中華イヤホンの1万円台は激戦区です
2020年は中華イヤホンにとって躍進の年になるかも知れません。中華イヤホンはチープという認識は少なくとも改める必要がありそうです。中華イヤホンは平面駆動型ドライバーやピエゾドライバーなど、最新のオーディオ技術をいち早く低価格で提供することにも長けており、この価格帯でもそうした技術をうまく取り入れたイヤホンが楽しめます。
魅力は音質面だけではありません。この価格帯にはハイエンドモデルに匹敵するビルドクオリティやパッケージクオリティを持つ機種も存在しており、1万円台の中華イヤホンはまさに百家争鳴の観があります。今最も熱いこの価格帯で、個人的に私が気に入ってる良機種を紹介したいと思います。
10000円台のお気に入り機種
FiiO FH3
中国で最も有名なブランドの一つであるFiiOが出した最新のトリプルハイブリッドIEMであるFiiO FH3はこの価格帯で最高のイヤホンの一つであることは間違いありません。良好な装着感をもたらす素晴らしいビルドクオリティで構築され、バランスリリーフテクノロジーにより歪みの少ないサウンドを実現しています。高品質な付属ケーブルの取り回しも良く、バランス接続用のケーブルが付属しないという点を除けば、完成されたパッケージを手に入れることが出来ます。
音質は見通しとバランスの良いモニターサウンドです。
機種名 | FiiO FH3 |
ドライバー構成 | 1DD+2BA |
周波数特性 | 10Hz-40kHz |
インピーダンス | 24Ω |
感度 | 114dB |
ケーブルコネクタ | mmcx |
高域 | ☆☆☆☆★ |
中域 | ☆☆☆☆★ |
低域 | ☆☆☆☆★ |
DUNU Studio SA3
台湾のイヤホンメーカーDUNUはその素晴らしいサウンドと品質でオーディオファンの間では知らない人のいないメーカーです。その最新スタジオモニターシリーズであるStudioシリーズのエントリーモデルがDUNU SA3です。思わず目を奪われるラピスラズリのように美しいイヤーシェルは、とても1万円で買えるイヤホンとは思えないほどきれいです。
そのサウンドは中域に丁寧にフォーカスされる明るいサウンドで、透明感に優れています。
機種名 | DUNU Studio SA3 |
ドライバー構成 | 3BA |
周波数特性 | 5Hz-40kHz |
インピーダンス | 13Ω |
感度 | 112dB |
ケーブルコネクタ | 0.78mm 2pin |
高域 | ☆☆☆☆★ |
中域 | ☆☆☆☆☆ |
低域 | ☆☆☆★★ |
Reecho × Peacock Spring
知る人ぞ知るメーカーであるReechoは美しい塗装で知られるPeacock Audioと組んで、世界進出のための最初のイヤホンパッケージを完成させました。Reecho × Peacock Springは美しい外観と豪華なパッケージによって、間違いなくハイエンドに匹敵する満足感を与えてくれます。
そのサウンドはボーカルホンと言える美しい中域を持っており、明るく歌う女声ボーカルをとくにきれいに聴かせてくれるでしょう。
機種名 | Reecho × Peacock Spring |
ドライバー構成 | 1DD+2BA |
周波数特性 | 10Hz-38kHz |
インピーダンス | 16Ω |
感度 | 106dB |
ケーブルコネクタ | 0.78mm 2pin |
高域 | ☆☆☆☆★ |
中域 | ☆☆☆☆☆ |
低域 | ☆☆☆★★ |
QoA Pink Lady
Queen of Audio(QoA)はKineraと関係の深いブランドですが、独自の開発チームを持っています。その最初のイヤホンであるQoA Pink Ladyはパッケージ内容とビルドクオリティの良さ、そして何よりも絶妙なサウンドチューニングによって世に知られており、ブランドの名声は確立されました。
QoAはこの最初のイヤホンで、中域のディテールを重視しながらも、高域や低域にバランス良く目配りされた品の良いチューニングで上質なサウンドを実現しています。
Pink Ladyは残念ながら日本ではまだ発売されていないので、海外から個人輸入で購入するしかありません。
機種名 | QoA Pink Lady |
ドライバー構成 | 1DD+2BA |
周波数特性 | 20Hz-20kHz |
インピーダンス | 16Ω |
感度 | 112dB |
ケーブルコネクタ | 0.78mm 2pin |
高域 | ☆☆☆☆★ |
中域 | ☆☆☆☆★ |
低域 | ☆☆☆☆★ |
Tri Audio Tri-i3
