- 基本スペック
- GRADO GW100の特徴
- パッケージ
- 装着サンプル
- 接続品質
- インターフェース/操作方法
- 音質
- 音楽鑑賞
- レコーディングシグネチャー
- 録音機材
- GENS D'ARMES(ロック系)
- Sophisticated Fight(ロック系)
- TO MAKE THE END OF BATTLE(ロック系)
- 白き魔女(クラシック系)
- 小さな英雄(クラシック系)
- 淡い恋 ~Too full with love~(クラシック系)
- FEENA(EDM系)
- The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
- Sophisticated Fight(JAZZ系)
- ケノーピ火山(JAZZ系)
- 浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
- QUATERA WOODS(OST系)
- 幻の大地 セルペンティナ(OST系)
- 愛を感じていたい「終焉」(ポップス系)
- 魔王ヴェスパー(OST系)
- 花と風のうた(JAZZ系)
- 総評
- 【関連記事】
今回取り上げる機種はGRADOの人気ワイヤレスヘッドホン、GRADO GW100です。
GRADOは高級かつユニークなヘッドホンを作っているアメリカのオーディオメーカーで、その製品のほとんどは開放型ヘッドホンです。GRADOサウンドとも言うべき独特のハウスサウンドがあり、ハマるとこのメーカーのヘッドホンを聴かないと頭がおかしくなる病気にかかってしまうくらい一部に人気があります。かくいう私も定期的にPS2000eを聴かないと禁断症状が出る謎の病気にかかっています。
さて、GRADO GW100は世界初の開放型Bluetoothヘッドホンとして開発されました。一部では「ワイヤレスなのに開放型!?ワイヤレスって外出時に使うんじゃないの?音ダダ漏れじゃね?GRADO正気か?」みたいな懸念がありました。GRADOは「安心して!音の外部漏れは60%も低減したよ!」なんて言ってますが、実際音はわりとダダ漏れです。60%遮音くらいじゃさすがに満員電車では使えません。
なおこのレビューはONZO様の素晴らしいサービスを利用して作成されました。感謝とともにONZO様のますますのご発展をお祈り申し上げます。
ONZO様のサービスについて興味がある方は以下をご参照下さい。
audio-sound @ hatenaはこの機種を「audio-sound @ hatena Highly Recommended」として、大多数の人にとって満足度が高いオーディオ製品であると推奨します。
基本スペック
- 周波数特性:20Hz~20kHz
- インピーダンス:32Ω
- 感度:98.8dB
- 連続再生時間:15h
- 対応コーデック:aptX/AAC/SBC
- 技適番号:204-920514
GRADO GW100の特徴
紛う事なきGRADOサウンドの正統派
GRADO GW100はGRADOの開放型ヘッドホンのサウンドをワイヤレスで持ち運べるようにするという理想とともに、世界初の開放型ワイヤレスヘッドホンとして設計されました。そのサウンドは紛う事なきGRADOの正統派サウンドをユーザーに届けます。
GW100の中には、Gradoシグネチャーのドライバー以外には何もありません。これらのドライバーは、Grado社の有線ヘッドフォンと全く同じ設計で開発されています。様々な素材を採用している有線ヘッドフォンと同じように、GW100のハウジングに最適化されています。GW100の実現しているサウンドクオリティは、Grado社のドライバー設計における何十年もの経験なしには不可能です。
開放型でありながら音漏れが少ない
GRADOはGW100でハウジングと内部設計を作り込み、音漏れを60%低減し、開放型でありながら周囲を気にせず音楽を楽しめるよう設計したとされています。実際には少し音漏れが目立つので、他の人との密接度が高い満員電車などでの使用には不向きですが、ストリートでの使用では問題ないでしょう。
GW100は、世界初の開放型Bluetoothヘッドフォンです。開放型でありながら、そのスピーカーハウジングとその内部設計により、外部に漏れる音は約60%軽減されています。
15時間もの長時間音楽再生
GRADO GW100はaptX/AAC/SBCといった主流のオーディオコーデックでのワイヤレスオーディオ環境を提供し、しかもその連続再生時間は15時間に及びます。通勤通学だけでなく、家の中で長時間音楽を聴く用途でも不足を感じないでしょう。
パッケージ
パッケージは価格帯では標準クラスです。パッケージデザインはシンプルで、開梱体験は豪華という感じではありません。付属品には有線接続用3.5mmプラグAUXケーブル、充電用USBケーブル(Type-C)、説明書などが含まれます。
ナイコムの公式ホームページでは付属の充電ケーブルはMicro-Bタイプのように見えますが、私のテストした個体はコネクタはType-Cでした。個体によってはMicro-Bのものもあると思われます。
また充電しながらワイヤレス充電や有線接続で音楽を聴くことが出来ます。
ビルドクオリティは価格を考えると良好です。
装着サンプル
装着感は良好ですが、開放型なので遮音性は高くありません。軽量でやや側圧は強いですが、クッションパッドのおかげで耳が痛くなることはなく、快適です。それでも3時間くらい装着していると、さすがに少し痛くなってはきます。
接続品質
aptXでCayin N6II/E02と接続してテストしました。価格帯では良好な接続品質です。人混みに行ってないのでわかりませんが、家庭内ではわりと安定しています。距離耐性の点でも問題なく、5m離れてもシームレスでした。ただし、遮蔽物があると音が不安定になり、遅延やプチプチとした途絶が目立つようになります。それでも接続自体は維持されており、音楽が聴けないというほど不安定ではありませんでした。相性もあると思いますが、海外では通信品質がひどいというレビューもあります。
