、たとえばこのあたりでは女性ボーカルがさわやかさをだいぶ感じさせてくれるはず。ギターもキラ味を出し過ぎない、しなやかに刻むような清涼味を感じる。クールで硬い傾向の音として捉えることも可能で、実際、よりデジタルな電子音に近い感じの音は硬さが目立って聞こえやすいところはある。アコースティックな音はしなやかに、デジタルな音は少し硬質に輪郭を出す感じで、どちらにせよ、色味に刺さるような棘を感じさせないのに、個々の音が見通しよく聞こえるので、分離感で解像度を感じるタイプの人には好まれそうな音。空間に広がる充実感はあまり出ないので、MTWと聞き比べると、多くの人がさわやか、あるいは淡泊と評するかも知れない。透明な清潔感のある空間表現というとわかりやすいかな。

[低音]:重い感じだが、太さや揺れ幅は強い感じではない、独特の振動に聞こえる。芯から震える音ではなく輪郭が感じられる。100hzから40hzまで素直に減衰し、30hz以下でおとなしい印象。私の用いた音源では、ズーンという感じのメインの振動のはじにビーーッという感じの輪郭を形成するようなサブ振動がある感じ。ベースは深くまで重厚に沈むというよりは地面をえぐるようなイメージで中高域のためのスペースを確保するように聞こえる。しかし輪郭感はあるので、たとえば分島花音「killy killy JOKER」のチェロやコントラバスといった低域弦楽にバネのような弾力があるので、えぐるような深掘り感みたいなのは、かなり躍動的に感じるので意識が向きやすい。ドンという重みは出ないので、低域の重厚感では物足りなさを感じるかも(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)

[解像度・立体感]:全体的に視界良好という表現が合っている気がする。色味を目立たせる音質ではなく、落ち着いた感じで聴ける音。そういう意味では上から下まで厚ぼったく支えるところがなくて凹凸感がないという感じで、フラットなイメージを受けるかも知れない。とくに高域に向けて突き抜ける高低感があるのでダイナミックさは感じやすい。個々の音は肉より輪郭感が強めに聞こえる。情報量が多い曲でも、ガラス張りに上から下まで聞こえる感覚があって、ここらへんもやはり色味は圧倒的に違うけど、バランス感覚ではAVIOT TE-D01bに近いイメージかもしれない。音の傾向に、尖らない、しなやかな瞬発力を感じるところも似ている(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)

[パーカッション・リズム]:ドラムも輪郭感が勝っていて、バリバリバリ、バシンバシン、バッツンバッツンというような粘りのある音。いわゆる「タイト」という傾向に含まれる。シンバルは粒感がしっかりしていて、ライドシンバルのツッツッと締まる音はなかなかの粒立ちに思うし、ドラムスティックの音は硬すぎないポックポックしたところのある音を鳴らすので、意外とリアルな材質感を感じるところがある(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)

[ボーカル傾向]:ブレスの端だけ少し尖って酸味を出すように抜ける感じはあるが、全体的に爽やか。女性ボーカルはまろやかさはあまり出ず、光沢感はあって艶やかだが、少しクールで透けるところを感じるかも知れない。男性ボーカルは少し透け、膨張感は抑えめで上下に伸びる感じがある気がするので、やや細身に感じやすい。

 

 【5】官能性「広い音場にしなやかな音が元気よく展開する、分離感のある、見通しの良い楽しい音楽が聴ける。ほどよく酸味を利かせつつ、基本的にさっぱり味で透ける、のどごしだけよい音。聞き疲れしにくい」

ハルカトミユキ「17才」

 率直に言って、この曲、かなり面白い聞かせ方をしてくれます。結構金属的に尖る音が多い曲で、ギラつく感じが出やすい傾向がある曲なんですけど、このイヤホンはパリパリサラサラって感じにさわやかに表現するので、正統派青春ソングに聞こえます。この曲の疾走感を前面に出して聞かせてくれる感じ。

