【10/2お届け分予約受付】FiiO FH3【正規輸入品】 ハイレゾ認証取得済 ハイブリッド型イヤホン
「フラッシュレビュー」はデータ中心の簡潔な内容で、ポイントを絞ってオーディオ製品を解説します。
FiiOはオーディオ界隈では知らない人はいない中国のトップ音響ブランドの一つで、とくにデジタルオーディオプレーヤー(DAP)の分野ではSONYやAstell&Kernと並び市場の勝利者として君臨するトップメーカーです。一方でFiiOはイヤホン分野でも精力的な製品展開を続けており、ビルドクオリティと音質のコスパの高い製品を世に送り出し続けています。
FiiO FH3はFiiOの最新のトリプルドライバーIEMでFiiOの最新特許技術であるバランスリリーフテクノロジーとS.Turboアコースティックチューブテクノロジーが導入されていることでも知られています。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 周波数特性:10Hz~40000Hz
- インピーダンス:24Ω
- 感度:114dB
- ケーブルコネクタ:mmcx
パッケージ
パッケージは1万円台としては標準以上です。パッケージングはFiiO製品らしい、わかりやすいものですが、安っぽさはありません。付属品はかなり豪華で、多数のイヤーピース、ペリカンタイプと布製のキャリイングケースが付属します。
FHシリーズでは一般的な波型デザインの金属筐体を持つ本体のビルドクオリティは良好で、ケーブルクオリティはコネクタに至るまでよくできています。
装着サンプル
耳への収まりは良く、遮音性も良好です。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
上から順に、
- [標準イヤーピース(グレー) S装着時]左右別
- [標準イヤーピース(グレー) S装着時]左右平均
- [標準イヤーピース(グレー) S装着時]左右別(自由音場補正済み)
- [標準イヤーピース (グレー)S装着時]左右平均(自由音場補正済み)
※当ブログの自由音場補正については機材に合わせてサザン音響さんから提供された補正値を使用しております。
全体を見るとほとんどフラットで、やや中高域が落ち込んだわずかにU字型と言えるサウンドシグネチャーをしています。
わりと見通しがよくすっきりした低域です。適度な熱気が感じられ、エレキベースはじんわりして温かいサウンドですが、それほど黒くありません。キックに重厚感はあまりないので、重みのある低域を求める人にはやや物足りない可能性があります。少し重低域のノイズが多めに感じられますが、中域に滲む感じはほとんどありません。低域弦楽は透明感があるサウンドで、少し浮き上がりの良い滾々とした雰囲気を持っています。
中域が前面に出てくるチューニングは下位機種のFH1sと共通の音響設計思想が感じられ、同じ系列の製品であることを思い出させます。しかし、FH1sののびやかで元気な表現に比べて、FH3の中域は安定感の増した、落ち着きと静寂感を重視したものになっており、より充実しています。
たとえば下地紫乃&悠木碧「Harvest Moon Night」を聞くと、ボーカル周辺の背景の静寂感が異なることにすぐ気づくはずで、より雄渾にボーカルがフォーカスされて中域に厚みが感じられるFH3に対して、FH1sではボーカルが上ずって、もう少し清潔な雰囲気で聞こえてきます。ボーカルのボディもFH1sのほうが薄く、明るいですが、少しかさつく感じに思えるに対し、FH3はみずみずしくふくよかに聞こえます。FH1sは子音が尖りがちなのも気になるかもしれません。一般にアコースティックな曲では、FH1sよりはFH3のほうが好ましく思えるでしょう。しかし、よりシャープで引き締まったサウンド、たとえば細くしなるように伸びる雰囲気のバイオリンが好きな場合はFH1sをおすすめします。
中高域の後退によって高域は中域とよく分離されており、中域でガチャガチャしません。高域のピーク感によって音にはのびやかさと適度なシャープ感、ほどよいギラつきがもたらされています。ハイハットはわりと粒立ちを強調し、シャカシャカとするところがありますが、一般に目立ちすぎないと思います。しかし、曲によっては高域でややシャギーで音の輪郭が荒れる印象を受けることがあり、たとえばRun Girls, Run!「スノウ・グライダー」を聞いてた時に、この曲にある特徴的な風切り音の演出のピークが強く、やや耳に痛い印象を受けました。
音質的にはわりと正統派のモニターサウンドと言え、この価格帯では「迷ったらこれでいい」的なスタンダードな機種としておすすめできそうです。とくにポップスなどボーカル曲中心の人はこれでいいんじゃないでしょうか。
DUNU SA3/FiiO FH1sとの比較
さて、ここでは値段的に競合し、同じくフラット系に近くボーカルフォーカスもよいモニターライクサウンドのDUNU Studio SA3と、FiiO FH3の下位機種であるFiiO FH1sと比較してみます。
上のグラフは自由音場補正済みのそれぞれの周波数特性を1khzで交差するように調整したものです。イヤーピースはそれぞれの標準イヤーピースを使っています。
vs DUNU Studio SA3
価格的にも製品コンセプト的にもわりと競合する機種であるDUNU Studio SA3と比較します。まずDUNU Studio SA3はFH3よりボーカル中心主義的なチューニングになっています。こうしたチューニングの良い点は多くの人が音量の基準にするであろうボーカルで音量を合わせた時に、ほかの楽器音がうるさくならないことです。欠点は中域に音が集まって聞こえやすいことで、全体的に音楽が静的に感じられ、ダイナミズムに欠けます。率直に言って個人的にSA3とFH3、どっちが聞いてて楽しいかと言われれば、多くの場合FH3で聞いたほうがメリハリを感じ、奥行きや広さで優れているように思われます。
低域の表現にも大きな差があり、SA3ではほとんど低域の存在感が強調されないどころかむしろ弱体化するので、低域をどの程度聞きたいかによっても変わるでしょう。
個人的にはSA3はiBasso DX220 MAXのような、わりとドライなサウンドとかShanling M6のようなすっきりしたサウンドのDAPと組み合わせると解像感の高まりを感じるのですが、FiiO M15のような音楽的なサウンドのDAPと組み合わせると、中域に音が集まりすぎてのびやかさに欠ける印象を受けます。一般にスマホと組み合わせる場合、おそらく多くの人にとって、FH3のほうが好ましく聞こえるのではないでしょうか。
