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【ハイレゾ対応ヘッドホン JVC HA-SW01 Reレビュー】音色に有機的なしなる暖かみと重みを出して表現する、繊細かつ優美、雄渾な表現力が最大の魅力。おすすめ

JVC HA-SW01

JVC HA-SW01

JVC 密閉型ヘッドホン CLASS-S WOODシリーズ ハイレゾ対応 HA-SW01

 

 

【0】「Victor HA-FW1500」発売記念リレビューです

 本日JVCさんから新作イヤホンVictor HA-FW1500が発表されました。税抜き6万円程度の価格設定です。私の大好きなHA-FX1100に近い設計思想なのではないかと興味津々です。

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 で、せっかくなのでなんかこの話題に絡めてレビューしたいなぁと思っていろいろ考えると、私がWOODシリーズにハマるきっかけになったHA-SW01のレビューなんてどうかな?なんて思いつきました。というのもこの機種についてはブログ開設くらいにまだレビュー初心者みたいな感じだった私が、拙い感じでレビューしたんですけど、もはや黒歴史。

 今となってはこのブログに残骸のようにして残っている初期のレビューは削除したいくらいなんですが、一方でそれらは私の成長の記録でもあるので、書籍として出すならいざ知らず、ブログとしてはむしろ残しておくのが何かと後学のためです。
 「あ、こいつエラそうなこと言ってるけど、昔はテキトーなこと書いてるじゃん」とお笑い下さればむしろ本望。というか、今自分で読んでも何言ってるのか分からん(笑)
 ……本当は過去に書いたレビューは古いのは書き直したいですし、比較的最近のも書き直したいものがありますが、時間は有限なので、意外とままならず。そういうわけで、せめて、せめて、JVC HA-SW01のレビューだけは書き直すべきだなとずっと思っていたので、今回HA-FW1500発売記念と題してリレビューしたいと思います。
 
 なお当ブログの闇に踏み込みたい方は下のレビューを読んでね。読んでてあくびが出てくるよ。ほんとごめんなさい。まあぶっちゃけ、この再レビューで過去の拙いレビューをロンダリングしようってわけです。絶対に読み比べとかしないでくださいね。私が恥ずかしくて死ねますから。

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 そういうわけでリレビュー開始です。

 

【1】装着感/遮音性/通信品質「装着感は側圧が少しきついかもしれないが、概ね良好」

おすすめ度*1

JVC HA-SW01

ASIN

B07SGQ5C8Z

スペック・評価
再生周波数帯域 8~45000Hz
インピーダンス 56Ω
感度 105db
ドライバー構成

ダイナミック型(40mmウッドドーム×1)

音質傾向 重厚、どっしり、たっぷり、ズンズン、パンチがある、濃厚、広がりがある、艶やか、潤いがある、ほっこり、こんもり、ゆらゆら、ボンボン、色気がある、ボーカルフォーカスが良い、前進的

 ややかっつりした装着感なので、人によってはわずかに側圧は強めに感じるかもしれません。個人的には気になりませんが、重みは少しあるので、女性だと長時間使用で首に負担が出るかも知れません。遮音性はそこそこ良好です。

 

テスト環境

 今回のテストはAstell&Kern KANN CUBEHiby R6 ProCayin N6II/T01ONKYO GRANBEATで行っている。なおゲイン設定は設定上一番高いもので聴いています。www.ear-phone-review.com

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【2】外観・インターフェース・付属品「ケーブルは両出し」

 付属品は携行用のケースがついています。ケーブルは両出しです。

 

 

JVC HA-SW01JVC HA-SW01



【3】音質「木製振動板独特のギラつかない、こんもりしたような温もり感のある暖かみのある音が最大の魅力」

 音質的にはJVC WOODシリーズには独特の感触というのがあります。なかなか言葉で表現するのは難しいのですが、音が鳴るときにぐわんとしなるような感覚があり、音が輪郭を強調しすぎず、剥き出しにされずにやや均されて、広がりよく聞こえてくるような感じになります。音にこんもりした温度感が乗って聞こえるというとわかりやすいでしょうか。

 そういう意味でこの機種のレビューでときどき「篭もっている気がする」という評価があるのもあながち間違いでなく、音にシャープな強調はなく、ゆるやかに広がっていく感じがあるのと、中域でパンチ力を出し、厚みと迫力を感じるバランスが影響していると考えられます。金管やギターでやや派手さを抑える感じがあるので、ロックを聴くと曲によって、ライブ感満点というものもあれば、少し鈍くてノリが悪いかなという印象のものもあります。音の立ち上がりも少し緩いところがあります。しかし、シンバルのエッジは比較的詳細です。

 そういうわけでモニター系のイヤホンの清潔な音に慣れていると、このヘッドホンの音は、特にロックを聴いたときに、少しもやっと感じられるところはあります。このもやっと感は篭もりと感じる人もいれば、パンチの力のある音の熱量感が中域を暖めてくれる感じを肯定的に捉えて、ライブ感の高い音響と評価する場合もあるでしょう。ボーカルフォーカスは明瞭で男声女声ともに濃く、コクと潤い感も充分な、たっぷりとした感じの深みのある系統のセクシーボイスを聴かせてくれるでしょう。

 

音質因子評価
音質因子 評価
鮮やかさ
(鮮やか/色味が薄い)
鮮やか。高域は少し低いところで艶やかさを強調する感じがあり、結構濃い目の出音になる。

鋭さ

(鋭い/鈍い)

やや鈍い。中高域で少し金属的な硬さを強調するところがあるが、中域と低域は膨らみが良く非常に暖かく、全体を眺めるとゆるめの輪郭感を感じる。
明るさ
(明るい/暗い)
やや明るい。中域から中高域ではっきりする感じがあるので明るめ。中高域以上の高域は逆に少し暗め。
派手さ
(派手/地味)
派手め。中高域の明るい感じは強くないが、それでも出音は少し派手。
硬さ
(硬い/柔らかい)
やや柔らかい。中高域で少し硬い感じはあるが、中域と低域の膨らみが強く、全体の音の印象は柔らかみがある。
尖り
(尖っている/丸みがある)
丸みがある。シャープネスに強調はほとんどなく、中高域でややカツカツするところがある意外は全体的に豊かに膨らんで丸みのある感じになる。
穏やかさ
(穏やか/騒々しい)
穏やか。中域と低域の豊かな感じによって温和な音楽表現になりやすい。
力強さ
(力強い/嫋やか)
やや力強い。全体的にゆったりしたところはあり、強くキレを主張する感じではないが、中低域にパンチ力があり、迫力は高め。
豊かさ
(豊か/貧弱)

豊か。中域と低域で豊かな広がりを感じることができる。

太さ
(太い/細い)
太い。音は広がりが良く、太く感じるだろう。
手触り
(ざらざら/滑らか)
滑らか。中高域を除いてはエッジを強調する感じがほとんどなく、ゆったりと音が広がるので手触りは滑らかに感じるだろう。
粒感
(きめの細かい/粗い)
やや粗い。中高域だけとくに詳細になるようなバランスになっており、自然とディテールがよく感じられるようになっている。そのため、シンバル・ギターには粒立ち感があるが、金管やドラム音などの粒立ちはすこしゆったりしている。
清潔感
(澄んだ/濁った)
濁っている。中域下でパンチが膨らみやすいので、曲によっては濁りが強く感じられ、もやっと感じやすいところがある。
潤い
(潤いのある/乾いた)
やや潤いのある。中域のパンチが強いせいで曲によっては音にもさっとした感じが出やすく、そのせいで中高域のツヤが消し飛ばされて乾燥して感じられることはあるが、大抵ではやや強調された中高域が充分潤い感を感じさせてくれる。
重さ
(重い/軽い)
重い。中域と低域に重量感があり、基本的に下向きに重力を感じる音場構造に思う。

 

ボーカル因子評価
ボーカル因子 男声 女声
澄んでいるか
(澄んでいる/濁っている)
やや濁っている 普通

明るいか

(明るい/暗い)

明るめ 明るめ

伸びやかか

(伸びる、突き抜ける/天井感がある)

普通 やや天井感がある

潤っているか

(しっとりしている/乾いている)

しっとりしている しっとりしている

太いか

(太い/細い)

太い 太い

濃いか

(濃い/薄い)

濃い 濃い

子音が強調されるか

(目立つ/目立たない)

やや目立たない やや目立たない

 

空間因子評価
ボーカル因子 評価
主に中域の密度
(ぎっしり/スカスカ)
ぎっしり
主に高域の高さ
(抜けが良い/天井感がある)
やや天井感がある
主に低域の深さ
(深掘り感がある/浮き上がりがよい)
やや深掘り感がある
主に低域と中域の横幅
(広い/狭い)
普通
主に中域の奥行き感
(奥まる/前屈み)
前屈み

 

美点
  1. 暖かみのある聴き心地の安定した音
  2. 中高域で艶やかさと潤い感が充分に感じられる
  3. 音を剥き出しにせず、適度に膨らませて調和的に聴かせてくれる
  4. ノスタルジックな雰囲気のある音
欠点
  1. パンチ力がやや多過ぎ、とくにドラムが強い曲では音が篭もりがちになる
  2. 場合によってはボワつく音と感じられやすい
  3. 音の立ち上がりが少しスローでゆったりしており、曲によってもたつきを感じる

 

[高音]:中高域の艶やかさだけ少し強めに強調する感じになっている。音響全体を見ても、中高域と中域にディテールが集中されている感じがある。一方で高域の高いところはほとんど伸びないので、抜けはよくない印象を受けるだろう。そのため高域自体はやや暗めの高域という評価になる。しかし音楽全体の中では中高域は相対的に強調されるので、全体を眺めるとやや明るめに聞こえる曲が多い(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)

[中音]:中域はかなり豊かな広がりを感じる。とくにパンチ力は強いので迫力があり、ギターやボーカルもしっかり前に出て包み込んでくれる感じがある。温度感は高めで中域にややぼんやりした印象を与えるが、広がりがあって調和的に高域と低域を繋いでくれる。

[低音]:100hz~40hzまでややブーミーにぼわんと膨らむ感じがある振動。30hzで沈み、20hzでほぼ無音。低域は地熱感が強く、重低音が下で重く広がる感じが強く、キックもやや膨らんで聞こえる。下で鳴動感を広く感じる印象がある。パンチも強めで全体的に重量感と深さ両方で強めに感じる。全体的にすこしもっこりしたややディテールが緩い印象になる(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)

[解像度・立体感]:基本的には柔らかで調和的な包み込んでくる球状の空間を感じる。充実感は高く、とくに中域の広がりと低域の深みと重みで頭が包み込まれている感覚がある。高域はやや低く、縦軸は高さより深み重視に感じる(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)

[パーカッション・リズム]:ドラム表現は下に重く、フロアタムやバスドラキックが主張し、パンチ力もあるので、ドカドカバズバズと場合によって重苦しい印象が出やすいかも知れない。ドズンドズンあるいはバズンバズンといった感じの重く深めの印象。ハイハットはチリチリしたあたりがよく聞こえる。力関係ではドラム優位(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)

[ボーカル傾向]:男声ボーカルはかなり濃く、コクもだして深みと艶やかさを兼ね備えた声色でほぼ全体があますところなく表現される感じがある。女声ボーカルは声色によっては天井感を感じやすく、上で詰まる感じが出るかも知れない。膨らみは良く濃い甘味はある。

 

【4】官能性「JAZZはいいぞぅ」

小田和正「まっ白」

まっ白

まっ白

【Hiby R6 Proで鑑賞】音場に充実感があり、ジュワジュワキラキラした暖かみと潤い感の強いこの曲をほんとにジューシーで湿っぽさもたっぷりに、情緒的に聴かせてくれます。ボーカルがとくに詳細で、ふっくらした広がりを出しつつ、潤い感からコシとコクまで丁寧なディテールを感じます。ギターも刻みはきれいに感じますが、温和で小麦色に近い色彩でどこか懐かしい色合いです。そして、低域はドシッと重みと深みを出してくれます。小田和正の曲をウォーム感強めにちょっとノスタルジックに楽しむなら、大抵の曲で相性抜群と思えます。

 


まっ白

 

DracoVirgo「ハジメノウタ」

ハジメノウタ

ハジメノウタ

【Hiby R6 Proで鑑賞】かなり熱量高めでほっこり感が強めですが、篭もる感じはあまりありません。むしろ中高域で少しガラス質の透明感がくっきり見えるくらいです。ボーカルがかなり甘いふわっとした息感が強く、やや大人びた感じで媚びる感触が強いのが蠱惑的です。セクシー女優的な声色になると言えばわかりやすいでしょうか。位置取りもボーカルはかなり近めです。そのためボーカルの隅々まで楽しめる感じがあります。低域はベースとキックがゆったりと深く広がって包み込む感じで包容力を感じます。

 


ハジメノウタ(初回限定盤)

 

ヨルシカ「雨とカプチーノ」

雨とカプチーノ

雨とカプチーノ

【KANN CUBEで鑑賞】こういう曲ですと、おそらく再生機器のゲインが不足しがちな場合、篭もるようにボヤボヤするところがあるかも知れません。

 比較的パワフルなDAPであるKANN CUBEで聴いても、結構な音量にしないとドラムのパスッていう弾ける音がいまいちぼやけている感じがあります。そのためパワーのないDAPだとなかなかはっきりした出音にならないと予想できます。しかし、パワーが充分に足りているDAPで聴くとかなりのパンチ力を出して、低域も地熱が強く、ライブ感満点で聴かせてくれます。

 ギターの鮮やかさ、高さも少し音量を上げないと出てこないところがあるので、個人的には満足できるところを探ってみると、案外音量大きめで圧迫感が強くなりすぎてしまうのだけが気になります。輪郭はゆるめでキレよりは量感重視になるので、人によっては重たすぎると感じる可能性も高いです。

 


エルマ(通常盤)(シリアルコードなし)

 

坂本英城「プレカトゥスの天秤」

プレカトゥスの天秤

プレカトゥスの天秤

【KANN CUBEで鑑賞】オーケストラ的な曲です。一般にこのヘッドホンはオーケストラやJAZZに向くと言われていますが、まずオーケストラの方を聴いてみると、たしかにド迫力で低域楽器に充分な厚みがあり、重厚感を思う存分感じさせてくれます。中高域で強調がある感じも管楽や弦楽に艶やかさを出しており、低域の鳴動とは違う「うねり」を中域にもたらしています。ただし音楽全体はかなり前進的に聞こえてくるので、オーケストラを俯瞰しているというよりはそこに入り込んで聴くような、かなり没入した感じになります。したがって、静かにクラシックを荘厳に聴くと言うよりはむしろ、クラシックの雄大な世界観に分け入っていくような音響に感じられると思われます。

 


プレカトゥスの天秤 Original Soundtrack

 

大野雄二トリオ「ルパン三世のテーマ (Funky & Pop Version)」

ルパン三世のテーマ (Funky & Pop Version)

ルパン三世のテーマ (Funky & Pop Version)

【Cayin N6II/T01で鑑賞】JAZZの演奏力は基本的に評価の高いヘッドホンになります。たとえばこの曲を聴くと、低域の情報量が多く、重量感から鳴動する地熱がもたらす深みまで、しっかりと把握できます。金管は艶やかですが、上で派手にならないので、渋く、ダンディです。ピアノもキンキンするところなく、コンコンと有機的なみずみずしいツヤのある硬さのある音を奏でます。そのピアノの周りに滞留するシンバルが水気のように潤い感が強めの出音で、このコンビで湧き出る泉を表現しているかのようです。そして上から下まで厚みたっぷりでボリューミーなこの曲を充分に豊かに聴かせてくれます。

 


LUPIN THE THIRD 「JAZZ」~the 3rd~〈Funky&Pop〉

 

【5】総評「ライブ感重視の人向き」

 基本的にパンチが強く、押し出し感は強めなので、奥行きを感じて俯瞰して聴くというよりは、演奏に近づいて包まれて聴くスタイルの出音になります。とくに没入してJAZZを楽しむというような用途にはほぼ最強クラスのパフォーマンスを発揮してくれるでしょう。中域下の篭もりやすさを考えると、万能系のヘッドホンとは言いづらいですが、迫力と懐の深さを両立させ、なおかつ潤い感も高めの出音は非常に魅力的です。

 

まとめ
  • パンチ力があり、前進的な包み込んでくる音響
  • 音が太く、厚みもあり、雄渾
  • 音源によっては篭もった印象を受けるかも知れない

 

JVC HA-SW01

JVC HA-SW01

JVC 密閉型ヘッドホン CLASS-S WOODシリーズ ハイレゾ対応 HA-SW01

 

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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。

【ニュース】JVCの新作廉価フルワイヤレスはHA-LC50BTの欠点を解消した意欲作!JBLも新作2製品は力作の予感。そして機能性とデザインの北欧勢が熱い![JVC HA-A10T/JBL LIVE300TWS/REFLECT FLOW/北欧メーカーの完全ワイヤレスイヤホン/JAM Audio LIVE LOUD/JAM Audio LIVE FREE]

JVC HA-A10T

JVC HA-A10T

 

 

 最近のオーディオ関連で個人的な注目ニュースを紹介します。

 

 

JVCの新作に本気を感じた!低価格市場に撃って出る?HA-A10T

 ドイツにて開催中のIFA 2019でJVCの新作完全ワイヤレスイヤホンが発表されました。その名も「HA-A10T」。個人的にこの機種は写真を見て、すぐに「JVCまじで攻めてる!」ってのが分かります。JVC党の私が本気を感じたポイントをまとめると、

  1. 基本デザインはHA-LC50BTを継承
  2. ボタンが物理タイプ。おそらくハウジングから独立式で押下性を向上させている
  3. イヤーピースを充実
  4. IPX5の防水性能
  5. デザインが自然になった←重要!

 

 ぶっちゃけ音質的にもガジェット的にも一定の魅力があった良機種にも関わらず、それほど売れた気配のないJVC HA-LC50BT。その欠点はまあ、おそらくデザインコンセプトと商品展開の仕方。サニタリーグッズっぽい妙にファンシーな外観は、本気でロックやEDMバリバリ聴かせる音質とミスマッチしすぎてるし、付属アプリはゴテゴテのJVCデザインで本体のミニマルデザインと対極的すぎて、どういう人に売りたいのか謎。ぶっちゃけガンダムあたりとコラボして、「袖付き」風のエンブレイビングなんか着けりゃ面白味のないデザインもよほど映えて、音質的にも澤野弘之どのの曲に強いので売れそうなのに。もったいないね。

 イヤーピースはなぜか大きいサイズが用意されてなくて、どちらかというと男性的で骨太の音質デザインにも関わらず、低域の魅力を感じるには付属品のイヤーピースでは力不足で、基本的に付属品の範囲でしかできない店頭試聴では良さが伝わらないというね。完全ワイヤレスイヤホンではイヤーピースが重要なのに、それをおろそかにするという致命的ミス。

 そして防水性能がないので、スポーツモデルを求める人にも自然と興味を惹かれず、せっかくの物理式ボタンなのに、平面的なデザインを重視したせいで押下感最悪で操作しづらいというね。

 まあもったいない機種でした。ミニマルデザインで出すなら、アプリや音もミニマルに統一してオシャレにすべきで、むしろこのイヤホンの良さを生かすためには、もっとスポーツカーやSUVを感じさせる男性的なデザインで出すべきでした。

 

 しかし、デザインや報道記事を見る限り、HA-A10TはHA~LC50BTの欠点をかなり潰して改善しています。まず防水性能を設け、物理ボタンは押しやすさ重視で実用的なデザインにし、メモリーフォームイヤーピースを付属して装着性にも配慮が加えられました。スペック的には平凡ですが、少なくともコンセプトは正統派の入門機としてよくブラッシュアップされています。

 ただ逆に言うと、今度はデザインが無難すぎて個性がないところがあるかもしれないので、ここからどう売り込んでいくかの問題になりますが。HA-LC50BT相当のイコライザー機能が提供されるかが興味を惹くところです。これは個人的に楽しみ。

 

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相変わらず物量作戦のJBL。上位機種のチップ性能は定評あるので、今回は期待!

