JVC 密閉型ヘッドホン CLASS-S WOODシリーズ ハイレゾ対応 HA-SW01
- 【0】「Victor HA-FW1500」発売記念リレビューです
- 【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は側圧が少しきついかもしれないが、概ね良好」
- 【2】外観・インターフェース・付属品「ケーブルは両出し」
- 【3】音質「木製振動板独特のギラつかない、こんもりしたような温もり感のある暖かみのある音が最大の魅力」
- 【4】官能性「JAZZはいいぞぅ」
- 【5】総評「ライブ感重視の人向き」
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【0】「Victor HA-FW1500」発売記念リレビューです
本日JVCさんから新作イヤホンVictor HA-FW1500が発表されました。税抜き6万円程度の価格設定です。私の大好きなHA-FX1100に近い設計思想なのではないかと興味津々です。
で、せっかくなのでなんかこの話題に絡めてレビューしたいなぁと思っていろいろ考えると、私がWOODシリーズにハマるきっかけになったHA-SW01のレビューなんてどうかな?なんて思いつきました。というのもこの機種についてはブログ開設くらいにまだレビュー初心者みたいな感じだった私が、拙い感じでレビューしたんですけど、もはや黒歴史。
【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は側圧が少しきついかもしれないが、概ね良好」
おすすめ度*1 | |
---|---|
ASIN | |
スペック・評価 | |
再生周波数帯域 | 8~45000Hz |
インピーダンス | 56Ω |
感度 | 105db |
ドライバー構成 |
ダイナミック型(40mmウッドドーム×1) |
音質傾向 | 重厚、どっしり、たっぷり、ズンズン、パンチがある、濃厚、広がりがある、艶やか、潤いがある、ほっこり、こんもり、ゆらゆら、ボンボン、色気がある、ボーカルフォーカスが良い、前進的 |
ややかっつりした装着感なので、人によってはわずかに側圧は強めに感じるかもしれません。個人的には気になりませんが、重みは少しあるので、女性だと長時間使用で首に負担が出るかも知れません。遮音性はそこそこ良好です。
テスト環境
今回のテストはAstell&Kern KANN CUBE、Hiby R6 Pro、Cayin N6II/T01、ONKYO GRANBEATで行っている。なおゲイン設定は設定上一番高いもので聴いています。www.ear-phone-review.com
【2】外観・インターフェース・付属品「ケーブルは両出し」
付属品は携行用のケースがついています。ケーブルは両出しです。
【3】音質「木製振動板独特のギラつかない、こんもりしたような温もり感のある暖かみのある音が最大の魅力」
音質的にはJVC WOODシリーズには独特の感触というのがあります。なかなか言葉で表現するのは難しいのですが、音が鳴るときにぐわんとしなるような感覚があり、音が輪郭を強調しすぎず、剥き出しにされずにやや均されて、広がりよく聞こえてくるような感じになります。音にこんもりした温度感が乗って聞こえるというとわかりやすいでしょうか。
そういう意味でこの機種のレビューでときどき「篭もっている気がする」という評価があるのもあながち間違いでなく、音にシャープな強調はなく、ゆるやかに広がっていく感じがあるのと、中域でパンチ力を出し、厚みと迫力を感じるバランスが影響していると考えられます。金管やギターでやや派手さを抑える感じがあるので、ロックを聴くと曲によって、ライブ感満点というものもあれば、少し鈍くてノリが悪いかなという印象のものもあります。音の立ち上がりも少し緩いところがあります。しかし、シンバルのエッジは比較的詳細です。
そういうわけでモニター系のイヤホンの清潔な音に慣れていると、このヘッドホンの音は、特にロックを聴いたときに、少しもやっと感じられるところはあります。このもやっと感は篭もりと感じる人もいれば、パンチの力のある音の熱量感が中域を暖めてくれる感じを肯定的に捉えて、ライブ感の高い音響と評価する場合もあるでしょう。ボーカルフォーカスは明瞭で男声女声ともに濃く、コクと潤い感も充分な、たっぷりとした感じの深みのある系統のセクシーボイスを聴かせてくれるでしょう。
音質因子評価
音質因子 | 評価 |
鮮やかさ (鮮やか/色味が薄い) |
鮮やか。高域は少し低いところで艶やかさを強調する感じがあり、結構濃い目の出音になる。 |
鋭さ (鋭い/鈍い) |
やや鈍い。中高域で少し金属的な硬さを強調するところがあるが、中域と低域は膨らみが良く非常に暖かく、全体を眺めるとゆるめの輪郭感を感じる。 |
明るさ (明るい/暗い) |
やや明るい。中域から中高域ではっきりする感じがあるので明るめ。中高域以上の高域は逆に少し暗め。 |
派手さ (派手/地味) |
派手め。中高域の明るい感じは強くないが、それでも出音は少し派手。 |
硬さ (硬い/柔らかい) |
やや柔らかい。中高域で少し硬い感じはあるが、中域と低域の膨らみが強く、全体の音の印象は柔らかみがある。 |
尖り (尖っている/丸みがある) |