一方でSA3のフォトレビューでも述べましたが、ボーカル曲を透明感重視でとことん味わい尽くしたい場合にはFH3よりSA3のほうがより明るく、スポットライトがボーカルによく当たるので、幻想的な雰囲気がより引き出されます。たとえばフォトレビューでも紹介したUruの「Scenery」は私の好みによるとという留保付きですが、明らかにSA3のほうが説得力を感じます。音場全体の情報量はFH3のほうが多く、バランスよいですが、ことボーカルとその周辺の雰囲気に関する限り、SA3のほうが味わい深いです。
FH3とSA3の音源比較
vs FiiO FH1s
FiiO FH1sはFiiO FH3に比べると繊細でシャープなサウンドを持っています。音の細やかさを重視する人にはFH3よりFH1sのほうが好ましく思えるかもしれません。FH3に比べるとややボーカルがハスキーに聞こえますが、同様にニュアンスはより繊細に感じられるかもしれません。小音量でも音の輪郭はわかりやすいですが、FH3に比べると軽っぽく、安定感には欠けるサウンドです。またFH1sの音の見た目の派手さにも関わらず、音の粒立ちや手掛かりは色づきの良いFH3のほうがしっかりしているように感じられると思います。FH3は中域に安定感があるので、FH1sのボーカルに時々感じられる息苦しい感じがありません。
FH3とFH1sの音源比較
Mangird Teaとの比較
比較的音質が似ているMangird Teaとの比較があります。詳細はMangird Teaのレビュー記事をご確認ください。
Tri Starseaとの比較
比較的音質が似ているTri Starseaとの比較があります。詳細はTri Starseaのレビュー記事をご確認ください。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。自由音場補正済みです。ソースはFiiO M15を用いています。イヤーピースは標準イヤーピース(グレー)のSサイズ、ゲインは高設定です。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
JAZZ
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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町「ペンタウァ」 / ファルコムベストサウンドコレクション -All in All- / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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Desire / The Songs of Zemeth ~Ys VI Vocal Version / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
OST
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Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC Evolution オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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永劫の夢、大空の記憶 -Online Version- (Bonus Track) / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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ユルギナイツヨサ / 日本ファルコム 英雄伝説 零の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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アプリエス神殿 / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
クラシック
- Sophisticated Fight / We Love 空の軌跡 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- FEENA / イース ピアノコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
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組曲 LILIA (ファルコム ネオクラシック フロム スタディオズ イン ロンドンシティ) / ベリー・ベスト・オブ・イース / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ロック
- Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- The Decisive Collision / 英雄伝説 閃の軌跡 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
- Mighty Obstacle (2003) / Music From The History Of Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
FiiO FH3はボーカルフォーカスの良いフラットに近いサウンドを実現しており、バランスの良いモニターサウンドを求めている人には有力な選択肢です。パッケージングや本体のビルドクオリティ、付属品も値段を考えるととても満足できるレベルで、この価格帯ではかなり有力な選択肢になるはずです。
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