 

JBL Live300

JBL Live300

 

 JBLは精力的に完全ワイヤレスイヤホンを出しているメーカーですが、個人的に露骨な当たり外れがあるのが気になるところ。ここの低価格モデルにいい思い出ありません。TUNE120 TWとか、Endurance PEAKとかね。低価格モデルで露骨に質の悪いチップ使ってくるので、ここの安いのはハズレ率高め。

 しかし、今回は高価格帯モデルから出てくるので、そこそこ期待できそう。LIVE300TWSは名機Free Xにヒアスルーつけたみたいな感じに見え、ケースも持ち運びやすそうなデザイン。REFLECT FLOWは同じく評判の良いUA Flashのブラッシュアップ版に見える。

 音質的にはこれまでどおり、JBLっぽいズンドコ感のある楽しいサウンドを期待してます。あとJBLは価格競争に熱心なので、値引きも積極的で大衆をよく意識しているところも好き。

 問題はブランドの元締めであるHarman/Kardonが、SAMSUNG傘下になってから、好き放題されてるところがあって、もう一つのAKGが未だに自前のブランド名で完全ワイヤレスイヤホン出せないっていうね。人気のあるブランドは露骨にSAMSUNGブランドに吸収されようとしてるんじゃないかと心配です。

 

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完全ワイヤレスイヤホンでは独自の人気を確立している北欧ブランド

 知る人ぞ知る完全ワイヤレスイヤホン先進国の北欧。初期の頃の実力派製品はみんな北欧からやってきてました。今はSONYが天下取りつつあるけど。

 しかし今でもデザインセンスと機能設計が優れている機種が多いんで、完全ワイヤレスイヤホンでは北欧ブランドがApple、SONYに続く、第三勢力的に大きな力を持っています。少なくとも完全ワイヤレスイヤホンコーナーで国旗を見ると、北欧率が妙に高いです。

 ちなみに北欧ではメタルとかフォークロックみたいなのが流行っているらしく、全体的に高域を強調する感じが強く、音質はドンシャリ系が主流です。むしろそれがEDMや打ち込み系ポップス、アニソンを聴く日本人の趣向にも合ってたりするっていうね。

 個人的には密かにSudio結構好きなんですけど、デザインがね、ちょっと可愛すぎて私には合わないんですよね。

 

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JAM Audioが日本で完全ワイヤレスイヤホンに参入!

Jam Audio Live Free

Jam Audio Live Free

 

 よくわからんけど、Skullcandyっぽいオーディオブランド、JAM Audio。私も大好き完実電気が取り扱いを始めてるんですけど、ここのブランドの完全ワイヤレスイヤホンが日本上陸するとのこと。きっと音はアメリカナイズな感じで、Skullcandyっぽいんだろうなと予想中。個人的に興味はあまりありません。

 

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【おまけ】64Audio Fourté Noirは凄かった!あれはやばいね!

 例の如くいろいろイヤホン試聴してきたんですけど、その中でも64Audio Fourté Noirの完成度は素晴らしく、度肝を抜かれました。値段が値段だけにちょっと買うのは無理かなと思っていますが、これはやばいです。

 

【レビュー】64Audio Fourté Noir:音を塗り重ねていく多層のレイヤーが音楽に単なる奥行きとは違う、深みのある充実感をもたらす。tia Fourtéよりも深く雄渾な音を持つ限定版。まさに最高峰 | audio-sound @ premium

これまで比較的音を林立させるような表現のイヤホンは多く聴いてきましたけど、ここまでレイヤー感を出してくるイヤホンは初めてです。まあ驚くべきは色味において、とことんまで透明でニュートラルさを求めるストイックさと、聞き心地の安定感ね。少なくとも聞き心地に関して不快要素はほぼ皆無です。 ...

 

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【完全ワイヤレスイヤホン JVC HA-LC50BT レビュー】正直デザインが好みじゃないので、買おうか迷った。でも音質はいいし、EQは楽しいし、接続品質も良い。おすすめ

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JVC HA-LC50BT N_Wシリーズ 完全ワイヤレスイヤホン Bluetooth対応/小型軽量ボディ/最大16.5時間再生 チャコールブラック HA-LC50BT-B

 

 

【1】装着感/遮音性/通信品質「通信品質は安定している」

おすすめ度*1

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ASIN

B07S9FR5Q3

 装着感は良い。意外と大きめうえにイヤーウィングもないので耳への収まりは悪いかと思ったが、首を振っても落ちない。

 AAC/SBC対応。通信は比較的安定している。最初だけ左右の途切れが多い印象だったが、移動中でもほとんど途切れはない。ONKYO GRANBEATSONY NW-A55とは相性問題はなさそう。

 

【2】外観・インターフェース・付属品「防水性能?ありません」

 付属品はイヤーピースの替え、充電用USBケーブル、専用充電ケース、説明書。

 

 連続再生時間5.5時間、ケース込み最大16.5時間、防水性能なし。「防水性能なし」って潔すぎない?ってとこだけ心配。

 

 ぶっちゃけ熱心なJVC党の私でも、この「のっぺらぼう」なデザインはあまり好きになれず、迷っていた。なんかトイレか石けんみたいだし。

 音を聴いてから買おうと思って今日聴いてきたが、その場ですぐ買う気がしなかった。しかし音質は結構良かったのと、気分が良かったので、帰り道にJVCにレビューを捧げるつもりで結局手に入れてしまった!テストは某都内ターミナル駅から地元駅までの行程でがっつり行なった。

 

 操作インターフェースは物理ボタン式でしっかりしたクリック感がある。アプリも付属。イコライザーの操作はアプリでできるほか、R側を3回クリックでイコライザーが切り替わる。複数クリックは誤操作の元と思ったが、物理ボタンなので反応が良く、よどみなく操作できる。

 ちなみにフェイスは全面が物理ボタンではなく、上側を押すとクリックされる形になる。これは指押しで耳に押し込んで痛い思いをしないための配慮と思われる。JVCはこういうところの芸は細かい。ただ右側ボタンの押下感がよくなく、amazonのカスタマーレビューなどでも指摘されている。

 

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/61lDVu99UHL._SL1500_.jpghttps://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/71eMcGzDH6L._SL1500_.jpg

【3】音質「音質の組み立てはしっかりしている。さすがJVC。しかもイコライザーつき」

 イコライザーで音質が変えられ、「FLAT」「BASS」「CLEAR」の3モードを備える。音質的に面白いのは「BASS」と「CLEAR」なのでそれを中心にレビューする。「CLEAR」モードはシンバルやピアノ、弦楽など高域音が前面に出てきて、煌めき感を強調し、ボーカルもやや透明感が強くなる。「BASS」モードは低域に重みが出て重低感が出る。さすがにSENNHEISER MOMENTUM True WIrelessに比べると風味や濃厚さの点で劣る低域ではあるが、深掘り感と厚みはあり、重低音までしっかり出ている。個人的には「CLEAR」にしろ「BASS」にしろ、スパイシーなJVCらしい高域と、厚みとディテールの良いJVCらしい低域を持っているので、どのモードでもロックが一番楽しめるかなという印象。

 販売店員さんはJAZZも良いと言ってたけど、低域弦楽を聴く感じ、地熱感のような情報量は足りない気がするので、落ち着いたJAZZには向かない気がする。個人的にはJAZZならNUARL NT01AXZERO AUDIO TWZ-1000、なによりSENNHEISER MOMENTUM True Wirelessがよいと思うが、どうだろう。

 

[高音]:シャリシャリとした手がかりのあるシンバルや、キラキラ感のあるピアノは発色が充分。「BASS」や「FLAT」モードでは一段下がった感じになるが、「CLEAR」モードではこの高域の光沢感と輝きを思う存分味わえる。シンバルは輝いているが、刻みも良くて音がくっついて潰れる感じがない。中高域から高域にかけては、たしかに販売店員さんがJAZZをおすすめする理由は分かるところがあり、JAZZピアノの光沢感と刻みの良いシンバル表現に追従できるポテンシャルが感じられる(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)

[中音]:中域は清潔感があり、音は少し引っ込んだ印象を受ける。「FLAT」では一番前面に出てくる感じだが、それ以外のモードだとやや押されがち。中域のイメージとしてはどのモードでも全体的に上方向に前屈みではあるが、音に厚みは感じられ、「FLAT」や「BASS」ではしっかりとした音のボディがある。しかしそれでも、SENNHEISER MOMENTUM True Wirelessなどに比べると根元の音は弱く感じられ、濃厚感は強くない。個人的にこの中域のニュートラルで清潔な感じが、若干JAZZっぽくないと思って、ロック向きと判断しているが、この点は好みによるかもしれない。

[低音]:厚みのある振動で100hz~30hzまで厚ぼったい重さも出る振動。20hzでも振動感が残るので、重低音はかなりしっかりしている(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)

[解像度・立体感]:分離感は悪くない。中高域方向のスパイシーで鮮烈な感じと、低域のボディのあるディテールが最も目を引き、そこらへんに焦点が当たりやすいが、その間にある清潔な中域にも深みや厚みを感じさせる音のつながりがある。しかし、濃厚感や密度感は高い感じではなく、奥行きもやや乏しい気がする(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)

[パーカッション・リズム]:ドラム鼓面のガタタンとした力強い躍動感、ボディの詰まった感じ、床面への重みのかかりかた、すべてが適度に感じられる。「BASS」「FLAT」では重心が下に向いた重いバツンバツン系の音だが、「CLEAR」モードだとバシンバシンと弾ける感じになる。「CLEAR」モードではシンバルも前面に出てきて、スパイシーさを強調する(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)

[ボーカル傾向]:「CLEAR」モードだとやや明るくボーカルが浮き上がる感じがある。サ行の刺さりも出やすくなる。「BASS」や「FLAT」は比較的色味が自然で、下でふっくらした感じもある。

 

【4】官能性「イコライザーで3度おいしい楽しい完全ワイヤレスイヤホン。個人的にはロック、ポップス、R&Bをおすすめしたい」

Jess Glynne「I'll Be There」

 「BASS」モード推奨。「CLEAR」モードだとサ行が刺さりやすく、ドラムの鼓面やシンバルもスパイシーさが強すぎて、ちょっと耳に痛い。

 BASSモードだと重心が下がり、ドラムとベースにボディをしっかり感じられるようになるうえ、このモードでもシンバルやドラムの鼓面に充分なスパイシーさがあるので、もっさりする感じは全くなく、スピード感は良好。ボーカルの色味も自然で下方向にふっくらしつつ、中高域では張りと透明感が感じられ、精彩に富む。高域はややガラス質な光沢と金属光沢を強調しやすい硬く尖った感じではあるものの、「BASS」モードなら刺さることはない。

 


オールウェイズ・イン・ビトウィーン

 

ヨルシカ「準透明少年」

 「BASS」モード推奨。ハイハットの表現が丁寧で刻みが細かく、すごくきれい。ギターのエッジのギラギラ感もちゃんと出ていて、シンバルと合わせると粗挽き胡椒ばりにスパイシー。さらに「BASS」モードではドラムに充分なボディとそれを感じさせるリアルな重みが出るので、低域方向の躍動感も重みが乗った感じで楽しめる。XXシリーズのような重量感がある「BASS」モードの楽しさ極まれりと言った感じ。

 


負け犬にアンコールはいらない

 

Suchmos「GIRL feat. 呂布」

 黒い感じ、出てる。個人的にはドラムが楽しめる「BASS」モードが一番良いと思うけど、この曲は「CLEAR」モードでも結構楽しめて、ギターエッジのギラギラ感は「CLEAR」モードでも衰えない。音の弾ける感じはとてもきれいに空間に響くので、ディテール感もよく、組み立てはしっかりしている。この曲をモードを変えて最低2度は楽しめるってリッチすぎる。

 


GIRL feat.呂布

 

Matt Bianco「Wrong Side Of The Street」

 JAZZだとたとえばこういう透明感のある感じの曲が相性良いように思う。個人的に「BASS」モード推奨。シンバルの刻みが丁寧で、ドラムと低域弦楽に張りと深掘り感がある。低域の情報量は若干足りなく、ウォームさも控えめで、わずかにクリーンすぎる感じには思う。それでも、男声女声ともにボーカルには自然なディテール感があるし、声に張りがあり、深みもあって、渋みみたいなものも感じられるから、意外と惹き込まれる。ピアノはキンキン感もわずかに出しつつ、深く濃いところも感じさせてくれるから、軽薄さはない。「BASS」モードでもやや明るめな印象を受けるが、軽妙さと重厚感を兼ね備えている。

 


Matt's Mood

 

Tetrarkhia「カナリア」

 


【Re:ステージ! 】「テトラルキア」ミニアルバム「Raise Your Fist」

 

AXiS「HEAVEN'S RAVE」

 


【Amazon.co.jp限定】HEAVEN'S RAVE(初回限定盤)(CD+缶バッチ)(アナザーデカジャケ付)

 

【5】総評「デザインは好みじゃないけど、JVCの本気がわかる。JVCは真顔で完全ワイヤレスを攻めていることが感じられる機種。ちょっと空振りしてるけど」

 正直なところ、ある意味JVCらしい「求めてたのは、こういうのじゃないんだけど」って感じのあるデザインで、妙にAVIOTかNUARLあたりを意識して失敗した感じがあるにはあるんだけど、ぶっちゃけ音質面ではディテールはよくまとまっており、JVCらしいスパイシーさと低域のディテールある重厚感みたいなものを実現していて、しかもEQ搭載という良機種。

 amazonのカスタマーレビューで耳から落ちやすいみたいな声もあって、装着感どうかなって思ってたけど、私が使っている感じではイヤーピース選べば跳んだり跳ねたりしても落ちる感じはない。イヤーピースをしっかり選べば低域も深くまでちゃんと出る。推奨イヤピはもちろんスパイラルドット++

 デザインについてはJVCの販売員さんに素直に「平面的すぎるし、ロゴの位置とか工夫の余地があるんじゃないか」って言っちゃったし、ケースものっぺらぼうで面白くなさ過ぎて、Skullcandy Push横目で見ながら、「メタリックカラーとかあればいいのに」って言っちゃったけど、音質は良いです。あとは「WOODシリーズの完全ワイヤレスイヤホン求む!」って猛プッシュしちゃった。

 コスパ的にはNUARL NT01AX、AVIOT TE-D01d、ZERO AUDIO TWZ-1000という3強とガチバトルになるし、防水性能がないあたりとかスペックで選ばれない可能性があるってことはJVCの販売店員さんにも言ったんだけど、そこがやはりネックになりやすいかも知れない。

 

JVC HA-LC50BT

JVC HA-LC50BT

JVC HA-LC50BT N_Wシリーズ 完全ワイヤレスイヤホン Bluetooth対応/小型軽量ボディ/最大16.5時間再生 チャコールブラック HA-LC50BT-B

 

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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。

【コラム】JVC HA-FX1100の素晴らしい音質をさらに楽しくする自作イコライザー「スイープノイズアフェア」をご紹介!清潔感が増し、ボーカルの聞こえがよくなり、金物の発色が良くなります。

JVC HA-FX1100

JVC HA-FX1100

JVC HA-FX1100 WOODシリーズ カナル型イヤホン リケーブル/ハイレゾ音源対応 ブラック

 

 

JVC HA-FX1100という神イヤホンに夢中

 私は熱心なJVC党ですが、特にHA-FX1100は手に入れてからは、とりわけこれを愛用し続けていると言って良く、最近は他のWOODシリーズの出番がありません。とにかく情緒的で温もり感のある低域と、その弾力的な空間の中から浮き上がるように聞こえてくる中域と高域が非常に優しく、聴き込むほどに美しく、聞き疲れしないという神っぷりが中毒的です。まあ世の中にはVictor HA-FW10000というのがいることにはいますが、コスパは悪いし、低域だけは負けてないので気にしなくていいでしょう。

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邪道を究めるHA-FD01とのハイブリッド

 しかし、ハイファイサウンドな最近のイヤホンと逆行しているところはあって、ボーカルの分離はお世辞にも良いとは言えませんし(むしろ分離しないからいいんだけど)、空間は濃厚で清潔感はなく、金物は温もり感が強く硬さが取れて聞こえるという弱点があるところは文句を言われそうではあります。

 以前ちょろっと紹介しましたが、その解決法の一つが、それならいっそ金物とボーカルの聞こえがよいHA-FD01に片耳替えてしまうという荒技で、最初は邪道と思ってたんですけど、これが案外イイ。

 具体的には左耳側はHA-FX1100、右耳側はHA-FD01のステンレスかチタニウムノズルで聴くという荒技ですが、これが結構楽しいので、いかにも似非オーディオマニアっぽい邪道なやり方で、紹介するのはかなり恥ずかしいのですが、密かにおすすめです。

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 とはいえ、今回のメインの話題はこれではありません。

 

Fostex TM2のノイズ問題を解決しようと試行錯誤した副産物のEQ「スイープノイズアフェア」

 話は少し遡りますが、Fostex TM2を手に入れた後、GRANBEATでイコライジングすると低域を盛ったときにひどいノイズが発生するという問題があったという話をしました。その後、なんとかノイズを発生させずに低域を盛れないかと試行錯誤してた時に、GRANBEATで作った自作イコライザーに「スイープノイズアフェア」というのがありました。

 その名の通り、本来はTM2相手のノイズ発生問題という固有事象をなんとか解決しつつ、よりよい聴き応えを目指したTM2専用イコライザーみたいなのとして調整してたんですが、そのうち予想以上に良い感じになってきたんで、目的を変えました。

 いじりまくった結果、とにかくノイズを除去して今風のハイファイサウンドっぽい曲をどんなイヤホンでも気持ちよく聴けるように、とくに清潔感に注力して調整したEQとして出来上がったんですが、これをJVC HA-FX1100と組み合わせると、なかなか相性抜群。

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 個人的にはHA-FX1100の好きなところではあるんですが、曲によってはやや膨らみすぎる低域ドラムのあたりの膨張感をこのイコライザーは抑え、床面は逆にはっきり聞こえるように低域をより深めに押し下げます。中域はクリーン感重視でボーカル周りをかなりすっきりさせて、シンバルやアコースティックギターのカッティングが鮮やかに聞こえる空間を作ります。ボーカルは少し上向きになり、輪郭が際立って、息感を強調するようになり、メリハリが増すので、最近のハイファイっぽい聴き方に合った感じになります。