ホワイトノイズは少しあるかもしれませんが、おそらくほとんどの人が気になりません。
インターフェース/操作方法
操作インターフェースは左耳ハウジング後方にあり、物理ボタン式です。ボタンは電源マークのものと「+」「-」がデザインされたボタンの計3つあります。
電源ON
一番上の電源マークのボタンを長押しします。
電源OFF
一番上の電源マークのボタンを長押しします。
ペアリング
電源ボタンを入れると接続先がない場合、自動でペアリングモードになります。
曲再生/停止
電源ボタンを1回クリックします。
曲送り
「+」ボタンを長押しします。
曲戻し
「-」ボタンを長押しします。
音量を上げる
「+」ボタンを1回クリックします。
音量を下げる
「-」ボタンを1回クリックします。
音質
測定機材
- SAMURA HATS Type3500RHRシステム:HEAD & TORSO、左右S-Typeイヤーモデル(Type4565/4566:IEC60268-7準拠)
- AWA社製Type6162 711イヤーシミュレータ
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- アナライザソフト:TypeDSSF3-L
※イヤーシミュレーターの特性上、20hz以下と16khz以上の信頼性は高くありません。
周波数特性
マガジン専用コンテンツになります。
サウンドシグネチャー解説
マガジン専用コンテンツになります。
THD+N特性
マガジン専用コンテンツになります。
ワイヤレスと有線での音の違い
詳細は有料記事で解説しています。ここでは録音音源による比較でご確認下さい。
録音比較
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
音質解説
全体のバランスはフラットに近く、やや高域寄りのブライトサウンドです。
低域は重みと厚みが少し強調されており、また少し階層的で低域と中域は少しだけ分離されており、低域は最前列ではありません。それでも低域から中域にかけての全体はウォームに聞こえるバランスになっています。低域の深いところは少しブーミーで見通しが悪い印象を受けますが、地熱が感じられ、ライブ感があります。エレキベースよりはドラムキックが少し強調されて聞こえます。そのドラムキックは少し膨張感もあり、やや豊満です。低域弦楽はほぼ自然な厚みを持っており、ゆったりと豊かに聞こえます。ボーカルの下あたりに豊かに熱気が集まる傾向があるので、充実感のあるサウンドですが、人によっては篭もって聞こえる可能性があります。
その中域は下はやや厚みがあって濃厚感が強いですが、構造的には前傾的になっているために、サビではボーカルが明るく浮き上がって聞こえます。この中域は豊かな充実感を出しながらも、安定感は意外と強くなく、音楽は少し不安定にうねって聞こえるので、ややグルーヴ感が強調されます。
低域から中域で感じられる音楽のうねりは高域方向ではより強化されて聞こえます。中域から中高域にかけては少し極端に奥行き感が強調されており、うねりのエネルギーがさらに振れ幅を増してエネルギッシュに聞こえるようになっています。そのうねりのエネルギーは中高域に到達すると、そこから上はわりと素直に抜ける構造になっていて、高域ではエネルギーが少し開放されるような爽快感が感じられるようになっています。そのため、空間は上ですっきりしているように感じられますが、実際の空間自体は高く抜けておらず、必ずしも風通しが良好というわけではなく、中域へのフォーカス感が強くなっています。
この独特の音響構造はGRADO的と言えるうねりのある中域を充分に印象づける、グルーヴ感に満ちた楽しいサウンドを生み出し、コントラバス、チェロ、エレキギターや金管、リズム楽器は文字通り身体を揺らして歌うようにボーカルの周辺を賑やかにします。その色づきも鮮やかで、そのノリの良さに思わず身体が動いてしまうほどです。GRADOらしい甘く楽しいサウンドを聴きたいなら、GW100はまさにその典型を味わわせてくれます。
音質的な特徴
美点
- フラットに近く、バランスが良い
- グルーヴ感が高い
- 濃厚感のあるサウンド
- 艶やかで色気のあるサウンド
- 爽快感がある
- エネルギッシュ
欠点
- やや浮ついた、安定感に欠ける落ち着きがないサウンド
- シャウティになりやすいボーカル
- 開放感はいまいち
- 中域の清潔感に欠ける
- 静寂感のないサウンド
音楽鑑賞
岸田教団&THE明星ロケッツ「GATE〜それは暁のように〜」
GRADOというとロックサウンド向きというような印象もあるかも知れませんが、実際のところGW100でこういうロックを聴くと案外好みが分かれそうな気がします。この曲から熱気とグルーヴ感を引き出し、非常にパワフルでエネルギッシュに聞こえるという点では、たしかに満足感があります。しかし一方でGW100は中域がそれほど清潔な感じではないので、ボーカル周りに熱気が滞留してやや埋没的に聞こえやすいところがあります。ボーカルはその熱気から頭一つだけ出ていますが、やはりボーカルラインを追っていくとその周辺がうるさい感じがあるかもしれません。
人によってはそれを高い没入感と評価するかも知れませんが、混濁感が強くて聴きづらいという評価も同じくらい出てきそうです。中域にグルーヴが集中するところがあるので、ボーカル近くで音が渦を巻くような感じがあるのも、わりと好みを分けるでしょう。
すぎやまこういち、ロンドン・フィル・ハーモニー管弦楽団「この道、わが旅」
個人的にはむしろこういうバラード的なのびやかで雄大な曲をグルーヴ感を高めて聴きたいときにGW100の真価が感じられる気がします。本来わりと静かな系統の曲ですが、GRADO GW100で聴くと、中域での金管音やバイオリンのうねりが強調され、正統派クラシックよりは音がスイングして聞こえるJAZZバンド風に寄せた雰囲気が出ており、聴いているだけで思わず身体が動き出しちゃいます。
moumoon「ラヴソング」
