こんな人におすすめ
- 装着感のしっかりしたスポーツ向けの完全ワイヤレスイヤホンを求めている
- 安くても音質がしっかりとした、音楽がちゃんと楽しめるものが欲しい
- 重厚感のあるサウンドが好き
- パリッと輪郭がきれいでクリアなサウンドが好き
- 音場重視
GOOSERA H11の概要
「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回取り上げる製品は完全ワイヤレスイヤホン「Axloie G1」です。
この機種に興味を持った理由は商品説明を読んでいたら、ドライバー構成にダイナミック+バランスドアーマチュアのような記述があったこと。本当だったら、価格を考えて、わりと興味深いですが、下の方にあるドライバー構成のイメージを確認すると明らかにダイナミック型一発に見えます。
しかし、その説明文には今度は「カーボンナノチューブ(CNT)振動板」採用との文字。もし本当ならかなりの低歪みと高レスポンスが期待できるはずで、これはこれで興味深い。実際どうなんだろうか?と思ったわけです。
AXLOIEについて
技適情報を確認したら、どうもこのブランド、Shenzhen Yuangu Technology Co., Ltd.のブランドらしいです。HolyHighやArbilyでおなじみのファクトリーメーカーですね。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 連続/最大再生時間:5h/25h
- 防水性能:IPX7
- 対応コーデック:AAC/SBC
- 技適番号:214-103964
パッケージ&ビルドクオリティ
パッケージは価格帯では標準クラスです。付属品は充電用ケーブル(Micro-B)、イヤーピースの替え、充電ケース、説明書です。
ビルドクオリティは価格なりといったところです。
単純にケースがデカいです。完全ワイヤレスイヤホンの中でもかなりデカめのBOSE QuietComfortBudsと比べてもデカい。
装着サンプル
ちょっとデカめで目立つかもしれないというのを除けば、装着感は良好で付け心地もよいです。
接続品質
AACでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯ではそこそこ良質な接続品質です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内ではわりと安定しています。距離耐性の点でも問題なく、5m離れてもシームレスでした。ただし、遮蔽物があると露骨に接続が不安定になります。それでも接続自体は途切れません。
ホワイトノイズはほとんどないと思いますが、敏感な人には気になることがあるかもしれません。私にはこの機種のホワイトノイズはほぼわかりません。
インターフェース/操作方法
操作インターフェースはフェースプレート部分にあり、物理式です。
電源ON
ケースからイヤホンを取り出すと、自動で電源ONになります。
またマルチファンクションボタンを2秒長押しすることで手動で電源ONにできます。
電源OFF
イヤホンをケースに収納すると、自動で電源OFFになります。
またマルチファンクションボタンを5秒長押しすることで手動で電源OFFにできます。
ペアリング
イヤホンは接続先がないと自動でペアリングモードになります。
リセット方法
まず接続相手の機器のペアリングリストから「Axloie Goin」の設定を削除します。イヤホンをケースに収納して、左右のマルチファンクションボタンを同時に10秒間長押しします。LEDインジケーターが赤と青で点滅したらリセット成功です。
曲再生/停止
左右どちらかのマルチファンクションボタンを1回タップします。
曲送り
右耳側のマルチファンクションボタンを2回タップします。
曲戻し
左耳側のマルチファンクションボタンを2回タップします。
音量を上げる
右耳側のマルチファンクションボタンを2回タップします。
音量を下げる
左耳側のマルチファンクションボタンを2回タップします。
通話応答
着信時に左右どちらかのマルチファンクションボタンを1回タップします。
通話終了
通話中に左右どちらかのマルチファンクションボタンを1回タップします。
着信拒否
着信時に左右どちらかのマルチファンクションボタンを2秒長押しします。
音声アシスタントの起動
左右どちらかのマルチファンクションボタンを3回タップします。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
- [標準イヤーピース S装着時]左右別
- [標準イヤーピース S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
※当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
サウンドシグネチャー解説
低域と高域が強調されたU字型、ないしW字型の形をしています。全体のシグネチャーはハイブリッド型っぽい感じではないので、ハイブリッド型というのは誤植でしょう。
THD+N特性
THD+N特性は歪み成分の割合を示しており、このパーセンテージが低いほど、音楽再生時の音のピュアさ、きれいさが高くなります。
THD+N特性は高級イヤホンの場合、1%以内であることが望ましいです。下の図は上が@-40dB(適正音量レベル)における、スイープでの周波数毎のTHD+N特性、下が同条件で1khzでの音量レベルによるTHD+N特性です。このイヤホンはどちらでも概ね1%未満で優秀です。