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 とくにこのイコライザーで聴くTM NETWORK「GET WILD」はドラムの重みがきれいに出て、上方向も清潔になり、シンセサイザーの光沢感が鮮明になるので好き。

 


City Hunter Sound Collection X-Theme Songs-

 

 というわけで、JVC HA-FX1100をより楽しむためのイコライザー例の紹介でした。スマホかタブレットがあれば「ONKYO HF Player」アプリで同様のイコライジングを楽しめるので、HA-FX1100を持っている人は是非楽しんでみて下さい。

www.jp.onkyo.com

 

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【ハイレゾ対応イヤホン JVC HA-FD01[ステンレスノズル] レビュー】金物のソリッド感とエッジに優れたキラキラすっきりサウンド。硬質だが繊細さに優れる。おすすめ

JVC HA-FD01

JVC HA-FD01

JVC HA-FD01 カナル型イヤホン CLASS-S SOLIDEGE 高解像サウンド/リケーブル/フルステンレスボディ/Jマウントノズルチェンジシステム採用

 

 

【1】装着感/遮音性/通信品質「やや重たい付け心地」

おすすめ度*1

JVC HA-FD01

ASIN

B076W9W5PY

 本体は少し重いフルステンレス製なので重く、女声にはかなり負担感がある。遮音性はそこそこ。音漏れは少し。

 

【2】外観・インターフェース・付属品「ノズルシステムが魅力」

 付属品はイヤーピースの替え、3種類のノズル、説明書。mmcxリケーブル可能。標準ケーブルはやや太めでタッチノイズはない。

 

 一眼レフカメラのレンズ固定機構を参考にしたというノズルシステムの着脱機構は秀逸。下の開発者インタビュー記事を読んでも分かるが、リスニング中にノズルが外れないということは安全性の面から非常に重要だ。

e-earphone.blog

 

 どこぞの格安中華イヤホンが、効果も薄いうえに固定ガバガバのノズルシステムで身の危険を感じさせてくれたが、このノズルシステムを安全に使えることの大事さについては力説してもしたりない。イヤホンをまじめに使ってれば耳の安全を大事にしなきゃいけないことくらいわかりそうなもんだけど、そこらへん適当なのが現状の中華クオリティ。それも音質がHA-FD01くらい劇的に変わるなら、ノズル付ける意味も分かるけど、こういう中華のノズルは効果薄いからね。何のために付けてんだか謎で、基本害悪しかない。

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【3】音質「シンバル・アコースティックギターの金属系の材質・光沢感がよく、金管の音像もきれい。フラットサウンド」

 私の手持ちはHA-FD01SPという限定版で4種類のノズルが付属している。今回はそのうちステンレスノズルの音質をレビューする。

 ちなみにステンレスノズルは標準音質で、JVC HA-FD02と音質的にはほとんど変わらない音響になるというのがJVCの公式見解だったはず。←うろ覚え

 HA-FD02は個人的にはあまり興味がなくて完全にスルーしたので詳細はわからないが、各種レビューを読んだ感じ、音場の広さと音像の鮮明さに違いがある程度という感じで雰囲気は似ているそう。ドライバーケースの材質がHA-FD01とHA-FD02で異なるので、その差が反映されるくらいになるから、ステンレスノズルの音狙いならHA-FD02で充分。

av.watch.impress.co.jp

www.phileweb.com

 

 ノズルの大まかな違いについては以下の記事を参照。ちなみに記事で10回くらい連載する雰囲気出しているけど、まだ1回しかこのシリーズ書いてない。というか1回じゃシリーズ化されてるとも言えない。

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 この機種についてはロック向きと紹介されることが多いが、それはギターやシンバルの光沢感と刻みがきれいで、黒い背景にキラキラと浮かび上がる感じがしっかり感じられるコントラスト感があるからだろう。ギターはとくにドライで黒みを持ちながら、カッティングでは明るめの黄金色っぽい味のある金属光沢を出してくれるし、ディストーションもきれいに伸びる感じがあるので、この点で満足度を得やすい。

 一方で低域はフラットなのでドラムは活きの良い感じだが、あまり前面に出てこず、音圧が若干ゆるく感じられるところがあり、ディテールはよい印象を受けるが、パワフルさが強調されず、押しが弱い印象を受ける。といっても、これは元低域ジャンキーの私の主観によるところが大きいかも知れない。一般的に私は低域がちょっと目立つくらいのバランスを好む。

 おそらく低域を出し過ぎないようにバランスを取ったのだと思うが、これがHA-FX1100並みにパワフルに味付けされていたら、おそらくバカ売れしたかもしれない(と低域マニアの私は思う)。個人的にはこのイヤホンを聴く時はイコライザーで低域を持ち上げている。

  ボーカルは細く聞こえやすい。

 

[高音]:高域は若干明るいが、音は細かめに感じやすく、黒い背景が見えるくらい。個人的にはこのイヤホンの弦楽や金管は非常にナチュラルで芯もほどよく見せながら、つややかに聞こえ、美しく感じる。ピアノもキンキン感を出しつつ、マイルドな粒立ちの仕上がりで臭みがない。発色を強調しすぎない(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)

[中音]:この音域ではギターの音色のバランスの良さを味わえる。アコースティックギターは明るく浮かれた感じがない黄金色の音で濃い感じもあるが、軽やかに刻みを出すので重たげな感じもなく、中立的な音なのに鮮やか。エレキギターでは黒みがしっかり出る。

[低音]:締まりの良い振動で100hz~30hzまで素直に減衰。20hzでほぼ無音。一定の膨張感や輪郭があるきれいなベースだが、量感は強調されず、基本的にクリアな感じで透明感のあるディテールの音なので、妙にスッキリして聞こえる可能性がある。ある意味手応えが少ないところはあるので、解像度は凄いが、平坦な印象は受けやすい欠点がある(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)

[解像度・立体感]:音場はそこそこ。高域から低域まで空間に透明な感じがある。ステンレスノズルではとくに金属系の質感にソリッド感やエッジを感じやすい(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)

[パーカッション・リズム]:ドラムは若干パリパリした感じで膨張も少し強く、やや軽めのパツンパツン系の音。シンバルはかなり粒感の細かな感じで、塩振りをするスパイシーさの強い音。金属的でシャリシャリした感じがかなりきれいに出るが、尖りは少ない。目立たないけど聴き込むと上質な音。ここらへんはさすがJVC(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)

[ボーカル傾向]:ボーカルは全体的に細め。やや高低の抑揚が強調されやすい。

 

【4】官能性「質の良い金物やギターサウンドを楽しめる」

YUKA「お料理行進曲」

 シンバルのシャリシャリサラサラな気持ちよいソリッド感のある音と、カンカンチャイムが味わえる前半。シンセの透明感の味わいがきれいに出る後半といった感じに、このステンレスノズルを楽しむのに最適な一曲。ドラムもパリパリ系の輪郭強調の音なので、軽快さのある細かな鼓面の震えが綺麗に出る。

 


キテレツ大百科 スーパーベスト

 

すぎやまこういち「木洩れ日の中で~ハッピーハミング~ぬくもりの里に~フォークダンス~木洩れ日の中で」

 ロック向きと括られやすいこのイヤホンだけど、個人的にステンレスノズルを聴くなら、この曲超オススメ。とくに「ハッピーハミング」で金管とシンバルのヤバイディテールを味わえる。全体的に管楽器系の風味が利いていて、「ハッピーハミング」では粒立ちの良い金管、その他の曲では息吹のきれいな透明感のある木管を味わえる。弦楽も透明感があってきれい。とくにJAZZ味に磨きがかかっているロンドンフィルの神バージョンが一段上の満足感を味わわせてくれる。

 


ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団による 交響組曲「ドラゴンクエスト」I~VII すぎやまこういち(数量限定盤)

 

MADKID「RISE」

 こういうデジタル系ロックダンスサウンドを透明感のあるまま、緻密感重視で高い解像感とともに聴くならこのイヤホンはオススメ。低域に透明感があって少し手応えがないのも、こういう曲ではむしろきれいで好意的に聴けるし、カップリング曲の「Puzzle」「出て行ってよ」も聴き応えあり。 

 


RISE【Type-B】

 

澤野弘之「never gonna change」

 透明感と緻密さ、金属光沢感の美しいサウンド表現は、澤野弘之の曲と相性が良いことが多く、個人的にお気に入りな理由の一つ。この曲だと低域に強調はないので、床面はちょっとゆるいかなってバランスだけど、ギターエッジの刻みと鮮明感の良好さ、背景の緻密感を感じられる透明感で、かっこよさいいとこどりできる。ボーカルも少しスリムに、音に包まれながら埋もれずにのびてくる。

 


R∃/MEMBER(初回生産限定盤)(Blu-ray Disc付)(特典なし)

 

高橋李依「気まぐれロマンティック」

 


「からかい上手の高木さん」Cover Song Collection(TVアニメ「からかい上手の高木さん」エンディングテーマ)

 

【5】総評「金属表現の繊細さがとにかく魅力」

 ステンレスノズルはとにかく金物の精彩が素晴らしい。同じように金物を明るく強調するチタンノズルや音に濃さが出るブラスノズルと比べてカチカチした感じがなく、さわやかな後味があるのが特徴。ノズルの中では一番すっきりめの色彩になることもあり、音に張りがあり、シンセなどの光沢にもツヤツヤ感がきれいに出る。ロックだけでなく、オーケストラ系でも金管の音は綺麗だし、明るめではあるが、JAZZも楽しめる。

 

JVC HA-FD01

JVC HA-FD01

JVC HA-FD01 カナル型イヤホン CLASS-S SOLIDEGE 高解像サウンド/リケーブル/フルステンレスボディ/Jマウントノズルチェンジシステム採用

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【コラム】入手困難なスパイラルドット++の手持ちがさすがに底を突きかけているので、代替イヤピを探していたら、ちょうどいい時期に発売されたAZLA SednaEarfit Lightとかいう神イヤピについて

AZLA SednaEarfit Light

AZLA SednaEarfit Light

AZLA SednaEarfit Light [S/M/Lサイズ各1ペア] 傘部柔軟性強化 独自開発特殊高品質シリコン採用高音質イヤーピース

 

今日はイヤーピースのお話です。

 

 

現状シリコン系最強のイヤピ「JVC スパイラルドット++」

JVC Spiral Dot ++

JVC Spiral Dot ++

JVC EP-FX10M-B 交換用イヤーピース スパイラルドット++ 4個入り Mサイズ ブラック

 

 私はJVC党で、イヤピはスパイラルドット++派だということをつねづね公言してきました。

 実際スパイラルドット++は中高域の分解能がよろしくてガチャガチャする感じやキンキンする感じ、シュワシュワかすかに聞こえる音の端の風切り音みたいな干渉音が改善されるので、音像がはっきりして聞こえますし、フィット感もよく、大きめの径のノズルにも装着しやすいとかいう神イヤピ。

 工作精度も高く、どこぞのAZLA SednaEarfitみたいに、まれに削り残しみたいな余計な線が残っていることもなく、ピンセットで手入れする必要もありません。

 

 以前もAVIOT TE-D01dがちょっと中高域ガチャガチャしてたのでスパイラルドット++つけて改善させてますみたいなことを書いたりしました。

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イヤピ関連の情報元

 イヤピについては海外のレビューも含めて結構読んでますけど、いつもお世話になっているe☆イヤホンさんの記事を最も頼りにしています。多謝。

e-earphone.blog

 

品薄すぎてついに手持ちが底を突きだした

 で、中高域がガチャガチャすると思ったらスパイラルドット++つけるし、聴いてみて耳に少しきつい感じが出たらスパイラルドット++にするし、みたいなことをしているとスパイラルドット++どんどんなくなります。

 在庫が少なくなるのを見越してたわけじゃないけど、発売当初イヤホン聴いたり買ったりするたびにスパイラルドット++買ってたんで、かなり潤沢にスパイラルドット++を買いこんでいる形になり、結構余裕がある感じだったんですが、4月中旬ごろから目に見えて在庫が減って入手困難になったせいで、とにかくイヤホン買うたびスパイラルドット++つけてたら手持ちがなくなり始めました。

 とくに早く品切れしたMがやばかったけど、先日奇跡的にYCでたまたまMだけ入荷したのを手に入れることができたんで、一息ついている状態ですが、それでもMLとLがもう手持ち切れそう。

 それで代替イヤピあれこれ考えてたら、「こういう状態になっているのは私だけではないはず!」と閃きました。というわけで、スパイラルドット++信者だけど、そこそこイヤピマニアの私がここ1ヶ月ばかり研究して見つけた、スパイラルドット++の代替イヤピを紹介します。というかAZLA ORTAに付いてたヤツなんですけどね。

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 中高域を改善するイヤピ

 ここでどういうイヤピがスパイラルドット++の代替品になりうるかというのをわかりやすくするために、2節くらいイヤピ論みたいな話が唐突に入ります。興味ない方は飛ばしてください。

 

 イヤピの特性によって、中高域の改善方法には2通りのパターンがあります。一つはこちらがよくあるパターンなんですが、中高域をマイルドにする方法。とくに高域を少し丸めてウォームにし、耳当たりをよくするイヤピは多いです。この方法だとたしかに中高域の尖る感じは薄まるので、より中域に集中しやすくなって整理された感じになりますが、問題は高域の抜けが早くなる感じで伸びが悪くなり、発色も暗く見えがちになるという点です。また大抵このマイルド系のイヤピは口径が狭められているので、音場が狭くなり易く、ステージングが悪くなるという欠点を抱えていることが多いです。

 低価格の、あんまりステージングなんて意識してないよーってイヤホンではあまり気にならないかも知れませんが、ちょっと高めのステージングを意識したモニター系イヤホンを使い出すと、音場が狭くなるのはどうしても気になってきます。高域の音が丸まってウォームになるのも解像度感が若干落ちることに直結しやすいので、せっかく高域に魅力を感じて、キラキラ系やらガチャガチャ系やらのイヤホンを買っているのに、聴き心地をよくするために発色を落として、わざと高域が暗くなるようにしていては、本末転倒です。

 

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/61FZNcdqqiL._SL1500_.jpg

ステージング重視かつ中高域のくっきり感重視、そして自然な音質の理想的イヤピ「JVC スパイラルドット++」

 もう一つの系統が抜け自体をよくしてすっきりさせる形で音質を改善させるという志向を持っているイヤピで、JVC スパイラルドット++はこちらの系統に属します。スパイラルドット++のいいところは口径が大きいので、音の広がりが良く、ステージングが悪くならないので音場が狭くなりません。また高域を丸めないのでウォームにならず、自然な発色が維持されます。

 普通はノズルを大きくすると、低域に不足感が出たり、音が空間に対して細く感じられたり、刺さりが出やすくなる傾向が見られます。

 スパイラルドット++にも類似の傾向は見られて、音は少しスリムになりますが、(おそらくドットのせいで)刺さりは抑えられていて音が尖ったりせずにくっきり聞こえます。低域の不足感に関しても、実際は若干弱まるような気がするのですが、中高域にクリア感が出ることで低域の存在感がむしろ高まったように感じられます。後述するAZLA SednaEarfit系のように、開口部を広くしたイヤピは大抵、低域の不足感と刺さりを抑えるためにノズル部分に硬めの素材を使うことが多い印象を受けますが、スパイラルドット++のノズルは硬くないので、装着感もかなり柔らかく快適です。

 

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/61WFcJooCBL._SL1500_.jpg

個人的におすすめの代替案「AZLA SednaEarfit Light」

AZLA SednaEarfit Light

AZLA SednaEarfit Light

AZLA SednaEarfit Light [S/M/Lサイズ各1ペア] 傘部柔軟性強化 独自開発特殊高品質シリコン採用高音質イヤーピース

 

 あくまで私の個人的な印象ですけど、販売店員さんに話を聞くと、スパイラルドット++を最上質と評価する人とAZLA SednaEarfitを推す意見に分かれます。で、私は周知の通りJVC党なんで、ずっとまえからスパイラルドット++派なんですが、ぶっちゃけAZLA SednaEarfitも完成度が高いと思っており、比較的愛用してます。Sednaは軸が硬いおかげで色味のしっかりした音を出してくれるので、低域を黒くして音楽全体を活き活きさせたいときは御用達になりますし、高域の音もやや硬質にはなるんですけど、音像がクリアに聞こえるんでレベルが高いイヤーピースです。

 欠点はあって、まず軸と傘が硬いので耳に圧迫感が出やすく、とくに密閉度の高い大きめのイヤーピースでは付け外し時に空気が押される感じが出て、気圧差みたいな圧縮感があります。それと硬い付け心地のイヤーピースは長時間使用すると耳に負担感が出てきます。さらに軸の口径がスパイラルドット++より太いので、ノズルの口径が小さめのイヤホンにはガバガバです。

 しかし、4/20に新しく出たばかりのAZLA SednaEarfit Lightは軸と傘が柔らかくなって装着感が大きく改善され、耳道内での圧縮感もなくなり、結果として発色の濃さは少し抑えられてコントラスト感は減ったものの、使い勝手はかなり向上しました。何より今回のテーマであるJVC スパイラルドット++の代替品としては、かなり近い付け心地、音質になっています。結構感激して早速大量に買い込み、現状不足しているスパイラルドット++を融通するために、スパイラルドット++を使っていたいくつかのイヤホンはこれに交換して愛用しています。おすすめです。

 

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/31q7AhMSBqL.jpg

 

AZLA SednaEarfit Lightの感想

 最後に、実際AZLA SednaEarfit Lightを使ってみての感想をまとめて列挙します。

 

ステージングは良好。スパイラルドット++より少し甘い

 とにかく中高域のあたりのクリアリングがうまく、「なんかピアノがキンキンする」とか「シンバルがシャリシャリボーカルにかかってうるさい」とかって時にはかなり効果を感じます。もちろん前述したように、こういうのはマイルド系イヤピでも改善されるんですけど、このイヤピなら色味もウォームに変化したり暗くなる感じがありません。

 しかしあくまで私個人の見解としては、スパイラルドット++に比べると、音の抜けの良さがスパイラルドット++にわずかに劣り、とくに中高域で音場の幅と奥行き感で差が出ます。次の節で述べますけど、印象的に私がとくに差を感じるのはシンバルとかアコースティックギターみたいな金属的な尖る系の音の音像かな。

 

音像のスッキリ感良好。スパイラルドット++より少し甘い

 あくまで私個人の見解としては、スパイラルドット++に比べると、シンバルの近くにかすかな風切り音みたいなノイズ感が出ちゃったりとかキンキン音がまだ硬いとかいうところはあるので、スパイラルドット++越えとは言いづらいです。

 

装着感は良好なほう。スパイラルドット++やfinal Eタイプと比べると、だいぶ甘い

 あくまで私個人の見解としては、SednaEarfit Lightは材質が柔らかくなって圧迫感が減ったとはいえ、装着感はまだまだ成熟していません。

 柔らかくなってもまだ傘は硬めで耳に捻り込めるくらいなので、捻り込みすぎると低域が強くなってやや音場が狭く感じられる可能性があります。逆に言えば装着感次第ではあるものの、基本的にスパイラルドット++より低域の聞こえはよく、コントラスト感が高まりやすいとは言えますが。良いか悪いかで言ったら、私は悪いという評価をするタイプの、捻り具合で音質や装着感に変化が出てしまうような、フィットの不安定さがあります。