 まず音場が広く、距離を取って音が聞こえてくる、圧迫感のないところからして、さわやかで聞き疲れしません。少し潤む程度の艶っぽさを出しつつ、全体としては手からこぼれ落ちるように、音が抜けていく、後味すっきりで凹凸の少ないスムーズな表現になっていて、さーっと満ちては、すーっと引いていく潮のように淡泊なところがあります。でも、金物とか時々適度にカンカンとしたとっかかりを感じさせるので、のどごしもあります。

 分離感はかなり出るので解像度的にはしっかりしていて緻密さを感じるんですけど、それがきつく出ないんですよね。たとえば粒の細かいシンバルですけど、カンカンしたところを除けばあんまりキラ味は強くなくて、サラサラした粒感のあるお手玉みたいな音です。

 この曲をMTWで聞くと、もっと濃厚で渋味もあって、「さすが違うね」って思うんですけど、この曲はサビでだいぶ密度が高くなるところがあるので、精彩で勝るMTWではサビでは少し肉厚すぎる感じに出るところがあって、ちょっと音が重くて何度も聞くと胃もたれするかもって感じがあります。あと、サビではボーカル周りの密度が高くなるので、声が楽器に埋もれてしまって、少し溺れているように聞こえるかも知れません。それに対し、E8 2.0は密度感の差が大きいこの曲でも、ボーカル周りは一貫してすっきりきれいに、歌詞ははっきりクリアに聞こえてきますから、ボーカルを味わいたい人にはより有力な選択肢になり得ます。

 


17才

 

山下達郎「ミライのテーマ」

 金管なんか軽くて明るさ重視の聞こえ方をすることがあるので、この曲なんかかなり明るいです。ボーカルも少し高域に向かって抜ける印象があって、透明感が強くスッキリとしたソーダのような清涼感を感じさせます。

 明るく楽しく気持ちいいんですけど、「この曲ってこんなキリンレモンやポカリスエットのCMソングみたいに底抜けに明るい曲だったっけ?」って思って、MTWで聞き直すと印象が違って、やっぱり低域のドンがだいぶ出てないようです。この差はどんなくらいかというと、E8 2.0の音が全体的にスキップして撥ねてる感じだとすると、MTWは地面をしっかり蹴って走っている風に聞こえるとなります。MTWでは金管も渋味まで表現されるので、色気も少し感じさせて大人っぽい感じになっています。

 たぶんこの曲の意図としてはMTWの表現が正解なんでしょうけど、E8 2.0のさわやかな音響に魅力を感じるのも事実で、すごくスッキリ清潔に聞こえるんですよねー。MTWが弾む心ウキウキな表現くらいだとしたら、E8 2.0は空を飛んでいるくらいの清涼感です。

 


ミライのテーマ / うたのきしゃ 【初回限定盤】

 

Jess Glynne「Hold My Hand」

 音に重厚感があまり出ないので、R&Bは物足りない傾向にあると思います。たとえばこの曲だとピアノは少しキンキンした表面が目立つ感じで、背後のコーラスは浮ついたふわふわした感じが強く出ており、全体的に明るさが強めで少し軽薄な方向で聞こえやすいです。とくに低域ですが、膨張感がないのでボリューム感に欠けます。また低域が膨らまないので、下地の黒みに乏しく、コントラスト感が感じられません。ハスキーなボーカルものびやかさが強調されて、色味も少し透け、とっかかりが少なく、だいぶつるんとして聞こえる傾向にあります。金管もふわーっと浮遊感が強調された感じで渋味は抜けており、上方向に軽いです。

 


I Cry When I Laugh [Explicit]

 

フランシュシュ「To My Dearest」

  聞いてみた感じ、このイヤホンがたぶんあんまり得意そうじゃない曲がこれです。このイヤホンはあまりコントラスト感が強くなく、低域のドンもなくてメリハリ感に乏しいところがあるので、この曲はあまりにも凹凸がなさ過ぎて、色味が薄く聞こえるのもあって、薄いカルピスみたいに感じます。輪郭感だけはあるのでカルピス独特の乳酸系の渋い後味みたいなのだけは感じるんですけど、濃厚な味のほうは水っぽくなっていて味がしない感じです。

