saya「The Girls Are Alright!」を聴いてみる。まず色味が全体的に暗い。やはり首回りに音が滞留している感じがあり、ボーカルは分離して浮き上がってくるが、透明感や煌めき感に欠けたやや太めの声で、溌溂さに欠ける。このバランスだとむしろカップリング曲の重厚なロック曲「宇宙を見上げて」や「ハルカトオク」のほうが楽しめる。ドライ傾向の味付けも合っている。曲のバランスも低域に寄っていて、ボーカルを浮き上がらせるバランスになっているので、印象的によく合致する。
ということで、久しぶりに探し出してきたのがCyndi Lauper。Cyndiの曲の中でも私の大好きな曲「I Drove All Night」を聴いてみる。はい、最高。爆発力のある低域と黒くはっきりした明瞭感のある低域の床面に集中する楽器音とそこから浮き上がる力強いボーカルが中毒的。なるほどね、こいつバブリーな曲に強かったのね。
Chima「hey, Mr. July」もこのスピーカーの重厚感が素直に曲の骨格を明確にしてくれる好例。つま弾く弦楽の輝きも少しギラギラとしてビターな濃厚感があり、曲にメリハリを付けるデジタル衝撃音の圧もほどよく盛り上げる。ボーカルの温度感のある声色もこのスピーカーとの相性が良く、暗めに出ても不自然な感じはない。突き抜けは良いので、サビではボーカルがふわふわと穏やかに浮揚する感覚も味わえる。
エド・シーラン「You Need Me, I Don't Need You」もいい。重低感と爆発力のバランスが良く、低域が非常に躍動的で地熱も十分。そのうえにラップボーカルがメリハリ良く聞こえる。
生の振動感がある低域が、かなり曲の量感を増して感じさせる。本来は落ち着いたスムースなデジタルジャズの曲だが、このスピーカーではズンズン言う重低感が重くのしかかってくる。本来の味わいとは少し違うかも知れないが、これはこれで満腹感がある。(イワクラコマキ「KSJ Old Gothic Noie」)
やや左右が狭く、もしゃもしゃとしやすいので必ずしもクラシック系の曲全般良いというわけではない。だが、たとえばこの曲なら、重厚感と弦楽ののびやかさが出やすく、比較的妙味がある。同じアルバムに収録されている「The Third Advent」なども同様の理由で重厚感を味わえる。(菅野よう子「地よりはずめと」)
Siaのアルバム「1000 Forms Of Fear」に含まれているクラブサウンド色の強い曲はどれも比較的合う。一例としてこの「Elastic Heart」を挙げるが、重低感のあるベース表現の上にSiaのハスキーで甘いボーカルがぽっかりと浮かび上がる基本構造が、実にこのスピーカーと相性が良い。
petit milady「360°星のオーケストラ」はボーカルが高域でもしゃもしゃしやすく、また耳に痛いような音割れ感を感じる。本来はかなり突き抜け感の強い感じで出るボーカルなので、そのエネルギーを持て余している印象はある。弦楽もややガチャガチャしている。ドラムは非常に軽く、シンバルのシャリ味も強め。キンキンしやすい曲調が少し出過ぎてしまうところがあり、耳に痛いかも知れない。