 スパイラルドット++が神がかっていると思うのは、捻り込もうが押し込もうが一定の位置に定まる感じがあって、その時の装着感次第で音が変わるという要素が少ない点です。ここらへんはfinal Eタイプなんかもよく研究されていて、傘の材質が考慮されていて安定感がありますが、SednaEarfit Lightはそれらに比べると傘の材質にまだまだ改善の余地がありそうです。スパイラルドット++はfinal Eタイプなんかと比べても一段上の良好なフィットなので、それが別格すぎるというだけかもしれません。

 

口径が大きく、軸が硬め

 前述しましたが、軸の口径が大きいので、ノズルが小さめのイヤホンに対してガバガバです。またスパイラルドット++は柔らかめの軸なのでイヤホンに装着するのが非常に楽ですが、SednaEarfit Lightは硬めの軸なのでスパイラルドット++のお手軽感はありません。

 

工作精度が甘い

 SednaEarfitの時から感じていましたが、軸のシリコンに枝毛だかアホ毛みたいに「ささくれ」みたいなものがあったり、ねじ切りが粗いような、繊維状の輪ゴムみたいな分岐ができてしまっていたりします。これらが音質に関わるかはよくわかりませんが、SENNHISER MOMENTUM True Wirelessのイヤピにあった十字が結構音を拡散していた感じがあったので、私はSednaEarfitを使用する前にはこういう「ムダ毛」を毛抜きで処理しています。

 この「ムダ毛」の実例を写真で示そうと思いましたが、手持ちのSednaは全部処理済みでした。

 結構この「ムダ毛」は多いので、Sedna自慢の2層構造を作るときにどうしても一定数できてしまうようです。検品して出荷されているはずですから、体感的に1割以上にもなる「ムダ毛」率を考えると、初期不良の類いとは考えられず、検品を通ったと考えるのが合理的で、たぶん音質には影響ないのかも知れませんが、気になります。

 

AZLA SednaEarfit Light

AZLA SednaEarfit Light

AZLA SednaEarfit Light [S/M/Lサイズ各1ペア] 傘部柔軟性強化 独自開発特殊高品質シリコン採用高音質イヤーピース

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【コラム】NUARL NT01AXとAVIOT TE-D01d用イヤーピース入門。というか、ほぼスパイラルドット++を紹介するだけ

JVC スパイラルドット++

JVC スパイラルドット++

JVC EP-FX10M-B 交換用イヤーピース スパイラルドット++ 4個入り Mサイズ ブラック

 

 

anchor.fm

 まあ私は根っからのJVC党なんで、普段使っているイヤーピースは基本スパイラルドット系だということをあらかじめお断りしておきます。正直この記事の結論もほぼ決まっていて、うーんやっぱりスパイラルドット++がいいんじゃない?って話です。レビューは標準イヤピ使いますけど、レビュー時以外は基本スパイラルドット++使えるのは私はそれが基本です。

 まあ他にもいくつか使ってるんで、簡単に紹介する記事です。

 

音の分離感を上げたい場合はスパイラルドット++

anchor.fm

 いまいち音の分離感に劣るなって場合はスパイラルドット++がおすすめ。TE-D01dあたりは中高域ガチャガチャしやすいんで、それが気になったらこのイヤピがいいかな。低域が少し重たくなる傾向はありますけど、全体的に解像度感が上がって聞こえるはず。篭もる感じはこれかNUARL NT01AXに標準で付いてくるスピンフィットCP350でだいぶ改善される場合がありますけど、スピンフィットはちょっと音が近い感じで、低域は膨らみやすく、高域には剥き出し感が出るので、よりナチュラルに仕上げたいならスパイラルドット++がいいんじゃないかな。まあNT01AXやTE-D01dに限らず、大抵のイヤホンで普段私が使ってるのは基本的にこれです。

 ぶっちゃけJVCイヤホン買いまくってる感じなんで、スパイラルドットもスパイラルドット+もあるから言っちゃうけど、わざわざ高いスパイラルドット++買わなくてもスパイラルドット+でもスパイラルドットでもそれほど変わらないから、手に入りやすい安いスパイラルドットがコスパ良いかもしれません。

 スパイラルドット++は改良の積み重ねのせいか、かなり音像をはっきり出すようになったんで、TE-D01dあたりに使うには発色よすぎる場合もあるから、スパイラルドット+くらいのほうが聞き疲れしないっていう可能性もありますしね。よくわからんけど。

www.fujiya-avic.jp


JVC EP-FX10M-B 交換用イヤーピース スパイラルドット++ 4個入り Mサイズ ブラック

 

低域の黒みを上げてコントラスト感を引き締めたい場合はAZLA SednaEarfit

 

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 個人的にこのイヤーピースは低域のタイト傾向が強くなり濃くしっかり聞こえてくる感じになってコントラスト感が増します。あと音が太く聞こえてくる傾向があるんで地熱感も感じやすくなるかな。どっちかというと、中低域の境目あたりでコントラスト感がゆるいNT01AXで、低域が柔らかくボケて感じられる傾向の人は、このイヤピで改善するはず。あとは低域に不足感がある場合に改善されます。一応高域も若干発色が良くなって、ややドンシャリ傾向が高まって感じられます。まあNT01AXをもう少しロックやJAZZ向きな音にしたい場合は、個人的にはこれ。エレキギターの聞こえもよくなる感じだしね。

 


AZLA SednaEarfit [イヤーピース S/M/Lサイズ各1ペア]

 

音像がはっきりしない場合はスピンフィットCP350

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 正直、高域がちょっと剥き出しな感じになるんであまり好きじゃないんだけど、高域に明瞭感が欲しい場合にスピンフィットCP350はいいかもしれません。NUARL NT01AXには付属してるんだけど、試してみても音が好みじゃないんで、個人的にはこれよりは標準イヤピ使いますけどね。でもNT01AXで音が篭もるって人はこれつければ普通は篭もった感じはしないとは思うけど、どうなんかな。個人的にはスパイラルドット++のほうがあらゆる意味で自然に高い解像度を出してくれる感じがあるので、音が剥き出しになりやすいこれよりは全然マシ。

 


SpinFit スピンフィット CP350 イヤーチップ イヤホン シリコン イヤーピース (M)

 

【結論】最終的にはよく分からん

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 ぶっちゃけ他人の耳の形とかわからんし、どんな音聞いているかもわからんので、結局私はスパイラルドット++で幸せになってますってくらいの結論しか書けませんけど、解像度感足りないとか思うなら、試してもいいくらいにはスパイラルドット++は面白いイヤーピースです。

 

【補足】イヤーピースの買い方

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 書き足らない点があったので補足しておこうと思いますが、イヤーピースを買うときはサイズを決め打ちしないほうがいいです。たとえばスパイラルドット++の場合Mが合うと思ったらM・ML・Lくらいを買って試してみるくらいが良い。SednaEarfitみたいにサイズが複数のイヤーピースがいっしょになったセットがあるのが一番いいんだけど。たとえば私の場合、大きなイヤーピースほど密閉性が高くなるせいか低域が強く聞こえる傾向があるので、ジャストフィットはたぶんMLなんですけど、スパイラルドット++はMからLを使い分けてます。実際MからLまで普通に入るしね。SednaEarfitもコントラスト感を増すために使うにしても、高域がもう少し欲しい場合は小さめのM、低域に濃さがもう少し欲しい場合は大きめのLって感覚で使い分けてます。

 人の耳には左右差があるので、凝り始めると左右でイヤーピースのサイズ変えるとかイヤーピースの種類自体変えるくらいになるらしいんですけど、私はそんな凝り性じゃないです。

www.phileweb.com

 

JVC スパイラルドット++

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JVC EP-FX10M-B 交換用イヤーピース スパイラルドット++ 4個入り Mサイズ ブラック

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【特集】名曲「17才」で、JVC HA-FD01SPの各ノズルを味わい、聞き比べる!

JVC HA-FD01SP

JVC HA-FD01SP

【数量限定モデル】JVC HA-FD01SP カナル型イヤホン CLASS-S SOLIDEGE 高解像サウンド/リケーブル/フルステンレスボディ/限定ノズル付き(りん青銅ノズル)

 

 はっきり告白しますが、年末年始のセール合戦で買い物しすぎてレビューが追いついておりません。とくにこのJVC HA-FD01SPはかなり気に入って使っていますが、レビューが後回しになりがちになってしまいました。もしこの機種のレビューを楽しみにしていた方がいましたら、遅れてごめんなさい。

 まだまだ個別レビューを書けるほどに充分な情報収集を言えませんので、今日は少しでも前進させるために、各ノズルを聞き比べてみたいと思います。私の当初の計画では今年1年くらいこのノズル比較でいろいろ聞き比べてやってりゃ、かなり記事を水増しできるなフヘヘってくらいの気持ちだったんですが、それ以上に他のオーディオ製品買いすぎました。書きたいことが多くて、思った以上毎日レビューに忙しい感じで、ついHA-FD01SPを後回しにしてました。

 

 

【1】JVC HA-FD01SPのノズルシステム

 JVC HA-FD01は標準で3つのノズルが付属しており、これを取り替えることで音質の変化を味わうことが出来ます。私が手に入れたJVC HA-FD01SPにはさらにイベントで好評だったという、りん青銅ノズルが付属しており、4つの音色の変化を楽しめるシステムになっています。

 私がこれまで日常的に使用して感得した、各ノズルのだいたいの印象を述べると、以下のようになります。

  1. りん青銅:さわやかソリッド
  2. チタニウム:カンカンキラキラ
  3. ステンレス:キラキラすっきり
  4. ブラス:キンキンキラキラ

 

 今回は課題曲を各ノズルで聞き比べて、その音質の違いを語ってみよう、そういう企画特集記事になります。これは予定では10回くらいシリーズにして続けたいです。というか、ノズル交換するの結構めんどいので、1回に1,2曲を比較するのが限界なので、必然的に回数が多くなりそうです。今回は手始めに1曲だけ聞き比べます。

 まあ実際のところすぐ飽きるかも知れませんから何回続くかはわからないのですが、今回は記念すべきシリーズ第1回となります。

 

【2】音質比較

ハルカトミユキ「17才」

 記念すべき?最初の曲は大好きなこの曲にしました。ハルカトミユキ「17才」です。TVアニメ「色づく世界の明日から」のOPテーマ曲で、このアニメ自体ノーマークだったんですが、この恐るべきクオリティのOP曲のせいで、一気に惹き込まれました。一聴すると、青春アニソンっぽい感じに仕上がっている印象を受けるんですけど、なんか普通のアニソンにない重厚な背景を感じさせるところがあり、あれっ?と感じている内に好きになってました。

 楽曲としては結構情報量が多くて、金物の色彩感とか、個々の音の立ち上がり、ボーカルや弦楽の透明感と発色とかいろいろ影響しそうなんで、イヤホンの聞き比べるには結構向きそうな印象があります。

[りん青銅]:うまく伝わるかわかりませんが、私の言葉で表現すると、りん青銅ノズルは煙のような粒子を集めて音を作り出している感じがあって、音に渋みとかいうか燻る感じがあります。そういう意味ではやや発色抑えめに感じるところはあります。金物の光沢感には出足は鈍いけれども濃いめに光るところがあって、ぎらつく感じがなく、濃厚さを残す聴かせ方になります。この曲の出だしのシンバルの入り方は、地表付近を煙が広がるように、もわもわーっとゆったりした空気感を乗せる感じで広がり、重厚感が出ます。リズムを作るライドシンバルはチャチャッとした粒感が強調された感じで、JAZZ向きな固着感のあるソリッドな音になります。ボーカルの傾向は下に少し膨らんだドライな味。全体的に下方向に濃厚な空気感を作り出しつつ、高域方向へはゆったりと伸びていく表現で、この曲もJAZZっぽい風味が強調された感じで聴けます。ロック成分になるドラム音は硬さがとれて柔らかく、ポツポツとした沸騰感のある鳴らし方で落ち着いています。

[チタニウム]:まず金物の輪郭感が強く、硬質で光沢感が強いので発色も強いです。そのせいかりん青銅に比べ、音場全体が明るいです。ボーカルもすらっと高域にのびていくスッキリした音になっており、ドライな印象は受けません。ギターやシンバルの金属的な音が明瞭に聞こえるせいか、音場にふんわりした広がりのあったりん青銅に比べて、音が近く聞こえる印象はあり、この曲だと音場の広さは少し狭く感じるかも知れません。ドラムもパッツンパッツンと少し上方向に弾けるところがあり、躍動感が出てくるので、ロックな感じが強調されます。

[ステンレス]:傾向として明るく硬めに感じるのはチタニウムと一緒ですが、ステンレスの音にはチタニウムになかった張りが感じられます。そのためギターには弦の弾けるたわみが感じられる印象があり、チタニウムではあまり感じなかった情緒感が感じられます。シンバルの表現にも弾力感が出ており、チタニウムの時と比べて躍動感が感じられます。一方でドラムが風船のように薄く、目立ちにくくなっており、パスンパスンという膜のような反発は感じますが、ステンレスのときほど爆発力のある音を出してくれません。全体的な印象としては、明るいポップスっぽい聞こえ方になっています。最近流行のグラフェン系イヤホンに近い聞こえ方ですかね。

[ブラス]:出だしのシンバルの広がり方はりん青銅に少し似ていますが、発色はより明るいです。光沢感がかなり濃く、明るく出るので、この曲だとギターとシンバルの光沢感だけで音場を明るく埋め尽くしてしまうところがあります。ボーカルも透明感が強調されている感じで、息感もかなり強めに出ます。シンバルはアクリル粒子のように煌めき感と粒感を両立させており、星屑のような色彩を発します。ドラムはギターの発色に埋もれてがちで、パツパツとした爆発感をわずかに出しますが、ステンレス以上におとなしい印象です。オルゴールサウンドのような光沢感重視の聞こえ方です。

 


17才(期間生産限定アニメ盤)(Blu-ray Disc付)

 

【総評】「JVC HA-FD01は全体的に明るめのバランスかも知れない」

 JVC HA-FD01SPのノズルを「17才」で聞き比べて今回思ったのは、思ったより発色は素直に出るノズルが多く、全体として見るとHA-FD01は高域が意外と主張してくるモデルだということです。この曲で落ち着いた色彩感で低域中心に濃厚に味わいたい場合は、りん青銅ノズル一択といった感じで、あとは多かれ少なかれギターやシンバルの金属的な発色を強く出して聴かせます。もちろん元来この曲はそういう光沢感のある音を内包しているのですが、明るさが出すぎてしまうと、この曲の影の部分がうまく出ない印象があって、個人的にはもう少し落ち着いた聴かせ方の方がボーカルの傾向としても味わい深くなる気がします。私が普段好んで聴いているバランスに近いのはりん青銅で、それ以外は全般的に金属光沢や透明感を強調しすぎている印象です。

 まあ今回は金物が多い曲だったので、その影響をもろに受けてしまったのかも知れませんけれども。

 

 

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【特集】audio-sound @ hatena ベストバイ大賞 2018【ワイヤードイヤホン/ワイヤレスイヤホン】

audio-sound ベストバイ大賞2018

  一足早く完全ワイヤレスイヤホンについてはベストバイ大賞を発表させて頂きました。今回はワイヤード(有線)イヤホン、ワイヤレスイヤホンでのベストバイを発表させて頂きたいと思います。

 しかし、正直に告白しますと、今年は完全ワイヤレスイヤホンをなるべく買い、なるべく使うように心がけていましたので、ワイヤードイヤホンやワイヤレスイヤホンは例年ほど使っておりません。本当は完全ワイヤレスイヤホンと同じように価格帯別に詳しくベストバイを挙げられれば本望なんですが、個人ブログゆえの乏しい資金力とテスト環境、使用環境です。おのずと限界があります。

 なので、今回は価格帯は考慮せず、それぞれの部門でコストに対して最も満足度が高く気に入った製品を紹介するだけの企画とさせて頂きます。どうぞお楽しみくださいませ。

 

 

ワイヤードイヤホン

ベストバイ金賞「JVC HA-FX1100」

JVC HA-FX1100

JVC HA-FX1100

ライブ感に満ちた最高のサウンドを奏でる!JVCイヤホン史上の最高傑作!

 今年買った中で満足度が最高に高かったのがこのイヤホンです。製造は終わっていて、もう出回っているのは在庫処分品になっているんですけど、かなり格安で手に入ります。3万円しないくらい。しかし、音質は倍の金額を出しても通用するようなライブ感のあるサウンドを奏でてくれます。これでJAZZを聴けば、そこはもうブルーノートかコットンハウス、クラシックを聴けば新国立劇場、ロックを聴けばライブハウスってくらいの臨場感が感じられる音を楽しめます。ライブ感では現行のフラッグシップHA-FW01もこれに劣ります。これを作ったJVCは神に違いありません。

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ベストバイ銀賞「RHA MA650」

RHA MA650

RHA MA650

圧倒的高コスパ!音質も豊かだが、付属品も豊富!満足感に感動!

 RHAのMAシリーズは上位機種のMA750もコスパに優れていますが、ほぼ半額くらいのMA650はさらに優秀です。音質的にはそれなりの差はあるものの、価格差ほどではないので、相対的に満足度が高いです。それ以上に付属品の内容が上位機種とほぼ差が無く、イヤーピースが膨大な種類付属していますので、フィットしないわけがなく、買い足す必要がありません。細身のケーブルの耐久性だけが欠点と言えば欠点ですが、それ以外死角のない高コスパ機種です。

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ベストバイ銅賞「Etymotic Research ER3XR」

ETYMOTIC RESEARCH ER3XR

ETYMOTIC RESEARCH ER3XR

ER4の不動の人気の影で忘れ去られている名機!だが、密かに高コスパ!

 ETYMOTIC RESEARCHのER4といえば誰もが認めるBAドライバーイヤホンの名機ですが、その後継機種ER4SRやER4XRの下位機種に当たるのがこのER3シリーズです。ER3XRはその中でも低域を強調したバランスになっているモデルです。ER4シリーズの圧倒的人気の裏で忘れられがちですが、実はこのER3シリーズ、かなりの高コスパです。たとえばこのER3XRは上位機種ER4XRの半額以下の値段設定ですが、ER4XRとあまり遜色ない音色を奏で、下位機種のHF5との差はかなり歴然です。価格的にはHF5の2倍より安く、ER4XRの半分より安いという位置にあり、コスパ感は下位機種・上位機種と比べて断然お得に思えます。

 もはや伝説と言ってよいER4を信奉しているエティモ信者からは完全アメリカ製でないとのことで不評ですが、中国製にしてコスパ面での優位を実現したER3シリーズは格調高いエティモの音に興味がある新参者には最適の選択肢となってくれます。

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ワイヤレスイヤホン

ベストバイ金賞「SoundPEATS Q34」

SoundPEATS Q34

SoundPEATS Q34

aptX対応!ワイヤレスモデル最強クラスの低域は躍動的で楽しい!