Tri Audioは新興のオーディオメーカーですが、オーディオファンの間では優れたイヤホンメーカーとして充分な名声をすでに確立しています。ブランドのイヤホンの中でとくに評価が高いのが平面駆動型ドライバーを採用したトライハイブリッドIEMであるTri-i3です。
Tri-i3は平面駆動型独特の歪みが少なく、透明度の高く、音場の広いサウンドが味わえます。1万円台では破格のそのサウンドは多くのオーディオファンを今も魅了し続けています。
機種名 | Tri Audio Tri-i3 |
ドライバー構成 | 1DD+1平面駆動型+1BA |
周波数特性 | 20Hz-40kHz |
インピーダンス | 15Ω |
感度 | 103dB |
ケーブルコネクタ | mmcx |
高域 | ☆☆☆☆★ |
中域 | ☆☆☆☆★ |
低域 | ☆☆☆☆★ |
Shozy Form 1.4
Shozyは、高品質のIEMの製造に特化した知る人ぞ知る中国のオーディオ機器メーカーで、プレミアムなビルドクオリティと、粋でスマートなしゃれたルックス、心が落ち着く甘美なサウンド出力を備えています。Shozy Form 1.4は1万円台でありながら輸入木材のフェースプレートを採用し、高級家具のような外観を持っています。ケーブルもファブリックコーティングされていて同様の高級があり、その品があるデザインと定評あるサウンドチューニングを生かした音質で話題になりました。
少しディテール感を強調しつつも、全体として自然で中域が鮮やかに聞こえるサウンド出力を実現しています。音楽性を重視しつつ、少しギザッとした手応えのようなものを音に求める場合、このイヤホンはなかなか魅力的に思えるはずです。
機種名 | Shozy Form 1.4 |
ドライバー構成 | 1DD+4BA |
周波数特性 | 20Hz-20Khz |
インピーダンス | 19Ω |
感度 | 100dB |
ケーブルコネクタ | 0.78mm 2pin |
高域 | ☆☆☆☆★ |
中域 | ☆☆☆☆★ |
低域 | ☆☆☆☆★ |
TANCHJIM HANA
TANCHJIMは2015年に設立されたばかりの比較的新しい中国のIEMメーカーですが、高いビルドクオリティと良質なサウンドチューニングで人気を集めました。高磁束のドライバーによって実現される歪みの少なさと、ハーマンターゲットカーブに基づくバランスの良いサウンド出力を特徴としています。
TANCHJIM HANAに採用された高磁束ドライバーは第3世代となっています。そのサウンドはOxygenのハーマンターゲットデザインを受け継いでおり、非常にバランスが良く響きが自然に聞こえる万能系の味付けになっています。
機種名 | TANCHJIM HANA |
ドライバー構成 | 1DD |
周波数特性 | 5Hz-50Khz |
インピーダンス | 32Ω |
感度 | 110dB |
ケーブルコネクタ | 0.78mm 2pin |
高域 | ☆☆☆☆★ |
中域 | ☆☆☆☆★ |
低域 | ☆☆☆☆★ |
BQEYZ Spring 2
日本では決して有名というわけではないBQEYZですが、中華イヤホン界隈ではよく知られたブランドです。BQEYZは新興ブランドでありながら、極めて高い技術力とチューニングセンスを持っていることが知られており、金属筐体の製造能力も高く、コストパフォーマンスに優れたIEMを多数リリースしています。そのBQEYZのイヤホンの中で目下のところ、最も絶賛されているのがBQEYZ Spring 2です。
そのサウンドは音場が広く、高解像でありながら、低域が穏やかで自然な質感のある音楽的なサウンドを持っており、万能系です。
機種名 | BQEYZ Spring 2 |
ドライバー構成 | 1DD+1BA+1ピエゾ |
周波数特性 | 7Hz-40kHz |
インピーダンス | 32Ω |
感度 | 110dB |
ケーブルコネクタ | 0.78mm 2pin |
高域 | ☆☆☆☆★ |
中域 | ☆☆☆☆★ |
低域 | ☆☆☆☆★ |
AUDIOSENSE AQ3
AUDIOSENSEはその高いチューニング技術と豊富な製品ラインナップで人気が高いブランドです。このブランドの音作りは先進的で、小さくまとまることなく、様々なサウンドに挑戦しており、その多彩な音色でファンを飽きさせません。その中でもAUDIOSENSE AQ3はAUDIOSENSEらしいディテール感を重視して聞かせるややリスニングに寄せたモニターサウンドを持っています。ブランドで最も人気があるT800に似たサウンドを持っていますが、聴き心地や音場の点ではよりすぐれているでしょう。
この価格帯屈指のニュートラルでバランスが取れたサウンドを持っており、批評的なオーディオファンを充分に満足させる品質で、AUDIOSENSEの1万円台の機種では最もおすすめできます。ただし、より音楽的なサウンドを求める場合、同じ価格帯ではDT200のほうが好ましく思えるかも知れません。