 この曲で具体的に指摘すると、まずピアノに厚みがないので後味も薄くて色味が感じられず、ボーカルは透ける感じで聞こえるので、やっぱり薄味です。濃厚味だけじゃなく、光沢感も抑えめで演出感に乏しく、ドラムも重さが出ないので存在感が薄いです。そして音場の広い表現が仇になっていて、スカスカして聞こえます。音量マックスでも全然音のボリューム感が出ません。大音量でも耳に負担がかからず聞き疲れはしませんけど。

 

 この曲は「ゾンビランドサガ」DVD第2巻の特典CDに収録されています。

 


ゾンビランドサガ SAGA.2 [Blu-ray]

 

 Girls Dead Monster「一番の宝物 〜Yui final ver.〜」

 たぶんこの曲も淡泊すぎて感動が薄く感じられるかも知れないと思います。どんな音に感動するかというのは明確な個人差が存在することがわかっているので、断言は出来ないんですけど、少なくとも私はこのイヤホンでこの名曲を聴いても泣けません。弦楽・ギターがさっぱりしすぎて胸をえぐってこない、低域弦楽も重みがないのでハートまで音が降りてこない、音が薄くてパリパリしてせっかくのアコースティック感があまり感じられないってのがありますが、たぶんクリティカルポイントはボーカルにコシが出ないあたりのような気がします。全体的に情緒が安定しているところのあるイヤホンなので、こういう、情感をたたみかけるような曲は苦手そうです。

 この曲をいろいろ聞き比べてみると、どうも一番の問題は解像度が足りなくて音が聞こえていないとかってあたりではなく(むしろ解像度は文句ない)、とくに中低域なんですけど、音の厚みの問題のようです。たとえばこのイヤホンで聴く、この曲のアコースティックギターなんか実際はエッジが良く光沢感がかなり強い感じなんですけど、単独だとパリパリした感じがあるので、低域の支えがなかったり、ピアノとの質感の差が見えてこないと自己主張が足りなく聞こえるようです。それでいまいち情感を感じないみたいで、たとえばNUARL NT01AXで聴くと、よく聴いてみればギターの光沢感やエッジはこのイヤホンに比べて劣るんですけど、低域のドンという重い音、ピアノのまろみのある厚い音といった他の楽器の音の質感とのコントラストでギターの音がしっかりと自己主張して情感を語り出すといった具合です。

 もちろん組み合わせるDAPによっても多少の印象の差はあって、比較的ドンシャリ傾向に音が出る感じのSONY製DAP、たとえばNW-A55では厚みがイマイチ足りないと思うところは改善されませんが、ドラムやギターがより硬質で、弦楽もやや硬く聞こえるので、ギラつく感じが少し増しており、コントラスト感の足りない感じは少なくなっています。音質的には、優美な音のAstell&Kern系よりは硬質な感じのONKYO系やSONY製DAPのほうが輪郭感の良さもあって音の明瞭感は強く聞こえるところがあり、その分ギスギスしやすい攻撃性が増すため一概には言えないものの、たぶん解像度感は高く感じられて、どちらかといえばより多くの人に好まれる気がします。

 

 このあたりの、手持ちのDAPでの音質感の違い、通信品質の違いなどの細かな相性問題については以下の記事で詳しく取り上げています。

www.ear-phone-review.com

  


Angel Beats! PERFECT VOCAL COLLECTION

 

長山洋子「瞳の中のファーラウェイ」

 個人的にこのイヤホンで聞くと良い感じに聞こえると思うのがこの曲です。どちらかというと全体的に凹凸少なくさらっと聞かせるんですけど、この曲って変に媚びているような声が出ちゃっているところがあって、たとえば濃厚な方向で聞かせるMTWなんかで聞くと、変な甘味の出し方をしているところが目立っちゃう感じがするんですよね。ドラムとか厚めに出るとボッスンボッスンしますし、ボーカルの荒削りな感じも目立ちやすい気がします。ところが、E8 2.0で聞くと、さらっとした清涼感のある曲に聞こえるんです。これはすっごく不思議。大好きな曲だけに、きれいに聞けるとうれしく思います。

 


ファイブスター物語 オリジナル・サウンド・トラック ファイブスター物語(ストーリーズ)

 

Ed Sheeran「The A Team」

 この曲に関しては好みの差があるってことを前提に話をしたいんですけど、たとえばこの曲って普通のスピーカーやイヤホンで聞くとアコースティックギターのリズム音が結構ズチャズチャ出てきません?