 セールを利用すれば3000円以下で手に入る廉価な価格設定ながら、高音質コーデックaptXに対応するという高コスパ機種。音質的にもワイヤレスイヤホンの中でトップクラスの低域音が楽しめる機種で、JAZZやロックにライブ感をもたらしてくれます。SoundPEATSは中国メーカーの中でもサポート体制がいいことでも定評があり、初心者が安心して買えるのも大きなメリットです。

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ベストバイ銀賞「The House of Marley SMILE JAMAICA WIRELESS」

The House of Marley SMILE JAMAICA WIRELESS

The House of Marley SMILE JAMAICA WIRELESS

暖かい音質で心地よい南国が味わえる!最高のワイヤレスイヤホン!

 調和的で暖かな音質を持っているワイヤレスイヤホンです。デザインも自然な材質感を生かしたものになっており、使い心地も最高です。現状このイヤホンは私の寝ホンとしての定位置を不動のものとしています。優しい付け心地と穏やかな音質が眠りのお供に最適。リラックスしながら音楽を楽しみつつ眠ると、夢見もすごくよくて気持ち良く疲れを落とせます。

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ベストバイ銅賞「SONY WI-C300」

SONY WI-C300

SONY WI-C300

外出時の利用によく合う使用感が安定のSONY品質を感じさせる!

  ゴツゴツしない小型で耳当たりの良いハウジングデザインもいいし、音質的にも密度感のある音で周りがうるさい環境でも聞き取りやすいです。目立ってよいところはないけれども、総合的なバランスで使い勝手よく思える機種に仕上がっており、低価格ながらSONYらしい安定感を感じさせてくれます。

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【特集】audio-sound @ hatena ベストバイ大賞 2018【完全ワイヤレスイヤホン】

audio-sound ベストバイ大賞2018

  年の瀬とはいえ、まだもう少し今年が続きますが、せわしない一年がほぼ過ぎようとしています。今年は大変お世話になりました。皆様からの日頃のご愛顧にいつも感謝しております。

 今年も様々なオーディオ製品を紹介させて頂きましたが、その中から誠に勝手ながら、「audio-sound @ hatena ベストバイ大賞 2018」を選定させて頂きます。私個人の主観的な好みも色濃く反映されておりますが、本レビューブログの今年の総括として、お楽しみ頂ければと思います。

 

 

ハイエンド(2万円以上)

ベストバイ金賞「Jabra Elite Active 65t」

Jabra Elite Active 65t

Jabra Elite Active 65t

世界中の評論家が絶賛し、ユーザーからも圧倒的支持を集める使い勝手の良さ!

 なんだかんだいって、最も満足度の高い買い物をさせてもらったと思っているのが、このJabra Elite Active 65tです。音質的にはどうかなと思う部分も多いですが、使い勝手は文句なく最高です。この製品は完全ワイヤレスにとって最も大事なのは使い勝手だということを私に教えてくれました。下位機種のElite 65tも使い始めはあまり気に入っていなかったのですが、安定した使用感でいつの間にか私の外出時のレギュラーポジションに入っていました。多くの人が魅了されるわけです。

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ベストバイ銀賞「BOSE SoundSport Free」

Bose SoundSport Free

Bose SoundSport Free

誰もが認めるBOSEサウンドを完全ワイヤレスで実現したという驚き!

  使い勝手はイマイチなところもあり、何よりデカイという欠点もありますが、個人的に音質が好きで、そのパワフルサウンドに魅了されました。価格もこなれてきており、コスパの大変良いイヤホンです。なんだかんだいって、使いやすいBOSE。今年は音質面で優れた機種も増えましたが、ほとんど3万円以上という価格が強気なものばかり。それらをラグジュアリーとして楽しむにはいいですが、音質は日々向上しますから、今完全ワイヤレスイヤホンに3万円以上出す必要はありません*1。量感のある音でBOSEは充分に満足させてくれます。この価格でこの音質というお得感が最大の魅力です。

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ベストバイ銅賞「RHA Trueconnect」

RHA Trueconnect

RHA Trueconnect

新たな可能性を示したソリッドな音質に、RHAファンも度肝を抜かれた!

 銅賞候補はいくつもありました。しかし、最終的にはコスパと使い勝手でこのRHA Trueconnectを推します。音質は独特で万人受けしないところもありますが、ソリッド感があって高い解像度感のある音です。Airpodsにリスペクトしたようなデザインも好みを分けるところはありますが、装着感は非常に良いです。代替品の少ない音質、総合的な使い勝手とコストパフォーマンスの良さで選びました。

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ミドルレンジ(1万円以上)

ベストバイ金賞「JVC HA-XC70BT」

 

JVC HA-XC70BT

JVC HA-XC70BT

手ごろな価格で上位機種を圧倒する低音を実現するパワフルエンジンを搭載!

 エクストリームバスパスポートの奏でる低域は完全ワイヤレスとは思えないほどの量感です。最近の「ハイファイ志向」にはやや逆行していますが、熱く重い量感のあるサウンドで上位機種に負けないライブ感のある音を奏でます。必要以上にデカいケース、ややゴツすぎる外観と装着感など、使い勝手にはやや人を選ぶところもありますが、音質を考えるとコスパは素晴らしいです。

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ベストバイ銀賞「SOL REPUBLIC Amps Air 2.0」

SOL REPUBLIC AMPS AIR2.0

SOL REPUBLIC AMPS AIR2.0

使い勝手とデザイン、バランス感覚の良い音質と三拍子揃った名機!

  小型で耳への収まりもよく、長時間聴けるほどの大容量バッテリーケースで、しかも価格はかなり安めです。防水性能はあまり高くなく、イヤホンの連続再生時間も短めですが、低域から高域までそれぞれに存在感があるコントラスト感の高い音質で充分満足に聴かせてくれる機種です。高域の鮮明度に優れているので、HA-XC70BTよりこちらの音を好む人も多いと思われます。

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ベストバイ銅賞「JBL FREE X」

JBL FREE X

JBL FREE X

徹底的に品質改善に取り組み、栄光を取り戻した復活モデル!

 正直に言いますが、これはまだレビューしておらず、手に入れたばかりで充分に音質や使い勝手を吟味していないので、銅賞としてます。本当はまだレビュー前なので、おすすめするか迷いました。前機種JBL FREEにあった通信品質上の問題点を見事に改善してきた機種です。ネット上の評判も良く、今のところファーストインプレッションもよいので、この場を借りておすすめしたいと思います。

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ミドルエントリー(5000円以上)

ベストバイ金賞「iKanzi X9」

iKanzi X9

iKanzi X9

重厚な音作りで格上機種を下克上するパワフルモデル!

 amazonで今のところ最大クラスの人気を誇るイヤホンと言って過言ではありません。モノ雑誌では不思議と酷評されている機種ですが、私の使用感を述べれば、品質的な安定感と量感のある低域を中心とした音質は満足度が高いです。モノ雑誌が不思議と推しまくる「HAVIT G1」と比べても、装着感、バッテリー容量、防水性能などすべて勝っており、低音重視の音質的な傾向も似ていて有力なライバルです。個人的にHAVIT G1も良い機種なので推してますけど、それ以上に某人気モノ雑誌のこの機種へのヘイトを物ともせず、堅実な人気を誇るその生命力に刮目し、これを金賞とします。むしろ某モノ雑誌の「HAVIT G1」への入れ込み具合がハンパなくて、ドン引きしてます。売り込みが強すぎるという意味で、もしかすると中華のステマレビューよりやばいかもしれません。

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ベストバイ銀賞「Anker Soundcore Liberty Air」

Soundcore Liberty Air

Soundcore Liberty Air

付け心地も音質もAir!カジュアルな使い勝手が心地よい!

  この機種については手に入れたばかりでここで紹介するのが適切か迷いました。私はこの機種のレビューを掲載しており、充分な品質を感じますが、慎重にほかのレビューも確認し、海外のレビューもよく読み込んだうえで、ここに紹介することに決めました。まだ評判が定まっている機種ではなく、私自身充分に使い込んでいるとも言いづらいのですが、音質は鮮明で透明感があり、中高域を気持ちよく聴かせてくれます。装着感は軽く、ケースからの取り出しもスムーズで使い勝手が良いです。Ankerのlibertyシリーズはいろいろ機種がありますが、総合的に私の好みに合い、使用感が一番良かったのでこれを推します。

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ベストバイ銅賞「SoundPEATS Truengine(改良版)」

SoundPEATS Truengine

SoundPEATS Truengine

2ドライバーが奏でる本気モードの音楽!量感は価格帯最強!

 この機種は当初いろいろ問題が指摘され、改良版が出されました。私のレビューは改良版に準じています。購入時には商品ページに音質改善版とか改良版とか書かれているかよく確認してください。低価格完全ワイヤレスにしては珍しく、2ドライバーを搭載し、低域から高域までパワフルな表現力のある音響が特徴です。やや音場の密度感が高く、窮屈な印象を受けるところはありますが、量感は圧倒的です。上位機種にも負けない力強いサウンドで確かな満足感を与えてくれます。

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エントリークラス(5000円以下)

ベストバイ金賞「ifancier KD-66」

ifancier KD-66

ifancier KD-66

バランスの良い音質と総合的なスペックの良さが光る!

 ペアリングに時間がかかったり、接続が自動でないなどいろいろ不便なところはありますが、防水性能やケース込みの最大再生時間が長く、総合的な使い勝手は悪くありません。それ以上に評価すべきは音質で、低域から高域までバランス良く、発色もなかなか良い瑞々しい音を奏でます。音質傾向は優等生的でどんな曲でもそれなりに聴かせてくれるので、満足度は高いです。5000円を切る価格で、ここまで優れたバランス感覚を持つ機種が手に入るなんてちょっと驚きです。

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ベストバイ銀賞「TIAMAT Thor」

TIAMAT Thor

TIAMAT Thor

ワイヤレス充電機能と本格的なドンシャリサウンド!尖った個性が物欲を刺激する!

  低価格ながら、ワイヤレス充電のQiに対応するなど、個性が光ります。音質は本格的なドンシャリで、低価格でロックサウンドを楽しむには有力な選択肢です。イヤーピースがデカいなど、使い勝手の面では必ずしも万人向けとはいえませんが、尖った個性に独特の魅力があるのは事実。防水性能も高く、スペック的に上位機種に劣りませんので、低価格だけど人とは違う機種を持ってみたい男心をくすぐるところがあります。

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ベストバイ銅賞「SoundPEATS TrueFree」

SoundPEATS TrueFree

SoundPEATS TrueFree

 安定した使い勝手と音質を低価格で実現!コスパ優等生の入門機!

 低価格ではコスパが良く、音質と使い勝手が安定している機種。とにかく価格が安めで入門用に最適です。ケースが開放型で取り出しが硬いなど若干使い勝手に難がある部分もありますが、総じてバランス良く仕上がっており、機能面で不足感を感じさせません。完全ワイヤレスイヤホンに興味を持ったら、これを選んでみてはどう?と真っ先におすすめできる機種であることは間違いありません。

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*1:これ以上の音質を求めるならば、1万円台の良質なBluetoothレシーバーと有線イヤホンを探した方が幸せになれると思います。それにJVC HA-FD02BTJVC HA-FW02BTを忘れていませんか?

【特集】JVC HA-FD01SPのりん酸銅ノズルは思いも寄らぬ良ノズル!ドライでソリッドなのに光沢抑えめ、なめらかな音出しで後味爽やか。これが限定版の実力というヤツか!

JVC HA-FD01SP

JVC HA-FD01SP

 つい先日購入のご報告をしたばかりですが、面白すぎてレビューが全然出来そうにないJVC HA-FD01SP。このモデルはHA-FD01に限定のリン酸銅ノズルが付属している特別版なのですが、そのリン酸銅ノズルが率直に言って凄すぎます。

 とりあえず標準のステンレスノズルで適度にエイジングを施しつつ、いろいろ曲を聴いていましたが、各種イベントで好評を博したというリン酸銅ノズルに取り替えてみました。これがまたすごくいいので、びっくり!

 

 

リン酸銅ノズルがすげぇ!

 ステンレスノズルでもパリパリした刻みと光沢のあるサウンドで気持ちよく聴かせてくれましたが、このリン酸銅ノズルは色味は少し抑えられていて、落ち着いた色合いで印象としてはドライ、だがソリッド感は失われずに歯切れ良く、しかし音の表面は滑らかで耳当たりよく、抜けが良いので後味に臭みがないという良質バランス。

 このイヤホンに搭載されたD3ドライバーには「Dignified(凛とした)」「Distinct(明確な)」「Delightful(心地よい)」という意味が込められているらしいですが、このリン酸銅ノズルは「Dignified(凛とした)」を爽やかな後味と重みのあるすがすがしい金属光沢感で、「Distinct(明確な)」を個々の音のソリッド感で、「Delightful(心地よい)」をなめらかで耳当たり良い音響によって実現してくれます。すげぇ。

 

【リン酸銅ノズルで感動した曲①】水瀬いのり「三月と群青」

 この曲は水瀬いのりのアルバム「BLUE COMPASS」に収録されています。個人的には水瀬いのりの数ある曲の中でもかなり好きな曲で、パワフルで瑞々しい若々しい一直線の熱情を感じさせるロックナンバー。最高に気持ちを昂ぶらせて、しかも爽快にしてくれます。

 さて、この曲をリン酸銅ノズルで聴いてみたのですが、出だしからびっくり仰天!一気に引き込まれました。鮮やかなギターの旋律にドラムがINしてスタートするのですが、このドラムがドライで砂浜のような熱気のある心地よい音で、これでいきなり惚れ惚れ。「何この音?気持ちよすぎない?」って早速反応します。次にシンバルがカンカン鳴り響いてくるのですが、こちらもキラ味の少ない重い材質感のある生々しい音で、重厚感を出してきます。ピアノの鳴り方はちょっと精彩抑えめでデジタルっぽいですが、バランスを考えるとこれでいい。ボーカルはやや暗めでドライ。しかし、元々瑞々しさに満ちたボーカルなので、ほどよい乾き具合といった感じで甘味は失われていません。これは率直に言ってすごくいい。

 私の愛するもう一つの機種、JVC HA-FX1100兄貴の表現と比べてみましょう。HA-FX1100兄貴の魅力はなんと言っても火力。HA-FD01SPのときとは全く別物の地熱の篭もった生々しいドラムで膨張感もあり、音場全体を支配します。ギターももやもやと湯気を放っているかのような熱さで、シンバルはかなり硬めにカンカン。ボーカルは熱狂した空間に包まれていて、ライブ感は圧倒的です。これはこれで素晴らしく、私の大好きな音ですが、リン酸銅ノズルのJVC HA-FD01SPのドライでソリッドな味を知っちゃうと、俄にこれをべた褒めも出来ません。難しいね。

 どちらにせよ、私の大好きなこの曲を聴くなら、リン酸銅ノズルは素晴らしい仕事をしてくれます。最高。

 

【リン酸銅ノズルで感動した曲②】afterglow「ツナグ、ソラモヨウ」

 あんまりいい曲じゃないと言いつつ、結局プレイリストでよく聴いていて好きなのが、この曲。以前HA-FX1100兄貴くらいのライブ感のある火力が無いと「エモい」感じは出ないじゃないかみたいなことを言いましたが、火力面ではやや劣るものの、リン酸銅ノズルのHA-FD01SPも充分に聴かせてくれます。

 リン酸銅ノズルでこの曲を聴くと、ドライな味が全般的に利いていて、非常にかっこいい仕上がりに聞こえます。シンバルに浮わついたところがないのが大きく影響しているところで、ドライなギターやベースと親和的で、ボーカルも明るさが抑えられていて、楽器とのコントラストが強くなく、一体的になって太い感じでしっかり聞かせてきます。これはかっこいいし、充分「エモい」。JVCすげぇ。

 比較対象であるJVC HA-FX1100兄貴のこの曲の表現力については兄貴のレビュー記事で詳しく取り上げたので繰り返しません。

 

【リン酸銅ノズルで感動した曲③】a・chi-a・chi「STEP」

 私がアニソン史上屈指の名曲と個人的に褒めちぎっている曲。ちなみにこの名曲を世に送り出したのはビクターです。そう、Japan Victor Companyだっ!←宣伝

 というわけでJVCのこのイヤホンとは、不思議と相性抜群!……そりゃそうだね、この曲が録音されたであろうビクタースタジオの音を忠実に再現することを目指しているのがJVCのイヤホンなんだから。

 まずこの曲の透明感ですが、かなりきれいに出ます。シンセサイザーで金属的な音を加えて煌めき感を出していますが、そちらは落ち着いていて情緒安定感があり、品があります。そしてきれいに透明感とのびやかさが出るボーカル。これまで全体的な印象としてドライということを言ってきましたが、この曲では音の表面の滑らかさが丁寧に出るところがマッチして、しなやかなメリハリ感がほどよく、ドラムの味や後味くらいにしかドライな印象は受けません。むしろドラムではそのドライな風味が温もり感に、後味では抜けの良い爽快感につながっていて、この曲の煌めき感と清涼味を安定感のあるバランスで丁寧に再現している印象となっており、非常にクオリティが高く思えます。ああ、これはやばい。

 で、この曲に関しては私のオススメのサウンドは、言いにくいですが、左耳にHA-FX1100、右耳にHA-FD01SPというあまりに邪道すぎる取り合わせ。左耳、すなわち感情を司る右脳でHA-FX1100のボリューム感と情感ある表現を聴きつつ、右耳、すなわち理知的な左脳でHA-FD01SP(リン酸銅ノズル)のしなやかな解像度とソリッド感をバランスケーブルで楽しむというもの。少し囓ったあまりにもいかがわしい脳科学的知識を駆使した最高のセッティングです!邪道だって?音楽の楽しみ方に正道などないよ、知らないの?

 ただし左右の耳の聞こえ方のバランスには個人差がありますので、私には意外といいバランスで定位感もそれほど破綻せず聞こえますが、人によってはあまりよくない場合もありますので、あくまで話半分で聴いて下さい。本格的に試す場合は聞こえ具合をイヤーピースで調整しましょう。(あまりにも頭の悪い聴き方なので絶対にマネしないでね。

 

【総評】JVC HA-FD01SPはすげぇ!これを作ったJVCもすげぇ!

 JVCの渾身の意欲作と言って良い、HA-FD01SP。その音は本物です。私が愛してきた音の正統進化形が、この製品にはたしかに込められており、私を捉えて離しません。最近のJVCの音作りには感動しかないですが、また一つ、「エモ」くてやばい商品をJVCは世に問うてしまったと言って良いでしょう。これぞ平成最後の音を飾るにふさわしいイヤホンです。私は「STEP」のバックコーラスのように「Don't Stop ! You Can !」の声援をJVCに送り続けます。

 ちなみにこの記事を書いた今日、なぜか狙ったようにamazonでHA-FD01SPが激安販売されていて、なんと通常版より安い。サイバーマンデーで買った私、涙目。ちょっと酷くない?

