qdc ハイブリッド型イヤホン Uranus エントリーモデル QDC-7872
「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
今回は中華イヤホンのqdc Uranusを取り上げます。
qdcは中国でもトップレベルのIEM製造ブランドであり、中国で軍や警察向けのオーディオデバイスを開発し、アーティストやプロ用のカスタムIEMシェアでもトップを誇っています。
そのqdcがブランド初のハイブリッドIEM Fusionの知見を生かして、低価格向けに発売したハイブリッドIEMがqdc Uranusです。
なおこのレビューはONZO様の素晴らしいサービスを利用して作成されました。感謝とともにONZO様のますますのご発展をお祈り申し上げます。
ONZO様のサービスについて興味がある方は以下をご参照下さい。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Recommended」として、比較的多数の人にとって買って損がないオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 周波数特性:10hz-20kHz
- インピーダンス:18Ω
- 感度:100dB
- ケーブルコネクタ:qdc 2pin
パッケージ
この価格帯では標準的か少し上質と言えるパッケージです。梱包はわりとシンプルで、開梱体験にそれほどの楽しみはありません。
付属品も充分揃っていますが、とくに豪華という印象は受けません。本体のビルドクオリティは良好で透明度の高いシェルから内部構造が見通せるのは楽しいですが、フェイスプレートは量産品的なプリントなので物足りません。ただし、これは最近同じ価格帯かそれより安い価格のIEMで、異様に凝ったハンドペイントや金属筐体、自然木材などのフェイスプレートを見慣れすぎたせいかもしれません。
パッケージとビルドクオリティは悪くないですが、個人的にはあまり感動がありません。しかし、それでも以前のqdc製品に比べてケーブルパーツの作り込みが向上しています。
装着サンプル
ユニバーサルIEMタイプの本体は少し厚みがありますが、耳への収まりは良く、樹脂製で軽量です。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [AET07 S装着時]左右別
- [AET07 S装着時]左右平均
- [AET07 S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [AET07 S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(ダブルフランジ) S装着時]左右別
- [標準イヤーピース(ダブルフランジ) S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース(ダブルフランジ) S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(ダブルフランジ) S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(シングルフランジ) S装着時]左右別
- [標準イヤーピース(シングルフランジ) S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース(シングルフランジ) S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース(シングルフランジ) S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み)
- 標準イヤーピース比較(自由音場補正済み/2khz-24khz拡大)
※「AET07 Sサイズ」は当ブログの測定用レファレンスイヤーピースです。それ以外のイヤーピースは特記がない限り、このイヤホンパッケージの標準添付のものです。
※また当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
全体を見るとU字型と言えるようなサウンドシグネチャーをしており、やや低域偏重ですが、中域も凹んでいるとはいえ、それほど谷が深くはありません。
低域は深さと重みに強調があります。エレキベースは少し熱気が強く、ややノイジーにジワジワブンブンしており、わずかにキックをぼやけさせている印象を受けるかも知れません。少し熱気が強く、ニュートラルよりはウォームに傾いた低域でリスニングライクな印象を受けます。太さはそれほどでもありませんが、厚みは中庸か少し多めで中域下部は少し濁って聞こえやすいかも知れません。
中域は清潔ではありませんが、ニュートラルに近く、ナチュラルに聞こえます。少し低域の熱気が強く、ボーカルは半分もやっとした空気感の中で聞こえてきますが、充分前進的でスポットライトが適度に当たっています。男声ボーカルは深みがありながらも、どこかすっきりとしており、穏やかですがニュアンスが良好でボディは自然に聞こえます。女声ボーカルもわりと理性的で中庸ですが、やはりニュアンスは少し強調され、ナチュラルでありながら抜けが良い印象を受けます。個人的にはボーカルホンとしては結構魅力的に思えます。少し下の方でぼそっとしたところがあり、息の伸びが相対的に多いので若干ハスキーな傾向に思えますが、ニュアンスに優れて甘く自然な雰囲気のあるボーカルが味わえます。
中高域はほとんどピーク感がなく、素直に高域に上昇している、わりと単純な構造をしています。エッジが少なく、手がかり感は少し物足りないかも知れませんが、qdc独特のシルキーなシンバル表現がこのイヤホンでも感じられます。実際のところ、わりと風通しは良好な高域ですが、ディテールという点では少し滑らかすぎる印象を受けるかも知れません。ただし弦楽や木管の響きは非常に素直でシームレスに伸びます。スネアはかなりスナッピーが強調され、鼓面はサコッとした爽やかな音に聞こえます。
全体としてドンシャリ傾向であることは間違いないですが、わりと中域のディテールがはっきりしているイヤホンです。しかしそのサウンドは単純な中域充実系の透明感があるというものとは違う、適度にもやもやした空気感があるという中域を持っています。ややドライな質感に感じられるという意味ではドンシャリっぽいですが、ドンシャリにありがちなボーカルが窮屈な感じはほとんどありません。中域には華があり、艷やかです。またピーク感の少ないシームレスな高域は歪感がなく、聞き心地も良く、素直に抜けていく自然で滑らかな風通し感を感じさせてくれます。この風通しの良さは個人的には、すっきりというよりは、どちらかというとさっぱりというような、サバサバした印象を受けます。
Tri Starseaとの比較
比較的音質が似ているTri Starseaとの比較があります。詳細はTri Starseaのレビュー記事をご確認ください。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。自由音場補正済みです。ソースはFiiO M15を用いています。イヤーピースは標準イヤーピースのシングルフランジ Sサイズ、ゲインは高設定です。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
JAZZ
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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町「ペンタウァ」 / ファルコムベストサウンドコレクション -All in All- / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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Desire / The Songs of Zemeth ~Ys VI Vocal Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
OST
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC Evolution オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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永劫の夢、大空の記憶 -Online Version- (Bonus Track) / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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ユルギナイツヨサ / 日本ファルコム 英雄伝説 零の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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アプリエス神殿 / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
クラシック
- Sophisticated Fight / We Love 空の軌跡 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- FEENA / イース ピアノコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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組曲 LILIA (ファルコム ネオクラシック フロム スタディオズ イン ロンドンシティ) / ベリー・ベスト・オブ・イース / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ロック
- Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- The Decisive Collision / 英雄伝説 閃の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- Mighty Obstacle (2003) / Music From The History Of Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
qdcのハイブリッドエントリーモデルはバランスの良い、しかしモニター的と言うよりはリスニングライクな機種に仕上がっています。この価格帯で優秀なボーカルホンを求めているなら、わりと有力候補で、ナチュラルな雰囲気でクラシック音楽を聴きたい場合にもおすすめできる気がします。qdcらしいピークをうまく消しながらディテールと音楽的な楽しさをおろそかにしない、丁寧なチューニングを感じます。聞き心地は非常に安定しています。
qdc ハイブリッド型イヤホン Uranus エントリーモデル QDC-7872
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