 それがいいんだよって人も結構いるはずで、実際私もそういう傾向は好きで、たとえばMTWで聞くとこのズチャズチャした音だけじゃなくて、中低域全体が厚く聞こえて、なんとも言えないウォームで充実した味わいに思えて好きなんですけど、そうした空気感抜きで、ただアコースティックギターだけがズチャズチャ鳴ってくるバランスだとたぶん鼻につくんじゃないかと思うんです。

 このイヤホンで聞くと全体的に淡い感じですけど、ギターの輪郭感だけはきれいに聞こえてきて、サクサクって感じの刻みの良い爽やかな曲に聞こえます。淡泊な味ではあるんですけど、不思議と情緒感を醸すところがあって、私は聴き応えを感じるんですよね。淡いですけど、解像度感はしっかりして音はちゃんと聞こえます。この曲のうら寂しい空虚感のような胸に刺さる情感にはたぶん、E8 2.0のような、温かみを強調しすぎない、さりげないほどに澄んで沁み入ってくる表現のほうが合っているかも知れないなぁと気づかせてくれます。

 そういうわけで私は、このイヤホンのように自己主張が強くない感じで聞かせられると、逆にこの曲に惹き込まれる感じで好きなんですけど、これに関しては好みが大きく分かれそうです。

 


+ [Explicit]

 

安月名莉子「君にふれて」

 音質のところでデジタルな音は結構硬く聞こえる感じがすると書きましたが、その実例としてこの曲を挙げます。全体的にキラキラパリパリした音の多い曲で、グラフェンドライバーを採用した機種やBAドライバーの機種といった分離感の強いイヤホンで聴くと高い解像度感が得られて中毒性の高い曲です。このイヤホンも分離感重視で鳴らすタイプで、しかも輪郭感や透明感はかなりあるのに、金属光沢は強く出しすぎず、音が尖ったり白化しない形ですっきり聴かせてくれる表現力と充分な音場があるので、メリハリが強く、緻密感が高い音響にも関わらず、ガチャガチャした感じが少なく、うるさくなりません。ただし音味はかなりクールなので、人によっては硬質で冷たい音楽に聞こえる場合があるかも知れません。さらにこれも人によりますけど、中高域の硬い感じが目立つので、ちょっと聞き疲れしやすいバランスかも。

 この曲はTVアニメ「やがて君になる」のOP曲ですが、カップリング曲の「rise」も非常に清涼感のある曲で隠れた良曲です。このシングルはおすすめ。

 


TVアニメ「 やがて君になる 」オープニングテーマ「 君にふれて 」

 

fhána「天体のメソッド ~Quote from Stardust Interlude~」

 広い音場でどこまでも続く星空を思わせながら、醸すような淡く匂い立つ音と、透けるようなボーカルが静謐感を丁寧に感じさせてくれます。個人的にこの曲でのこのイヤホンの弦楽の表現がお気に入りで、のびやかでシャープなエッジ感もあるんですけど、ヒステリックさのない、たおやかな音で、エグ味みたいなのがなくて、輪郭は目立つのに耳当たりが良く、すごく品が良くて心地よいです。この音に、都会の喧噪を離れた、星空まで続くような透明で澄んだ空気感が感じられるんですよねー。無色透明感のある弦楽ってあまり聴けないんじゃないでしょうか。

 


ソナタとインターリュード

 

真行寺恵里「IN MY DREAM」

  このイヤホンで聴く、この曲はおすすめ。驚きました。うるさくなりがちな曲ですけど、すごく見通し感がよくて音が隅から隅まできれいに聞こえる上に、アタック感は強く出るんですけど、爽快な感じで痛いきつさがありません。素直にスカッとした気持ちの良い攻撃性です。