 

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【コラム】私が見たいJVCのCMを一生懸命考えてみた!(聖闘士星矢コラボ篇)

聖闘士星矢

 こんにちは。寒さの厳しい中、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 今日は秋葉原でポタフェスやってますね。行こうかと思いましたが、あまりの寒さに断念しました。そもそも人混みのあるところが苦手です。というわけでポタフェスにいかずに充分に残った余暇を使って、私の愛するJVCのCMを考えました。

 以前「ヘッドホンの響子ちゃん」を取り上げたときに、私が思い描くJVCのブランドイメージは車田漫画だという話をしましたが、それ以後想像が膨らんで、調子に乗ってCM案を考えてみました。したがって基本的に妄想記事ですが、しばしお付き合いください。

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時代はコラボCM!あの公営ギャンブルも…?

 最近はコラボCMも多いようですが、度肝を抜かれたのが「有馬戦士ガンダム」。バブル期最後のオグリキャップ時代からWin95と同世代のナリタブライアンの時代を人気の頂点に、近年はやや低迷していた競馬ブームが再び回復しつつありますが、JRAはここでさらに攻勢をかけてきている様子。TVCMもしつこいくらい押しが強く、意気込みが空回りしてるところはありますが、頑張ってる感ハンパない。馬券のネット販売も開始されましたしね。

blog.livedoor.jp

 

厳しいオーディオ業界!だが、JVCは反撃の狼煙を上げる!

 近年我がJVC(身内でも何でもないけどね)も復活の時を迎えつつあります。株価はお世辞にもあまり上昇しているとはいえず、最近は少し低迷していますが、悪質な「あおり運転」事件の影響かドライブレコーダー事業が好調です。純粋なオーディオビジュアル機器業界はあまり状況が良くないですが、そのなかでJVCケンウッドは比較的頑張っているメーカーです。私としてもうれしい限り。

www.bcnretail.com

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suik.jp

suik.jp

 

 原点回帰ともいうべき「ビクター」ブランドを昨年再始動させ、今年はJVCの主力機種であるWOODシリーズのイヤホンをそのラインナップに加えるなど、オーディオ部門でも攻めの姿勢を見せています。男らしいぜ!JVC!

japan.cnet.com

 

そんなJVCにささやかなエールを送りたい!

 このように、現在形で生まれ変わろうとしているJVC。JVC製品の自称「熱烈なファン」であり、俄か株主として末席を汚している私も、JVCを応援したくてしかたがない!よし、私が考えるJVCブランドのイメージを皆さんに正しく伝えるコラボCMを考えようじゃないか!「聖闘士星矢」で!

 

「聖闘士星矢」で伝えるJVC CM案

①「乙女座シャカVS冥闘士」篇

<シーン1>寒風吹きすさぶ処女宮の外観イメージ。

 

<シーン2>処女宮内部。大挙して処女宮に踏み込んでくる冥闘士たち。

 

<シーン3>鎮座するシャカ。立ち止まる冥闘士。緊張感が辺りを包む。冥闘士ギガントが進み出る。
ギガント「この人数を一人で相手にするというのか?シャカ」
シャカ「おまえらの命運は尽きている。この数珠を見よっ!」
 懐から何かを取り出し、高々と掲げるシャカ。ギガント顔アップ。
ギガント「なにぃ!?そ、それはっ!?」
 シャカによって高々と掲げてられたのはなんと「JVC HA-FW01」。さっと懐にしまう。シャカ、あくまで冷静。
シャカ「すまん。間違えた」
 だがギガントの驚愕は収まらない。顔アップ。汗だらだら。
ギガント「おまえもJVCだというのか……?」


ナレーション「神に近い男が愛する音、皆が愛するWOODシリーズはJVC」

ここで製品イメージとJVCロゴ表示。

  シャカは絶対WOODシリーズ好きだろっていう私の固定観念丸出しで妄想したCM。普段は沙羅双樹の園で涼みながら音楽聴いてそうじゃありませんか?

 

②「牡牛座アルデバランVSソレント」篇

<シーン1>薄暗い病院の廊下。静寂な病院内に響くカツンカツンという足音。

 

 闇に紛れる人影を呼び止める巨漢の男、アルデバラン。
アルデバラン「待て!おまえは誰だ!?」
 アルデバランの太い声。立ち止まる人影。すっと光が当たり、影が消えてソレント登場。

ソレント「私はセイレーンのソレント。青銅聖闘士たちの首をもらいうけにきた。邪魔をするなら容赦はしない!聴け!デッドエンドシンフォニー!」(多少早口)
 奇怪な音に耳を塞ぐアルデバラン。
ソレント「無駄だ!私の音は鼓膜を越えてお前の脳に直接響く!死ぬがいい」(多少早口)
 勝ち誇るソレント。だが平然と耳から手を離すアルデバラン。
アルデバラン「残念だったな。おまえの音はJVCの低音ほど俺の心に響かない。」
 驚愕するソレント。顔アップ。汗だらだら。
ソレント「まさか。おまえもJVCだというのか……?」


ナレーション「心に響く音、熱狂するXXシリーズ、JVC」

ここで製品イメージとJVCロゴ表示。

  音を攻撃手段にする聖闘士や敵は多いですから、こういうのは結構作れそうです。一例としてアルデバランVSソレントのシーンからCM妄想しました。

 

③「フェニックス一輝VS乙女座シャカ」篇

<シーン1>戦闘態勢で向かい合うシャカとフェニックス一輝。シャカの目は開いている。

シャカ「私の目を開かせたことを後悔させてあげましょう。天舞宝輪!」
 シャカの作り出した異空間に引きずり込まれる一輝。
一輝「うおおお!なんだこれは!?」
シャカ「これからおまえの五感を一つ一つ剥奪していきます」(多少早口)
 自由を奪われてもがく一輝。一輝の身体を稲妻が走る。
シャカ「まずはおまえの視覚を奪った。次は嗅覚!」(多少早口)
一輝「うわぁぁぁ」
 再び稲妻が走る。
シャカ「次は聴(覚)……」(言い終われない)
一輝「ま、まてっ!」
 一輝の声がシャカの声をさえぎり、シャカは動きを止める。シャカの驚いた顔とともに画面に大きく「!?」。懐から何かを取り出す一輝。
一輝「そ、そのまえにもう一度だけ、俺にJVCのイヤホンを聴かせてくれっ……」
 驚愕するシャカ。顔アップ。汗だらだら。
「なんだと?おまえ……、なんでJVCなんだ……?」


ナレーション「人生最後の日さえ聴きたい、イヤホンはJVC」

ここで製品イメージとJVCロゴ表示。


<シーン2>後日。家電量販店のレジにせわしそうに並ぶシャカ。レジが空いた途端、駆け込む。
シャカ「あの。すみません。JVCのイヤホンほしいんですけど」(早口。最後はフェードで切ってもいい)

  ①の「乙女座シャカVS冥闘士」篇の前日譚ともなっているというイメージ。シャカがなぜJVC好きになったのかの伏線で、①を楽しんだ人にさらに楽しんで欲しいっていうコンセプトのCMです。

 

 ちなみに、この12月から聖闘士星矢シリーズ最新作、「セインティア翔」が放映開始します!お見逃しなく。

 

【おまけ】「サンサーラナーガ1&2 サントラ」再販予約受付中

 おまけといっては何ですが、懐かしいビクターの名作RPG、「サンサーラナーガ1&2」サントラの再版事前予約がプロジェクトEGGでお馴染み「AC-MALL」で開始されています。

 このシリーズの曲を作ったのは「機動警察パトレイバー」シリーズや「攻殻機動隊」シリーズ、「東のエデン」などを始めとするアニメ作品への劇伴曲提供で知られる川井憲次さん。「さよならの朝に約束の花をかざろう」のサントラも秀逸でした。

ac-mall.jp

 

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【コラム】「ヘッドホンの響子ちゃん」って知ってますか?(附・JVC HA-FD01SPのご報告。)

ヘッドホンの響子ちゃん

 列島が急に冷え込んできました。皆さん、お体をお大事に過ごされているでしょうか。私はちょっと風邪気味になりまして、このまえ駅で電車を待っている時、鼻がムズムズして結構な勢いでくしゃみしちゃったら、衝撃で耳に付けていたJVC HA-XC70BTが耳からポーンと飛んでいってホームに転がるのを必死で拾いました。ホームからイヤホンが落ちやしないか、誰かに踏まれやしないかとシャレにならないくらい背筋が凍って、周りの目には顔真っ赤になるほど恥ずかしかったです。

 

【ヘッドホンの響子ちゃん】

 久しぶりに公式サイト行ったら俺のJVC、こんなんなってて動揺しました!普段よくメーカーのホームページを見に行く私ですが、あまりJVCのホームページって行きません。というのもJVC製品ってサイトからダウンロードしなくても製品の説明書しっかりついてますし、身近な家電量販店にも製品あるので、サイトでいちいち見なくても店で聴けば音がわかる、買えばパッケージで全部完結しているところがあって、わかんないことがあったら、サイト行かなくても説明書で済んじゃう。あとは店頭で販売員に聴けば大抵わかる。付属品もゴチャゴチャしてない。そういう意味では快適なメーカーで、私はオーテクやJVCのそういうところが好き。大好き。

 SONY?あんなんただの飾りですよ、エラい人にはそれがわからんのです。

www3.jvckenwood.com


 

ヘッドホンの響子ちゃん

 で、これが響子ちゃんのプロフィール。私は響子ちゃんを一目見たときから「回レ回レ回レ回レ……♪」とか「未来へとふたりのWonder tale~♪」って音が耳にちらついて離れません。ゆるふわ系自然派少女みたいですけど、「響子ちゃんデータ」を何度も読み返しても、なんでJVCが好きなのかさっぱりわかりません。WOODシリーズってどれも2万円くらいはするんで、女子高生はまず買わないでしょうし、自然派女子高生がXXシリーズとか聴いちゃうんかな。むしろこの子が好きそうなのはオーテク……

 

↓ちなみにyahoo先生で「響子ちゃん」と検索してみると、こんな感じ。一番上と二番目、響子ちゃんじゃなくて「警子ちゃん」なんだけど!

 そして「響子ちゃん 心臓 で検索」というのがさりげなく出ていますが、検索するとまたいろいろと感慨深くなれます。こちらの「響子ちゃん」も女子高生になられたとか。何よりです。ギスギスしたところもある現代社会ですけど、善意のつながりというのは確かにあるんですね。

検索結果

 

 話がそれました。どっちかっていうと、私のJVCのブランドイメージって「響子ちゃん」って感じじゃなくて、車田正美先生の漫画みたいなイメージです。

 城戸沙織お嬢様がHA-FW10000で音楽聴いてますとか納得だし。

 シャイナさんなんか、「星矢、JVC HA-XC70BTはいいよ。邪魔なコードがないからサンダークロウを撃つとき引っかからないからね。これはお前の流星拳にもぴったりさ。遮音性がそこそこあって低音がしっかり響くから、戦ってる間も音楽が臨場感溢れて聞こえてくるのさ」とか言いそう。そうすると、星矢は「いいですね、シャイナさん。俺はBOSEの買ったんですけど、彗星拳撃つといつも飛んでっちゃって。このまえなんてカシオスに頭握られて片耳壊れちゃいました。片耳になっちゃったからカシオスにあげちゃったんです。やっぱJVCですね」とかね。そして、「星矢、あいつの耳穴じゃイヤホン埋まるじゃないか。むしろ嫌がらせでしかない」というオチがありそう。

 MAKE-UP「ペガサス幻想」とかXXシリーズで聴くと最高!

 ドラムはペガサス流星拳、シンバルはダイヤモンドダスト、高域は廬山昇龍波、中域でサンダーウェーブ、低域で鳳翼天翔みたいな。小宇宙と書いてコスモが感じられる音、それがJVCサウンド。永遠に「未完」。

 たとえば、「聖闘士星矢」とコラボして、ハウジングを金色に塗ったくり、「JVC HA-FD02 ゴールドクロスエディション」とか言って出されたら買っちゃいそう。スペイン人とかすっごく喜びそう。音は「聖闘士星矢」の曲にマッチしてるしね!

saintseiya-official.com

 あと「セインティア翔」も忘れずに。これ、超楽しみ。

 

 響子ちゃんの話これでおわり。

 

【ご報告】JVC HA-FD01SP を買いました。

JVC HA-FD01SP

JVC HA-FD01SP

  で、個人的に今回のサイバーマンデーの大本命だったのが、このJVC HA-FD01SP。ずっと狙っていて、セール待ってたけど、結局大して安くなりませんでした。まあスペシャルモデルですからね。

 とりあえず現在、適度にエイジングを加えながら、ときどきこれでプレイリストを楽しんでいます。

 さて、HA-FD01SPはWOODシリーズと並ぶJVCの看板シリーズとなりつつある、SOLIDAGEシリーズの製品ですが、私はHA-FD02で充分いい音って思っていて、本来はHA-FD01はあまり考えてなかったんです。無駄に高いしね

 HA-FD01の最大の特徴はノズルを交換して音色をカスタマイズできるっていう美点があるんですが、私は率直に言ってこういうギミックのついたイヤホンがあまり好きではありません。今までいくつか使ってはきました。たとえばSENNHEISER IE 80SとかRHA T20とかMarshall Mode EQとか。自分の場合、そんな頻繁にイヤホンのノズル交換してとかツマミ回してとかっていうのがめんどくさいんで、音が変わるのは面白いんですけど、そのうちいちいちギミックで音変えるのがめんどくさくなってきます。RHA T20なんかレファレンスフィルターつけっぱなしになっているし。それでギミックつきでないHA-FD02でいいやって思ってたんですけど、HA-FX1100が思いのほか気に入ったので、JVCが厳選したHA-FD01のノズル音には、面白い音があるんじゃないかと思い直しました。「HA-FD01SPのノズル変えながらレビューするだけで一年くらいブログ書けそう。ウヒヒ」って下心もありましたが

 まだステンレスノズルを楽しんでいる段階ですが、このノズルだとパリパリしたメリハリ感とほどよくキラキラした光沢感で中高域は私の好きなオーテクっぽい見通しの良さがありながら、下の方ではJVCらしく熱い!個人的には大好きな澤野弘之さんの緻密でソウルフルな音を聴くのに最適です。Aimer「StaRingChild」とか。小宇宙を感じさせる、熱い魂の鼓動に満ちた愛すべきJVCソウルを備えた珠玉の製品であることは間違いない!ということで、今日はいくつか曲を聴いてみた感想を挙げたいと思います。主にHA-FX1100兄さんと比べながら。

 

【音質プレビュー】MAKE-UP「ペガサス幻想」(附・影山ヒロノブ「ソルジャードリーム」)

  というわけで私がJVCのサウンドを聴くのにおすすめする曲はなんといってもコレです。そう、「ペガサス幻想」。「永遠ブルー」「ソルジャードリーム」「夢旅人」といった「聖闘士星矢」の楽曲群はどれも秀逸で、最近のオシャレすぎるアニソンにはない荒削りな情緒感と熱気があります。これぞJVCサウンド。たとえばJVC HA-FX1100を「JAZZJAZZJAZZ」言ってる人(JVC広報含む)を尻目に、私はJAZZよりこれを聴く。JVCさんにはウッドコーンの無駄遣いって思われてるかも。

 「ペガサス幻想」については、原曲はなかなかストリーミングサービスとかになくて、気軽に聴ける人はあまりいないかもしれませんが、BOOK OFFなんかにいくと結構見つかるかも知れません。Prime会員の人なら、MAKE-UPのセルフカヴァー版「ペガサス幻想(21st century ver.)」が無料で聴けます。ニュアンスがだいぶ変わってますけどね。あまり言いたくありませんが、youtubeで一生懸命探せば原曲見つかります。あまり言いたくないですが。

↓公式動画なんてないので、ヘヴィメタアレンジのofficial動画と海外アーティストのカヴァー版があったので参考までに埋め込みました。おいおい、どっちも熱いな。ヘヴィメタ版とか聴いてて超楽しい。

 

 さて、真顔に戻って早速原曲を聴いていきましょう。

 まずはJVC HA-FX1100。もはや出だしからヤバイです。熱気を帯びたドラムに彩られた噴き出すような楽器音が溢れて、ボーカルはクリアで太く、力強い。背景の黒みが結構多い曲ですが、HA-FX1100のサウンドはその空間を暖色に照らしているので、冷めた感じがなく、ライブ感に満ちています。音の傾向としては緻密感がややぼけて、どことなくゆるい、もっさりした味なので、最近の流行の音という感じではなく、そんなの嫌いって人には合いませんが、私にはこれくらいのルーズさで聴かせるところも味わい深い。ただし、印象的には後期OP「ソルジャードリーム」のほうが合っているかな。私の聴いている音源だと、「ソルジャードリーム」は「ペガサス幻想」に比べてドラムがもう少し硬くて存在感があるのと、シンセの表現が立体感を出していて引き締まって聞こえます。

 次にJVC HA-FD01SP(ステンレスノズル)で聴いてみます。これは前述したように、HA-FD02と同じ音質のはずです。まずHA-FX1100と比べると、音に糊の利いたバリ感が出て、シンセ音はよりクリアで透明感が引き立ち、ギターエッジはシャープ、噴き出すハイハットも緻密感があります。熱量だけはだいぶ落ち着いてしまって、HA-FX1100の音を聞いた後だと、YMOっぽいオシャレサウンドに聞こえます。音の刻みが格段に良くなったので、HA-FX1100にあったルーズ感はなく、スムースです。低音には充分な迫力がありますが、HA-FX1100の圧倒的ライブ感に慣れてしまうと比べるとやや物足りないところはあります。「ペガサス幻想」はHA-FD01SPのほうが私好みです。逆に「ソルジャードリーム」のほうは熱気が減ったせいでボーカルの味がすっきりしてしまって、悪くないですが、HA-FX1100のパワフルサウンドに比べて味気がなさ過ぎます。

 この印象の差はおそらく両曲の密度感の違いと外連味の違いにあって、「ソルジャードリーム」のほうがボーカルを含め外連味が強く「エモい」感じなので、それがHA-FX1100の情感表現力とよく呼応しているのですが、「ペガサス幻想」はそれに比べるとスタイリッシュなので、瞬発力に勝るHA-FD01SPの追随力のほうが風味を出しやすいといったところでしょうか。どちらにせよ、そこらへんのイヤホンに比べて圧倒的に聞き込ませてくれる音なので、そんな細かい違い、ほとんど気になりませんけどね。

 

【総評】これからのJVCには期待しかない!

 HA-FD01SPとHA-FX1100、この2つの機種はともに熱い小宇宙を共有する兄弟でありながら、その戦闘スタイルと性格はちょっと異なっています。兄貴分のHA-FX1100が孤高かつ圧倒的火力で敵を粉砕する永遠不滅の一匹狼フェニックス一輝なら、HA-FD01SPは熱く確かな実力を秘めながらも容姿端麗で、変幻自在のアンドロメダチェーン(ノズルシステム)を操り、気遣いも出来るアンドロメダ瞬。いいね。

 私が好きなブランドは思いっきり地元の企業であるという意味でも応援しているオーテクと、外連味のある歌舞伎サウンドを奏でるJVCなんですが、個人的にはオーテクがここ最近商品展開でなんとなく攻めあぐねている感じがあるのに対し、JVCは加速し始めている気がします。相次いで魅力的な製品を投入しており、私もつい最近のJVCの魅力に取り込まれてしまっています。

 世界の工場であり、製造能力の向上著しい中国メーカーの良さを喧伝する声も多く、実際私もその品質には驚嘆してばかりですが、でも日本のメーカーには頑張って欲しいですね。世界の市場がネットにシフトしている今、商品展開における瞬発力とスピード感の違いはますます大きな差となって、とくにワイヤレス製品は国産メーカーの出遅れが目立つ気がします。今は手に届く距離にいつもある日本ブランド品ですが、それがいずれ中国メーカーに席巻されて、なくなるというのもやはり寂しい。オーディオメーカーは全般的に厳しいご時世ですが、JVCには頑張って欲しいです。私には目下最高のメーカーですからね。

 

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【特集】2万円台の情感表現力の王者はどちらだ? SENNHEISER HD599 と JVC HA-FX1100 を課題曲で聞き比べる!