じつはこういうムーディーな音楽の方が、個人的にはGW100で聴きたい曲です。かなり豊満な中域を持っているので、充実感は充分ですし、ボーカルは少し上向いて媚びたところがありますが、その媚び媚びな雰囲気を周りの楽器が艶やかに、リズミカルでグルーヴィーに支えるので、全体的にノリが良く聞こえます。そして中高域の色づきが非常に印象的に聞こえるので、色気が素晴らしく、音楽に甘く匂い立つ雰囲気があります。どことなく軽薄そうなナンパな音ですが、最高にセクシーなサウンドを聴かせるエレキギターを楽しめます。
レコーディングシグネチャー
レコーディングシグネチャーの基本的な原理、楽しみ方については以下を参考にして下さい。
参考用にレコーディングシグネチャーを掲載します。ソースはFiiO M15を用いています。コーデックはaptXです。
レコーディングシグネチャーで使用している楽曲は私も大好きなゲームメーカー日本ファルコム様のものを使用させて頂いております。
録音機材
- SAMREC HATS Type2500RSシステム:HEAD & TORSO、Type4172マイクX2搭載
- 5055Prot 実時間2ch 自由音場補正フィルター(特注)
- マイクプリアンプ:Type4053
- Type5050 マイクアンプ電源
- オーディオインターフェース:ROLAND Rubix 24
- レコーディングソフト:Audacity
GENS D'ARMES(ロック系)
GENS D'ARMES / イースVIII -Lacrimosa of DANA- オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
Sophisticated Fight(ロック系)
Sophisticated Fight / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
TO MAKE THE END OF BATTLE(ロック系)
TO MAKE THE END OF BATTLE / Ys Ⅰ&Ⅱ ベストサウンドコレクション / Copyright © Nihon Falcom Corporation
白き魔女(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 白き魔女 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
小さな英雄(クラシック系)
第3部「白き魔女」: 小さな英雄 / 交響曲「ガガーブトリロジー」 ~白き魔女~朱紅い雫~海の檻歌~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
淡い恋 ~Too full with love~(クラシック系)
淡い恋 ~Too full with love~ / イース・ヒーリング / Copyright © Nihon Falcom Corporation
FEENA(EDM系)
FEENA / PROVINCIALISM Ys / Copyright © Nihon Falcom Corporation
The Silver Will -ギンノイシ-(EDM系)
The Silver Will -ギンノイシ- / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation
Sophisticated Fight(JAZZ系)
Sophisticated Fight / 英雄伝説 空の軌跡FC&SC スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
ケノーピ火山(JAZZ系)
ケノーピ火山 / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
浮遊大陸アルジェス -Introduction-(OST系)
浮遊大陸アルジェス -Introduction- / Zwei!!オリジナル・サウンドトラック2008 / Copyright © Nihon Falcom Corporation
QUATERA WOODS(OST系)
QUATERA WOODS / イースVI -ナピシュテムの匣- オリジナル・サウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation
幻の大地 セルペンティナ(OST系)
幻の大地 セルペンティナ / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
愛を感じていたい「終焉」(ポップス系)
愛を感じていたい「終焉」 / オリジナル・サウンドトラック 「海の檻歌」~後編~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation
魔王ヴェスパー(OST系)
魔王ヴェスパー / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
花と風のうた(JAZZ系)
花と風のうた / 「Zwei!!」 スーパーアレンジバージョン / Copyright © Nihon Falcom Corporation
総評
GRADO GW100はグルーヴ感に溢れた艶やかな甘いサウンドを奏でるヘッドホンです。それはヘヴィロック向きというよりはもっと華やかな、たとえば Elvis Presleyの「Can't Help Falling In Love」やHall&Oatesの「Do It For Love」、スピッツの「ロビンソン」や平井堅の「POP STAR」のような甘い曲と相性が良いように思われます。最高に色気のあるGRADOサウンドを持ち運びたい人にとって、GRADO GW100はとてもスウィートな相棒になるでしょう。
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