 最初はピアノとか少しパリパリしていて薄いかなぁって思っていると、ギター・ベース・ドラムのロック軍団が参戦した途端に一気に楽しくなります。エッジ強調でシャキシャキしたメリハリの感じられる音で、ドラムは音の端が強調されて疾走感をきれいに出しますし、ギターとかギャンギャン膨らまずにギュィィィィイイインってシャープに伸びてきます。そしてボーカルの分離感がよく、元気で活きの良い楽器たちの中でもきれいにはっきりと、しかも透けるような清明感を持ちながら聞こえてきます。フレッシュで若々しく、攻撃的で躍動的、清涼感のあるロックサウンドですごく聴き応えがあります。これはいいね。びっくり。

 


IN MY DREAM

 

菅野よう子「White Falcon」

 すっきりと見通しよく聴かせ、しかもアタック感が出るので、ダイナミックなオーケストレーションサウンドでも重厚感よりスタイリッシュなカッコ良さ重視で壮大な感じを表現します。同じようにオーケストラ向きというMTWとの違いは、躍動感と爽快感。MTWのような濃厚な空気感重視の音に比べて、明らかにさわやかで、若竹のように伸びる音を聴かせてくれます。MTWの音に靄がかかった印象を受ける場合は、E8 2.0の晴れやかな音に魅力を感じるはず。明るく華やか、でもうるさすぎずに後味さわやか。

 クラシックや映画サントラなんかをよく聴くけど、MTWとE8 2.0で迷ってる人はこの曲を聴けば、どっちが好みかすぐにわかるはず。オーケストラの派手なところを詰め込んだような曲なので、これを聴いてE8 2.0のダイナミックさと爽快感が気に入ったならこちら、MTWの濃厚感が気に入ったならそちらという感じで選べば良さそうです。

 


∀ガンダム オリジナル・サウンドトラック 2 ディアナ&キエル

 

RUANN「There's No Ending」

 音場が広く、輪郭感もよいうえ、音に滞留感がなくすっきり抜けるので、定位感もきれいに感じられ、音像の面ではなかなか他機種では味わえない秀逸さを感じます。音像に優れた機種は他にもありますが、それらの中では最も清潔感が感じられる部類の、すっきりとした音なので圧迫感がありません。私の印象ではaudio-technicaのSound Realityシリーズに近い発想の音です。こうした鳴らし方をするイヤホンだと、多少複雑でガチャガチャしやすいような曲でも、沁み入るような聴き心地で、聞き疲れせずに長時間聴けます。

 たとえば、この曲はかなり情報量も多く、デジタルな音も豊富です。MTWのような音に膨張感があるイヤホンで聴くと迫力は出ますが、空間が音で埋まる感じがあって少し重たい印象を受けます。それに対し、E8 2.0でこの曲を聴くと、音の輪郭がはっきりしてそれぞれの音にしっかり焦点が当てられている感じがあり、音と音の間に隙間が感じられて、音のない透明な空間が感じられます。

 一方で、欠点がないわけではなく、この曲には最初のサビの前に、ズーンとブーム感を伴う重みを出すベース音がありますが、このイヤホンではその沈み込みが足りないと感じる人は結構多いかも知れません。個人的にこの音はこの曲全体の演出の中でもかなり重要な音に思いますから、味わいに大きく影響する気がします。この音が胸くらいまで重く落ちて来て、しっかり曲のアクセントになってくれると曲の展開が断然楽しくなります。

 デジタル表現を多用して緻密感を出す最近のエレクトロダンス系の曲を尖らない感じで聞くにはよく、少しうるさい系統に属するかも知れないこの曲でも、私は充分リラックスして聴けます。

 もちろん好みというのはあって、このイヤホンの表現は良い意味ではさわやかと言えますが、少し見方を変えると凹凸感が少し足りず手応えに乏しいという解釈が可能なのも事実です。少なくとも高低の音のコントラストが作るメリハリ感は少し薄味傾向にあると思います。

 


There's No Ending

 