- THDN平均値:0.121238835%
- THDNL平均値:0.2131132%
- THDNL平均値(-60dB以上):0.121709266666667%
音質解説
詳しいことはわかりませんが、CNT振動板を使用しているというのはおそらく事実のような気がします。←追記:気になったので、公式ページやHead-Fi、各国のamazonの商品ページを回ってきましたが、日本の商品ページ以外どこにもCNT振動板だとは書かれていないので、CNT振動板説は怪しく、グラフェン+TPU複合振動板なんじゃないかと思います。
同価格帯で優秀なほかのイヤホン(TaoTronics SoundLiberty 97/SoundPEATS Sonicなど)と比べても、トランジェントがかなり良好な印象を受け、音のキレがよく、また付帯音が少ないです。これらライバルの音が眠いと感じられるほど輪郭はくっきりと描き出され、音像の印象的なクリア感は高いと感じるでしょうが、一方で質感的にはデジタルに感じられ、音源全体がリマスターされているような人工的な印象を受けるかもしれません。過渡応答が良く、マイクロディテールも強調されているので、一音一音の音離れが良く、緻密なサウンドに聞こえます。
さて、低域の深さは低域好きを非常に満足させます。沈み込みは良く、深いところに潜っていくブームはEDMやクラブサウンドを楽しいものにしますし、楽器音は全体的に深みを感じさせてくれます。動画鑑賞時も十分なブームを出してくれるでしょう。クリアランスもよく、レイヤー的で、音が階層的に透明度が高く思えます。深いところのノイズ感はないので、ライブ的というよりは良質なレコーディングサウンドの低域に聞こえ、印象的にはモニター的に思えます。全体的にタイトです。
中域は全体の中では後退しており、少し暗いところにいますが、中域の空間が広く、また輝度が高いために実際の透明感は高く、ボーカルの周囲も広く、音に混濁感はありません。奥行きが強調されていますが、密度は高めで、ボーカルと楽器は近く、スカスカする感じはほとんどなく、音は林立しています。充実感も高く、モニター的でもあり、おそらくトランジェントの高さと歪みの少なさによって、音は十分に背景から分離されて前に出てくるので、立体的で説得的であり、没入感が高いです。
高域はほとんどフラットですが、マイクロディテールだけ露骨に強調されており、ボーカルの息遣いや木管のサウンドはスースーするところがあります。子音も少し尖りがちに聞こえます。中域の風通しは良好ですが、超高域はそれほど伸びていないので、高域の高さはそれほど高く感じません。
音場は奥行き感と深さに優れ、前方定位的に聞こえます。少し親密な位置に音場が形成され、高い没入感があります。動画鑑賞にも向きますし、音楽ジャンルではEDM、アニソンはとくにおすすめできます。
音質的な特徴
美点
- 没入感が高い
- トランジェントが高く、非常にくっきりしたクリアなサウンド
- デジタル的で粒立ちや輪郭がきれいで緻密
- 深みがあり、重厚感も十分で階層的な低域
- ノイズのない低域
- モニター的
- 解像度が高い
- 透明感のあるサウンド
- 分離感に優れている
欠点
- 人工的な質感に聞こえやすい
- 人によっては情報量が多すぎてうるさい
- 人によっては強すぎるかもしれない低域
- 人によっては過渡応答が高すぎて響きに余裕がなく感じられる
- 空気感がない
- ディテールを十分聞くには一定の音量が必要
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。ソースはFiiO M15を用いています。コーデックはSBC、使用イヤーピースは標準イヤーピースのSサイズです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
録音機材
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:Antelope Audio Amari
- レコーディングソフト:Audacity
GENS D'ARMES(ロック系)
GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
白き魔女(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
The Silver Will -ギンノイシ- / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
Sophisticated Fight(JAZZ系)
Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
5000円くらいの価格でハイエンドイヤホン並みの過渡応答の良さを持ち、ハイクオリティの、くっきりしたきれいなキレと解像感のあるサウンドを楽しみたいですか?「そんなのは不可能です」と答えたいところですが、どうもそうとは言えないようです。このレビューを書いている私自身が些かとまどっているのですが、どう見ても泡沫系のイヤホンにしか見えない、Axloie G1は間違いなく高レスポンスのサウンドを持っています。本当に信じられませんが、事実のようです。私は夢でも見ているのかだまされているのかもしれません。本当によくわかりません。
EDMやアニソン、ボカロ系サウンドを好む人は気が向いたら、このイヤホンを試してみることをお勧めします。
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