丸みがある。シャープネスに強調はほとんどなく、中高域でややカツカツするところがある意外は全体的に豊かに膨らんで丸みのある感じになる。 |
穏やかさ (穏やか/騒々しい) |
穏やか。中域と低域の豊かな感じによって温和な音楽表現になりやすい。 |
力強さ (力強い/嫋やか) |
やや力強い。全体的にゆったりしたところはあり、強くキレを主張する感じではないが、中低域にパンチ力があり、迫力は高め。 |
豊かさ (豊か/貧弱) |
豊か。中域と低域で豊かな広がりを感じることができる。 |
太さ (太い/細い) |
太い。音は広がりが良く、太く感じるだろう。 |
手触り (ざらざら/滑らか) |
滑らか。中高域を除いてはエッジを強調する感じがほとんどなく、ゆったりと音が広がるので手触りは滑らかに感じるだろう。 |
粒感 (きめの細かい/粗い) |
やや粗い。中高域だけとくに詳細になるようなバランスになっており、自然とディテールがよく感じられるようになっている。そのため、シンバル・ギターには粒立ち感があるが、金管やドラム音などの粒立ちはすこしゆったりしている。 |
清潔感 (澄んだ/濁った) |
濁っている。中域下でパンチが膨らみやすいので、曲によっては濁りが強く感じられ、もやっと感じやすいところがある。 |
潤い (潤いのある/乾いた) |
やや潤いのある。中域のパンチが強いせいで曲によっては音にもさっとした感じが出やすく、そのせいで中高域のツヤが消し飛ばされて乾燥して感じられることはあるが、大抵ではやや強調された中高域が充分潤い感を感じさせてくれる。 |
重さ (重い/軽い) |
重い。中域と低域に重量感があり、基本的に下向きに重力を感じる音場構造に思う。 |
ボーカル因子評価
ボーカル因子 | 男声 | 女声 |
澄んでいるか (澄んでいる/濁っている) |
やや濁っている | 普通 |
明るいか (明るい/暗い) |
明るめ | 明るめ |
伸びやかか (伸びる、突き抜ける/天井感がある) |
普通 | やや天井感がある |
潤っているか (しっとりしている/乾いている) |
しっとりしている | しっとりしている |
太いか (太い/細い) |
太い | 太い |
濃いか (濃い/薄い) |
濃い | 濃い |
子音が強調されるか (目立つ/目立たない) |
やや目立たない | やや目立たない |
空間因子評価
ボーカル因子 | 評価 |
主に中域の密度 (ぎっしり/スカスカ) |
ぎっしり |
主に高域の高さ (抜けが良い/天井感がある) |
やや天井感がある |
主に低域の深さ (深掘り感がある/浮き上がりがよい) |
やや深掘り感がある |
主に低域と中域の横幅 (広い/狭い) |
普通 |
主に中域の奥行き感 (奥まる/前屈み) |
前屈み |
美点
- 暖かみのある聴き心地の安定した音
- 中高域で艶やかさと潤い感が充分に感じられる
- 音を剥き出しにせず、適度に膨らませて調和的に聴かせてくれる
- ノスタルジックな雰囲気のある音
欠点
- パンチ力がやや多過ぎ、とくにドラムが強い曲では音が篭もりがちになる
- 場合によってはボワつく音と感じられやすい
- 音の立ち上がりが少しスローでゆったりしており、曲によってもたつきを感じる
[高音]:中高域の艶やかさだけ少し強めに強調する感じになっている。音響全体を見ても、中高域と中域にディテールが集中されている感じがある。一方で高域の高いところはほとんど伸びないので、抜けはよくない印象を受けるだろう。そのため高域自体はやや暗めの高域という評価になる。しかし音楽全体の中では中高域は相対的に強調されるので、全体を眺めるとやや明るめに聞こえる曲が多い(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)
[中音]:中域はかなり豊かな広がりを感じる。とくにパンチ力は強いので迫力があり、ギターやボーカルもしっかり前に出て包み込んでくれる感じがある。温度感は高めで中域にややぼんやりした印象を与えるが、広がりがあって調和的に高域と低域を繋いでくれる。
[低音]:100hz~40hzまでややブーミーにぼわんと膨らむ感じがある振動。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。低域は地熱感が強く、重低音が下で重く広がる感じが強く、キックもやや膨らんで聞こえる。下で鳴動感を広く感じる印象がある。パンチも強めで全体的に重量感と深さ両方で強めに感じる。全体的にすこしもっこりしたややディテールが緩い印象になる(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)
[解像度・立体感]:基本的には柔らかで調和的な包み込んでくる球状の空間を感じる。充実感は高く、とくに中域の広がりと低域の深みと重みで頭が包み込まれている感覚がある。高域はやや低く、縦軸は高さより深み重視に感じる(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)
[パーカッション・リズム]:ドラム表現は下に重く、フロアタムやバスドラキックが主張し、パンチ力もあるので、ドカドカバズバズと場合によって重苦しい印象が出やすいかも知れない。ドズンドズンあるいはバズンバズンといった感じの重く深めの印象。ハイハットはチリチリしたあたりがよく聞こえる。力関係ではドラム優位(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)