Rasmus Faber「Rise [Vocal version]」

  この曲も広い音場にスッキリした清涼感のある音を出して、風通しの良い音響になっており、夏のビーチの暑熱よりは浜風の心地よい涼感を感じさせる曲調に聞こえます。全体的に輪郭よく音が刻みを出して緻密でありながら、すーっと抜けていく軽妙さが全体的に感じられ、スタイリッシュでフレッシュな水彩画のような淡い色彩感のある表現になっています。キラキラしたグロウ感のある効果音も、しつこくなく、さっぱりした感じで流れていくところがあり、明るく華やかですが後味の引きがよい感じです。

 


TVアニメ「 はるかなレシーブ 」 オリジナルサウンドトラック

 

【6】このイヤホンで特に聞いて欲しいアルバム

 個人的にこのイヤホンを試すなら、是非外して欲しくないアーティストのアルバムを紹介します。たぶんスマホでも充分魅力は感じられると思うのですが、もし理想的な組み合わせに近いものを考えるとすれば、DAPは「ONKYO GRANBEAT DP-CMX1」がおすすめです。

www.ear-phone-review.com

 

小田和正「Oh! Yeah!」


Oh! Yeah!

 小田和正さんの透明度の高いボーカルはこのイヤホン向きです。透けて伸びる光沢感がありながら、さわやかな後味を伴う声色を思う存分味わえます。どのアルバムをオススメするか迷いましたが、ここは1曲目の「空が高すぎる」から圧倒的透明感の世界に引き込んでくるこのアルバムを推したいと思います。この頃の小田和正さんの若々しい声色はより瑞々しく、楽器音にデジタル音を多用しているところもあって、このイヤホンの高い解像度感とつややかな色合い、後味のさわやかさをどの曲でも高度に楽しめます。

 

久石譲「菊次郎の夏 サウンドトラック」


菊次郎の夏(サントラ)

 名曲「Summer」の芯が透けるような高域弦楽とバネのようにビヨンビヨンしなる躍動的な低域弦楽の対比がきれいに味わえて、面白味多く聴けます。ピアノとシンセの残響感は強め。透明度が強調されて、清涼味をしっかりと出します。このサントラの曲はこの「Summer」のモチーフをアレンジしたものが多いですが、透明感が感じられる曲が多いので、沁み入るような音に聞き惚れながら、名曲のモチーフを繰り返し違う表情で楽しめます。

 

Rasmus Faber「We Laugh We Dance We Cry」


ウィ・ラフ・ウィ・ダンス・ウィ・クライ

  上で「はるかなレシーブ」のサントラの曲も紹介しましたが、このアルバムはよりクールなダンスサウンドの宝庫です。輪郭感が良く少し攻撃的なサウンドなのに後味はさっぱりして、広い音場感を持っているので圧迫感も出にくいです。鮮明度の高い、澄んだサウンド体験は中毒的で、惹き込まれること間違いなしです。

 

菅野よう子「天空のエスカフローネ サウンドトラック1」


「天空のエスカフローネ」ORIGINAL SOUNDTRACK

 まず「約束はいらない」の坂本真綾ボイスの透明度が素晴らしいです。透けます、抜けます、溶け込みます。声のはしに少しある、媚びた感じの声色がかなり目立たなくなっていて清純な色合いを素直に感じさせてくれます。色彩感を強調しすぎないさわやかで淡い感じが思春期の純真でまっすぐな清潔感を感じさせて個人的に最高です。で、次の「Flying Dragon」もやばいです。話出すと長くなるので、とにかく全曲通して聞いてみて下さい。そして1を聞き終わったら、2、3と進んでみることもオススメします。サントラ3で「光の中へ」から「Again」のラスト付近では完全にこの名サントラの虜になっているはず。そしてこのイヤホンの淡いさわやかな表現のもたらす、清涼感ある叙情表現を思う存分満喫できているはずです。

 

S.E.N.S「Palace Memories」 


Palace Memories~「故宮」 ― オリジナル・サウンドトラック 1

 エスカフローネのサントラを聞き終わったら、無性に聞きたくなったのがこのサントラアルバム。透明感がある独特の匂い立つS.E.N.Sサウンド、もちろんこのイヤホンと相性抜群です。このサントラも2,3と続きがありますから、思う存分楽しめます。

 