SENNHEISER HD599JVC HA-FX1100

 

  JVC HA-FX1100のレビューでうっかり「空間表現でSENNHEISER HD599に遜色ない」などと言いつつ、その後に「実際には差がある」というようなあいまいぼかした書き方をしてしまいました。文章全体のまとまりの面からも、レビュー記事では詳しく掘り下げませんでしたが、なんだかお茶を濁した感じです。そのままにしておくのも後味が悪いですから、この記事ではその点について深く掘り下げたいと思います。

 私があの点で問題にした空間表現力とは、一義的には音場表現の広さを指すことはもちろんですが、もう一つの面として音同士の広がりの連携の仕方という意味もあります。そうして厳密に2点に切り分けて言えば、一義的な音場自体の広さに関しては差があるが、後者の音同士の音場への広がりにはほとんど遜色がないというのが私の発言の正確な意図になります。

 まあヘッドホンとイヤホンを比べようというのは端的に言って無茶な話ではあります。が、それを言っても始まらないので、気にしないことにしましょう。

 

 この節では話は少し話がそれますので、面倒な方は読み飛ばして次の節に行って下さい。

 さて、私はSENNHEISER HD599をこよなく愛していて、半ば信者と言っても良いです。SENNHEISER製品全般が好きなわけではなくて、IE80Sなんか世間では高く評価されてますけど、私はギミックを変にくっつけて使い勝手は悪くなっていて、そのギミックにこだわったせいで音自体の方向性はあんまり定まっていない感があるので、こっちで手間を掛けて自分の音を探して調整してやらなければいけない不自由なイヤホンに見えます。もちろんコアなオーディオファンとしてはそういった手間を掛けて自分の音を追求することに味わいがあるのでしょうが、私はどちらかというと手軽に自分のプレイリストを楽しむ派なので、スクラッチ&ビルドして一つの機種をカスタマイズがどうこうなんてことに時間と金をかけるより、一定の製品レベルで組み上げられた既製品を手っ取り早く使い分けたいという考え方です。だって世の中、こんなにオーディオ製品あるんだぜ?自分の気に入った機種をさらに血眼になって改造してまで音を求める時間があるなら、いっそ気に入った別々の音質の機種を2個買って、プレイリストを機種毎に分ければいいじゃないくらいの感覚です。

 音質の好みとしてはaudio-technicaのSOLID BASSシリーズやJVCのXXシリーズやらをとくに好んでいたので、素性的には低域ジャンキーでありましたが、重低音モデルの至宝のように言われていたSONY MDR-XB950とかいうバカなヘッドホンを聴いて、率直に言って興ざめしました。SONY MDR-XB950は評価が高いヘッドホンで今でもBluetooth対応版のMDR-XB950N1が人気があるくらい、あまり悪い評判を聞きませんが、私が求めていた迫力はこういうものではありませんでした。詳しくは書きませんが、SONY MDR-XB950にはライブ感がなくて豊かな情感を感じさせる味がなく、そこには無味乾燥なブーム音しかありませんでした。

 私はそれまでパッケージの説明文を読んでそのまま買ったり、PHILE WEBみたいなレビューとamazonのレビューをさらっと読んで、雰囲気がよさそうな機種を適当にポチッてましたが、店頭試聴で実際に音を聞き込んで選ぼうと思い始めました。そうして私が出会った、私にとって理想に近い最高のヘッドホンがSENNHEISER HD598です。お値段的にも目玉が飛び出るくらい高い値段ではなく、安くはないですが長く使うなら出してもいいと思える値段設定でした。

 

 私がこよなく愛したSENNHEISER HD598の後継機種がHD599です。特徴としては開放タイプらしい抜けの良いすっきりした聴きやすいところがありながら、個々の音に厚みと濃密な広がりを持たせて空間をスカスカにしない充実感の高い音響が魅力です。この音場全体が一体的に充実して満たされる雰囲気を私は自己流に「調和性」と呼んでいます。「包まれている」感覚といえばわかりやすいでしょうか。その一つの完成形に近いものを示してくれるのがHD599という機種なのです。私が知る限りでは、「調和性」の表現は一つではなく、実際にはSHURE SRH1440のように虚空を感じさせながら、音を緻密にぎっしり綺羅星のように散りばめるタイプの「調和性」もありますし、HD599と同じような傾向に見えて、より色づきのよいfinal SONOROUS IIみたいな機種もあります。final SONOROUS IIは私の求める「調和性」について、音質的にはHD599以上といえるかも知れませんが、いかんせんお値段が少し高いところでお財布に調和的でなく、装着感もHD599の軽妙な付け心地に比べると重くて長時間聴くには調和的ではありません。SHURE SRH1440についてはパッションに満ちたHD599とは違う理知的な方向の「調和性」なので、ここでは考慮しません。

 そういうわけでHD599は「調和性」において一つの理想型に近かったわけですが、しかしイヤホンでこれに匹敵する「調和性」を味わうのはなかなか難しく、いろいろ聴いていく中で比較的近い形で実現してきていたのがJVC WOODシリーズのイヤホンだったわけです。そうしてWOODシリーズをいろいろ試した途中はすっ飛ばし、結論としてはJVC HA-FX1100こそがイヤホンでこれに並び立つにふさわしいものと認めるに至ったわけです。

 そこでこの記事では私の大好きな曲をあれこれ聴きながら、両者がいかに「調和性」のアプローチにおいて似通っているか、似ていてもどこが違うかについて語ろうというわけです。

 

【課題曲その1】佐々木恵梨「ふゆびより」

 アニメ「ゆるきゃん△」のED曲です。こういう温もり感のあるほっこりサウンドはHD599が最も得意とするジャンルの1つです。

 ほどよい柔らかみがあって煌めきすぎないアコースティックなギター音の表現に、空間を歪ませないようにお互いに配慮するかのように丸い角とゆったりとした幅を持たされたパーカッション、芯の厚みを感じさせるとともに、濃すぎない余韻感でのびやかに空間を満たす弦楽音が、濃密に聴かせてくれるのがHD599です。

 ではJVC HA-FX1100はどうでしょうか。一聴した印象としてはアコースティックの弦楽の煌めき感には差があり、より精彩が強くキラキラとして聞こえてきます。同様にシンバルも少し発色が良く、そのせいか疾走感がやや強く感じられて、HDD599と同じくゆったりはしていますが、走ったリズムをより明確に感じます。この違いは最後に加えられる弦楽のワンフレーズの浮き上がり方に差となって感じられ、やわらかく浮き上がってふんわりとした空気感を失わずにまろやかにとけこんでいくHD599に比べると、HA-FX1100はしっかり厚く音を浮かび上がらせ、はっきり響かせてから溶かし込みます。これを分解能の差と重視する人もいるかも知れません。一方で空間の濃密さという面では、音が球状に広く濃かったHD599の密度感と比べると、HA-FX1100の音は、いささか地平線付近に集まってきてしまっている印象を受けます。

  率直に言って曲の精彩という面でいえば、JVC HA-FX1100のほうが優れており、その音を聞いた後だとHD599の音はところどころメリハリ感が薄くマイルドすぎてぼやけたイメージを持つかも知れません。しかし全体として眺めてみると、この曲の空気感の濃密さを空間全体に調和させていて充実感を感じられるという点ではHD599にやや分があります。どちらがより好ましいかははっきり言って趣味の問題で、私はラストのワンフレーズの印象力でJVC HA-FX1100にかろうじて軍配を上げたいと思いますが、甲乙付けがたいです。

 

【課題曲その2】TVアニメ「宇宙よりも遠い場所」ED曲「ここから、ここから」

 個人的に今年最高のアニソンの一つとして愛好していますが、こういう火力のある曲で低域の熱気を空間に広げて音場全体のパッションにつなげるのがうまいのがSENNHEISER HD599です。

 一方で、個々のボーカルの透明感や鮮明さを味わいたいという人は「たしかに迫力はあるが、これは全て混ぜ込んでしまっていてボーカルが背景に埋もれて音の像が壊れてしまっており、美しくはない」というかもしれません。そういう人はSHURE SRH1440で聴いて下さい。

 異論があるのを承知しながら、私はこの曲に関しては理知的なSRH1440よりはHD599の感情的な音が好きだということを申し上げます。

 背景の透明感やキラキラ感を感じさせるグロー表現に緻密さがなくて精彩に欠ける?ギターが膨らんでギャンギャン吠えてうるさい?ドラムの地熱感が暑苦しくてうざったい?

 ――おおいに結構。どうして、そんな細かいこと気にして生きてんの?

 重低域の深掘りされた地熱感が腹の底から情感を盛り上げてきて、空間全体を沸騰させており、ギターもその熱気を受けて気持ちを昂ぶらせて最高に走ってる。曲全体を破綻させない速度は守っているんだから、多少のスピード違反くらい見逃してくれてもいいんじゃない?もちろんコンプライアンスが大事なことくらい知っているさ。ボーカルは太い温かな膨張感のある生命的な息感で力強くしなやかに、声の端は空間すべてに溶け込んで熱気に変わって耳に戻ってきてくれる。単なる残響とは全く異質で、空間全体を振動させるエネルギーに一体化していて、音場に充実感をもたらす。曲全体が輝かしい未来を伝える福音のように、希望に満ちて聞こえてくるんだ、心揺さぶられると思わないか。

 この曲については理知的な聴き方があることを承知で、あえてパッションに傾いて聴きたい私にとって、HD599は最高の選択肢の一つです。

 JVC HA-FX1100をSENNHEISER HD599と比べると率直に言って、まず低域の地熱感の空間への広がりには差があります。低域全体だけでなく若干中域にはみ出すように熱気を空間全体に広げるHD599と比べると、同じく空間への膨張感がありながらも、明確に下方向にとどまる性質を感じさせるのがJVC HA-FX1100です。そのため熱気が充分にありながら、熱気に染まりきらない冷えた背景が存在します。ギター音についても、よりもまとまりがよく、熱く無軌道に広がろうとするHD599のそれと比べると、いくぶん冷静です。結果、全体の印象としてはやや地平線付近に厚い音がまとまり、ボーカルは上ではやや冷めた空間に声を吸い込まれるような広がり方をしています。

 こうした違いは曲から受ける感情の乗りの差にはなっており、HD599が「夢のためなら全力疾走。夢なくしてなにが人生か。玉砕上等、死なば諸共」といった熱狂した情熱に満ちているとすれば、HA-FX1100は「ひたむきに夢を追う強い情熱」を感じさせながら、「でも、現実とどう向き合うか」という冷静な判断をまだ残しているといった感じです。前者に圧倒的な勢いと迫力と一体感があるとすれば、後者には確かな熱意の中にも、現実との緊張関係を自覚している部分があって、いくぶん葛藤を感じさせ、わずかなドラマ性があります。

 ――で、結局どちらがいいかって?……悪いけど、どっちも選べないくらい、いいよ!

 

【課題曲その3】挾間美帆「ザ・サイクリック・ナンバー」

 SENNHEISER HD599やJVC HA-FX1100はJAZZ向きという評判をよく聞きます。SENNHEISER HD599はまだそうでもありませんが、JVC HA-FX1100についてのオーディオ雑誌やWeb媒体の記事を読むと、大抵JAZZ、JAZZ、JAZZ。HD599のお世辞にも洗練されているとは言えないダサかっこいいギリギリを攻めているデザインに比べると、HA-FX1100は木製のシックで大人びたデザインですし、外面もJAZZに合いそうなのでお上品な購買層を獲得するためにはよいのでしょう。私はそれでも躊躇なくアニソンを聴きますがな。

 しかし私だってJAZZを聴かないわけではありません。とくに最近愛好しているのが挾間美帆のアルバム「ダンサー・イン・ノー・ホエア」。下に埋め込んだPVを見て惚れました。

 ただ実際は、どの曲も下のPVのように盛り上がるまで、だいぶ緩急入り乱れた展開があるので、出だしなんか一見退屈に装っているものもあります。一曲目の「トゥデイ、ノット・トゥデイ」なんてそうです。おっかなびっくり「もういいかい?」「まーだだよ」を繰り返しながら、いつのまにやら日常を踏み出して見知らぬ大都会の路地裏に迷い込んでいってしまう、そういう冒険心のある盛り上がりをする曲が多く、私のような、Rasmus Faberの「プラチナ・ジャズ・アニメ・スタンダード」やらTVアニメ「坂道のアポロン」サントラやら大野雄二バンドの「ルパン三世」サントラやら日本ファルコムのゲームミュージックのJAZZアレンジ版やらを入り口としている、あまり正統派でないタイプにはいささか難解なところがあって、まだ馴染めないところもあります。

 そういうわけでJAZZについては、はっきりよくわからないところがあると前置きしつつも、この「ザ・サイクリック・ナンバー」の面白みを説明してみます。重厚感ある静かな低域弦楽の独奏で始まり、その音色の行き先に耳を凝らしていると、いきなり金管とともに視界が開けて眩しくてびっくりし、それでも立ち止まれずにいると、一気に厚く楽器が重なってきて奔流に飲み込まれ、いざなわれていき、なんとなく方向感が見えてきます。場面としてたとえで置き換えてみると、暗い道を歩いていたら、突然手を引っ張られて車に乗せられて、そのまま疾走して、どこだか知らないがにぎやかなところへ連れ去られてしまったけど、どうする?みたいな入り方です。そしてピアノが入って色づいてくる辺りまでは比較的見通しが良いのですが、そのうち突然突き放したように彼らはおさらばしてしまって、また弦楽一人で孤独を楽しんでみたり、もう一度仲間を呼び戻してみたりと楽器同士が付き合い方をいろいろ模索し始めます。ここからはピアノが誘ってみたり、金管が先導してみたりと弦楽だけが主役を張るわけではなく、それぞれ思い思いに感情を主張し合うようになり、じつに展開が面白くなってきます。最後はちょっと熱が入りすぎて調子を崩したように音が旋回し始めて、「あーもうくたびれた。ここまでね、もう寝るわ」って感じで残った余力をしぼりきった音を出して締めて終わります。

 前述したように、JAZZをどこで楽しむかっていうのにはまだよくわからないところがありますが、何より空気感が圧倒的に差をもたらすのはわかります。そして両者充分な空気感を出しながら、この曲に関しては明らかに表現の仕方に違いがあって、HD599がスムースでまろやかな展開を重視しているのに対し、HA-FX1100はところどころはっきり攻めてきます。序盤で金管がびっくりさせるところがありますが、HD599では物語の開幕を告げるファンファーレといった感じで盛り上がりつつ、次へスムースにつながっていくのに対し、HA-FX1100のそれはホラー映画の恐怖シーンのように出合い頭に本気でびっくりさせて心臓を縮ませてくる、ちょっと愛嬌のある音です。楽器音の精彩には明らかな差があり、それが緩急のあるこの曲では展開の印象に差を与えてきます。HA-FX1100のほうが明らかに雰囲気の誇張感があり、HD599が曲の世界観に浸れる鳴らし方をしているのに対し、HA-FX1100は曲の世界観に引き込む鳴らし方をします。ちょっと血なまぐさくなりますが、殺人事件があったとして、HD599がそれをサスペンスドラマのように筋立てを重視して提示するとしたら、HA-FX1100はスリラー映画のように場面ごとにインパクトを与えて見せてきます。

 どっちかというと、HA-FX1100のほうが曲の精彩をうまく提示しており、私は好きですが、どこかやりすぎなところはあります。人によっては、HA-FX1100に情緒不安定感を感じるかも知れません。

  

【課題曲その4】水瀬いのり&久保ユリカ「動く、動く」

 この曲はTVアニメ「少女終末紀行」のOP曲です。

 まず最初に断っておきますが、この曲に関しては、SENNHEISER HD599もJVC HA-FX1100も素晴らしい解像度を出しながら、さらに迫力を加えてライブ感を出してくれ、秀逸であることを認めますが、それでも唇を噛み締めつつ、たとえばWestone W40の鳴らし方の方が洗練されていて、スムースかつキレよく、スカッと爽快に聴かせてくれるので、私はそちらのほうが好きだということを先に申し上げる必要があります。個人の嗜好といったらそれまでですが、この曲に関しては迫力もさりながら、やっぱりクリクリッとした愛嬌のある旋回力と瞬発力を求めたい。その点、HD599とHA-FX1100は勢いでなんとかしてるところはありますが、結局大味になってしまうところがあります。

 とはいえ、両者の調和的な表現も、ウォームな表現でほんわかした雰囲気を感じさせつつ、重い低域が地熱を持って広がり、迫力を充分に出して盛り上げます。パワフルで勇気づける曲調で聴かせてくれるので、気持ちが沈んだときなどは確かな活力を与えてくれるところがあります。

 一聴した感じだと、HA-FX1100のほうが音の出し方がはっきりしていて、メリハリがついており、キレがよいように聞こえます。しかし、HD599の温かな世界観で統一された音を聞いたあとには、HA-FX1100のような音の出し方はこの曲の雰囲気には野暮で、個々の音のキャラ立ちが強すぎる、窮屈な音に聞こえます。HA-FX1100には若干音の押しを強くしてしまう癖があって、それは曲によってよいメリハリ感となることはたしかですが、この曲に関してはもう少し肩の力を抜いて聴きたい。世界観に包み込んで聴かせてくれるという意味では、迫力を出しながらも、全体の調和性をより重視して、個々の音をなめらかにとろかして聴かせるHD599の秀逸さのほうが勝ります。

 

【総評】

 どちらも「調和性」に優れており、最高クラスの迫力と感情表現力を持っていますが、性格は少し異なっています。HD599がより「調和性」にフォーカスして聴かせてくれるのに対し、HA-FX1100は「調和性」を重視しつつも、ときには楽器のキャラ立ちを目立たせて、より濃密さで勝負してくるところがあります。表現として全体的に同じ方向を向きつつも、HD599が構図の表現性にこだわる芸術家らしい音の作り方をするのに対し、HA-FX1100にはときおり職人気質なところがあって、最終的には細部の表現を捨てません。なので、たとえばJAZZではそのジャンル特有の遊び心を、全体の流れの中に落とし込むHD599に対し、HA-FX1100は引き立てて表現する違いがあります。そういう意味ではHA-FX1100はよりJAZZ向きであろうということは明確ですね。HA-FX1100というのは熱血漢のような音を奏でるやつだと思っていましたが、案外チャーミングなところもあるのかも知れません。

SENNHEISER HD599JVC HA-FX1100

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【ハイレゾ対応イヤホン JVC HA-FX1100 レビュー】すでに生産終了でいつまで出回るかはわからないが、現状コスパ最強。優れた重厚感と広く調和的な空間表現。熱くソウルフルに叙情を歌うが、耳当たりよく聴き疲れしない音質。つまるところほぼ敵なし