[ボーカル傾向]:男声ボーカルはかなり濃く、コクもだして深みと艶やかさを兼ね備えた声色でほぼ全体があますところなく表現される感じがある。女声ボーカルは声色によっては天井感を感じやすく、上で詰まる感じが出るかも知れない。膨らみは良く濃い甘味はある。
【4】官能性「JAZZはいいぞぅ」
小田和正「まっ白」
【Hiby R6 Proで鑑賞】音場に充実感があり、ジュワジュワキラキラした暖かみと潤い感の強いこの曲をほんとにジューシーで湿っぽさもたっぷりに、情緒的に聴かせてくれます。ボーカルがとくに詳細で、ふっくらした広がりを出しつつ、潤い感からコシとコクまで丁寧なディテールを感じます。ギターも刻みはきれいに感じますが、温和で小麦色に近い色彩でどこか懐かしい色合いです。そして、低域はドシッと重みと深みを出してくれます。小田和正の曲をウォーム感強めにちょっとノスタルジックに楽しむなら、大抵の曲で相性抜群と思えます。
DracoVirgo「ハジメノウタ」
【Hiby R6 Proで鑑賞】かなり熱量高めでほっこり感が強めですが、篭もる感じはあまりありません。むしろ中高域で少しガラス質の透明感がくっきり見えるくらいです。ボーカルがかなり甘いふわっとした息感が強く、やや大人びた感じで媚びる感触が強いのが蠱惑的です。セクシー女優的な声色になると言えばわかりやすいでしょうか。位置取りもボーカルはかなり近めです。そのためボーカルの隅々まで楽しめる感じがあります。低域はベースとキックがゆったりと深く広がって包み込む感じで包容力を感じます。
ヨルシカ「雨とカプチーノ」
【KANN CUBEで鑑賞】こういう曲ですと、おそらく再生機器のゲインが不足しがちな場合、篭もるようにボヤボヤするところがあるかも知れません。
比較的パワフルなDAPであるKANN CUBEで聴いても、結構な音量にしないとドラムのパスッていう弾ける音がいまいちぼやけている感じがあります。そのためパワーのないDAPだとなかなかはっきりした出音にならないと予想できます。しかし、パワーが充分に足りているDAPで聴くとかなりのパンチ力を出して、低域も地熱が強く、ライブ感満点で聴かせてくれます。
ギターの鮮やかさ、高さも少し音量を上げないと出てこないところがあるので、個人的には満足できるところを探ってみると、案外音量大きめで圧迫感が強くなりすぎてしまうのだけが気になります。輪郭はゆるめでキレよりは量感重視になるので、人によっては重たすぎると感じる可能性も高いです。
坂本英城「プレカトゥスの天秤」
【KANN CUBEで鑑賞】オーケストラ的な曲です。一般にこのヘッドホンはオーケストラやJAZZに向くと言われていますが、まずオーケストラの方を聴いてみると、たしかにド迫力で低域楽器に充分な厚みがあり、重厚感を思う存分感じさせてくれます。中高域で強調がある感じも管楽や弦楽に艶やかさを出しており、低域の鳴動とは違う「うねり」を中域にもたらしています。ただし音楽全体はかなり前進的に聞こえてくるので、オーケストラを俯瞰しているというよりはそこに入り込んで聴くような、かなり没入した感じになります。したがって、静かにクラシックを荘厳に聴くと言うよりはむしろ、クラシックの雄大な世界観に分け入っていくような音響に感じられると思われます。
大野雄二トリオ「ルパン三世のテーマ (Funky & Pop Version)」
【Cayin N6II/T01で鑑賞】JAZZの演奏力は基本的に評価の高いヘッドホンになります。たとえばこの曲を聴くと、低域の情報量が多く、重量感から鳴動する地熱がもたらす深みまで、しっかりと把握できます。金管は艶やかですが、上で派手にならないので、渋く、ダンディです。ピアノもキンキンするところなく、コンコンと有機的なみずみずしいツヤのある硬さのある音を奏でます。そのピアノの周りに滞留するシンバルが水気のように潤い感が強めの出音で、このコンビで湧き出る泉を表現しているかのようです。そして上から下まで厚みたっぷりでボリューミーなこの曲を充分に豊かに聴かせてくれます。
LUPIN THE THIRD 「JAZZ」~the 3rd~〈Funky&Pop〉
【5】総評「ライブ感重視の人向き」
基本的にパンチが強く、押し出し感は強めなので、奥行きを感じて俯瞰して聴くというよりは、演奏に近づいて包まれて聴くスタイルの出音になります。とくに没入してJAZZを楽しむというような用途にはほぼ最強クラスのパフォーマンスを発揮してくれるでしょう。中域下の篭もりやすさを考えると、万能系のヘッドホンとは言いづらいですが、迫力と懐の深さを両立させ、なおかつ潤い感も高めの出音は非常に魅力的です。
まとめ
- パンチ力があり、前進的な包み込んでくる音響
- 音が太く、厚みもあり、雄渾
- 音源によっては篭もった印象を受けるかも知れない
JVC 密閉型ヘッドホン CLASS-S WOODシリーズ ハイレゾ対応 HA-SW01
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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。