挾間美帆「ダンサー・イン・ノーホエア」


ダンサー・イン・ノーホエア

 はっきり言ってこのイヤホンじゃ、あんまり空気感が出ないと思ったのでムードは感じられないだろうし、JAZZは無理だろうっていうのが私の印象でした。このアルバムを試すまではね。

 見事に裏切られましたね。それぞれの収録曲でその構成が手に取るようにわかります。定位感が明瞭で音像が明確。もしかすると結構難解な部類に入るかも知れないこのJAZZアルバムをかなりわかりやすい形で楽しませてくれます。風味が出すぎない、すっきりした見通し感なのがいいみたいです。澄んだ空間に音があちこちから立ち上がってくるのが明瞭にわかって楽しすぎます。全体的に明るい感じで渋みは少し出にくいですが、旋律はきれいに把握できます。都会的でスタイリッシュなサウンドに聞こえてきて、カッコイイ感じですね。

 

ずっと真夜中でいいのに。「正しい偽りからの起床」


正しい偽りからの起床

 以前このアルバムに収録されている「脳裏上のクラッカー」って曲をMTWと聞き比べたんですけど、明るめでとにかくシャープに攻撃的に聞かせて楽しかった印象があったんです。で、今回改めてアルバム通して聞いてみましたけど、スタイリッシュでアグレッシブな都会的なサウンドで聞けます。率直に言って面白いので、これは試して欲しいです。ボーカルがかなり澄んで伸びて、重厚感はあまり出ないので鬱成分がかなり抜けているんで、もしかすると人によっては別次元の表現に聞こえるかも。普段このアルバムをよく聴いているほど、新たな境地を発見できるかも知れません。

 

ヨルシカ「負け犬にアンコールはいらない」


負け犬にアンコールはいらない

 このアルバムを爽快に楽しむならオススメ。びっくりするくらい明るくて全体的に歯切れ良く疾走感重視、さわやかに聴けます。今までここまで清潔な色合いでこのアルバムを聴いたことはたぶんないんですけど、はっきり言ってクスクス笑っちゃうくらい楽しいです。たとえば、「準透明少年」なんてもっと鬱っぽい重みのある曲だと思ってたんですけど、このイヤホンで聞くとボーカルが底抜けに明るくて、ドラムスも爽快。本来の表現とは明らかに違う気がするんですけど、それこそポカリのCMソングみたいで、最後の「僕を全部全部透過して」の部分が妙にさわやかで可愛く聞こえます。ボーカルの分離感が良く歌詞の聞こえもよいので、歌詞の切実な言葉に聞き込んでいると思わず噴き出してしまうほどに、さわやかで甘酸っぱい青春応援ソングにしか聞こえなくてニヤニヤ笑えます。このさわやかさ悪くないし、新発見だなぁ。「ヒッチコック」とか悲壮感全然無くて、かまってほしくて先生に絡む、ませた女生徒の初恋ラブレターソングにしか聞こえません。「負け犬にアンコールはいらない」は愛嬌たっぷりの明るい曲調。ただし「ただ君に晴れ」の清涼感は邪道さがまったくなく、本物です。あとこのイヤホンで聴くときは「前世」「落下」「夏、バス停、君を待つ」のイントロ曲はスキップしない方が良いと思いますよ。とにかく別次元で楽しいです。

 

池田綾子「風を紡ぐ」


風を紡ぐ

 このアルバムに関しては、語るまでもない気がします。聴けばこのイヤホンの魅力がわかります。

 

【7】総評「機能性は高く、美点はたくさんあるけど、アプリなしの通信品質だけはとても厳しい。しなやかで澄んだ淡い沁み入る音は、解像度が高いのに、いつまでも聴いていられる」

 さわやかで見通しも良く淡泊ですっきりした後味なのに、ほどよく艶やかさもあって、酸味を感じさせるところもあり、沁み入る情緒感を感じさせるものがあります。しかも高低感に優れて、ダイナミック感も出ます。ロックなんかではエッジの良さを生かして攻撃的な表現もこなしながら、後味のよさをつねに意識している品の良い音です。MTWの濃厚味のほうが味が濃いので万人受けするとは思いますが、このイヤホンの透き通るしなやかさを持ち、エッジもきれいな音はそれとは全く別物の爽快感のある味わいをもたらしてくれます。