JVC HA-FX1100

JVC HA-FX1100

JVC HA-FX1100 WOODシリーズ カナル型イヤホン リケーブル/ハイレゾ音源対応 ブラック

 

 

おすすめ度*1

JVC HA-FX1100

ASIN

B00P8NZJLO

 それなりに大きいが、ハウジングの耳への収まりは良く、意外と出っ張らない。あくまで個人差がある話ではあるが、私の場合、このイヤホンを装着した上から、比較的きつい付け心地のSENNHEISER HD599で覆ってもうまく収まる。遮音性は高め。音漏れは少し。

 

【1】外観・インターフェース・付属品

 付属品はイヤーピースの替え、キャリイングポーチ、説明書。標準ケーブルは編み込み保護されており、手触りと取り回しがしなやかで、タッチノイズはない。リケーブル可能。

Radius Ne HP-DHR01RRadius Ne HP-DHR01R

【2】音質

レコーディングシグネチャー(試験運用中)

 レコーディングシグネチャーはバイノーラル録音されていますが、品質は良くありません。低域は抜けやすくなるので、イコライザーで低域を持ち上げていますが、それでも充分出ていません。したがって聴いたそのままの音質とは異なりますので、あくまで参考情報ということでお願いします。

 

原曲

www.youtube.com

銀の意志 Silver Will / 空の軌跡ざんまい / Copyright © Nihon Falcom Corporation

www.falcom.co.jp

 

anchor.fm

 

 音質は中低域に密度がある。この価格帯では高域の突き抜け感には乏しいところがあり、透明感や煌めき感も比較的抑えられている。全体的に音が太く、濃厚に聴かせる。音は全体的に芯がはっきりしていて、しっかりした定位感を感じさせながら、空間にとけるように膨張していくので、その音の広がりに空間性が感じられる。個々の音どうしが端で混じり合い、一体的で濃厚に聴かせてくるので、低域から高域まで確かなつながりを持って響き合う音楽が感じられる。音場全体が有機的に躍動する生命的な表現が強く情感を呼び覚ましてくるところがある。重量感と迫力は本来の価格帯である5万円台でも最強クラスでありながら、音味はウォームで耳当たりが良いので、基本的に聞き疲れしにくい傾向にあるが、低域は出張るのでその圧に疲れるかも知れない。

 音楽ジャンル的には比較的万能に迫力ある音を感じさせてくれるが、曲によってスピード感だけはややもたつくところがある。クラシック、R&B、JAZZ、ロックは価格帯トップを争う表現力、クラブサウンドはスピード感や緻密さで劣るところがあるので、これらよりは物足りなく思うだろう。

 

[高音]:全体として見るとおとなしめ。高域だけ注目すると、透明感や煌めき感、突き抜け感は抑えられており、華麗さはない地味な音に聞こえる。低域の空間を鳴動させる地熱感に比べると、高域方向の残響感も相対的に抑えられている(秦基博「水彩の月」、井口裕香「Hey World」、多田葵「灼け落ちない翼」でテスト)

[中音]:全体的に音に厚みがあり、濃厚。ぼわぼわといたずらに膨張する感じではなく、音の芯をはっきり感じさせながら、柔らかく空間に溶け込んでいく。そのため個々の音に手応えがありながら、全体としてはなめらかな調和性が感じられる。大抵のイヤホンでは、中高域をはっきり低域から遮断するか、逆に低域が覆い被さってしまって中高域が埋もれてしまうという場面が多いが、このイヤホンは低域のエネルギーをそのまま高域に繋げていく連携感がある。

[低音]:厚い振動で芯もしっかりしている。30hzまでは比較的しっかり、20hzでも鈍い振動が出ている。地熱感が強く、重み以上に濃密な空気感を出す。そのため熱気を感じやすく、空間全体への鳴動もよく、情感が豊かに支えられ、迫力が増す。この低域の濃厚さがこのイヤホン最大の魅力(分島花音「killy killy JOKER」、UVERWorld「CORE PRIDE」、重低音音源動画でテスト)

[解像度・立体感]:音の量感、空間の広がりに関しては優秀で、ヘッドホンクラスの表現力を感じる。たとえば2018年12月現在の実売価格でほとんど差が無いSENNHEISER HD599にほとんど遜色を感じない。HD599は開放型で空間表現は秀逸なモデルなので、実際よく聴けば高域の高さや低域の距離感には差がかなりあるが、曲を聴いている感覚的には低域の広がりが中域の奥行き感にスムースに広がっていくので、印象として篭もらない開放感があり、ヘッドホンクラスの空間に思える(petit milady「azurite」、分島花音「world's end, girl's londo」でテスト)

[パーカッション・リズム]:ドラムは地熱感に優れる。表面の弾けや爆発力もかなりのものだが、全体的に厚みがあるので、明るくならない重たいタイプの衝撃力であり、スプラッシュ感は相対的に薄い。ズドドンズドドンという重みが空間全体に鳴動する。個人的にはかなり好きな低域表現で秀逸。ハイハットやスプラッシュシンバルは芯があるが、空間への溶込みがよいので、圧倒的重量感を出すドラムに比べて淡く出やすいので疾走感は相対的に弱くなりやすい。しかしライドシンバルの粒感はかなり綺麗に出る(東京カランコロン「スパイス」、nano.RIPE「ツマビクヒトリ」、JOY「アイオライト」でテスト)

[ボーカル傾向]:中域付近で厚みがあり、高域に向けて力強く持ち上がる。全体的にパワフル。色味はウォーム。高域では透明感や煌めき感、残響感はあまり出ないので、突き抜けていく高さはない。キラキラした味のアニソンを好む人にはこの点不満に思うところがあるかも知れない。

 

※この機種の音質については以下の補足レビューがあります。参考にしてください。

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【3】官能性

 正直このイヤホンの音質に不満はほとんどなくて、現状大満足しているが、それでも個人的にあまりよくないかなと思う曲から紹介すると、たとえば放課後ティータイム「Go Go Maniac」。この曲はかなり激しいスピード感があるので、より個々の音にシャープなエッジ感があって、音味はもう少しドライでスパイシーな方向、ボーカルはもう少し高域での鮮明さがあると引き立つ。このイヤホンはこの曲を味わうには音を一体的に聴かせることに気を配りすぎていて、個々の音が他の音に引っ張られすぎてしまっており、思うような瞬発力や旋回力を出せていないし、ボーカルはそうした激しい展開の中から突き抜けてくる個性に乏しく、流されてしまっている。肩の力を抜いて、「ゆるふわかっこいい」感じのスタイリッシュさで聴かせてくる小刻みなボーカルのスピード感にうまくついていけてないのだ。ライブ感のある音という感じなので、このイヤホンの音はそれはそれですごくいいのだが、個人的好みで欲を言えば、この曲に関してはもう少し見通しよく聴きたい。その意味で、この曲ではよりエッジ感のあるRHA MA750だとかDENON AH-C820だとかのほうが、よほどいい仕事をしてくれるところがある。個人的には「けいおん!」の曲を聴くなら、Westone W40のより緻密で刻みの良い瞬発力のある表現のほうが断然好みで理想に近い。

 かといって、単純にスピード感が出ないのかというと、そうでもないようで、たとえばナナヲアカリ「ワンルームシュガーライフ」のほうは重厚感とほどよいスプラッシュ感を出すドラムセットが良い仕事しているし、ボーカルも伸びが力強く、高域での残響感は強くないのに、すっきりと高さを出す。そうすると、不足していたのはスピード感それ自体というよりは小刻みに音を切り分けるシャープなエッジ感と見る方が適切なようだ。

 

 以前同価格帯で比較的似た音質傾向のWestone W40と比較したが、たとえばOwl City & Carly Rae Jepsen「Good Time」は充分に満足できる音質であり迫力を感じさせてくれるが、Westone W40と聞き比べると、音が近すぎて窮屈に聞こえ、途端に野暮ったい印象を受ける。傾向として厚みを出すために音に一定の膨張感があり、それはどうしても分離感をもたらす隙間感とのトレードオフになっている。それが見通しを悪くしてしまうところがあるのは確かだ。こういう小洒落た洗練された曲を楽しむには、ちょっとオシャレさが足りないところがある。

 

いや俺はこの熱気のある音でオシャレで現代的な曲を聴きたいという人は……

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 火力と地熱感で圧倒的な迫力を出す低域エンジンの力はすさまじく、たとえばTetrarkhia「Heroic Spark」のような曲を弩級に聴かせてくる。その地熱が独りよがりにならずに中域の楽器音やボーカルとよく連携するので、アニメ声のボーカルにも関わらず、浮ついた感じが出ない。こういう声色では一般的に、透明でキラキラしたところに妙味を感じやすい気がするが、率直に言ってあんまりキラキラしていないし、透明感もないが、すっごくしなやかで甘い。キラキラ感や透明感とは違う別方向のアプローチでいくなら、すっきり清潔感を出してスカッとした爽快感を出すやり方があるが、それとも違って、肉厚にまったりな甘味を感じさせつつ、それを中域から高域へ力強く引き上げることで味を消さないといった感じだ。つまり低域の火力に支えられた空間全体が響き合って、ボーカルの味を曲全体によく溶かし込んで聴かせてくれる。だからボーカルだけを聴くと、表現として誇張が少なく地味な印象を受けるのだが、それは浮き上がらずに曲にうまく落とし込まれている証拠でもあるというわけだ。

 

 秀逸と言って良い低域火力とそれとの一体感で曲全体の説得力を増してくれる好例と言えば、Afterglow「ツナグ、ソラモヨウ」なんてそう。正直に言えば、この曲は特別優れた曲とも思えないし、公式で「エモさ」を強調している割に心に響くところもなくて漫然とプレイリストに加えていたところがあった。そこらへんの、妙にバランスが良い音質の上品なイヤホンで聴くと、「エモい」というより「イモい」といった感じで、やけに力の入った楽器音に対して、いまいち乗り切れていないボーカルがうわ滑っていくところがある。そのせいか歌詞なんて何歌っているのかさっぱり頭に入ってこないので、曲名に反して、全然心に「ツナがってこない」。ところが、このイヤホンで聴くと印象ががらっと変わる。まず声が太く濃厚で出だしからぐっと力強く引き込んでくる。その出だしのパンチからドラムスの熱気が一気に加わってくるが、そのたたみかけてくる熱気がボーカルにもよく伝わって、火力を増して一気に疾走し始める。サビなんかボーカル同士の連携がよく一体感があり、熱い絆を歌う歌詞を強引にぶっとく胸に押し込んでくる。この曲が本来秘めている「エモさ」はこのイヤホンでなければ、なかなかしっくり味わえないだろう。

 

 つまり、このイヤホンはジャンルを問わず、感情表現の豊かな「エモい」曲にはめっぽう強い。たとえば大塚愛「恋愛写真」、AZU feat. SEAMO「時間よ止まれ」、山崎あおい「君のいない夏なんて嫌いだ」、坂本真綾「光の中へ」、奥華子「さよならの記憶」、スキマスイッチ「奏」(個人的には低域の熱気がより強調されて聞こえるように思える雨宮天のカヴァーバージョンがより味わい深い)みたいな曲だ。どれも空間全体に揺らぐ楽器音で情感を強調しつつ、しっとりと歌うボーカルを厚く濃密な形で聴かせてくれる。

 

 中島みゆきの曲だとたとえば「Maybe」。楽器音は地熱感に優れたドラムの火力をたっぷり受けているので、この曲のぽっかりした中高域の空間も冷めた感じがなく、熱気が空間全体に伝わっていて生命的。ボーカルも厚みがあって濃密。同じような傾向の曲としては「糸」「誕生」とか「荒野より」「夜を往け」「たかが愛」なんか低域の火力の恩恵を受けやすく、重厚感がたまらない。総じて中島みゆきの曲で私の大好きな曲を濃厚に聴かせてくれてよいが、好みの問題と断るが、「銀の龍の背に乗って」だけはもうちょっと高域に突き抜け感がほしい。同じように突き抜け感が味わいに影響する「旅人のうた」や「空と君のあいだに」はよいので、コブシの利き具合の差による力の篭もり方が大きく影響しているのだろう。このイヤホンはボーカルにより情感が乗っている歌の方が味わいが良い。

 これまで高域での透明感はあまり出ないと何度も繰り返しているが、曲によってはしっかり表現されるのがこのイヤホンの小憎いところで、たとえばrionos「ウィアートル」だとピアノの透明感が、こんこんと湧き出る泉のような生命的で温かな清澄感を持って聞こえる。ボーカルの息感も美しく、ハスキーな温かみのある輪郭感を感じさせつつ、サラッとした表面のまま空間に柔らかく溶け込む。

 私自身が勝手に言っていることだが、もはや伝説と言っていいアニソン、a・chi-a・chi「STEP」を聴くならこのイヤホンは個人的にベストチョイスの1つ。熱量のある低域が作り出す生命的な空間の中に、重なる透明感の美しいデュエットボーカルが包まれて一体感を持って聞こえてくる。

 

【4】総評

  すでに生産終了しており、在庫処分に入っているのか、元々の価格設定は5万円クラスだが、2018年12月現在、3万円を切る価格で売られている。ここ3ヶ月くらい月初にamazonでタイムセールが行われていて、2万円台前半で手に入れることさえ出来る。音質を考えると破格と言って良い。

 個人的な話になるが、JVC HA-SW01に衝撃を受けて以来、JVC HA-FX750JVC HA-FW01とJVC WOODシリーズを愛用してきたが、熱狂的なWOODシリーズファンの一人であると自負する私から見ても、ヘッドホンタイプのHA-SW01は除くとして、イヤホンタイプではHA-FX1100は別格。このHA-FX1100はWOODシリーズ同世代のフラッグシップHA-FX850とは異なるスペシャルモデルという扱いであり、立ち位置はよくわからないが、現行のフラッグシップと位置づけられているHA-FW01と比べると低域の火力からくる迫力に違いがあり、よりスムースでクレバーな感じのHA-FW01と比べると、もう少し濃ゆいバタ臭い音の鳴らし方をするところがある。万能に音楽を楽しむという点では、どちらかというとHA-FW01をおすすめすべきであると思うが、HA-FX1100の放つ規格外の情感表現力が圧倒的に私を惹きつけて離さない。新発売されたHA-FW10000とかいう誰が買うかわからないアホモデル(これにはWOODシリーズファンの私も開いた口がふさがらない)は別にして、JVC WOODシリーズに興味を持ったなら、コスパの点でも、真っ先に考慮すべきはこのHA-FX1100であると断言する。

JVC HA-FX1100

 

【5】このイヤホン向きの曲

 ほんとはPaula Fernandesとのデュエット曲である「Long Live」のほうがよりよい気がするのだが、公式の音源動画がないようなので、似たような傾向で私が大好きな曲「All Too Well」を紹介する。このイヤホンは低域のドラムの量感があるのはもちろんだが、もっとも魅力的なのは空間に重く響く地鳴感。まるで部屋鳴りしているかのように音場全体を鳴動させ、揺らすその表現力が圧倒的な迫力を生み出す。そしてこの曲のようにエモーショナルなボーカル表現に熱気をうまく乗せてくれるので情感が何倍にも重く生々しく心に響いてくる。

 

 低域の火力がすさまじいので、この曲なんか、パワフルでかっこよく気持ちよく聴ける。カップリング曲の「夢のヒーロー」も最高に熱く、気持ちいい。特撮ヒーローや子供向けロボットアニメの主題歌に多い、明るくパワフルなヒーローソングは超得意分野。挙げればキリがないが、たとえば機動武闘伝Gガンダムの主題歌、鵜島仁文「FLYING THE SKY」や同じく「Trust You Forever」は素晴らしく、後者は低域火力がより勇ましいので、なおさら没入感が高い。あとは「戦闘メカ ザブングル」のOP曲串田アキラ「疾風ザブングル」も腹まで侠気を落とし込んでくる迫力に身もだえできる。

 

 同じようにヒーローソングっぽい曲と言えば、最近話題のこれ。ゾンビが歌ってるくせにやたら熱く情感篭もって聞こえる。カップリング曲は作中の別グループ、アイアンフリルの「FANTASIC LOVERS」だが、正統派グループアイドルソングっぽい、この曲もこのイヤホンで聴くとライブ感のある熱気が感じられて、すっごくいい。

 

 ヨルシカだと「カトレア」「靴の花火」「負け犬にアンコールはいらない」をはじめ、どれも重厚な火力をボーカルの情感にたっぷり乗せて盛り上げてくれるんだけど、ここは「ただ君に晴れ」をご紹介。

 

 このイヤホンが醸す低域の地熱の篭もった空気がこの曲の立体感を盛り上げる。他のイヤホンで聴くと、本来はもうちょっと浮揚感がある感じで、幻想性も高い曲であるが、このイヤホンの表現は、より重くビートを響かせ、地の底から沸きたつ熱気が感じられて力強く勇壮でダイナミック。

 

 同じように地熱感のある勇壮なドラムサウンドが最高に盛り上げてくれるのがエド・シーランのこの曲。曲全体に力強い熱気が充満していて、ボーカルの叙情感を濃厚に聴かせてくれる。たとえばこの曲をこのイヤホンで聴いた後でWestone W40で聴くと、だいぶお上品に聞こえる。このイヤホンの音の方が荒削りに聞こえるが、ボーカルが吐露するプリミティヴな感情の真実味に断然の違いがあり、Westone W40のほうが曲の構造を見通しよく伝えて、教条的にはいい音といえるかもしれないが、魂への響きはとても比較にならない。逆に「Thinking out loud」のような理知的な曲にはWestone W40の洗練された音がいかにもふさわしく、このイヤホンでは多少野暮ったい。

 

 正直一番好きなのは「ライラック」で、このイヤホンは低域火力で最高に盛り上げて聴かせてくれて大満足なんだけど、表現力に感嘆したという点ではこの「ETERNAL BLUE」。とにかく重い地熱感のある低域で圧倒的に引き込んできて、捉えて離さない。

 

 低域火力が、低域火力がと繰り返してばかりだが、低域火力が素晴らしすぎるので、実際これしか言うことがない。たとえばこの曲なんか、低域が厚いともっさりすると思いきや、ただタイトというのはちょっと違う、地熱感を伴った重量感で曲全体の迫真感を別次元のものにしている。そうした地熱の中にピアノ音や弦楽音は溶け込むような一体感を持ちながら、芯はしっかりしていてきれいに浮かび上がってくるんだから、反則だとしか言いようがない。

 

JVC HA-FX1100 WOODシリーズ カナル型イヤホン リケーブル/ハイレゾ音源対応 ブラック

【プレミアムレビュー】

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*1:おすすめ度とは、あくまで主観的に「ここが面白い!ここが味わい深い!」と思ったポイントです。たとえば低域が「5」だからといって低音が支配的で低域重視で鳴りますというわけではなく、「低域の表現が丁寧でうまいなぁ」とか「これはちょっと他では味わえないかも」といった特徴的な音、魅力的な音がポイント高めになります。そのイヤホンの販売価格帯も考慮した主観的な評価です。

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