機種名 | AUDIOSENSE AQ3 |
ドライバー構成 | 1DD+2BA |
周波数特性 | 20Hz-22kHz |
インピーダンス | 18Ω |
感度 | 102dB |
ケーブルコネクタ | mmcx |
高域 | ☆☆☆☆★ |
中域 | ☆☆☆☆★ |
低域 | ☆☆☆☆★ |
Tri Starsea
Tri Audioの最新IEMラインナップであるTri StarseaはおそらくStarlightと同じシリーズに位置づけられています。ブランドの名を不動にした平面駆動型ハイブリッドIEM Tri i3とは異なり、そのサウンドはよりニュートラルで分析的になり、i3よりややモニターサウンドに寄った音になりました。それでもTriらしい音楽的な音の滑らかさは維持されています。チューニングスイッチによって好みの音質に調整できるギミックも面白いでしょう。
音質は見通しとバランスの良いニュートラルサウンドで、この価格帯の中華イヤホンに君臨するFiiO FH3を真の意味で脅かす存在です。
機種名 | Tri Starsea |
ドライバー構成 | 1DD+2BA |
周波数特性 | 20Hz-20kHz |
インピーダンス | 9.5Ω |
感度 | 106 + 2dB |
ケーブルコネクタ | 0.78mm 2pin |
高域 | ☆☆☆☆★ |
中域 | ☆☆☆☆★ |
低域 | ☆☆☆☆★ |
まとめ
中華イヤホンは音質だけでなく、パッケージ全体のクオリティが確実に向上しています。1万円台でもハイエンドクラスに匹敵する満足感を得られるほどコストパフォーマンスはよくなってきています。品質の悪いケーブル、劣悪なビルドクオリティといった中華イヤホンでお馴染みだった形容はもう通じなくなりつつあり、個性的で美しいイヤホンがこの価格帯で充分入手できるようになっています。この価格帯の中華イヤホンは激戦区となっており、各社がしのぎを削って品質を高めているので、今後も目が離せない展開が続くでしょう。
どうか楽しい音楽ライフをお楽しみください!この記事が参考になれば幸いです。
一覧表
機種名 | FiiO FH3 | DUNU Studio SA3 | Reecho × Peacock Spring | QoA Pink Lady | Tri Audio Tri-i3 | Shozy Form 1.4 | TANCHJIM HANA | BQEYZ Spring 2 | AUDIOSENSE AQ3 | Tri Starsea |
ドライバー構成 | 1DD+2BA | 3BA | 1DD+2BA | 1DD+2BA | 1DD+1平面駆動型+1BA | 1DD+4BA | 1DD | 1DD+1BA+1ピエゾ | 1DD+2BA | 1DD+2BA |
周波数特性 | 10Hz-40kHz | 5Hz-40kHz | 10Hz-38kHz | 20Hz-20kHz | 20Hz-40kHz | 20Hz-20Khz | 5Hz-50Khz | 7Hz-40kHz | 20Hz-22kHz | 20Hz-20kHz |
インピーダンス | 24Ω | 13Ω | 16Ω | 16Ω | 15Ω | 19Ω | 32Ω | 32Ω | 18Ω | 9.5Ω |
感度 | 114dB | 112dB | 106dB | 112dB | 103dB | 100dB | 110dB | 110dB | 102dB | 106+2dB |
ケーブルコネクタ | mmcx | 0.78mm 2pin | 0.78mm 2pin | 0.78mm 2pin | mmcx | 0.78mm 2pin | 0.78mm 2pin | 0.78mm 2pin | mmcx | 0.78mm 2pin |
高域 | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ |
中域 | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆☆ | ☆☆☆☆☆ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ |
低域 | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆★★ | ☆☆☆★★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ | ☆☆☆☆★ |
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