 使い勝手の面では機能面でQiワイヤレス充電に対応しているのは素直に便利で、最近はQi対応のモバイルバッテリーなんてのもある上、かなりお手頃な価格で買えちゃったりするんで、置くだけ生活の快適さに慣れると、ケーブル差すのがめんどくさくなります。私なんか3個くらいいっぺんに完全ワイヤレスイヤホン充電してたりするんですけど、ケーブルは普通に邪魔だといつも思っています。ケーブルつきだと置き場所も限られてしまいますよね。

 アプリも非常に機能的で使い勝手もいいんですけど、この機種は通信関係だけはダメなところがあって、ペアリングとか接続・切断に手間取ることが多いです。アプリを入れられるandroidやiOSの機種に対してなら、アプリが通信品質を安定させてくれます。

 ただ、私みたいにDAPで使うタイプにはアプリなしの「素」の通信品質の悪さはかなり残念です。

 

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/810tPlgKCiL._SL1500_.jpg

 コスパという面では3万円超えの完全ワイヤレスの機種はあまりよくないというのが現状です。高級機種は音質的には差を感じ、機能面でも充実していることが多いですが、連続再生時間や最大再生時間などのスペックで下位機種に劣るところがあります。バッテリースペックだけ見ると、5000円くらいの中華製完全ワイヤレスイヤホンが最強に見えてきたりしますからね。

 この機種の場合は音質や機能はたしかに水準以上なのですが、それよりはデザインで下位機種の追随を許さない、洗練された高級感が感じられる、ラグジュアリー性が占める割合がやっぱり大きいので、イヤホンに音質と機能だけ求めている人には割高に見えることは確かです。コラボモデルと同じで、コスパがよいとは言えないですね。このカッコイイデザインを持ち歩きたいから、この機種を選んじゃうってところがあります。

 

 完全ワイヤレスの高級機種全体の動向を見渡すと、AVIOTが2ドライバーのプレミアム機種を開発している話があって、それはおそらくかなりの値段(400ドルで発売予定らしい?)がするけど音もよいみたいな面白い機種になると期待していて楽しみにしています。それが出れば3万円はコスパ悪いなんて言えなくなるくらい世界が変わるのかも知れません。

news.mynavi.jp

 

 話がそれたので、このイヤホンのまとめをしたいと思いますが、所有欲を満足させてくる圧倒的な高級感があるのと、透明になるまでクリア感にステ全振りしました、みたいな見通しが良くて活きの良い、透徹した音は魅力的で面白く、品もあります。差別化もしっかりできているんですけど、ラグジュアリー機種なので万人向けとは言いづらい難しいところがあります。

 値段を考えると、この機種を買う人はかなりオーディオにお金を出す人でしょうから、音質にこだわってDAPで音楽を聴くようなタイプの人が多いかも知れませんので、たぶんamazonのレビューだとアプリなしでの素の通信品質が悪いってだけで低評価されそうな厳しいところがありそうです。

 

【8】私家版スタートアップガイド(最初にどうすればいいかわからない人用です)

 付属のマニュアルは非常に簡素ですので、このイヤホンを使うために最初に何をしたら良いのかわからないという人は下に私が説明した記事があるので、参考にしてください。

www.ear-phone-review.com

 

【9】市販イヤーピースについて

 E8 2.0で使えるイヤーピースの音質を比較した記事があります。

www.ear-phone-review.com

 

Bang & olufsen E8 2.0

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Bang & Olufsen 完全ワイヤレスイヤホン Beoplay E8 2.0 NFMI/AAC/Qi充電対応 防塵防滴仕様 リモコン・マイク付き 通話可能 インディゴブルー(Indigo Blue) 高級オーディオブランド 【国内正規品/保証期間2年】

 

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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。

*2:極端な話になると、失音楽症という疾患があります。レビューの本筋を外れますので、詳しくはオリヴァー・サックス『音楽嗜好症: 脳神経科医と音楽に憑かれた人々』を参照して下さい。